人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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「捕まってほしくなかった奴が捕まるとなあ」
「殺意が真っ先に沸いた」

「あと昨日言ったデート相手は件のヴィットーレだ。
 奴の店は燃えた」

俺が立ち去った、後に。成程ね、ぶっ飛ばしてやろうか。
どいつもこいつも勝手をする上司ばかりが周りに居る。

俺は疫病神か何かか……?
 あいつらのせいで裏口をたたかれるんだぞ、たまったもんじゃねえ


「そういうお嬢さんは今日もポーカーフェイスかい。
 ……例のガキ、あー……ニーノはどうだったんだ」

寝ている。

「…そおですかあ。」
「それは、…残念です」

「……」

直接お礼をいうなんてことは端からできる立場でもなかったけど。
あれは、おいしかったなあ。そんなことを、ぼんやり。

「ニーノくんは。あー。」
「…まあ、素直ないい子ですからあ。」
「疑いもしないで、
嵌められて
くれましたあ。」

「これで、懸念はひとつ晴れたんですけどね。」


小声で呟かれたのは、以前言っていた“個人的な理由”だ。
今となっては、かなり意味も薄れてしまったと女は感じていたが。

材料以外は全部自分が手作りをしたということは言わないでおこうと心に決めた。
店をやっていて飯が上手い人間に頼ったのは確かだったので。

「……あと俺たちの会話を盗聴している可能性があるやつらが知り合いだった。
 悪い事には使わんだろうが、そういう奴らだ。
 一人凄いやつが居てな……大分年下なのに発明……?
 作るもんがすごくてな。調べるのも得意のもんで、あれは大した奴だったよ。おっと、大した方でしたね、か」

「お疲れ様だな……。大きなトラブルが無いならよかった。
 気にしすぎるなよ、永遠に牢屋に入ってるわけじゃないんだ。
 こんなふざけた法案……いつかマシになるに決まってる」

そう思っていないとまた苛立って仕方なくなる。
自分のせいだ、とずっと頭の中で声がする。
直接的じゃなくても、俺が奪ってしまう、誰かのその場所を。
そう考えただけでまた足が動けなくなりそうだった。

盗聴の話を聞いた時、ほんの少しだけ女の顔色が変わった。
大した
。うん、そっか。
無意識に、左手を胸に抱く。まだ、大丈夫。

「…気には、しませんよお。」
「あたしも大義があって、これをしていますからあ」

最初から。
女のしようとしていることは、全部、道理を外れている。
地獄に堕ちても仕方ないかなあと思いながら、それでも。

「……お兄さんは」
「お金のため、ですかあ?」

金を支払い情報を買っている当人が訊ねることじゃないかもしれない。
だけど返答次第ではもう少し色をつけなければとも思っていた。
女の懐には、活動費だけはやけにたんまりあるわけだし。

「……?」

はて、何かそこまで引っかかることを言ったか。
違いは分かるのだが、やはり口を開かないので特に聞いてやることはなかった。

そんなものだ、深くつつくものでもない。

「大義か、そうだなあ。
 ……はっきり何のためとは誰にも言ったことはなかったが。
 俺がこの道楽をやってるのは金の為じゃない。
 この道楽をするために金が必要なんだ」

道具も、人も、技術も、手に入れる為に必要になるのは金。
自分が為せないことは金を使って他人の手を借りればいい。
この手を汚す必要なく、その手のエキスパートを雇えば確実だ。
だからこそ、できるだけ手にする金はまっとうなものでなければいけない。
裏金や盗みなどはもっての外、その辺りは単なるリスクケアだが。

「俺は情報真実を知るために金を集めている」

「知りたいことを知れるのは、安心するだろ」

彼は情報屋とは自分で言わない、これは道楽であると。
図書館で物を調べるのと同じ、ただ豪勢に広大な規模で金を湯水のように使って困難な情報まで調べているだけ。
全ては知識欲と、自分が
安心する為
に。

