224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】
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カンターミネ
もーいーのか、なんて言いながら受け取り、スウェットの袂にひょいと隠す。
「何ィ? …こいつは一本だな。
どちらにせよ、ご祝儀は覚悟しておけよ。
なんかもう、すごいぞ。びっくりするくらい届けてやろう」
額をぺちんと叩いた後、楽しそうに笑っている。
物理的にびっくりする量が届きそうな手ぶりもしていた。冗談かどうかこちらもまるで分らない。
「おう、そう長くはねえさ。
これは祈りというか…あれだな、予言だな。
当たったら褒めてくれ」
偉そうに今はかけていない黒眼鏡をかちゃりとあげる仕草をしてから、
「飯くって寝てりゃ治る。徹夜すんなよ」
体が頑丈な奴の理論を言いながら、歩いていく背中に手を振る。
──いつも通り、アレッサンドロは去っていく者を引き止めることはせず、ただただ静かに見送っていた。
#収容所
アリーチェ
「さよけ。
まぁ、あんたの方法を否定するつもりはねえがさ。
相手によっちゃこうなったりもするから、
今度からは気をつけな。
ノッテも警察も、多分色々変わる。どうなるかはわからねえ」
「マフィアに話の効く奴をつくってよ、
とにかくそいつを窓口にしたほうが話がスムーズだから──……」
──止めたりするそぶりはない。
ただもっとうまくやんな、とあれこれ挙げる。
そうしながらあなたの隣に無遠慮に腰を下ろすと、
「ハハハ、若いやつ同士で話したいさ、ああいう奴等は。
そして"ロクな話をしない"といやあ、
三日月島ではこのアレッサンドロのミドルネームだ」
…なんていって、あなたの隣で鼻歌などを奏でるだろう。
#収容所
黒眼鏡
「……難しいですね、本当にこの手の仕事は。
自分一人の身であるなら悩む必要はないけれど今回のように
他にも被害が波及することを考えると、動きが鈍って」
少なくとも教会にまで捜索の手が及んでるとは聞かないから、
今回はひとまず助かったのかもしれないけど、次はわからない。
「なるほど、潜入にこだわらずマフィアに話の効く人を……
……怒らないんですね。そんなやり方してるからだ、とか、
迷惑かけられるのはこっちだ、みたいな」
貴方が挙げる提案を真剣な眼差しで素直に聴き入って。
ふと思いついた疑問は普段警察内で言われている事なのだろう。
「……?えっ、私が若くないみたいじゃないですかぁ……
でもいつも、ためになる話しかして貰ってないような……」
#収容所
アリーチェ
「ダメだぞう、自分は大事にしないと。
自分のやりたいことは、
自分しかやってくれねえんだから」
──自分の身を第一に、とかそういう話ではないようだ。
「マフィアに一番詳しいのはマフィアだからな。
それはそれで、信頼できる相手を見つけないといけねえんだが」
そして怒らないのかと言われれば、
にかー、と大仰な――うさんくさい――笑みを浮かべて。
「しょうがねえんじゃねえの。
あんたがやりたいことがそれなら。
自分がやりてえこと以外に、自分が大事にすることなんてねえ。
だったらそれがどうやればできるのか、考えなきゃいけねえよな」
「うちの部下は迷惑がってたが、マ、それも仕事だしな」
本人はどちらかといえば面白そうに。
「イヤあんたは若いけど、ほら……
なんか変わってるからな。
面白え女だから。
俺の話をためにすると、今度こそ共犯者になっちまうぞ」
#収容所
| 街中を歩きながら端末を引っぱり出し、アジトにいるであろう幾人かに向けて連絡をする。 道中に屋台に寄ってアランチーニを買い、はふはふと食べながら。 近況を上に報告するなんていつも通りの日常だ。なにもおかしくない。 『昨日から付けられてるみたいです 今日はアジトに顔を出せなさそうです』 「ううん。 この際温泉でも行こうかなあ…… 見つかったらサボってるって思われないかなあ……」 観光客に紛れられると思って、とか。 街がこのザマじゃあ言い訳っぽいなあ。 次はどこへ行こう。 油の染みた包み紙をゴミ箱に放り投げて、またため息をついた。 #街中 (26) 2023/09/24(Sun) 17:28:31 |
壁際にいた男はふい、と顔ごと逸らし。
仁王立ちのようになっていた足を緩め、一歩踏み出した。
向かう先は収容所の出入り口。
おそらくはそれなりに出入りの制限されているだろうそこへ、
迷いなく。止められるとは思っていないような自然な動作で。
そして、実際その通り。
男は立っていた警官と一言、二言言葉を交わし、そのまま場を後にした。
#収容所
黒眼鏡
「ど〜〜〜せちっちぇよオレは〜〜〜」
今からたくさん食べても貴方程にはなれないだろう。
終ぞ追いつくことはなかった悲しき現実だ。
払い除けないので座るまでは撫でまわされていたわけだが。
「ッぃ、ったい!
