人狼物語 三日月国


225 秀才ガリレオと歳星の姫

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視点:




   論より証拠と重ねた手が
   もたらすものは小さな成功体験。

   力を抑えることを知ったエウロパの力で
   蝋燭は倒れず火だけが消えない。

   本当の成功とは呼べないかもしれないけれど
   こうした小さな成功の積み重ねの先に
   大きな成功は待っているというもの。


   ひとつ積み重ねるエウロパの傍らで
   ユスティもまた小さな成功を得ていた。





   「魔力は水と同じだ。
    水がふんだんに湧き出る泉もあれば
    ほんの少しの水しか得られない泉もある。」





   「そうだとしても
    オアシスになれないとしても
    水を汲む器を大きくすればいい。

         全部独りでやらなくたっていい。」





   とはいえエウロパから流れ出た魔力は
   ユスティ自身が生み出すものとは
   スケールがまるで違う。

   慣れない魔力を身体に馴染ませる
   その訓練をずっと続けたことで
   エウロパの魔力を受け止めることだけは
   自然に出来るようになるまで練り上げた。

   エウロパのことを受け入れた日から
   完成までほとんど時間がかからなかったのは
   この事が最後のピースだったのだと
   今になって気づくことになるなんて。





 
   理屈じゃなくてやってみればいい。
   ユスティのおかげで火だけが消えて
   失敗だったはずの制御が小さな成功へと変わる。

   自分一人では絶対にこの感覚を掴むことは出来ない。

   以前モモイ先生が言ってたのは
   ユスティのことだったんだ、って。
   今更納得してしまうんだ。


  



   
「汲む、器……。


       そんなこと、できるの……?」

  



   疑問はすぐに消えていく。
   見せられた掌は、傷一つついていない。
   多くの魔力を受け入れたはずなのに、
   魔力が入りきらずに身体が壊れることはなく。

   器を大きくするまでにどれほど努力をしたんだろう。
   私が努力を怠っている間に
   一人で、どれほど頑張ってきたんだろう。

  



   「出来る確証はなかったけど

         なんとか乗り越えられたよ。」





   出来るかどうかを考えるより先に
   身体が動いていたのだと

   努力家だけが持つ成功への異様な執着が
   皆が不可能と思うことさえ可能に変える。

   生半可にやってきたつもりはないと
   その自信もエウロパには伝わっただろうか。





   「そう。

      それなら寂しくもないでしょ?」





   いつかは自分の魔力を正しく操り
   誰が相手でも制御しなければならない。


   それでも乗り越えるために今、
   独りにならないことが必要なら
   これくらいでバチは当たらないはずだ。






   思い出が詰まった髪飾り。
   二人の過去を鮮明に語れる唯一の生き証人。

   だけど今度はいままで通りじゃだめで
   皆変わっていかなければならない。

   それでも変わらずにありたいという心は
   あの日から変わらず輝き続ける思い出に添えて

   過去と今を愛するように花に飾って捧げよう。