203 三月うさぎの不思議なテーブル
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[で。]
え、なによぉ〜〜その反応。
なんかあるでしょぉ〜。
恥ずかしがり屋とか自分で言うなって。
[本当に話したくなさそうなら遠慮するが
単に照れているだけなら嫌よ嫌よもなんとやらで。
いいから聞かせろとつつき、
ぽつぽつと話し出すなら耳を傾けたことだろう。**]
[ 今でさえ甘やかすのが上手なのに、更に向上されては
大咲もいよいよ彼がいなくては駄目になってしまう。
「こうおねだりすれば多分応えてくれる」と分かっても
いざ実行するのは、案外勇気だっているもので。
そんな行動も"可愛い"と甘やかされるなら
今後の必殺技のレパートリーにも乞うご期待。なんて。
こうやってひとつひとつ、知っていく。
メンズ服を見ることの楽しみ
試着した姿を恋人へ見せることへの、少しのそわそわも。
逆に知られていくこともあるのだろう。
例えば、自覚していない反芻の癖、だとか。
]
……職業病ですっ
[ 料理人の顔になってる、と触れられれば
ライバル心を燃やしているのが途端に気恥ずかしい。
彼がうさぎ穴から出て行くことはないと思っていても、
それはそれとして
美味しい、と感じた店の味は知っておきたいものだ。
真似をするつもりも、味を寄せるつもりもない。
ただ"自分の料理"を磨くには不可欠の工程では、ある。
自分の味しか感じられなければ
そこからずっと成長出来ないままなのだから。 ]
[ 一説によれば、恋は病であるらしい。
相手のことを愛おしく想う感情と同時、
その人になら傷付けられても良いと思う矛盾。
相手の未来が幸福であることを祈るこころと、
隣にいるのが自分でなければ嫌だと厭う相反。
"クッキーを美味しいと言って食べてくれるだけで良い"
────……否、今はもう、"良かった"としか言えない。
あの時は、彼に他の想い人や恋人がいても
自分のお菓子を食べて貰えるだけで十分だと思っていた。
幸せプラス。ほんの少しの、なにか、でいられれば。
そんなちいさな欲は、恋を知って 愛を覚えて、
プラスじゃなくて 彼の心全てを占めたいに 変わり。 ]
[ 知らないところがあるなら、全部知りたい。
見せていない部分があるのなら
その秘密事の種を、自分の前でだけ、咲かせて欲しい。
──…きっとこれは、名前を付けるなら独占欲。
だから、単なる店員と客の間柄だった時は見れなかった
彼の欲へ喜んでしまうのだ。
たとえそれが、空腹の獣めいた欲の色でも。 ]
[ 電話口の向こうの母は、そんな欲とは縁遠そうだった。
母と子というよりも 人と人。
求めた愛の形と、差し出せる愛の形が当て嵌まらない。
──ただそれだけのこと。
一応は娘である自分にも、その価値観は理解出来ないが
やっぱり、彼のように怒りを抱くことはないままだ。 ]
ね、意味分かんないですよねぇ。
でもおかげで手放す決心、つきました。
ずっと。曖昧にしておくつもりだったんですけど。
どんな答えが来て、いったんは傷付くことになっても
それ以上に大事にしたい人が、今は隣にいるから。
案外傷付きもしなかったですよ。
こんな風に、私の代わりに怒ってくれるような、
やさしい恋人と生きていく方が良いって思えましたし。
[ へにゃ、と笑って、「頑張ったね」の肯定へ頷きを。
過去の清算も済み 後は、と口を開きかけて。 ]
…………そ、れ って、
[ 近いうちに。
最初の名乗りを、彼と、同じに。
意味を理解し、暫し固まった大咲の指へ、彼の手が触れる。
重なる体温。
彼が触れた場所、──永遠の愛を誓うところ。
今はまだ何にも飾られていない、互いの約束の指。
……後は、と考えていたことを先取りされてしまった。
言葉が出て来ないまま、ローテーブルの上
開かれたベルベットの箱の中、銀色を見つめて。 ]
[ 雨のように降り続ける彼の声が、ぴた、と止む。
見上げた顔が赤くなっていて、目線が落ちた。 ]
……あの、夜綿さん
[ 名前を呼ぶ。腕を動かし、合鍵を持っていない方の手で
彼の頬へそっと触れ、「こっちみて」と行動で促した。
目が合ったなら、微笑みを浮かべ。 ]
電話をね、して。縁を切った後、思ったんです
ずっと、家族が欲しかったけど。
家族がどんなものか、知りたかったけど。
でも、これから先私に家族が出来て。
その相手が夜綿さんだったら、って考えたらね
ちょっとだけ 変わったんです。