疑ってません!手に響く!」
肩を勢いよく叩かれきゃんと吠える。でもそこからすぐに腕の中だ。
すっぽり収まってしまうから、ああ本当に追いつくことは無かったなと再度実感させられる。
瞼を伏せた。
「……会った、泣かせちゃった。
あんな顔させたくなかったのに」
「にいさんなら泣かせなかったんだろうな」
燻る後悔ひとつ、貴方なら牢の中からでも安心させられただろうと。
#収容所
カンターミネ
「だ〜れがおちびちゃんだ!」
「ちょっと心配してあげたのに……」
口に出せてなかったから無いのと同じだったかもね。
身長、ちょっと気にしてるからつい吠えてしまった。
#収容所
黒眼鏡
「信頼、は……」
一人、圧倒的な信頼を抱いている人がいるけれども、
収容所であるこの場で名前を出すのは気が引けて、
それじゃあ後は誰だろうかと悩むと、
視線は自然と吸い込まれるように貴方の顔の方に。
「そう。それはその通りなんですけど、その……
なんだか凄くその、尊重して貰っている気がして。
自分がやりたい事をやってるからなんでしょうか?」
迷惑がっていた、の台詞には、「ですよね……」と
笑えない笑いが思わず零れ落ちた。今度差し入れでも代わりにして貰おうかとどこかズレた考えをする。
「変わってる、面白い女……これ、褒められています?
でもためになる話は誰が話し手でも変わりませんから。
こういった話は受け取る側の問題だと思うので」
こんな酷い人だから話も全て聞かない、意味がないと言うのは女の理念に反するらしく、それで共犯者扱いを受けるのならそれはそれで仕方ない。と言った素振りだ。
#収容所
ニーノ
「ちょっとじゃなくてしっかり心配しろ。
こっちは拷問受けた乙女だぞ」
乙女らしいので、もっと心配しろと文句をつけた。
こっちも大概身長は低いんだけども。
「あー痛ぇ。俺は休憩するから、
そこでおにーちゃんと話してな〜」
ひらひら、手を振って歩いていく。
#収容所
| 入っていた連絡に舌打ち一つ。 やっぱり車で刑務所にでも突っ込んでやろうか。 今はできない最終手段、 もとい単なる憂さ晴らしをふと思い返しながら。 夕暮れの街を行く。 ペネロペ・ベリーニは知っている。 今この街にいつも通りなんて無い事を。 そして、それはいつかは終わるという事を。 今はいつも通りを装うのが、きっと大嘘吐きの役目だろう。 #街中 (27) 2023/09/24(Sun) 18:55:46 |
| (a16) 2023/09/24(Sun) 19:21:42 |
薄闇の街を行く。
本当は不安で仕方ない。
自称博愛主義は誰が逮捕されるか気が気じゃない。
逮捕された後どうしているかだって心配で、
仮に自分が逮捕された後の事だって気が気じゃない。
自分の素顔もわからないけれど、この不安は確かに自分のもので。
そんな事でわからなくたっていいのに、なんて思う。
きっと立場と肩書がなくなってしまえば、
あの連絡ひとつにだって取り乱してしまえたのだろう。
立場と肩書とうわべの顔、それだけで支えられている。
ペネロペ・ベリーニは知っている。
自分がそれほど強い人間ではない事を。
| (a17) 2023/09/24(Sun) 19:38:46 |
「は〜ぁあぁ〜〜〜」
でっかいためいきを落とす。
「帰りてぇ〜……風呂入りてえ〜……
情報聞きてぇ〜………………」
仕事中毒な女は午後からの検診に備えて
大人しくしている。やりあった結果受けた傷、
そういうもののちゃんとした処置をやっと受けられるのだ。
その診断の結果。
右拳咬傷、右前腕にヒビ、肋骨二本にヒビ、
鼻軟骨骨折、後頭部軽度切傷、他内出血多数。
まあ、相手よりは軽傷だけど、それなりにボロボロで。
「……え、何その棒。あっまさかあれ?鼻の骨折?
いや知ってるよ待て待て待てそれ突っ込むんだろ?
突っ込んでぐりぐりやって骨の位置整えるんだろ?
