人狼物語 三日月国


113 【身内】頽廃のヨルムガンド【R18G】

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視点:


オーウェン! 今日がお前の命日だ!

【人】 骸狩り スカリオーネ

空を見上げる。窓際の席で。いつものように。
しかし今日は、いつも通りではない夜。

別に、年貢の納め時なんてつもりはなく、
街中に広がっている部下達の内、
3割程はなぜか今この酒場に集っていて。
煙の魔女に目をつけられない程度の注文をしながら、
入口の方を睨んでいる。魔女は男の方を睨んでいるが。

「……俺を睨むな。文句なら政府に言え」

そもそも、売り上げに繋がっているんだから
文句を言われる筋合いもないはずなんだが。

そうこうしている内に、扉が開いて。
衛兵がひいふうみい……
まあ、少なくとも前日までよりはずっと多く。
お陰で、入口でにらみ合いが起きていて。

「スカリオーネ!骸狩りのスカリオーネ、出頭せよ!」

なんて怒鳴り声まで聞こえてくる始末。
なんとも、喧しい夜だ。
(2) 2021/12/19(Sun) 1:23:39

【人】 骸狩り スカリオーネ

「騒ぐな」

席を立つ。こんな状況になるのは政府連中もわかっていたはずだ。
だからあんな大所帯で押し掛けて、
今や戦争もかくやと言う二分の軍勢が出来ている。
その片方の人波は、自分が歩けば勝手に割れていく。

「お前らのような阿呆が騒ぐから、死者が眠れん」

歩いていく。衛兵の群れを前に、威容が立つ。
言い草が気に入らなかったのだろう衛兵の一人が、
苛立ち交じりの声と共に拳を振るった。

「…………」

男は、変わらない。その表情ひとつ歪めない。
部下達を諫める為に片手を挙げ、
殴ってきた男を冷たく見下ろした。

「俺がこうして大人しくしているんだ、
 お前達も大人しくしていた方がいいとは思わないか」

その言葉に、悪態と共に下がっていく兵を見て、
その後ろについて――いこうとして。
(3) 2021/12/19(Sun) 1:34:50

【人】 骸狩り スカリオーネ

後からやってきた兵が、耳打ちして。
オロオロしている様子に、耳をそばだてる。
聞こえる内容は、まあ、つまり、
様々な混乱の中、全部"なし"になったという話で。

「……ほう?」

いびつに笑って、手を伸ばす。
先に手をあげた男に向けて。
つまりはこれも、男のルール通り、"平等"に。

「なら、お前がしたのは、喧嘩の押し売りだな?」

そうして、鎧の男を持ち上げて。
いつかのごろつきと同じ光景が
鎧の分、騒がしく繰り広げられた。
手をはたいて、一瞬後に部下の歓声があがって。

「さあ、これでいつも通りの夜だ。
 ……。お前達、何をボサっとしている。仕事に戻れ!」

骸の代わりに狩られてはたまらない、と
部下達は蜘蛛の子を散らすように酒場から消える。
そうして、残された骸狩りの男は、
いつもの席に戻っていって、

「……東国酒と、赤蜥蜴の尾開きを。
 今夜はゆっくり過ごせそうだ」

いつものように、注文した。
(4) 2021/12/19(Sun) 1:44:43
スカリオーネは、まだ変わらない。まだ、終わらない。
(a6) 2021/12/19(Sun) 1:46:11

スカリオーネは、コップを二つと、上等な酒を持って部屋へ帰った。
(a11) 2021/12/19(Sun) 22:13:07

「―――えぇ」

そうであると。
貴方も思ってくれること。

「私も、とても嬉しい」

以前と同じ事を。
以前よりも柔らかな表情で返した。

実験体や奴隷に近い扱いを受けていたという所はもやりとしたものが燻ったが。

似ているなと思った事も、あるのだ。
掃き溜めで生まれたこと。拾われたこと。救われたこと。
形は違えど、『親』を手伝っていたこと。
どうあれ、最期を見送ったこと。

食事も決めきれなかった貴方だ。
なし崩しになったとはいえ、仕事が勝手に舞い込んでくるものでもない冒険者という職には苦労したのだろうと思う。
実際に難儀している所を見た事だってあっただろう。

「……何故、その方が貴方に自身を殺すよう命じたのか。
理由はわからないのですか?」

その魔術師は最期に何を思ったのだろう。
つい、そんな疑問が口をつく。
―――貴方を困らせたり傷つけるような問ではなかったか。
言いたくなければ無理には、と慌てて添えた。