「まあ、いくら調べても結局人は信じられんけどな」

「俺はどうやったら傍にいる人間をまともに信じられるか悩んでるよ」

今日まで味方だった者が明日には裏切り者になっているかもしれない。
そんなことを言っているからいつまでたっても堂々巡りなのだ。



本当に知りたいものはどれほど金を積んでも調べられていない。
だからこの道楽は続いている。全くどうして、いつになればおわるのだろうか。

嵌められた手錠を見下ろした。

頬を打つ雨が冷たい。

────。

そうですか、と小さく。
少しの間、何ていえばいいのかなと浮かべて。

「……信じられないって、いうのは」
「裏切られたくないってことだと、思うんですよお」

「あたしは…見てのとおり、ですからあ」
「あたしのことを信じてみてくださいとか、そおいうかっこいいこと言えないんですけどお…」

小指のエナメル。マリーゴールドの色をした。
さてその色は黄色とは、この国に広く伝わる宗教の上で、どんな意味を持っているだろう。
…女は自分がそっち側の人間であると、忘れないよう刻んでいる。
そうしなければ忘れてしまいそうな危うさだって、とっくの昔に自覚済みだった。

「裏切られても、いいかなって」
「そう思える人だけ、あたしは信じてますよお。」
「…たくさん、良くしてもらったから」
「騙されてるなら、それでもいいかなってえ。」

ゆるやかにその口元を緩める。どことなく郷愁のかおりのする笑顔だ。
重ねてきた時と想いを全部、その胸中に忍ばせたような。

「……あたしの大義は」
「その人たちが守りたいものを、守ることですう」

「だから」

どんなに胸が痛くても。苦しくても。


「気には…しませんよお。」

“その人たち”が、
欠けて
しまっても。
笑うのだけは、得意だから。

――へらり、と女は笑いかけた。

もうこのレシートに、メッセージが載ることはないのだけれど。
ダニエラ・エーコのルーチンは、そう易々と変える訳にもいかなかった。

だから、こうして無意味な行為を、きっとこれからも繰り返す。
レシートをついちらりと見つめてしまう癖も、きっと、そうそう直らない。

『開けました』

『どうぞお気をつけて』
『今のうちに罠でも仕掛けておきましょうか』

冗句を交えて、もういちど連絡を一つ。
あとはなるようになればいい。

『ありがとう』
『ちょっと出掛けてたから、今から行く』

『今日は、家にいる?』

遅れて、メッセージがもう一つ。
文章を考えるのが苦手なのかもしれない。

『罠があるって分かってるなら』
『あなたを先に行かせればいいわね』

『仕掛けた人間を先に行かせるとは』
『策に溺れる策士はどちらになるでしょうね』

『いますよ。しばらくは』

──取調室にて、マフィアとの関わりを詰められた男は否定も肯定もしなかった。
どころか事情聴取の間、殆ど口を開かずに黙秘を続けるばかり。
何も語ろうとはしない態度に怒声を浴びせられても、その視線は己の手を拘束する手錠に向けるだけ。

室内にいる警官が異常に気付いたのは、そんな時間がしばらく過ぎた後のことだ。

ただ座っているだけの男の呼吸は常と比べれば荒く、頬は赤らんでいる。
雨が降る夜、濡れ鼠のままに連れてこられたその身体は随分と冷え切っていて。
些細なことで高熱を発症する奇病のトリガーとしては十分だった。

結果、この状態でまともに話を続けるのは不可能と判断され取調べは一時中断。
男は一度、檻の奥へと戻された。

#取調室

毛布一枚を渡されて冷たい床に頬を押し付けていると、なんだか懐かしい。
羽織るものがあるだけ、雨風を凌ぐ屋根があるだけ、あの頃より随分とマシだ。
蘇る記憶に苦しさは混じれど、暖かなものだって十分に思い出せる。
"
ねえさん
"と唇が動いてしまったのは、不調が呼ぶ甘えのせいだろうか。