待てってそんなん絶対痛いじゃんいやうんわかるよ
今の内にやらないと不味いってのはわかるが待っ」
それらの治療の結果、尋問中より大きな歌が響いた、とか。
| >>23 >>24 >>25 ダニエラ 君はやっぱりどこか、自分によく似ていると思った。 どんな理由であれ【A.C.A】に所属していたんだ。 地獄にひとりで落ちてしまえばいい、落ちてしまいたい。 そう思う心はまだ、ずっと、胸の内にあるまま。 だと言うのに、お迎えがなかなか来ないから こんなに留守番して、ここまで残ってしまった。 まぁ 最後じゃなきゃ、未来の話はきっとなかった。 誰かとの未来に笑う自分が、許せなかったから。 別に、今も許せているわけじゃあないが──。 あの物好き達の顔を思い浮かべてまたため息が零れかけた。 多分、惜しいと口にしたのが自分の敗因だった。 案外、責められるよりも責められない方が苦しむらしい。 暫くはそこに身を下ろして、生きていこうと思う。 勿論、石や罵詈雑言も歓迎しているよ。 マゾヒストじゃないけどね。 #specchio▼ (28) 2023/09/24(Sun) 20:18:57 |
| >>23 >>24 >>25 >>28 ダニエラ 「…あぁ、最後だよ。本当の、本当にね」 繰り返すのは、嘘じゃないよともう一度伝えたくて。 君の本当の心までは理解出来ないが、 そのひとつの事実に、男はひとつ安堵する。 もしもまだ心配なら二人の名を伝えようかとも考えたが、 問題なさそうなので浮かべた顔に頭を振ってかき消した。 「………ありがとう」 こんな色気のない口説き文句で、 落とせるとは考えていないし思いもしない。 それでも、真っ直ぐに伝えることが今出来る全てだったから、 君が誘いに乗ってくれたその事実にまた安堵して、 強ばっていた肩の力を抜いた。 ──瞬間、意識が一瞬点滅する。 まだ全てが終わった訳ではないというのに、 どうやら力を抜きすぎたらしい。 再び君の様子を確認すれば、既に君は立ち上がって。 #specchio▼ (29) 2023/09/24(Sun) 20:19:55 |
| >>23 >>24 >>25 >>28 >>29 ダニエラ …まずい。意識が飛んでも何を言いたいかは大体分かる。 「…………はは」 分かるのだが、まずは笑って誤魔化そうとする。 誤魔化す必要はないが、感じた圧から逃げたくなったせいで。 体を逸らして少しだけ距離を取り、悪足掻きをする。 「……いや、えっと。あー………はい、そうだね。 それについては、うん……俺も諦めるとするよ………」 そのまま少しだけ悪足掻きを続けようとするが、 流石に君が諦めたのに、諦めないのはどうかと思った。 病院に行ったら長めに拘束されそうだが──。 「…病院へのデートも付き合ってくれるかい?」 仕方がない。医者に怒られるよりも君の方が恐いんだ。 デートの前にデートに誘って、 君の時間を長めに頂戴するとしよう。 熱の本当の理由を向かう途中で明かそうか。 出来れば、怒らないでいてくれると助かるよ。
…あぁ、そうだ。語るついでに言いたいことがもうひとつあった。 多分、辿り着くまでに時間はまだあるだろうから。 #specchio (30) 2023/09/24(Sun) 20:20:49 |
| (a18) 2023/09/24(Sun) 20:21:15 |
| (a19) 2023/09/24(Sun) 20:21:22 |
| (a20) 2023/09/24(Sun) 20:21:33 |
| (a21) 2023/09/24(Sun) 20:21:42 |
| (a22) 2023/09/24(Sun) 20:22:30 |
| (a23) 2023/09/24(Sun) 20:22:53 |
そういえば。
女はこの日、勤務中、このアジトに1人だけ人間を招いた。
部屋の隅に置かれたボストンバッグを預け、
自分のことを何一つ告げぬまま
、2人は別れ、今に至る。
結果として、その後のリヴィオ・アリオストとの対面を思えば、正しい判断だったのだろう。
女が不在の今も、この一室の明かりはついたまま。
デスクの上には、女がもらった大切な贈り物たちが並んでいた。
世界がそうでなかろうとも、本日も
#バー:アマラント
はいつも通り。
いや、正しくはそうとは言えないのだが。
何かの揺れがない限り、今日のこの店に
客は来ない。
酒場でリンゴジュースを頼む物好きの常連も、
日替わりメニューから気になった品を頼む一見さんだって。
