人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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視点:


【人】 花浅葱 エルヴィーノ

SNSで唐突に発信されたニュースは、瞬く間に広く拡散された。
発信者が何万ものフォロワーを抱えるインフルエンサーだからというのもあるが、その内容があまりにも衝撃的だったからだ。
拡散され、炎上し、その矛先はすぐに警察へ向かう。
今頃きっと、署の電話はなりっぱなしに違いない。

その状況をしかと見届けた僕は、直ぐに告発文を手にして署長代理の部屋へ移動する。
そこに前日約束した彼は居ない。
ずっとSNSに齧り付いていたから、彼が自首をしたことは……まだ知らない。
それでもともに来てくれた警官と、どさくさに紛れて逃げられぬよう、すぐに取り押さえることができる場所に陣取っていた。

逮捕令状?
そんなものは必要ない。……と、思っている。
自分が施行した法律をもって、今はまだその男を逮捕可能のはずだ。
証拠の証言もしっかりと抑えてあるから、取締法がなくなったとしても署長代理を勾留することは可能だろうし。
警察はそもそもがこういったスキャンダルを重く捉える組織だから、
罪はどうあれ、彼を署長代理に据えたままにはもう、出来ないはずだ。

(34) 2023/09/26(Tue) 15:00:45

【人】 花浅葱 エルヴィーノ



―――そうしてその日、銃声がひとつ、鳴った。



これはヴェスペッラ警察署長代理、ナルチーゾ・ノーノが
電光石火で逮捕されることになる少し前の出来事だ。
(35) 2023/09/26(Tue) 15:03:03

「ハハハ」

独房の中、腕を枕にベッドにごろんと寝転がる。
ぶらぶらと足が揺れて、天井を見る目がすうと細まった。

「やっと『プラン』が整った」

 

「……面倒なことの気配がする」

硬い布団に潜って丸くなる。
ああ、
恋人
が恋しいな、態とらしく呟いて眠ろうとした。
身体は休めておいたほうがいいと長年の勘が告げている。



「……」

「くっそ……ラウル!」

結局起き上がって一人の部下の名をよんだ。

とん。
ととん。とん。とん。

とん。────とん。

いつもの音。
いつもの音が響いている。
いつも通りの音だけが。

男は仕事中・・・だ。


#取調室

「……なるほどよくわかった。
 どうも今月、俺は運が向いてない」

SNSどころか物理的な音声となって署内を駆け巡る噂に
がああ、と頭を掻きむしる。拷問吏との会話を思い出して、
やっぱり俺は賭け事なんかしなくて正解だと思った。

――だから信用出来ないんだ、どいつもこいつも!

いつか描いた、出来すぎた未来をまた描く。
Inutile piangere sul latte versato.こぼした牛乳をどれだけ悔やんでも無駄だ
…それなら、自分には何が出来るだろう。

細い穴に糸を通す。通していく。
心だけは、もう決めていた。

叩き起され、お呼び出しを食らった後。

目的の場所へ向かいながら、
ふと、浮かんだ連絡先について首を傾ける。

"忘れ物"とされたあれは、
一体どこに繋がったというのだろうか。
どうせなら出頭前に確かめておくんだったな。

頭の中で数字をタップしていく。
勿論そんなことじゃああの先には繋がらないが、
確認出来る機会があるなら確認したいと呑気にも思う。

熱は引かない。痛みも変わらず残る。
しかし"隠すことは得意"なんだ。

そんな呑気さを抱えながら、外が晴れることを気長に待とう。

「…………虹、見えるといいな」

任せたよ、エルヴィーノ。
手伝いが出来なかった埋め合わせは、また、いずれ。

待っている。

二人で祭に行く許可を貰った。

そういう生き方をしてきた。

そういう生き方をする。

任された仕事はするかあぁ、と思いつつ。

お祭りの時に、端末を頂戴すると決めた。

柔らかい肉が好きだ。

看守たちが騒がしくしているのを聞きながら、
ようやくに包帯で固定された右手を天井に翳す。
天気予報は、どうやら当たりそうだ。

「……うん」


聞こえてきた名に心が波立てど、どこか頭の芯は冷えていて。
だから、大丈夫だ、と思った。
此処から出るときに全部が変わっていくとしても。

もう目を塞がないと決めている。


車のエンジンを掛け、シフトレバーを引き、
ハンドル片手にアクセルを踏む。

目的地はただひとつ。『家族』の顔を一番に見てやる為に。