148 霧の夜、惑え酒場のタランテラ
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[命もない、魔法も使えない一人の子供が、
目的を果たすためには、ここに居る他なかった。
あれから5年ほど経つ、時が経てば経つほど、
運命的な再会を果たす可能性は低くなる。
正直、焦っている。
でも僕はこの店に運よく相手が来ることを願い、
待ち続ける以外に出来ることはない。
会いたいだけなら、探しに行けばいい。
世界中を探すのは簡単な事ではないけれど、
ただここで待っているよりは、まだ希望がある。
でも厳密に言うと、会う事が目的ではない。
僕が本当に果たしたいのは―――――……。]
[僕だって気付いている。
一寸先は闇。未来はどう転ぶか分からない。
問題の先延ばしをしているだけかもしれない。
運命を変えたはいいが、より悲惨な末路を辿るかもしれない。
知ってしまったからこそ、悲劇が生まれるかもしれない。
占い自体は当たっているのに、
それを伝えることで未来の展開にずれが生じて、
占いが外れてしまったような形になるかもしれない。]
| ─ 過去回想:約束 ─ いいか、指切りを破ったら 針千本を飲むことになる おそらくすごく痛い……はずだ [ それは腕が千切れることよりも もう会えない悲しみよりも 一人置いて行かれた寂しさよりも 果たせない約束があることが 痛かった。 ] (8) 2022/05/27(Fri) 4:32:37 |
| [ 指切りの続きの話をしたのは いつだったかな また物騒な物言いをして 驚かせてしまうような物言いになったのは 前の反応が年相応で嬉しくなったから >>1:57 針千本はお互い飲むことになるなんて この頃は想像もしていなくて。 いや、冒険者なんていつ死んでもおかしくはない。 ノアのように強ければ生存確率は高いだろうが 俺は────……。
まあ、この通りだ。 ] (9) 2022/05/27(Fri) 4:32:48 |
| [ 絆の巻き方を間違えいてたのか 幕どころか途中から切られていたものを 手繰り寄せて確かめることなく
まだ繋がっているものだと信じて 辿った先に何もないことに気が付いても そこにはまだ見えないモノがあると自分を騙して。
諦めが悪かったんだ。 ] (10) 2022/05/27(Fri) 4:32:57 |
| [ ノアの夢を近くで応援したかった >>1:61 剣だって教えてやりたかった >>1:62 成長して、立派な青年となった彼と 二つの約束を果たせる日がくると 信じていた。 その時にはまた俺の仲間と一緒に 大きな依頼をこなしたりするのも 楽しそうだななんて呑気なことを考えて。 ] (11) 2022/05/27(Fri) 4:33:13 |
| [ 手紙出してくれてたんだな >>1:65 仲間たちのこと あの後の俺は知らないんだ。 手紙を管理するのも俺の仕事だった。 今は違う誰かがやってるのだろうな。 なあ、その手紙には何を書いたんだ? きっと届いてたのなら 仲間と読んで、俺が返事を書くはずだ。 そんなやりとりが始まる未来だって あったのにな……。 届けられなかった言葉 もしかして悩みとかあったんじゃないのか? それとも新しい技を覚えたという報告か? 相談できる奴はいたか? 孤独じゃなかったか?
