「んもぉ……常盤さんってばまた瑠璃っていう。

　　　るーるーでーすーっ。
　　　名前次間違ったら、お仕置きですよ？」


　　　後ろから抱きついた状態で
　　　名前を間違える彼の頬をつんつん。
　　　とはいえ、仕事をこなしているのは
　　　ずっとそばにいる秘書だから分かってる。
　　　労われと言われたなら、それも仕事。
　　　んふ、と笑って失礼しまーすと彼の椅子を引く。

[佐水(サミズ)　明日香(アスカ)
20歳。大学中退、無職。マンションで一人暮らし]


[私の小学校、中学校時代は
男の子にチビだの、ガキだの散々な悪口を受けて来た時代だ。
実際はそんなこと言って来るのは少数だったかも知れないけど
私にとっては子供時代の大きなストレスになった。

高校生は女子校で
男子が居なくなって晴々とした気持ちだったけど
身長は小さいままで、アンバランスに胸だけ成長してた。
友達に胸を触られることはしばしばで
触ると胸が大きくなるとか何とか。
それならあんたらの身長を分けてほしい。

転機が訪れたのは高校2年生。
コスプレした画像をSNSに軽い気持ちであげたらかなりバズった。
凄い嬉しかったけど、同時にうんざりするようなDMも多くきた。

その時にしたコスプレが
自分の身長に合うような、ちょっとロリキャラだったのだけど。
しかし1回バズった後は、そんなに大きな反響は得られなくなった。

何故かって、インターネットには美人が掃いて捨てるほど居るから。
運が良くなければ大した注目は集まらなかった。]

[そんな時にコメントで
ランドセル姿が見たいです、なんてものがあった。
何言ってんだ、と思ったけど思い出気分でちょっと背負って
適当な私服で写真を撮ったのをアップしてみた。

やっぱり大したインプレッションは稼げなかったんだけど
ダイレクトメッセージで、ギフト券が届いた。
しかも5万円も入ってた。当時の私には大金だ。
それからメッセージには、可愛かった、とだけ。

ゾゾっと気持ち悪さも感じたけど
同時にこんなお金も貰えるぐらい、私をよく見てもらえるのは
結構、悪く無い気分だった。]

[それからSNSの写真アップではなく
生放送の配信をするようになっていった。
どうせ話すネタもないし、30分程度。ただし毎日。
事前に応募した衣装で30分コメントと話すだけ。

50人ぐらい集まった時は感動したけど
一番嬉しかったのはやっぱり投げ銭が飛んできた時。
ちょろすぎ、と内心で笑いつつも
コメントは可愛い、好き、とかプラスのコメントばかりで
そういうのを見るのはかなり気持ちが浮ついた。

生放送でもちょこちょこお小遣いにはなるけど
本命はダイレクトメッセージか、個人サイトで
専用の写真、えっちいやつを買ってもらうこと。
お金の金額次第で胸を見せたり、スカートを捲ったりはしたし
もっと過激になってからは自慰姿の動画なんて。

これがとっても良いお小遣いになった。]

[高3ぐらいで所謂パパ活なんてものをしてみたけど
結構お金を渋る人が多いし
やたら生でしたがる奴も多いから直ぐにやめた。

代わりに生放送の視聴者なり
メッセージのやり取りをしてくれる
今では私のファンと言ってもいい奴らと
「ランダム」で相手をしてあげるというプレゼント企画を始めた。

ランダムは本当にランダムなので
私に幾ら貢いでくれたかは関係ない。
ただ相手が凄いお金持ちそうなら
特別なプランなんかをこっそり教えていたかも。

最低10万円からの生放送無しのプライベートデート。

あまりそのプランを人に教えた事は無いのだけど
もしかしたらお金持ちの、そういう趣味の人の間では
そんなプランの話が広まっていた、かもしれない。]*

[そんなこんなで
今回も1．2ヶ月に1回の頻度である
プレゼント企画では、テトラ、というファンの方が当選した。
名前自体は何度か見てるし、熱心なファンだった記憶があるけど
プレゼントに当たったのは初めてだった。

相手に当選のメッセージを送り
会う日付と、待ち合わせ場所を送った。
それに相手の指定があれば相手好みの服装も。

ちなみに場所はお金持ちの友人の別荘で
配信機材なんかも置いてあるから
プレゼントの生放送も出来るのだ。
肝心な所までは映さないけど、結構ギリギリまで流す。
生放送のカメラには常にマスク姿だけど、相手には素顔を見せる。じゃないと口で出来ないしね。]*