人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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「……ん”ぁ」「ぁに……何?」

早朝のコール音。
寝起きは良からずとも無理やり起きる事には慣れている。
また何か誰かの手伝いの依頼だろうか……とベッドサイドに置いたスマートフォンを手に取り画面を見れば、なかなか見ない表示がそこにあった。
訝しむ一瞬で受話ボタンを押すのが遅れたが、無視するわけにもいかないと通話に応じ、

「あいもしもし……
あ?


「フレッド!? 何お前ムショ出てたの!?」

……無事に一気に目が覚めた。
寝転がったまま電話に出たのに、
飛び起きたみたいに上体を起こす。
思わず問う声は早朝に出すにはやや大きかった。

『声でけえ〜』

電話口では貴方の大声に何やら笑っているらしい声。

『刑務所出たよ、ついでに家無し子になった』
『いや、今はそれいいんだ、あの、その』
『やっぱり困っちゃって……ええと……』

よくはなかったが、家が無いのは最初に戻っただけなので。
あまり深刻に捉えていなかった、今の一番の問題は別。
無期限、回数無制限、いつでも言っていい。
に、甘える最初がこれなのもどうかと思うが。

『ぁの〜、…………あのさぁ……』
『……よくないとは思うんだけど……』


よくないなあと思っているから声はちいさくなる。
犯罪だよなあ、わかってるんだけど。

『………………こ、』
『…………戸籍って……お金で、買えるかな……?』


身分を証明するものがないと、何をするにしても困る。
まだはっきりと貴方の素性を聞いたわけではないけれど。
想像がついている弟は、よくない頼り方をしているところだ。

【人】 路地の花 フィオレ

>>56 ロメオ

「涙は安売りしてやらないんだから」

少しの間そうしていれば、調子も戻ってきたのか軽口も飛び出して。
あなたの胸から顔を離せば、笑みを浮かべるくらいの余裕もあるようだった。

「やってやったんだから。私」


「ね、何でもしてくれるなら」
「何か美味しいものでも買って帰りましょ、あの部屋でお疲れ様会したいわ」

みんなも早く落ち着いたらいいんだけどね。
解放されたばかりであれば、なかなかそうもいかないだろうけれど。

#BlackAndWhiteMovie
(77) 2023/09/29(Fri) 14:13:14
「どこからそんな自信が出てくるんだか」

なんて呆れたように言いながら。顔は穏やかな笑みを浮かべて。
あとで整理するものがあれば手伝いくらいはするわよ、と続けて。
あなたが部屋のものにあまり触れられたくなければ、1人の時に任せるだろうが。

「意外と余裕…があるわけじゃ、ないんでしょうね。動ける人はとんでもなく忙しくしてそうだもの」

テーブルにグラスも並べて。
なんでも良さそうだったから、白ワインを注ぐ。辛口で食事向き。

「私はこう見えて気遣い屋さんだけど」
「そう。まあ無理に見せてとは言わないわよ、その手に関してはね」

他はまあ、追々。
とりあえずは食事が先決だ。

「乾杯でもする?」

カンターミネは、口にする。「エリー、」その名前を呼ぶ時は、いつだって。
(a16) 2023/09/29(Fri) 17:44:26

アリーチェは、両手を顔で覆ってもだもだした。
(a17) 2023/09/29(Fri) 18:14:37

【人】 corposant ロメオ

>>77 フィオレ

「……ハハ。それでいい。女の涙は宝石と同じだからな」

下を向けば貴女と自然に目が合う。
口の端を吊り上げて、悪戯小僧みたいな笑い方をした。

Ottimo lavoroよくできました!」


「美味しいもの? いーよ、何買う?
 つかなんでも買うか……せっかくなんだし奢ってやるよ」

運転席に戻れば、そろそろずらかるかとエンジンボタンを押す。端末には見張りの部下達の『問題無し』との報告が入っていた。そちらにも『お疲れさん』と返して、後部座席を振り返る。