誰を恨むつもりもない。
誰を憎むつもりもない。
馬鹿で愚かだって言われてもいい。
考えることも、迷うことも、信じることも、やめたくはない。

掠れた声で呟いた『だいじょうぶ』は、まるでおまじないみたいだった。

#牢獄

メッセージに返事はない。
代わりに暫くして、部屋の扉がノックされた。

開いているのだから勝手に入っても構いやしないのだろうけど。
家主がいるのであれば、一応の礼儀は示しておきたかった。

『着いた』

さまざまな可能性を考えて、屋外だから名乗るのもと思い 一言メッセージに代えた。

『律儀ですね』
『空いてますよ』
『罠は玄関にはありません』

此方は終始、真面目に返してはいるものの、
どこか適当さが滲んている文章であった。

気を遣わなくてもいい、そう示しているようで。

牢の中にいる。しかし、自分のいるべきはここではない。

「そう、なら安心してお邪魔出来るわね」

かちゃり。控えめな音を立てて、扉を開ける。
他人の家だからと見て回ったりはせず。物音でもする方へと向かって歩いていく。

「ごめんなさいね、テオ」
「どうしても一人でいる気になれなくて」

とはいえ、アジトに行く気にもなれなかったのだけれど。

「ああ、その通りだよ」
「だからあいつらのことを調べたくても調べられなかった」

直接口で聞きに行く馬鹿な真似もしたなあ、と。
お陰で望まない逮捕劇を起こすことにもなったわけだが。

貴方の爪に刻まれたマリーゴールドに目を細めた。
ここ数日たわいない雑談の端々から、貴方はこの行為を責め続けてるのだと気づく。
その色に含まれた意味に気づけずとも、信じられる一つ一つがあれば自ずと答えは導かれた。

「まあ俺のその信用は期間限定だがなあ。
 この事件が終われば直ぐに掌をかえすんじゃないかとか疑っちまう」

「だから態々調べんでも、んん……まあ」

一種の信頼であると、何か貴方に気付かされてしまったような気もする。
好いた人間が悪者だと知りたくないヘタレを無理矢理綺麗な話にしようとしていないか? と自問自答だ。

「げ、……っ、あー……」

あなたのその笑顔に頭を抱えそうになれば、
思わず腰を上げて立ち上がる。条件反射だった。

「……
あんたわかっててやってるんじゃないだろうな


何処かで聞いている
奴ら
には言い訳を用意しておこう。
頼むから俺を女にするのは止めてくれ。
女の笑顔がわからん男じゃ無かったんだ。


「お嬢さんの信じた奴らがどんな奴だろうと、
 こんなにいい娘に嘘をついて居たわけなんてないさ」

自分の事は棚上げをして安い言葉で励ましてやる。
小さな嘘も裏切りも貯まっていけば傷になることを誰よりも知っているから。

そこまで離れていない距離であるのに目の前まで行くのに随分足は重く感じた。

「悪者もなあ、はなから悪者のやつなんてそんなにいないんだ。
 そいつらと過ごした時間が最高だったから守りたいんだろ?
 もう、できてるじゃねえか。
 ちょっと過激だが、それぐらいの女の方が魅力的ってもんだ」


迷い迷って己の手を柔らかな金髪へとのせる。

「ダニエラ・エコーは裏切り者じゃない」

「俺は、そう信じている」

だから泣きそうな顔をするな、と同じような笑顔を返してやった。

これは男が逮捕されてすぐの話。
取調室で男は散々吼え立てた。そんな事実はないと声を荒げた。

自分はやっていない。
自分がするわけない。
皆が証言するはずだ。
そんなはずはないと。
イレネオ・デ・マリアが、
あの男が、
マフィアと手を組むなんて!