そういう日だと知っている。
| マフィアを幇助する目的で、 【A.C.A】のメンバーを探り盗聴器を仕掛けた 出頭し、そのように己の罪を告白した女が逮捕された。 女もまた 波魔であったために、余罪は多いとされ尋問の手配がとられることとなる。 それを待つまでの暫しの時間、檻の中での待機を命じられた女は落ち着いた様子だった。 ただ痛いだけならいくらでも我慢してやれる自信はあったけれど、 爪を剥がれるのは少し嫌だなと小指の爪を撫でていた。 (L4) 2023/09/24(Sun) 22:23:53 公開: 2023/09/24(Sun) 22:30:00 |
「……あの美人さんが?」
本当にダニエラという名前だったのか、と。
女警官からたった今入ってきた囚人の名前を聞く。
「しかし余計なことをして美人の親衛隊に目をつけられると厄介だな。
それに特に俺に会いたいわけでも……」
「
あるか? 俺は顔がいいからな
」
男は誰かに叩かれ殴られた頬を腫らしながら神妙に考え込んだ。
しばらくして、一つの牢屋に向かって歩いていった。
ニーノ
「ちっちぇえならちっちぇでやりようはあるからな。
背が低いのが好きな女もいる、
お前はツラもいい。大丈夫だ」
な、と。
あなたがどれだけ暴れようと、しっかりと腕の中に収めたままで。
「女を泣かせたら、男として一人前だ」
「……で、泣かせたら、男は絶対女に勝てねえ。
だがそれも、それでこそ男ってもんだから、
つまり男は男にならねえか、女に勝てねえかの二択になるわけだな」
「俺だってたあくさん泣かせてきたし、
これからも多分泣かすさあ」
かいかぶりすぎ、と額を小突く。
「特にフィオがな、あいつ泣かすと怖えから。
お前、俺の代わりにちゃあんと泣き止ませといてくれよ」
#収容所
アリーチェ
「まぁマフィアなんか信頼できねえと思うが、
人格的にじゃなくてもいい。
金でも脅しでも肉体関係でも、なにかしら関係性があるだけで違うもんだからな。
うまく使えってことで…」
顔を見られていることに気付いて、ぱちぱちと瞬き。
…すぐに、片目を閉じる不器用なウインク。
「そうだな。自分のやりたいようにする女が好みでね。
それと若者を応援するのが趣味だ。こっちも趣味と実益を兼ねてるから、Win-Winだな」
部下については気にするなよ、とは──まさか差し入れ持ってくるとは思っていないが――言いつつ。
「当然褒めてるよ、あんたみたいなのは中々いねえから、おもしれえわ。
こんな場所じゃなかったら、珈琲のみに来いっていいたいとこなんだがな」
「ハァ、なんだかな、しっかりしてるね。
俺は嫌な相手の言葉は、それが100点満点の言葉だろうと素直に聞きたくないが。
……まぁあんたが変に絡まれて、迷惑かけちまうのもよくはねえ。
俺の方でちょっとは配慮しようとは思うけど」
とはいいながら、隣に座ったまま。
「まあ、しばらくはいいか。
なあ、……アレどうした?
あれこそ迷惑かけたかもしれんって今思って」
……四角い形をかたどる手ぶり。アタッシュケースだろうか。
#収容所
| ダニエラとの 病院での診察の後、 男もまた出頭し己の罪を告白する。 様子の可笑しい人間で、職務態度も良いとは言えないが、 渡された仕事をきっちり熟す点においては知る人ぞ知る。 勿論、仕事を遣り遂げるのは当たり前のことではあるが、 その速度は人並み以上のものであった。 さて、そんな男の罪は何かと言うと、 どうやら押収品として保管される前のものを 持ち出したらしいが……直接的に行ったのは、 同部署に所属する警部補の一人だと語っている。 実際、やり取りの証拠となる音声が録音された ボイスレコーダーを所持していたことや、 リヴィオ・アリオストによる証言から その警部補へも詳しい事情を確認する運びとなったらしい。 そうして肝心のリヴィオ・アリオストもまた、 詳しい事情の確認が必要となるため、 ダニエラ・エーコと共に檻の中での待機を命じられていた。 (L5) 2023/09/25(Mon) 2:36:15 公開: 2023/09/25(Mon) 2:40:00 |
| 檻の中での男は横になり、動く様子がない。 一見そのまま死んでしまったのではないか、 そう思うほどに微動だにしなかった。 しかしそれもそのはず。 限界を超えた体はすべきことを成し遂げたことで、 電池切れのロボットのようにスイッチオフ状態。 出来ればそのまま起こさないで欲しいと 意識を落とす前に考えはしたものの、 そう上手くいくはずもないと理解していた。 せめてそうなるまでは休息していたい。 それが今の男の願いだ。 何かあった時の世話は 彼 に任せた。 約束通り会いに来たんだ。 それくらいのことは任せて許されるだろう。