「じゃあ行きますかぁ。問題無い?」

#BlackAndWhiteMovie
(78) 2023/09/29(Fri) 18:46:00

【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ

>>-172 >>63 ダヴィード

「Buon appetito!
 冷めない内が食べ頃ですよっ」

食事前の挨拶をして、シチューをひとさじ。
具材の旨味と甘みがふわりと広がる優しい味。
しっかりとした食事パンの食べごたえも、夕食にちょうどよく。

「Buono! …そういえば、
 実は近々マスターに料理を習おうと思うんです」

「最初に習うのは、このシチューで決まりですね」

なんて笑って、シチューをもうひとさじ。
いくらか食べ進めた頃に、カクテルのグラスを傾けた。

「それはそれとして。
 来年来たら、今度は一緒にお酒を飲みましょうねっ。
 成人祝いはここでさせてもらってもいいのかも」

来年。あなたが18歳になれば、
ノンアルコールでないカクテルで乾杯ができる。
そんなまだ先の未来の約束も勝手にしてしまって。

残暑も過ぎて、外は徐々に涼しくなっていく頃。
バー:アマラントは今日もいつも通り。
穏やかであたたかな時間が過ぎていく。

#バー:アマラント
(79) 2023/09/29(Fri) 19:26:18
「いや……デカくもなるよ、驚いてんだもん」
「家無し子ォ〜〜? お前家まで追い出されてんのかよ。
 や、良くはねえだろ。なんですか」

まだ梳いていない寝起きのままの前髪をかき上げながら、
また仰向けにぼすんと寝転がる。

「……なんだよ。言えよ、何でも」

まごつく様子に、何を言い出すのか待っていれば。

「…………………」
「ああ〜〜……」

納得した。それは確かに貴方には言い辛い話だろうと。

「分籍とか就籍とか養子縁組とかそういう感じじゃない奴ね?
 あれクッソめんどくさい上に書類でつっかかりそうだもんなぁ……う〜〜〜〜〜ん……まあ逆にそっちの方が……」

しばしの間、そんな風に考える呟きが
通話口に垂れ流された後。

「……できるよ。よそのブローカー頼んのはやめな。
 足元見られて適当な仕事されんのやだろ。
 やんならオレがやるから……」

つまり質問の答えは『Yes』だった。
良くない兄も居たものだ。

手伝ってもらった方がいいか。
手袋に包まれたそこを見下ろしながら、助力を受け入れて。

「恨まれていそうですね。俺じゃなくてやらかした奴らが。
 きっとゆくゆくは俺の机にもデスクワークが山積みになるんでしょう、今から少々気が重くなってきますね」

にしてはあまり憂鬱そうにしていないのは、
仕事そのものを苦にしていないからか。
何かしらの世話か、警察の仕事くらいしかしてない男である。

それ故食事の用意も任せっきりにしていて、
どことなく落ち着かない様子に見えるだろう。

「無理に見せろと言ったところで、
 得られるものは何にもないでしょうから、賢明です」

「……できないことはないか、乾杯くらいは」

大人しく席については、自分の手をまた見遣る。
曲げられる指はどれとどれだったかな。

『ぶんせき、しゅうせき、ようしえんぐみ……』


呟きを復唱する声は正直あんまりよくわかっていないのが伝わるだろうか。
養子縁組ぐらいはぎりぎりわかる、他はわからない。
わからないから感心していた、あ、やっぱり詳しいんだな、と。
で、『Yes』の答えが返れば表情が明るくなる。貴方には見えないものだけれど。

『ほんと!?』

『よかったあ、スマホ無くてさ〜。
 新しく契約したかったんだけどそういえばなんもねえ〜と思って……』

『……あはは、ごめん。
 困ったの頼り方の一番最初、こんなで。
 お金はあるんだ、好きに使って』

もっと兄弟らしい可愛げのあるものだったらよかったのだが。
それでも手放しに頼りたいと思える家族がいることは幸福だと心から思う。
相変わらず包帯で固定された右手で、なんとなしに電話機を撫ぜた。

