人狼物語 三日月国


32 【身内】降りて流るるにわか雨【R18】

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視点:


 
[しかも、だ。

 こんなに
 表情を強張らせ
 身も竦ませているのに
 彼が求めてくるのは静止では無かった。

 そのことに、また胸が抉られる。

 いつも、こうやって
 自分を抑え込んで
 受け入れて来たのだろうか。]



   いいよ、 キス…… 俺もしたい



[俺の倍、目がある癖に
 まるで彼のことが見えていない奴等と
 同じになるのは、真っ平ごめんだ。

 だから俺は、
 硬いまま無理やり咲かされたことのあるだろう
 痛ましい蕾から指を離し
 腰を引き寄せ、頭を掻き抱き、唇を寄せた。]
 

  
[燻る欲は……、苦しいが今はお預けだ。

 諦める訳じゃない。
 怯えたままの状態で放ってもおかない。
 善さを教えたいという気持ちも
 変わりはしないが
 それは、今じゃない。

 ゆっくりと時間を掛けて
 カラダだけじゃなく、心も解いて
 ヒューの方から
 望んでくれるようになったら
 その時は──── ]



   っ、  ちゅ……、ヒュー

          …ん、 っ、 あいしてる



[睦みたい気持ちは
 口付けに思い切りぶつけて
 貪った。
 深く、深く、激しく…絡み合わせて。]*
 

 


    ん…… っ



[彼の降りていた手が上がってきて
 頭と腰を掻き抱かれながら、唇が重なった。

 恋人になってすぐに交わした口づけより、激しい。
 置いていかれないよう、必死に応えた。

 求められていることが
 強く実感できるような……、
 そんな、情熱的なキスだった。]
 

 


    っあい してる……っ

    ん、 ちゅ……っ は、ぁ……っ



[何度愛を伝えたかわからなくなったが
 彼は先に進めようとはしなかった。

 ――ベッドに移動までしたのに?

 不思議に思いながら
 守衛が構内の見回りに動く時刻を迎え

 熱の燻る身体を清め、衣服を纏い直したか。]
 

 
[本当にこれで終わってよかったのか?
 疑問に思いつつ。]



    研究も個人的な関係も……よろしく



[別れ際にはそう伝えただろう。
 手を重ね、軽く握りながら。
 ……込めたのは簡単に振り解ける弱い力。]
 

 
[数いる恋人のうちのひとり。

 想いを分配しておけば
 彼の方から手を離されても
 神が突然彼を攫ってしまっても

 己が負う傷は浅く済む。

 支えを失ったばかりの心はそんな風に
 いつ来るとも知れぬW次Wに備えていたのだ。

 叩いて渡る、石の橋。
 ひとりだけに傾倒しないとゲッシュでも結んで。]
 

 
[彼が掛け替えの無い存在と気づく前の愚行だ。**]
 

  
[肌を合わせ
 愛を囁きあう度に

 喜びと
 痺れるような気持ち善さと
 溶け合えない もどかしさとが
 綯い交ぜになって
 体の中心に溜まっていく。 


 正直、キツい


 ……が、

 ヒューを蔑ろにした輩と
 同じにだけは決してなるまい、と
 耐えきった。]
 

 
[重ねてくれた手を
 きゅっと、力を込めて握り返して
 笑む。]



   ああ、勿論
   こちらこそ宜しく



[折れそうに細い指だ。

 今は服に覆われてしまったが、
 薄い腹
 細すぎる腰
 身長に比べると余りにも軽い体。

 それから、
 見目はとても美しいのに
 漉くと軋む髪も

 何処もかしこも、心配になる。]
 

 
[だから、手を離す前に問いかけた。]



   今日、この後
   何か予定とかあったりするかな?

   なければ、一緒に食事でもどうだろうか



[器の綻びの方は
 先程までの触れ合いで
 一時的に修復できているようだが、
 体の方のメンテナンスにも
 俺が一役買わせてもらえれば、有り難い。]
 

 
[連れて行きたいと考えているのは
 普段遣いしている飯屋だ。]



   きどった感じの店じゃなくて悪いんだが
   費用対効果は高い。
   体に良いものをバランスよく提供してくれて
   しかも、旨い。



[気に入ってくれて
 通うようになってくれれば…との
 目論み付きだったが、
 その成果はあまり芳しくなかったかもしれない。

 ひとりでは行かないと知れば
 誘う回数が増えるだけ、だったが。

 今日も、
 予定などで断られたとしても
 しっかりと後日の約束を取り付けてから別れ、
 そうでなければ
 連れ立って向かっただろう。]
 

 
[そして、
 恋人とする食事には
 いつもとは全く違う美味しさがあるのだ、と

 初めての気付きを
 また与えられてしまうことになったのだった。]*
 

【人】 准教授 ジェレミー

 
[余談だが────…

 この翌日から
 喫煙具専門店で
 パイプや葉を買い求める
 准教授の姿が見受けられるようになった。

 だが、
 職員にも学生にも
 吸っているところを見た者が居ない、とのことで
 微妙に不思議がられているようだ。]**
 
(0) 2020/06/15(Mon) 3:48:10
 


    ……え。…………ああ、
    


[誘われた時はきょとんとしてしまった。

 Na3g、K2.5g、Ca0.7g……、
 一日に必要な栄養素の量も
 効率良く必要量を摂れる食べ物が何かも
 そらですらすら言えるし
 摂らなくてはと日々考えているのだが
 身体の方が受け付けなかったのだ。
 囓るのにも疲れて途中で辞めてしまう自身の姿は
 何とも情けなくて見せられたものじゃなかった

 が。]
 

 
……ぐぅ。


 応えかねていると
 返事の代わりかのように
 間の抜けた音が腹から響いた。

 みるみるうちに、顔が赤くなる。

 食欲、というものが久々に復活したらしい。]
 

 
[懸念は消えた。
 恋人の普段遣いの店がどんな所か
 純粋に興味もあり。]



    ……是非。ご相伴にあずかる



[少し硬い言い方になったのは
 腹の虫を聴かせてしまった恥ずかしさゆえ。]