聞きたいことは山ほどあれど どれも届くことのない文字達。 ] (12) 2022/05/27(Fri) 4:33:22 |
| [ それならいっそのこと 俺のことは忘れている可能性に賭けたかった。 そんな薄情な奴じゃないことなんて とっくに知っているのに。 ] [ お互いに謝ってさ >>0:-146>>1:-10 そのための約束じゃないはずだった いつか会えるための約束。 ] (13) 2022/05/27(Fri) 4:33:59 |
| [ ここで会うことになるなんてな。 今度はこっちの姿も バッチリ見つかるわけで。 ] (まだ、気付かれてない……だろ) [ 開店から一体どれだけ時間が経っていると 思っているのかと言われそうだが 俺は動揺していたんだ。 ユスターシュと親しげに話している相手の姿が ノアだったことに。 また ”酒場”に来たのかと。 そうだ俺は怒っているんだった。 怒ってやろうと思った。 でも最後に見た時から また年を重ねたノアの姿を見て 安心したのも事実である。 ] (14) 2022/05/27(Fri) 4:35:49 |
| あちらのお客さまからです [ 変装用の眼鏡なんてなかったから 前髪を崩して 声色を少し変えて見せれば ちなみにあちらと指した方向には 目を凝らしても誰もいない空間だ。 お酒を一緒に飲めなくとも 俺の好きなお酒を飲んでもらいたくて 一口分の「ギムレット」を ノアが一人になった頃に そっと差し出すのだ。 これは俺の奢りだから、 一口分許してくれよなマスター。 ] (15) 2022/05/27(Fri) 4:38:32 |
| ─ 残ったモノ ─ 結局残っちまったな [ 明けの時間が近付いた頃、 鍋の中の肉じゃがを見て >>0:207 思わず乾いた笑いが出る。 メニューに載せてないんだ、当たり前だ。 一口、口に含めば。 ] ……冷たい [ 冷めてしまった料理。 塩分が控えめの薄味で 最初は俺の仲間も良い味だと言って食べてくれた。 けれどいつしか俺の食べる量が増えて そして作る場所すら無くなってしまった。 ] (16) 2022/05/27(Fri) 4:45:23 |
| また食べるのは俺だけだけど 無駄にはしないから [ 旅をしていれば 食べきれなくて捨ててしまうこともあった。 それはとても悲しかったから この姿になってでも食べることができて 良かったと思う。 ]** (17) 2022/05/27(Fri) 4:45:36 |
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回想:僕たちの船が沈んだ理由
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[ウルティマ・トゥーレへと向かう途中に、
僕たちは救援信号を出している船を発見した。
近づいて双眼鏡を覗けば、
船の甲板にがりがりに瘦せ細って、
最早服とは言えないぼろぼろの布を纏った青年が、
膝を抱えているのが見えた。
勿論、僕たちは救助に向かった。
父さんをはじめとした乗組員たちが船を移り、
青年に気をとられている隙に、
僕たちの船に待機していた賊が侵入した。]
[初めに人質に取られたのは、僕より幼い乗客の少女。
そして少女を盾にして、人質は増えていった。
当然、僕もその中に含まれた。
「私たちはどうなってもいい。
どうか乗客の命だけは助けて欲しい」
最後まで懇願する父を無視して、
下卑た笑みを浮かべながら、父の首を撥ねる光景を、
僕の瞳はしっかりと映した。
それを皮切りに、大人の男性は乗組員・乗客を問わず、
一人残らず命を刈られた。
僕はもうこの時点で、
後生だからいっそ今すぐ僕も殺して欲しいと思ったよ。
けれど、地獄の宴は終わらなかった。]
[次に狙われたのは女性。
「クルーの皆さんが噂しているのを聞いたの。
貴方がとってもお料理上手だって。
プロのお料理も良いけれど、
貴方の作った料理も食べてみたいわ」
どこかで僕の境遇を知って、
優しく接してくれた乗客の奥さんが……。
「私は途中で下船して、恋人の元へ行くの。
二人暮らしが安定したら、結婚するわ。
ハネムーンで、再会できると良いわね」
幸せを約束されていた筈の、乗客のお姉さんが……。]
[他にも船に乗っていた花は一輪残らず、
海賊どもに踏み荒らされた。
奴らが何をしたのか、子供には分からない。
彼女たちが何をされたのか、子供には分からない。
でも、死んだ方がマシな事をされているだろうことは、
分かってしまった……。]
[こんな所に最高にイイ女など居ようものなら、
どんな酷い目に遭ったことか、子供の僕にも知れたこと。
既にこの世に存在しないものを盗むことは出来ない。
だから僕は心の底から、
母さんが生きていなくて良かったなどと、
罰当たりなこと思ったんだ。]
[希望と愛を乗せていた船から、
幸福は残らず奪われた。