『今家?二度寝する?
 顔見たいな、ろーにいが良い時間に家行きたい』

…コーヒー豆の、香りがした。
ああそっか。
あの人は最初から、許してもらおうなんて思っていなかったんだ。
一番最初に腑に落ちたのはそのことだ。

――いってらっしゃい。幼子の声。
その後数日顔を合わせることもなく母は死んだ。
…同じかもしれない。ずっと同じように時が過ぎるなんてことないって知っていたつもりだったのに。
ばかだなあ。ほんとうにばか。

【人】 Commedia ダヴィード

>>79

「へえ?ああ、じゃあ。
 習ったらおれにも作ってくれませんか、ペネロペさん。
 材料代も出すし片付けもしますから」

もくもくと食べ進めながら、貴方のそんな一言に反応した。
もとよりこの男は人の手がかかった料理が大好きで、外食にそこそこの給金を注ぎ込んでいる節がある。
それが貴方のお手製ならばもっと嬉しい。そんな単純さだ。

「いいなあ、それ。来年にもまたこうやって……
 俺に似合うお酒選んでくれますか?」

今回の選んでもらったカクテルは「傷に沁みないもの」という基準が大いに影響しているだろう。
それを抜きにして、18歳の自分に貴方が何を選んでくれるのかが気になった。
その時に貴方は別の顔をしているかもしれないけれど。

貴方のいつも通りに触れた、あたたかい時間。
子どもはなんだか、泣きたいくらいに嬉しかった。
(80) 2023/09/29(Fri) 21:01:15

【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ

>>80 ダヴィード

Certoもっちろん!」

実際のところ、この男の『趣味』は多岐に渡る。
取り繕った顔の数だけ趣味があり、
料理を趣味とした事もあれば苦手なふりをした事もある。

ともすれば、以前にも手料理を振る舞った事があるかもしれない。
けれどそれとこれとはまた別の話。

「ふふー。感想聞くのが楽しみです、どっちも」

料理も、お酒も。

18歳になったあなたに似合うのはどんなカクテルだろう。
幸いにして酒には詳しいものだから、いくらでも選択肢はある。

初めて飲むそれが、良い思い出になるように。
それから、あなたの成長ぶりを楽しみにして。

#バー:アマラント
(81) 2023/09/29(Fri) 21:33:41
ペネロペは、約束をした。
(a18) 2023/09/29(Fri) 21:34:00

「おう、いいよ。なる早でやっとく。
 スマホもねえのは不便だろうさ。
 お前の事、他に心配してる奴いるんじゃねーの?」

公衆電話だけで知人とやり取りするのは余りに不便だろう。
友人も多いだろう貴方のそういう不自由はやや不憫に感じた。

「なんでもいいよ、頼ってくれんなら。
 金は貰う事になるけどそれは勘弁な。安くはしとくよ」

個人的にやったっていいのだが、他の人間と連携を取る以上仕事の客として扱った方が勘ぐられもされずに済むだろうと思っての事だ。自分もだが、相手の立場は守らねばなるまい。
詐欺としてやるなら別だが今回はそうではないので。

「家だよ。いいよ、今来る?
 なんもねーけど……30分くれない? 身支度とか終わらす」

来てくれるのは純粋に嬉しい。素直に快諾して、話しながらようやっとベッドから起き上がる。
場所ならこの間連れて帰ってきたときに覚えてもらっている筈だ。

「なんなら迎えに行くけど……足あんの? 近場?」

『ありがと、すっげ〜助かる!
 心配はどうだろ、連絡取りたいの職場のせんぱいとちょっと身内ぐらいだからな』

だからそう貴方が不憫に感じる必要はなく、というのは此方が知っていることでもないのだが。
早めに手に入れたい理由は生存報告がしたいそれだけだった。
『高くてもい〜よ』と値段については伝えたものの、安いままでも素直に甘えることだろう。
さっぱり入手経路なんてわからない自分にとっては大層なものだから、何らかの形で恩は返すつもりだが。