────私、夜綿さんと、家族を作っていきたいなって。
[ 教えて貰うのでもなく、与えて貰うわけでもなく。
一緒でしか作れない料理の味があるように
二人でしか作れない、家族、というものを。
──だから。 ]
ください。その、約束の証。
印の方も、お互いで選びたいです。
[ 前のめりなんかじゃ、全然なくて。
同じこと考えてたんですよってこと、この言葉で
貴方に伝わってはくれるでしょうか。 ]
夜綿さん。
私、夜綿さんのこともちゃんと、幸せにしたいです。
──それが私の幸せだから。
…………で、その、あの。
いっぱい最近考えて、気付いたことが、あって
最高に可愛い自分でデートした後がいいって
お泊りした時、言ったじゃないですか。
……でも、よく考えたら
デート服もメイクも大事なことには変わりないけど、
過去のこと内心で少しでも引きずってたら、
中身が結局かわいくないな、って、気付いたというか…
[ 顔が熱い。今度は自分の方が顔が赤い自信しかない。
つまりなにが言いたいかって、……その。 ]
……ケーキも、母親との縁にも、答え見つけて。
心から、夜綿さんと家族を作りたいって言えた、今の私が。
…………………最高に可愛い自分でいられてる、と
思ったりもしたりするんですけど ……どうでしょう……
[ なにが「どうでしょう」なのかはもう、
お願いだから察して欲しい。
これで通じなかったら私は今すぐ
電車へ飛び乗りに行く覚悟で、言ったので。* ]
寝起きも可愛くなっちゃうんだね。
早起きが得って、こういうことかなぁ。
[ 早起きとは、というハッシュタグが
付きそうではあるが。
なんにせよ、安心して休んでくれた
証を貰ったような気持ちになるし、
なにより、かわいい。
聞こえてはいるのかこくんと、
頷くように首を揺らして見せるから ]
もう少し寝る?
[ と聞いたけど、カップは無事
受け取られたので
寝起きで意識がふわふわとしていても、
起きるつもりはあるのだろう。
今朝もまた言葉の少ない事を
気にするつもりはないので、
自分も座り込む。 ]
[ 珈琲の香りと、
昼近く、穏やかなな日差し。
――の中、刺激的な姿の恋人。
誘われるには満点の状況だけど、
さすがに冗談、だよ。
だったんだよ? ]
転ばないでね
[ あからさまに、意識していますという
反応を返されるとは、思ってなかったんだよな。
洗面所へ逃げ込む君に転ばないで
と声を掛けて、一人分空いたベッドのスペースに
転がった。 ]
は〜〜〜〜………
[ 昨晩このベッドは、はじめて家主以外を
招いた。
甘えたいという割に、甘やかし上手な恋人は
昨晩も、ものの見事に自分を甘やかしてくれた。
嫌だとそう言われても、
拒まないでと縋っただろうに、
……じゃない、
と添えてくれたものだから。
自分の中に、こんな気持もあるのかと、
また一つ、君に教えてもらえたと思う。
目が覚めて、ひとりじゃない。
そんな幸せな気持ちは、穏やかな日和には
似合いの、やさしい色をしていた。* ]
―― ムール貝の日 ――
う〜ん。
[ 到着し、着席そうそうのため息は
何を食べようか、悩んでいるときよりも
かなり軽い声色。 ]
あ、そら豆は食べたいな
焼いたのしか食べたことないから
おいしい食べ方を知っていたら是非
[ この場所に仕事を持ち込むことは
ほとんどない、が。 ]
――どう見ても分が悪い賭けなんだよな
[ 今日ばかりは愚痴めいた言葉が飛び出して
来てしまった。
画面にはトークアプリのやり取り。
それを眺めながら、もう一度、唸った。* ]
| [胸の内にくすぶる、未だ迷いめいた想い――想うような迷いについて、すぐさまに見切りを付けられるわけではない、けれども。] ( 大丈夫。 私、まだ、ツユリさん、に、 「恋してます」なんて、言ってない。 ) [一度口を滑らせてしまえば変わってしまいかねない関係性も、今はまだ、目の前にある通りの「なんでもない日」。 「ツユリさん」と連絡先を交わす程の友達としても、「セロ」を応援するひとりのオーディエンスとしても、今の自分なら居られる、と。 その想いはもしかしたら、「大事な宝物」 >>3:476>>3:477を守ろうとする意志のようでも、あったのかもしれない。**] (69) 2023/03/14(Tue) 20:09:20 |
| (a19) 2023/03/14(Tue) 20:17:15 |
―― 先輩の惚気 ――
前から思ってたけど、先輩の俺への評価
ちょいちょいおかしくない?
