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【人】 商人 J[ 続いてジュダスもた笑った。 去っていく男の背には目もくれず、ただ笑った。] 勇敢な方だ。 [ だが、愚かな女だ。 盲目で、何も知らぬ、知ろうとしない。] でも、行きましょう。 [ 場に静寂が戻ると男は女を先導するように、卓を離れた。 薄暗い会場を歩き慣れた足取りで。 ──── 日付は今まさに替わろうとしていた。] (74) 2022/03/19(Sat) 18:13:31 |
【人】 商人 J[ 案内されたのは執務室の様な場所だった。 男は机に座る。窓から差し込む月明かりを背に。] では、商品の受け渡しといきましょう。 ジャンヌ・アンペール。 [ 部屋の隅にはもうひとり居た。 それは二歩前に出ると灯りがその顔を照らす。] 貴方が落札したマリーだ。 いや……マリエル……だったか。 [ 檻に囚われていたときとは違い、意識もはっきりしているし、マリエルは強い視線で女を見ていた。 その服装はオークション会場の係の者と似ていた。]* (75) 2022/03/19(Sat) 18:14:04 |
【人】 旅人 J[彼の住む街に必要だと言った 彼が好きなのかもしれないオークションを 汚すような行いが許せなかった。 誰に理解されずとも。] (76) 2022/03/19(Sat) 20:38:32 |
【人】 旅人 J[歩きながら考えた。 自分もいま怒りのようなものに囚われていたが その前のジュダス様の反応だ。 自分にはとても言えないような汚い言葉まで 使っていたが、あのタイミング。] (……私のことで怒ってくれたの?) [契約を交わした相手だから? たまたま我慢の限界があの時だった?] ……。 [何れにせよ、それはW嬉しいWだった。] (78) 2022/03/19(Sat) 20:39:38 |
【人】 旅人 J[到着した部屋。 てっきり係のものがいると思ったが 不在のまま彼が受け渡しを仕切る。>>75 それに首を傾げつつ。 部屋の中にマリエルを見つければ近づいた。] ……マリエル。先程より顔色が良いわ 意識があまりないまま売られようとしていたから 私の所に来て貰う事にしたわ。気分は悪くない? ああ、無理して話さなくて良いわ 一緒に宿へ行きましょう。先ずはゆっくり休まないと [強い視線で見られているのがわからなかったが 服も着せてくれていて意識もはっきりしていそうだ。 どうしてこんな所にいるのか、気になることは数あれど 今はあれこれ自分から聞かない方がいいと判断した。 後は何より、宝石も受け取らないといけない。 少し待ってね、と彼女に言い付ける。] (79) 2022/03/19(Sat) 20:42:54 |
【人】 旅人 J[窓の方を見る。 出逢った日と同じような互いの配置。 シルエットだけで美しい彼が背負うのが 日でなく月となり より妖しげな雰囲気が醸し出されている。] ジュダス様……? [この位置では顔が見えぬ彼の名を呼んだ。*] (80) 2022/03/19(Sat) 20:44:26 |
【人】 商人 J[ 女の言葉にマリエルは首を横に振る。 それを可笑そうに男は笑う、喉を鳴らしてクツクツと。] それでは、 商品の引渡しの前に精算と行きましょう。 [ 男は紙切れ一枚を取り出すと、マリエルがそれを受け取って女へとある渡す。そこには宝石を手に入れるまでにかかった費用が記されていた。 この町のあらゆる富豪への調査の費用、それから実際にハズレ≠買い入れた費用、それらが相場の3倍から5倍の値段で記されていた。 それは女が1年折っていた時に使った費用からみてもかなりの高額とわかるほどだった。] 費用については依頼者の負担とする。 契約書に記された内容です。 [ さらには落札価格の2割。高騰したそれは2割といえどもかなりの額だ。それらを合わせれば女の残された資金では到底間に合わないことは明白だった。] (81) 2022/03/19(Sat) 21:33:39 |
【人】 商人 J[ 男は調子を変えずに女に問う。] 一応確認しますが。 支払いは可能ですか? [ 今すぐそれが不可能であることはわかっている。 そして、女がどれだけ金をかき集めても届かないことも。 件の元婚約者とやらがアンペールの所領や資産を彼女に返せばそれも可能かもしれないが、それは現実的ではないだろう。] もちろん今すぐでなくても構いません。 ただし、私は商人です。 当然ですが利息は取らせてもらう。 [ つまり、時間が経てば経つほど借金≠ヘ膨らんでいくということ。] (82) 2022/03/19(Sat) 21:33:54 |
【人】 商人 J『お嬢様、ケリオス商会の利息は十日で1割です。』 [ 男ではなくマリエルが静かに告げる。 それに男はゆっくりと首を縦に振って追認する。] 私は聞きましたよ。 いいのですか?と。 [ 男は薄笑みを浮かべたまま問う、払えるのか?と。]* (83) 2022/03/19(Sat) 21:34:08 |
【人】 旅人 J[使ってこなかった頭を必死に動かした。 彼との契約は一週間。 3日目の夜、鴉が報せを届けるのを見た。 そして3日目の午後は彼の商談に付き添う形で 自分の目で確認して周っており 費用など掛かっていない筈である。……多分。 ということは1〜2日目と3日目の午前のみで これだけの費用をかけた。ええ、本当に? 探し物の下手な自分がかけた費用と比べても ちょっと、否かなり無駄がある。 ドがつくほど調査が下手なのか……? いいや、そんな訳がないだろう。 だって、ジュダス様だ。 だって、ジュダス様は────] (85) 2022/03/19(Sat) 23:04:41 |