『今行く!』

『足ならあるよ、オレの足が。
 近場かな、わかんないけど。
 場所は覚えてる、のんびり歩いてたらそれぐらいにならないかな』

回答全てがふわふわしているが、道は覚えているのでとりあえず辿り着けそうなことだけ確かだ。

『だからだいじょうぶ、ゆっくり身支度しててよ。
 あ、猫アレルギーじゃない?
 仲間がいてさ、離れてくんないの』

伝え、切ろうとして、その前に思い出したように最後の確認がひとつ。
猫を家にあげてもいいかなの意。

【人】 Commedia ダヴィード

>>81 ペネロペ

「ペネロペさん」の手料理はきっと、初めてだろう。
貴方に作ってもらったものならきっとなんだって、それこそ消し炭だって無理矢理に口に詰め込んでから泣くような男だけれど。
これからあるかもしれない、ない話。

「あははっ、来年ですよ。言いましたからね。
 絶対一緒に来てくださいね」

もうすぐ夏が終わり、実りの秋と眠りの冬が来る。
この先にどんな苦難が待っていようと、未来に楽しみな約束があるのはいいことだな、と思う。

目の前の苦難を乗り越えるためにたくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん食べて。
すこしだけ貴方に甘えて。
そうして、日常は続いていく。


#バー:アマラント
(82) 2023/09/29(Fri) 22:58:24
ダヴィードは、平穏と日常を愛している。
(a19) 2023/09/29(Fri) 22:58:39

【人】 口に金貨を ルチアーノ

背の低いしっかり者を見送ったあと、通知の鳴り止まない携帯を見る。
まだまだ自分は何処かで必要とされていて。
疲れても歩きを止めることすら許されないような気にさせられた。

「『ちゃんと答えを見つけて、言いたいことを言えるようになるから』……ねえ」

「俺もそれをしないとならんのだよな」

大きなため息をついて空を仰ぐ。
にぎやかなリボンを一つ空中でキャッチしてまた捨てた。

「それにしても今、あの旦那のことを頼まれたか……?
 どうせアレのところに行ったんだろ……人気者め……。
 ……はあ、……俺が吹っ掛けておいて邪魔できるか」

あと何時間だろうか、と凡そ場所ももうわかっている。
片方の事は良く知らずとも、片方のことはよくわかっている。
あいつがやると言ったらやるやつだ、一番とは言わずともそこそこ理解者でいるつもりなのだ。

「アジトの様子見に行くか……あーあと牢屋の中の怪我人……。
 忙しい、忙しいぞアレッサンドロ・ルカーニア!
 お前が放り投げた分全部俺が拾うことになってるの許さんからな!」

#BlackAndWhiteMovie
(83) 2023/09/29(Fri) 23:14:10

【人】 路地の花 フィオレ

>>78 ロメオ

悪戯小僧には、目を細めて悪い女ぶった笑みを返す。
こどもっぽい仕草が、なんだか今は一番似合う気がしたのだ。

「片っ端から気になるもの買ってみちゃう?
 出来立てのお惣菜とか、お店の人の今日のおすすめとか!」

今なら何だかいいものと出会えそうな気がしたから。
あなたが運転席に戻っても、後部座席に居座ったまま。
体は起こして、白いクッションを抱きかかえる。
キャップをかぶり直して、アクティブなスポーツレディの装いをもう一度。

「うん、いつでも行けるわよ」
「安全運転で、でもぱっと済ませちゃいましょっ」

吹っ切れたような顔で、楽しそうに笑ってみせた。

#BlackAndWhiteMovie
(84) 2023/09/29(Fri) 23:27:25
ロメオは、ひとのかたちをしている。
(a20) 2023/09/29(Fri) 23:35:07

