145 【R18G】星仰ぎのギムナジウム2【身内】
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青年はその日の朝、いつかのように食堂に現れた。
未だジャステシア、彼女の姿がないのなら小等部の整列には貢献したが、
それでもやはりあまり多くは、小さな子どもたちには触れ合わなかっただろう。
その日は食事を選ぶ列にはあまり長く並ばず、少しの食事だけを取り。
誰のものでもない一人部屋へと、誰にも告げずにそっと身を隠した。
| その朝、少女はすこしばつが悪そうに食堂を訪れた。 誰かを探すように、それでいて見つけてしまうことを恐れるように。 赤い視線が揺らめく。 ――けれど。 彼は食堂のどこにもいなかった。 まだ出てきていないだけだろうか? 否―― 『神隠しに遭った子供は治療のために酷いことをされる』 『それは今でも続いているかもしれない』 ふと、脳裏をよぎるのは、そんな。 「………………バラニは、どこ?」 掠れた声が、落ちる。 (1) 2022/05/04(Wed) 21:08:31 |
食堂から姿を消した当日から暫く経って。
どこにも姿を見かけなかった男は、
次に別の人が姿が消えた日、唐突に食堂に姿を現した。
最も、元々仏頂面だった男は顔色は常に悪いまま、
随分と落ち着かない所か、手が震えて食器すら持てない。
何かに怯えるように結局食事にも手を付ける事もなかった。
| >>0「………………エルナト」 少女はあなたの姿をみとめると、悲鳴にも似た、ふるえる声をこぼした。 「バラニはどこ?」 (2) 2022/05/04(Wed) 21:12:30 |
イシュカ
食堂からの去り際、普段と様子の違う貴方を見かけて。
青年は少しだけその傍で立ち止まったかもしれない。
けれども結局掛ける言葉は見つからず、固い靴が歩き去る音だけが残った。
いつものように皆が揃っていることを確認する声も。
見えなくなってしまった者の代わりとして働く姿も。
今まで朝食に欠くことのなかった明朗快活な少年の姿はどこにもない。
ともすれば喧しいとも称された少年のいない空間は、
不気味なほどに静けさに包まれているように感じられるか。
誰かに教えられた誰のものでもない部屋で、一人で食事をする。
| >>5 エルナト 「バラニは、――――」 あなたが窓の外ばかり見ているから、痺れを切らしたように、少女はもう一度、口を開きかけた。 刹那、ゆっくりとあなたが振り返る。 けれど、答えは返らない。 「バラニは、どこ」 三度、口にして。 ようやく、あなたが告げたのは。 ――――ヒュ、と。 喉から漏れるのは声にもならない悲鳴。 (6) 2022/05/04(Wed) 21:24:27 |
| (a0) 2022/05/04(Wed) 21:24:51 |
*テラはこの日も姿を表しませんでした
*かわりに
*校舎裏の隅にひっそりと
*少年が使っていた防護服が一式
*疲れ果てて座り込んだ人のように
*打ち捨てられていました
*ひっそりと、ひっそりと
| (a7) 2022/05/04(Wed) 23:40:30 |
| (a8) 2022/05/04(Wed) 23:40:44 |
| (a9) 2022/05/04(Wed) 23:41:13 |
| (a10) 2022/05/04(Wed) 23:41:43 |
【とある日の診療録】
「僕には 出さないって言っただろ!?あ、アオツキだって一緒じゃないか! は一緒なのに、僕は あいつは で、“こんな事”を黙認してるのはどっちも同じで……!」
「くそ、くそくそくそッ!!何が嘘つきだよ!僕は嘘なんて吐いてなかった!僕に勝手に嘘つきのレッテルを張って、誤解ってわかってるくせに放置して……ッ、それで……ッ」
「……なんで、僕を本当の嘘つきにさせるんだよ……」
約束していた事は沢山あった。
契約ではなくとも、むしろ違うからこそ学生時代に意地でも拒絶していたそれらをやり直そうとしていた。
男にとっては、内容自体はささやかな物でも、
それが持つ意味は彼の中でずっと大きかった。
「……ッ……なに、何だよ、僕は間違ったこと」
……だからこそ、その日。
約束を悉く反故にさせられて、
男が最も嫌う嘘つきに仕立てあげたのは、
治療よりも苦しめ蝕む事になる。
「………ぁ、な、なに。ぅあ、やめッ、やめろよッ」
「い、いやだッ!嫌だ嫌だいやだぁっ!だ、だれ、か、」
「たす、け」
アオツキ
「……え、……ぁあ、」
ようやく気付いたように視線が合う。
元々覇気のない目は、光そのものが失われたのかと言うほど生気すら消えかけている。
「……?心配してないなら、いいだろ。
手伝わないのに何の……あれ、違う……?」
最初こそぼんやりしていたものの、唐突に目を見開いてから、眉間に手を置いて考え込む仕草。
フォークを手に持っていたのを忘れていたため床に転がる金属音に、更に意味がわからないと困惑を隠せない舌打ちが響く。
アオツキ
「……してない。……」
言葉遊びへの否定。
貴方の言葉に対して咄嗟に浮かぶ不快感。
余計にに険しさを増す表情も、時間によって思考が整理できるのか
やや間を置いた後に眉間の皺と共に僅かに和らぎはするが。
「ああ、うん。わかって……
クソッ、割とこんがらがって来たな……」
気遣われている事だけはわかるが切り替えが柔軟ではない。
今の時点で一度変換してる為に再変換で混乱している。
慣れが来るかもこれまで味わった事がないから不明だ。
「って、足は別に使えるっての……!
戻るから、もういい。平気だ。知ってる。
教師になるのに僕みたいな奴は見てる暇ないだろう」
引かれた手を軽く払う。
触れる際に怯えのように一瞬目を瞠ったのを即座に消した。
これ以上何か言われる前にと、貴方の声かけのお陰で休む気にはなったのか、重い体を引きずって食堂を去ろうとするだろう。
アオツキ
「……構う相手?」
居ただろうか、と言う顔をした。
小等部の事か、同室者か。或いは色々と被ってる後輩か。
どれもあまり構うと表現しない為、
余りしっくりこなさそうに疑問符をつけたままだ。
「あ」
そしてこれは今まで他者の事を考える余裕が欠片もなかった為、待ち合わせを無視してしまっていた事にようやく気付いた声。
更に不快にさせたかはともかく、
この場は食堂を去った後に軽く言葉を伝えて、別れた。
| (a30) 2022/05/06(Fri) 20:43:14 |
| (a31) 2022/05/06(Fri) 20:44:44 |
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