【人】 旅人 J私、最初から騙されてたのね [哀しげに目を細めて微笑い、 左頬に透明なものがぽろりと零れおちた。 それは月の光を受けてきらりと光る。 言葉が悪かったかも知れない。 彼はそう、W商売Wをしただけだ。 客としての責務を全うしなかったのが自分。] (87) 2022/03/19(Sat) 23:05:54 |
【人】 旅人 J[涙を拭く。] ええ 利息のことも承知したわ このままではお支払い出来ないわね 少し時間はかかるけど 支払えるようにするわね 必ず戻ってくるわ [それじゃ急ぐわね、と ドレスの裾を持ち上げお辞儀した。 踵を返して部屋を出て行こうとする。] (88) 2022/03/19(Sat) 23:06:26 |
【人】 旅人 J[向かうは大陸の反対側だ。 自らの故郷。 ブローチを、記憶を取り戻せていない女は、 自らの目を切り刻み弄んだのがその者と 思い出さぬまま元婚約者の下を目指す。 その男が。 幾度も繰り返し生命を弄べる女の帰還を 待ち侘びていることも知らない。 ブローチを見つけてから 領主を継ぐか否かは考えるつもりだった。 手に入れる為に金が不足しているなら──、 先に、領主になるしかない。*] (89) 2022/03/19(Sat) 23:09:23 |
【人】 旅人 J[頭の中はぐちゃぐちゃだった。 明らかに無駄のありそうな費用の請求は これまで相手を信じきって 知ろうとしなかった馬鹿な娘の目も少しは覚めた。 相手の優しさはどれが本当でどれが嘘だったか。 ひとつも本物はなかったのかも知れない。 加えて、マリエルの存在だ。 どうして彼の側にいるの。 どうして私より彼を知っているの。 いつからあなたたちいっしょなの。 二人が共にいるところを、見ていられない。 見たくない。] (90) 2022/03/20(Sun) 7:02:50 |
【人】 旅人 J[だって私、きっと騙されてたのに、 まだ彼のことがすき。 見てきた彼がどれも 本物じゃなかったとしても 誰に言われるでもなく 私自身が選んだことだもの。] (91) 2022/03/20(Sun) 7:04:15 |
【人】 旅人 J[せめて鬱陶しくないように 何でもないように挨拶して、 振り返った顔は子供みたいに歪んでる。 恋ってうれしいばかりじゃないんだ。 帰路の中で忘れられるかしら。 ゆっくりと、歩くことを心がけるけど、 早く二人のいる場所から離れたくて足早になって しまいには駆けてしまうのだ。 身動きを取ることが許されるなら、だけど。*] (92) 2022/03/20(Sun) 7:06:40 |
【人】 商人 J[ 契約とは誓約であり、制約である。 互いに血を以て交わしたそれは呪いの如く魂を縛り付ける。 それが、──── ギアス。] 待て。 勝手に出ていくことは許さない=B [ 否、それは確かに呪いなのだ。 古代魔法によるギアススクロール。期限は7日間。契約を破った者に服従を強いる呪いの契約書。女は確かにそれに血を吸わせた。 男がパチンと指を鳴らす。 その瞬間に、まるで無数の針が体中を貫き通したような激しい痛みが女を襲う。傷はない、失血もない、ただただ紛らわすことさえできない激しい痛みだけがそこにあった。] (93) 2022/03/20(Sun) 7:23:30 |
【人】 商人 J[ 女という生き物は痛みに強いという。 耐えることは不可能ではない、傷ができるわけではない、身体能力も損なわれない。だが、この呪いに抗えた者など男は知らない。] もう貴方は私のものなのです。 契約が破られたその瞬間から。 貴方は既に依頼者でもなければ客でもない。 私の、──── 大事な商品だ。 [ 月を背に男は嗤う。 馬鹿な女を、その心を踏み躙り嗤う。] (94) 2022/03/20(Sun) 7:23:53 |
【人】 商人 J[ 可笑そうに嗤う男は確かに女の知る男そのものだった。 もしも、女の目に違う様に写ったのなら、変わったのは男ではなく女の方だろう。] 悲観的になることはない。 貴方を買う人間が、 貴方を大層気に入って、 妻に迎えることを望むかもしれません。 [ クツクツと喉を鳴らして男は嗤う。 そんなことはあり得ない、世界はそんなに優しくはできていない。 嗤いながら、男はもう一度パチンと指を鳴らした。]* (95) 2022/03/20(Sun) 7:24:47 |
【人】 旅人 J[彼は、神様などではない。 心と体を苛む試練と、 甘く美しいだけでない夢を同時に見せる彼が。 きまぐれでいないことの多い神様などとは。] (99) 2022/03/20(Sun) 9:41:04 |
【人】 旅人 Jああぁああぁぁ……っ!!!! [指の鳴らされた音に高い悲鳴が続く。 床についた手の上に頭を擦り付けイヤイヤと振り 真白な髪が揺れる。 指の爪で床を掻きむしる。 何もしても紛らわせられることのない痛みに 丸めた小さな白い身体がビクビクと震えた。] (102) 2022/03/20(Sun) 9:44:30 |
【人】 旅人 J[蹲ったまま、くぐもる声で話しだす。] はぁ、は……私は……っ こんな私で良いの、なら…… 売り物に、なるのなら…… 商品としてのつとめは、果たします…… ぁ、貴方、は……っ そんなに、お金が欲しいの……? お金だけが、貴方の……? [痛みに少しも動きたくないが 頭を動かし視界の滲む隻眼を向けた。 だいぶ悪徳な商売をしている彼だ。 金など、もう腐るほど持っているのではないか。 何のためにそうして、何のために生きるのか。 商品の分際で、知りたがった。*] (103) 2022/03/20(Sun) 9:45:59 |
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