檻の中の言葉。渡された荷物。コーヒーの香りする紙片1枚。
…答えは出ているはずだった。
彼が自分を、どう思っていたかは知らないけれど。

…少なくとも。

エルヴィーノは、イレネオの電話を鳴らした。
(a21) 2023/09/29(Fri) 23:38:24

エルヴィーノは、イレネオに通話が繋がる事はない。
(a22) 2023/09/29(Fri) 23:39:50

「おう。用意出来たら出来たって言うわ。
 スマホに掛けたら繋がらないのは心配させるだろ、
 早く安心させてやらねえとさ」

ついでにスマホも登録しておいてやろうかな、
なんて企みは口には出さないでおこう。

「そ? わかった、徒歩なら気を付けて来いよ。
 ──あ。そうだ、猫」

それならこっちも色々用意できるな、とズレかけた思考は、
『猫』という単語ですぐに戻った。

「あのさ。飼ったわ、猫。家に居る」
「貰ったんだよ。白猫……」

だから大丈夫、と一言。
いつぞやは自分では飼わないと言った覚えがあるが、
結果として今、家に一匹いらっしゃるのだった。

【人】 corposant ロメオ

>>84 フィオレ

「アハ、それもいい。
 余ったら家に持って帰って食えばいいしな〜」

すっかり機嫌が直った様子にこっちも気を良くして、
今から何を買ってやろうか計画立てて。
自分もキャップを被り直せば、
バックミラーの位置を調節してハンドルを握った。

「OK〜。んじゃ、行くか」

そうして車は走り出し、きっとどこかの店にでも
そのまま向かうのだろう。
自分のカローン渡し守としての役目も
これで果たされた。

一つの銃声の犯人を連れて、リボン舞う青空からは遠ざかる。
仕事はきっと、これで終わりだ。

#BlackAndWhiteMovie
(85) 2023/09/30(Sat) 0:00:19
カンターミネは、歌う。歌うのが怖くとも。
(a23) 2023/09/30(Sat) 0:45:33

じゃあ後で手伝うわね、なんて会話をしたかもしれない。
この女に任せると、捨てようと思っていた物をいくつか持って帰られるかもしれないけれど。
それはそれとして。

「お気の毒様ねえ」
「まあ、警察も上がああなった以上はドタバタ騒ぎもやむなし……っていうか。
 それくらいで済んでよかったって感じじゃない?書類仕事で済むなら、それほどの痛手でもないでしょうしね」

署長代理とやらが捕まることで、丸く収まっているならいいことなのだろうけれど。
自分が撃ち抜いた彼の事も公になっている。結構な地位にいたらしいと聞いたから。
警察内部の事情に疎い女は、実際のところどうなの?と聞いてみている。

落ち着かない様子をちらりとみて、にまと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「怪我人は大人しくしてて下さ〜い」と楽しそうに口にして。
鼻歌まじりにデリのパックを開けていく。
チーズとろけるピザに熱々揚げたてのアランチーニ。ジューシーなポルケッタ、パリパリのパネッレにほくほくクロッケー……本当に片っ端から屋台飯を買ってきたようなラインナップ。
結局こういうものが一番おいしいのだ。

「まあそれもそうなんだけど。
 テオが見せたくないものは、無理に見たくないってだけ」

嫌な思いさせたくないし。気を遣ってくれてるのを無碍にはしたくないし。

「できないことはないか、じゃないのっ」
「もし難しそうなら私の片手をテオだと思って乾杯するから」

どういう有様かは知らないけど。無理してグラスを落としたり、不安定になってもいけないし。
ちゃんと持てる状態でないと、この女は折れなさそうだ。

【人】 幕引きの中で イレネオ


まさに蜘蛛の子を散らすようだった。

監獄から吐き出されていく人、人、人。
早朝の白む空に照らされ、昇る朝日に祝福されるがごとく家路に着く。或いはそのまま遊びに赴き、それとも最早この地を捨てて遠くへ駆けて行こうとする面々は、疲弊しつつも各々どこか安心した顔をしていたのだろう。
これでもう終わる。悪人は討伐され、三日月島には平穏が戻るのだ。おめでとうAuguriみんなa tuttiよくやったsono contentoおめでとうAuguri
ぱんぱんと鳴るパレードの花火は拍手にも似て、奇妙にこの日を彩っていた。


しかし。
イレネオ・デ・マリアが牢を出たのは、それから随分後のこと。
日が再び落ち、また高く昇りきり、中天を過ぎた頃​────
つまり、次の日の午後のことだった。

