人狼物語 三日月国


234 【身内】不平等倫理のグレイコード-0010-【R18G】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


#ハノイの塔

「……そモ、別ニ、外に出てかラ、また会ってはいけなイ、
 なんてどこにも書いてませんシ?」

首を傾げた。

「いいじゃないですカ、たまに集まれバ。
 それを許さないって言うなラ、保護団体様ヤ、
 監察官殿ガ、幾らか手助けはするのでしょうシ」

今、見てるのか見てないのかは知らないけど。

「聞く限リ、やはりあなたに足りないのハ、
 誰かを頼る事とカ、そういうものの気がしますヨ。
 ……諦めは楽でス、立ち止まっているのモ、
 仕方なイ、そう言えまス、けド……」

「結局、そうしている限リ、景色は変わりませン。
 自身が腐っていク、良くない気分が溜まル。
 それが一番辛いト、私は感じましタ。
 貴方も同じとは言いませんガ、
 ……まア、なんでス。止まっててモ、
 引きずってくれそうな方ばかりですシ。
 同じ諦めるなラ、前向きに諦めてみてハ?」

存外、気分がいいかもしれませんヨ、なんて添えた。

#ハノイの塔_第2層

どうやら僕はバグってしまったらしい。
たった一人。
誰の手を借りることもなく、送迎用は一人、立ち上がる。

あんなにレーシングゲームシミュレーションをしたのに。
絶対にもう事故を起こさない自信を得ることはついぞできなかった。
これではご主人様のところに帰れない。
この鈍臭さをしっかりと修理するまで帰ってくるなと、言われてるのに。
だから帰れないのに。


#ハノイの塔_第2層

こわい、コワイ、怖い。
――殴らないで。


身が竦む思いでいっぱいになる。
最近はもう、主人家族に対する記憶は、罵倒と暴力しかない。
あの日まではあんなに優しかったのに。
僕に役割の垣根を超えて、美味しいスクランブルエッグの作り方も教えてくれるような人だったのに。
たった一度の事故が、すべてを変えてしまったんだ。

僕が悪い。
そうだ、ずっと。

「僕が悪いんだ……僕が、無傷だから」

だったら、僕を壊してくれる人を探そうか。
残念だ。いや、幸いだ。

僕はただの一度も、誰かと親しくなるようなことをしてこなかった。

それならきっと、誰か喜んで僕を壊してくれるはず。

そう思えば、動かなくなった足が今一度……動くような気がしてきたんだ。

#ハノイの塔

「そーだそーだ!
 みんなで集まって、難しかったら通話でもなんでも…
 絶対やるからね!アトリはやるからね!」

ぶーぶーと後ろから文句が飛んでくる。

「立ち止まるのは悪くないよ。
 ずうっとここにいる、絶対動かない!って決めちゃうのが、
 だめなの。一緒に帰ろうよ…」

「アトリは、アトリはね。
 よくばりでわがままで我が強くて手前勝手なんだから!」

いいよって、わかったって言うまでだだこねるもんね。
絶対絶対諦めてあげないもんね!

すこしだけ悲しみの色が強い声だった。
胸の奥に疼く傷のようなものに触れたのか、それともこの強い思いすらバグの産物なのか。
誰にも分からなくとも、ただ迷子のグレイに届けばいい。

「…………そっか」

ここはデータの世界だ。
ここで怪我をしようが、死のうが、現実の自分は怪我一つ負わない。
そういう事に気づけないほど、僕の何かがやられてしまっているということだろう。

「じゃ、意味ないな……」

では、バグとやらを生じてしまったらしい自分に、今何が出来るのかを一生懸命考える。
考えて……。
僕はやっぱり。

送迎用としてしか生きられない
のだと思いしらされた。

どれだけ自信がなくともこの手は。
そのための行動しか出来やしないのだ。

一人そっと塔を離れた。

塔を離れはしたが、送迎用は帰還することはない。
いつまでここに居られるかわからない。
それならば、この送迎用には他のことにほうけてる時間は全くない。

1秒すら惜しい。
そんな事をするくらいなら、1回でも多くシミュレーションをするべきだ。

用意できたすべてのコインを、この筐体に使うと決めて。
送迎用は一人、レーシングゲームに居座った。

「――ただいま」

筐体にコインを1枚、ちゃりん―――

「がんばるから。僕に沢山のことを教えてね」

「あーもうお腹がぺこちゃんでス。
 今日は美味しいもの食べるまで何もしないと決めましタ」

点燈用グレイ、これでも一応色々、
後衛にも前衛にも何事も無いよう気を張っていたらしく。
拠点に帰るなり武器を仲間の居ない方向へ投げて、
まったく無遠慮にソファにダイブした。

「マージで疲れましたヨ。今難しい話する奴が居たラ、
 アッツアツのランタンをケツに押し付けてやりまス」

そうしてご飯の時間までソファを占領していただろう。
誰か座りにくれば流石に多少は譲るが。

愛玩用は帰還次第、順番が来たとかでメンテナンスに引っ張られていった。

「お祝い…ああ〜〜……」

ずるずるずる…

しばらくすれば無事に帰ってきて、お祝いに合流する予定。

レインボーケーキを見て宇宙用トムラビになった。

レーシングゲームを続けている。

「影の黒、土の茶、炎の赤、後は宝石類の色ならなんでモ」

目はばっちりレインボーケーキに釘付けだが、
質問にはそう答えた点燈用は、ソファの上で
警戒している猫のようなポーズになっている。

「こワ〜……」

「そこは虹色が好きなんじゃないんですネ……」

愛玩用がリクエストしたのかナ?と思っていた点燈用。
まさかの首謀者に宇宙用状態が継続した。

「どんな味なのでしょウ……」

「存外、『ないです!』と即答されるやもしれませン……」

謎が多い存在、点燈用はブラックをそんな風にとらえている。

ところでバンドッグ、このスープパスタ美味しいですネ。量3倍にしてくれまス?

「運動してお腹が減ってるんですヨ!
 ベーコン多めでお願いしまス」

鎖つきの鉄球を振り回したのを思えば、
それなりにカロリーが必要なのかもしれない。

「むしろこれくらい食べないでどうやって皆、
 体力などを維持しているのですカ」

「根性論振りかざしてないデ、ちゃんとご飯食べなさイ」

急に正論。
よっそいよっそいして頂いたおかわりを引き寄せると、
ベーコンとキャベツを交互にフォークで刺して、
ひと口で頬張った。齧歯類宜しく頬袋が膨らんでいる。

「んム、んム……んッ、ぷハ。遊ぶにしてモ、
 戦うにしてモ、考えるにしてモ、エネルギーは要りまス。
 灯が輝くのに燃料が要るのと同じでス。
 燃料なくしテ、美しい灯はありませン。
 わかったラ、貴方方も食べなさイ。さもないト、
 レインボーケーキを含むデザートは私が全て頂きまス」

小気味いい音をさせながらキャベツを齧り、
女子によるデザート独り占め宣言をした。
嫌ならば戦うしかない。食器を手に席につきたまえ。