[ どうせ恋愛経験豊富だとか、前にも
言っていたな。
そういうやつだよ、という視線
には、にっこりと。多分貴方はよく見ていた
表情で答えた。ゴチです、先輩。 ]
えぇ、ちっちゃい男だなって思うよきっと。
……葉月って知ってる?ここにも
よく来るんだけどさ。
ちょっとした切っ掛けで友達になって、
好きなやつ、だれだってしつこいって話したら
紹介しても良いって言うんだけどさ。
……疑ってるとか心配してるとかじゃなくて
葉月いいやつだし、話もうまいし
俺と話してる時より楽しそうにされたら
やだな、とかそんなとこ。
[ 先輩の話が途切れたタイミングで
聞きたいと言われれば、そんな話もしただろう。 ]
十分幸せだよ、今でも。
[ へにゃりと笑う先輩の指には
きらりと光る指輪がある。
よっぽど、嬉しかったんだ。良かったねと
もう一度言って、ビールを口に運んだのだが ]
なんかってそりゃま、あるけど
えぇ、シャイボーイなんで勘弁して……
っふ、ふふ
[ おっと、これは煙に巻くことは
できなさそうだと、判断したのもあるし、
自分で言っておきながら、似合わないにも
程があり笑ってしまったこともある。
それが少し、今宵の俺をお喋りに
させたようで、 ]
普段、面倒見良くて、クールなとこ
あるわりに、二人でいると
可愛いとこ とか。
……最近どんどん可愛くなって、
ほんと、参る……
それでいて、男前というか
格好いいとこもあるので
だいたいいつも負けてる感じ、ある
[ そんな話をぽつぽつとは、話し出したり
したかな。揃って惚気って字面に少し
笑いながら。* ]
[
せやな。
…とは、内心が分かるわけではないので口にはせずとも。
ずいずいと遠慮なく距離を詰めれば
彼の方もまたじっとこちらを見据えたまま。
室内にサクサクと互いがポッキーを齧る音だけが静かに響き。
そのままどちらも退くことなく―――
最終的にちゅ、と軽く唇が触れたかと思えば
大きく声をあげて彼が破願した。]
……ふっ、
[キスのドキドキどうこうよりも
もうおかしくなって、釣られてこちらも噴き出してしまって。]
負け嫌いはそっちもじゃんか!!
全然視線逸らさないしさあ……
ぜーーったいポッキーゲームってこういうのじゃない!!
[本来なんかもっと甘い雰囲気になるもんじゃないの!?
けらけら笑ってると彼が柔らかく抱きしめてきて
ぽすっとその腕の中に収まった。
それでもまだ笑い続けていたけれど。]
……… ん……っ
[囁きと共に耳元に唇の感触が落ちて
ドキッと心臓が高鳴り、ぴくりと肩が跳ねた。
思わず吐息を漏らしてしまえば
少し腕が緩められて、――
まるで吸い寄せられるように目を閉じて、再び唇が重なる。
さっきや外でした時よりも少し長い
唇の感触を確かに感じるキス。
チョコレートの甘い匂いがふわりと鼻を擽る。]
………私も、好き……だよ
瑛斗…… だいすき、……
[次に彼の顔を見た時には
すっかり自分の笑いは消えていて。
頬をほんのり上気させ、
とろりと熱に浮かされたような眼差しだっただろう。]
……… ん、 もっかい………
[どちらのだろう、早い鼓動を感じながら
唇が離れてもすぐにまた次をねだって。
甘えるように体を摺り寄せた。**]
[だってこんなの笑うしかないでしょ?
負けず嫌い2人して笑い合って。
抱き締めて。腕の力を緩めたら。
君が自然と瞼を閉じた。
引き寄せられるように、唇が重なる。
誰の目にも触れない、2人だけの空間。
唇を離すのが酷く惜しくて。
もっかい
君の声が聞こえたら。もうダメだった。
身を寄せてくる身体は柔らかで。
唇も、腕も背中も、触れるところ全部。
柔らかくて、甘い香りがする。
彼女が好むカクテルってこんな感じだろうか……]
[愛おしくて。離したくなくて。離れたく無くて。
俺は何時しか優しく微笑んでた。
多分に甘さを含んだ笑みで。]
玲羅。
…………ベッドに行かない?
[誘い方が直接的なのも、下手なのも。
目を瞑ってくれると嬉しいなって。小さく笑って。
これで彼女に笑われても。俺は全面降伏しますよ。
俺は負けず嫌いではあるけれど、君に勝てた事は無いから。
笑っても良いから。頷いてくれたら良いな。
俺がコンビニで何を買ったかなんて。
君は聞かなくても、分かってるでしょ?
俺達は1人と1人かもしれないけど。
2人でしか出来ない事
たくさんあるって、君が教えてくれた。**]
[彼女の傍で一番幸せになれるのは自分だという自負がある。
先に好きになって、想いが通じて、どんどん求めてしまうようになって。
自分でもそのスピードが恐ろしくなった、のが今。
よく考えたら彼女はまだ若く、
他の人間との「交際」がどんなものかすら
判断できる基準を持っていないだろう。
彼女を自分の重さの道ずれにして良いのか?
始まったばかりの恋の熱に浮かれた状態が過ぎたら
後悔させないか?
じわりと嫌な汗が背中に滲む。]
[『もう少し慎重に事を進めるべきじゃない?』
戒める自分の声が脳内に響く。]
[――救ってくれたのは、彼女の掌だった。
恥じらいで赤くなっていたと思っていた自分の頬が、
実は自省により冷たかったと知る。
温かさに導かれて目線を上げれば、
そこにあったのは困惑でも呆れでもなく。]