スカリオーネは、交わした約束は概ね守る男だ。
(a13) 2021/12/19(Sun) 23:51:23

"あの頃生きていた自分"と"今ここにいる自分は"違うと認識している。前世の記憶みたいに。他人事というには近くて、自分のことだと言うには少し遠い。
でも確かに身体に刻み込まれている記憶は、掘り起せば
じわじわと。蝕むように蘇ってくる。あれは自分だった。

「あの時、殺せと命じられたのは──"家族"」

「目の前に用意された、見たことのない人間を殺した記憶はある。……おれはたぶん、それを家族だと認識できなかった」

生みの親の顔なんて覚えてなかったから。
だから、本当に命令通りに家族と思っている者を殺しただけだ。

「"殺してみろ"」

「"身内も殺せないような脆弱なヤツはいらない"」


彼の最期のことばは、それだった。
そこからもう命令してくる声は二度と聞こえなくなった。

「…………それだけだ」

せめて苦しまないように、即死できるような殺し方をした。
何を思い、死んでいったなど、知る由もない。
もし、死人に口があったらと考えると
その時、はじめて……恐ろしいと感じた覚えがある。

「おれはきっと、捨てられるのが怖かったのだろう。
 だが、その行動の矛盾に気づかないくらいどうかしていた」

しかしそれも、もう昔のこと。
今更困ることも、傷がつくこともない。
もしそうだとしても、そんな顔は貴方には見せない。

「………おれが、貴方に命令を乞うたのも
 そういった生き方しか、してこなかったからだ」

これは、前にも同じようなことを言ったかもしれない。
最初から、貴方でなくてはいけない理由なんてなかった。
誰でもいいからただ使ってくれればいい、簡単で単純な願い。
それだけで救われていた。

ただ、貴方の下す命令は、いつも知らない感覚を覚える。
だけど、その自身の望みによって、貴方の役に立てることに
感じる喜びは、いままでのものは同じようで、すこし違った。

「……でも、おれは貴方のおかげで、少し自分の望みを
 許せるようになった、気がする……」

きっと様々な生き方があることをこれからも知っていく。すこしづつ、明りが灯るように、見える景色がひろがっていく。

「……………ああ、そうか…………」
「だから、」

何かに思い至ったように口を開く。

「これからもそれ
<喜び>
をおれに教えてほしい」

この街は、きっとこれから変わっていく。貴方が言っていた『より良い日々』かもしれないし、そうでないのかもしれない。


ただ、確かに言えるのは。どう景色が変わっていこうとも
番犬は──エドゥアルトは貴方の傍にいる。

スカリオーネは、ノアベルトの主として、潰れる前に酒はやめておいた。
(a45) 2021/12/20(Mon) 19:44:01

くそったれ。


顔も知らない魔術師に思ったのはそんな言葉だ。
それでも貴方にとっては『家族』であって、捨てられたくなくて、大事な人だったのだから。

これもまた言葉を飲み込んで、素知らぬ顔でいるのだ。

「……それは、仕方ありませんよ。
だって、知りもしない『肉親』を家族だなんて思えないじゃないですか。
だって、貴方にとっての『家族』はそれぐらい大事だったんじゃないですか。
見捨てられたり失望されたり、したくなかったのでしょう」

自分だってそうだと零す。
少しの行き違いが起きて、これはその行き違いが取り返しのつかない事だった。
『それだけ』の話。
……そう思わないと、どうにも、誰も救われない話。

切欠は互いの声が聞こえた事。
理由がどうあれ、『より良い日々』を共に想ってくれた。
貴方の喜びが、もっと広がればいいと思うのだ。

「―――えぇ。
私が知るものを全部、教えましょう。
貴方が自分のそれ
<喜び>
を選び取れるよう。
もっと、たくさんの事を」

この街はまた、変わっていく。
良い方にも悪い方にも。
きっとどちらにも傾いて、最後にどこに辿り着くのかはまだわからない。

「……今度、屋台にでも行きましょう。
私はチキンが一押しですが、まだおいしいものはたくさんあります。
貴方のお気に入りを探してみたい」

それでも、きっと昨日より『良い日々』になるだろうと思う事ができる。
灯りに照らされ伸びる影は、もうひとつだけではないのだから。

スカリオーネは、詩人の言葉を思う。変わらぬものはない。万物は変転する。しかしその理は変わらない。
(a55) 2021/12/20(Mon) 20:57:15

スカリオーネは、ならば、と思う。変わる事こそ、変わらぬ事。変わらぬ事こそ、変わる事。
(a61) 2021/12/20(Mon) 20:59:33

スカリオーネは、きっとあの日にしがみついていようとも――煙以外を、ほんの少し纏っているのだろうな。
(a66) 2021/12/20(Mon) 20:59:48