#AbbaiareAllaLuna
(86) 2023/09/30(Sat) 4:59:01

【人】 幕引きの中で イレネオ

 
突然の展開に署内は蜂の巣をつついたようになっていた。情報は錯綜してんやわんやの大騒ぎ。電話対応にも追われ会見の準備、やれあの証拠を持ってこい、やれあれを止めさせろ。末端も末端で仕事・・に勤しんでいた男が法の失効を知らされたのは、ナルチーゾ・ノーノの緊急逮捕が幕を下ろした後のことだった。

事後処理に駆け回った署内の人間の一人が取調室に飛び込んだのは、イレネオがまさに目の前の男の爪を剥ぎ取ろうとしていた時のこと。
謂れのない責め苦に悲鳴をあげていた被疑者は、その知らせにどれだけ安心したか知れない。彼は椅子から転がり落ちるようにして伝達者の元に走り、縋り付いて涙を流したという。


対する男は、当然法の失効に反対した。
これはマフィアやその協力者を先んじて取り締まることの出来る、画期的な法案だと主張した。いつもの生真面目さ、四角四面さ、愚直さで主張した。
しかし全ては終わったことである。
その言葉はひとつも聞き入れられることがないまま​──それは皮肉にも、これまで犠牲者たちにしてきた態度と同じだ​──男は一度落ち着けと犬小屋に戻された。

それはおそらく、暴挙の限りを尽くした愚犬に対する庇護の意味合いもあったのだろう。
混乱に乗じてどんな目に遭うかわからない男を野放しにするほど、この国の警察は終わってはいなかった。


#AbbaiareAllaLuna
(87) 2023/09/30(Sat) 5:01:35

【人】 幕引きの中で イレネオ

 
まんじりともせず夜を過ごした男に沙汰が言い渡されたのは、次の日になってからのこと。


停職処分。
期限については追っての通達。



それは男にとっては重い、しかし見るものが見れば軽すぎる裁定だった。
どうしようもなく愚かで、それでも職務に懸命だった忠犬への、慈悲の意を含んだ処罰だった。

#AbbaiareAllaLuna
(88) 2023/09/30(Sat) 5:02:19
イレネオは、警察署を出た。16時を少し回っていた。 #AbbaiareAllaLuna
(a24) 2023/09/30(Sat) 5:02:39

【人】 幕引きの中で イレネオ

 
故に男は途方に暮れていた。
犬に出来ることは主人の意向に従うことだけである。
身を捧げた正義には手を離され、リードを握る者はいない。従った法は失効し、今や頼るものもない。
明るい陽射しの下に、男は憔悴しきった姿を晒した。

右を見る。牢に入る前と変わらない人並み。それは既に日常に戻りつつある。
左を見る。紙吹雪が散っていった。昨日あったらしいパレードの名残だろう。
後ろを見る。その門はいつもと変わらず、けれどこの男を追い出して閉じた。
前を見る。一般車両に紛れて通り過ぎた救急車を見て、思い出す声があった。


「バディオリは大丈夫なのか」
「彼なら病院へ」
「撃たれたのは肩だろう。命までは​────」



ざり。
靴底が舗装された道を擦る。
イレネオ・デ・マリアは知らない。
何故彼が負傷することになったか。
それでも。いや、それだからこそ。
足を向けたのは自宅ではなかった。

#AbbaiareAllaLuna
(89) 2023/09/30(Sat) 5:03:13
イレネオは、病院を訪ねた。16時を15分ほど過ぎていた。 #AbbaiareAllaLuna
(a25) 2023/09/30(Sat) 5:03:33

イレネオは、病院を後にした。20時の少し前のこと。 #AbbaiareAllaLuna
(a26) 2023/09/30(Sat) 5:06:11

【人】 幕引きの中で イレネオ


帰路に着く足は酷く重く、億劫だった。
元より姿勢のいいわけではない男の背が今日は更に丸く俯いている。日の暮れた暗さを心細いとは思わないが、明日から過ごさなければならない日々のことを考えれば自然気は沈んだ。