最後に僕たちの船は油を撒かれて火をつけられ、
夕日みたいに沈んでいった。
僕たち女子供は、そのまま海賊のアジトへ拉致された。
最早暴れて抵抗する元気を持つ者も、
泣き叫ぶ元気のある者もいなかった。
アジトには他にも何処かで僕たちのように
拉致されてきたのであろう、
女性や子供たちが沢山いた。]
[そして今度は、僕たちを奴隷として売るために、
船で奴隷市場のある場所へと移動する。
不衛生な船室には、絶望に塗れた子供たちが、
ぎゅうぎゅうに犇めき合っていた。
一日に一度、魚に餌をやるように、
パンくずが僕たちの押し込められた
船室にばら撒かれる。
それをわれ先にと、奪い合いながら貪った。
最早、人としてまともに生きているとは、
到底言えない有様だった。]
[いつしか狭い船室内で、しきりに咳をする子供が出てきた。
人数はどんどん増えていき、死者も出始める。
海賊は子供がこと切れているのを確認すると、
面倒くさそうに船室の外へ運んでいった。
まともに葬ってくれるような連中じゃない。
船外へと子供たちの屍は投げ捨てられていたのだろう。
当然医者が診ることなどありえないから、
これは僕の推測だけれど、
あれは恐らく肺結核だったのだと思う。
生きているだけで満身創痍な子供たちに、
病は翼を開く様に軽やかに蔓延した。
当然僕も、同じ病気を患った。]
[高熱に、止まらない咳、血痰……。
最初はすし詰めだった船室内に、
ぽつりぽつりと穴が開いていく。
「助けて」と、声にならない叫びをあげた時、
僕の瞳が捉えたのは、幸せだったころの幻。
助けて欲しいのは、皆の方だったと思う。
僕は今の今まで、のうのうと生きてしまった。]
[高熱で痛む節々に無理をさせ伸ばした手は、
何も掴むことなく沈んでいった。
を叶えることもできず、
を守ることもできず、
に一矢報いることもできなかった。
悪寒で震える体に、熱に浮かされ燃える憎悪。]
[その最期は、さながら沈んでいった僕達の船の様だった。**]
| ─ 回想:恋しさと明日 ─ そうか あるんだな、恋しいモノ 故郷じゃないのなkら 人か、物か、思い出か [ ”故郷”そのものではなければ >>2:170 そこであった出来事や物 可能性として大きいのは人だろう。と推測して。 ] (69) 2022/05/28(Sat) 16:46:41 |
| 帰りたいと思うか? 今でも、その場所に 生きてるんだから 恋しいのなら 確かめに行ったら良い その足は飾り物か? 動ける足があるじゃねぇか [ なんて、今でも逃げ続けている俺が 言えたことではないのだけれど。 俺とは違う意志の強さが見えたから。 窓の外、霧で先は見えないけれど きっと彼女には何かが見えてるのだと思う。 ] (70) 2022/05/28(Sat) 16:46:48 |
| 人の足は 前に進むために在ると思う 後ろに戻るのだって 進む、って使うだろ? 戻るのだって前に進んでいるんだ 同じ道にはもう戻れない 同じ場所には帰れない だからこそ前に一歩踏み出せ 未来に進むためにな ** (71) 2022/05/28(Sat) 16:46:55 |
| ─ 回想:残す物と待ち人 ─ [ どうやら残された物に心当たりが あるような反応する彼女 >>2:225 死後の会える可能性を伝えれば 彼女はそのまま道を選択しそうだから
彼女の求めている人が 待ってるかもしれないという可能性は 告げなかった。 魂だけの存在には時の流れは無限だから 彼女が自分の生を納得して終わらせて その先に、彼女の願う人が待っている。
再会を俺は望むよ でもそれは”今”ではない。 ] (72) 2022/05/28(Sat) 16:47:07 |
| 見つかるものなら 誰でも良いと思ってた でもきっと 誰か知ってる奴が見つけてくれたら……と 思っていたのかもしれないな 俺はむしろ殺した奴 原因を作った奴らに 持っていてもらいたいね 懺悔の念でも 後悔でも 忘れないでいてくれる奴に (73) 2022/05/28(Sat) 16:47:14 |
| 見つかるものなら 誰でも良いと思ってた でもきっと 誰か知ってる奴が見つけてくれたら……と 思っていたのかもしれないな 俺はむしろ殺した奴 原因を作った奴らに 持っていてもらいたいね 懺悔の念でも 後悔でも 忘れないでいてくれる奴に (74) 2022/05/28(Sat) 16:47:14 |
| 死者ってさ 生者が冥福を祈る、その人数で 生きている時の罪を秤に掛ける なんて思われている国があるみたいだな 死んでからは審判ばかりらしいぜ 俺なら死んでもごめんだね 死んでんだけど 俺はさ、誰も冥福を祈ってくれるやつ いなかったし丁度良かったんだ 生者でいるときに縁のあるやつしか 出来ないことだからさ お嬢ちゃんは祈ってやってくれ 願いは届くよ (75) 2022/05/28(Sat) 16:53:05 |