その必死さはまるで主に捨てられそうになった犬のようだった。
酷く叱られ遠くに置き去りにされようとする犬の姿に似ていた。
低く唸り、呻き、哀願することさえして見せた。
けれど当然、聞き入れられるはずなどなかった。
結局、男にかけられた嫌疑が晴れることはない。

牢獄に戻された男は、酷く憔悴していたという。

#取調室

さらに、これは男が逮捕されて暫くの話。

男は、牢から姿を消した。
男が収容された牢はもぬけの殻になった。
けれど、誰もそれを大事にはしなかった。
巡回の刑事も、問題なかったと報告した。
そこにはただ、しんとした牢だけがある。

#牢獄

さらに、さらに、その後の話。

十数分の空白の後、男は自ら牢に戻ってきた。
素直に牢に入り、鍵が閉まれば腰を下ろした。
その足取りは確かだった。瞳は前を見ていた。

イレネオ・デ・マリアの牢は、酷く静かだ。

#牢獄

「…好きなんですねえ、みなさんのことお」

裏切られたくないというのはそういうことだ。
同意を得られたことで女は確信してくすりと笑う。
あなたにとっても大事な人達なのだ。それを知れただけでも女には大きな収穫だった。

「ふふー。そおですかあ。」
「あたし、結構うさんくさいかなあって思ってたんですけどお」

聞かれなければ言わない、聞かれたとしても答えないつもりだったことの数を数える。
幾らでも不審に思える要素なんて、あっただろうに。

だけど、『捕まって欲しくない人』の話をした時くらいから、あなたのそれには気付いていたのかもしれない。
…少なくとも悪しくは思われていないこと。それくらいは、女にも。

急に立ち上がったあなたにはぱちくりと――することもなく、女はただその瞳でにこりと笑う。
何のことやらぴんと来てはいなくとも、そこには多分に母の影響も残されていた。
…女について調べなかったあなたが知るはずもないけれど、女の母は、娼婦だったから。

励ましの言葉には少しだけ浮かぶものがあった。
誰か
にとっても、いい娘でいられていただろうか。
使い勝手のいい駒だとしても構わなかったけれど、…そう思われていた方が、ずっと嬉しいのなんて当たり前だった。

そうする間に徐々に近寄るあなたに今度こそきょとりと目を瞬かせた。
だってまさか、思ってもいなかったから。
それも今『人を信じられない』といった男の口から。

「――あ」

その手が髪に触れた時。
多分誰かの手の平とも重なって。

それは本当に似ても似つかなかったと思う。
粗雑で下手くそなあの手とあなたの手では、
きっと昼と夜ほどにも違うSono differenti como la note e il giorno


だけどそれだけが理由じゃない。
見透かされた心地への動揺と、何より、何も知らないあなたからその言葉を貰えたことが。
――まるで本当に
認められた
みたいに思えてしまって、ゆらりと視界を歪ませた。
どっちつかずの蝙蝠が、居場所をひとつ認められてしまったように感じられた。

「……っ、ごめ、なさ……」

元からいろんなことが重なって溢れる寸前のグラスだった。
溢れ方も分からなくなってしまったから溢れず済んでいるだけだった。

しとりしとりと、雨粒のように頬を伝い落ちる。
急に泣いたって困らせるだろうに。今度は止め方の方がわからなかった。
慌てて眼鏡を取り払い涙を拭う。
それでも簡単には、止まってくれそうにない。

「ルーカス……ルチアーノ、さん?とは別の人?
 猫か酒場を探せば見かけられるって聞いたわ」

「……思った以上に警戒されているのね。
 わたしたち、こんなふわふわした夢の中なのに。
 欲しい情報がどうにも決め手に欠けるから、
 明日の夢にもう少し期待をかけてみてもいいかもね」

アペロールスピリッツを2つ念じて取り出してから、
片方を貴方の方のテーブルに置きなおす。

「有能だと思われても駄目だなんて、有能な人って大変なのね……私は一度も言われたことがないから、ちょっと羨ましいくらいだわ」

喋らない。

例え血が流れようと、爪が剥がれようとも、喋らなかった。