幾日の間を何もせず過ごすことになるのだろう。
どれだけの時間に耐えることになるのだろう。まるで未決囚だ。
趣味も何もない、訪ねるような友人もいない不明瞭な空白を思えば、知らずうちに溜息が漏れた。

こつ、こつ、と石畳を鳴らす足音はいつか砂利を踏む音になる。
裏路地を通るのはいつも通りのだった。
なにも近道というわけではない。ただ、街灯のない細い道を帰宅がてらにパトロールするのはこの男のルーティンだった。
始めた頃には時々目にしたチンピラなども、最近はとんと見かけない。
良いことだ、と男は思う。きっと良いことだ。
だからこの帰宅ルートは、任を解かれた今日だって変えるつもりがなかった。


​────そして、それがいけなかった。


#AbbaiareAllaLuna
(90) 2023/09/30(Sat) 5:07:21

【置】 幕引きの中で イレネオ


猫みたいな人だった。
痩せぎすで、億劫そうで、いつも顔色が悪くて。
気まぐれで毛並みの悪い、野良猫みたいだった。

それでも。
瞳だけはいつも、いつも鮮やかに花やいでいた。
あの目が困って伏せるのが、嫌いじゃなかった。


────好きな花くらい、聞いておけば良かった。


#AbbaiareAllaLuna
(L1) 2023/09/30(Sat) 5:16:45
公開: 2023/09/30(Sat) 5:20:00

【人】 手のひらの上 イレネオ

 
イレネオ・デ・マリアの遺体は見つからない。

一巡査長の身柄は行方不明として結論される。
その捜索も、程なくして打ち切られるだろう。

それはマフィアから警察への手打ち表明であり、
それは警察からマフィアに対するけじめであり、
狂犬が病理を撒く以前に駆除されただけのこと。

誰かが言ったように、署長代理パパにもママにも見捨てられ。
誰かが言ったように、道理と因果に従って。
誰かが言ったように、地獄に堕ちる。


狭い路地裏では空すら見えない。
負け犬が月に吠えることはない。


#AbbaiareAllaLuna


悪人は、等しく裁かれるべきだ。誰かが言ったように。

(91) 2023/09/30(Sat) 5:20:23
リヴィオは、君と友人であるリヴィオは、柔く微笑み君との未来を思い描いた。
(a27) 2023/09/30(Sat) 5:58:09

【人】 口に金貨を ルチアーノ

からん、と靴の先で何かを蹴った軽い音がする。
繊細なグラスに罅が入ったそれは、何の変哲もない眼鏡であった。
裏路地をただいつものように歩いていた男は首を傾げつつも、
それを上着のポケットに入れてそのまま先へと歩んでいった。

「……、何かいるなあ」

漂ってくるのは慣れない鉄の香りだった。
鼻が利く犬でなくとも想像できてしまう程の量が流れていることがわかる。
すえた匂いはしない、まだ時間があまり経っていないのだろうか。

さらに足を向ける。
ここは自分のシマの傍だから、治安は正しく守っていかねばならないと。

#AbbaiareAllaLuna
(92) 2023/09/30(Sat) 7:53:53

【人】 口に金貨を ルチアーノ

路地裏の前に用意された二台の車のうち、大きな黒いずた袋を乗せた車が男を乗せずに何処かへと向かっていく。

「うちの犬も仕事が早くなったなあ。
 猫が関わらなければ本当にいい仕事をする。あ。
 ……今日は猫にすれ違わんかったな、エキスパート失格か?
 まあいい」

車が向かう目的地は知っている、だが自分がそこまでついて行ってやる気もなかった。
そこまで自分達は仲もよくなければ情もない。
俺の方で悪かったな、クソガキ。だが別れの挨拶ぐらいは送ってやろう。


Notte notte e sogni belliおやすみなさい、良い夢を,
 それでは御機嫌よう」

#AbbaiareAllaLuna
(93) 2023/09/30(Sat) 8:05:00