増えた仕事の見返りってやつだ。 #収容所 (L6) 2023/09/25(Mon) 2:38:21 公開: 2023/09/25(Mon) 2:45:00 |
一人の放蕩息子が檻の中に入れられた理由は、
だ。
その夜、ルチアーノ・ガッティ・マンチーニは
彼を捕まえたリヴィオ・アリオストとそれはもう仲良く歓談しながら警察に出頭していた。
そのあと知人の女性警官にマフィアであった事を泣かれ、
平手打ちをされ殴られ警察沙汰になりかけたが其処は既に牢屋であったため、
大人しく檻の中に入って何もしなくていい時間を怠惰に過ごすことになる。
因みに男は予め警察に大量の金を握らせて、その日一日だけは
別の女性警官を連れながら比較的自由に牢の廊下を歩き回っていたらしい。
一番の罪状はここであったであろうが、そんな事実は忙しない日々と闇の中に隠されていくのだ。
リヴィオ
男は亡骸のような友人らしき者の前でしゃがみ込んで、暫く観察をしていた。
「お疲れさん」
その頭に手を置いて離せば、緩慢な動きで立ち上がって何処かへ立ち去った。
自分も同じように眠っていたいのだが、これからどれぐらいの時間ここで過ごすのかわからない。
牢獄の中ですら自由に動けるわけもないから、もう少しだけ。
熱は収まったのだろうか、水は多めに頼んでおいてやろう。
あと胃に優しい食事だったか? スープでも構わないか。
劣悪な休暇を少しはいいものに変えて満喫してくれ。
さて、明日からはゆっくり寝られるだろうか。
#収容所
フィオレ
「笑わせてくれる。
本当に静かに咲く花ならどれだけ話しかけようと、
そっちから茎をのばしてくることはないだろうに」
ここから先はどこまで行っても言い合いだ。
なんなら、最初の時点でもう己が言っていたはずだ。よっぽどろくでもない相性≠ネのだ、と。
いよいよもってもう認めざるを得ないのだろう。
「……そうだな」
だからその都合の良い言葉も、ほんの一部分だけ。
ほんの端っこのところだけ認めてやらないでもない。
これは毒気にあてられたのではなく、
皿まで食らってやるほうに舵を切っただけの話。
元より枯れてくれるなと思っていたのはこちら側なのだから。
「あんたを特別に危険視しているのには違いない」
そうしてまた線を引き直す。
危険だから、何をしでかすか分からないから、
それはただ遠ざける以外にも道はあるのだと思って。
「見ていろ。何かしでかしたら迷わず捕まえてやる。
法の導きがなくても、その力は俺にはあるのだからな」
もうじき収容された被疑者の自由時間も終わりの頃、
人も疎になりつつある頃、ふらついた足取りが隅を目指す。
腫れ物のように誰も声をかけない男は、何かの延長線のように出し抜けに声をかけた。
「……お前葉巻持ち込んでやしてねえか」
#収容所
| >>+55 テオ 「花にも蔦があるばっかりに、見誤ったわね?」 可憐な花も、絡めとる蔦も、侵さんとする毒も。迂闊にふれれば傷付ける棘も持っている。 そんな花を相手にした時にはもう手遅れだったのかも。 あなたが突き放そうとするたびに、強固になるものだから。 やはり、どうしたってろくでもない。 「危険な花こそ美しく見えるというものね」 食べさしのサンドを揺らしながら。 満足気に笑ってみせている。内容がどうあれ、特別視されるのは嬉しいものなのだ。 枯葉剤をまかれたって枯れてなんかやらないつもりだ。 「逮捕されてるのによくそんなこと言えるわねえ」 「でも、そうね。 テオに捕まえられるのなら、それはそれで」 良いかもしれないわね。なんて。 嫌な気がしないどころか、楽しげに笑ってみせるのだ。 (31) 2023/09/25(Mon) 9:38:00 |
| 「うお〜、こんな人少ないことあるんだ。 ラッキー?」 こうなればヤケだの思いで有言実行、男は温泉にいた。 白くもくもくと湯煙が立ち込める中、いつもは観光客でごった返すここにも遠くに人がまばらに見えるのみ。 そこらで売っていた水着に着替え浅い湯に足を浸ける。 丸腰になることが躊躇われたのか、背後に感じる視線は遠い。 「でもまあ、低温調理されるわけにもいかないし」 数時間はのんびりとしていてもおかしくないだろう。 これはただの休日、平穏な日常だった。 #温泉 (32) 2023/09/25(Mon) 10:02:57 |