人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>114

「そりゃこっちの台詞だ、あんたが大人になっちまう・・・・・・・・日が来るとは思っちゃいなかった」

車に体重を預けながら、悪餓鬼のような笑みを浮かべる。
怒りと苛立ち、嘲りと――仲間意識。
そういったものがないまぜになって、ぐつぐつと、
耐えがたいはずの悪臭を放ち煮えたぎるような凶相。
なのにそれは、どこまでいっても笑みと表現されるものだ。

「──俺だってガキじゃあいられねえ。ただ、どーでもよくなる時だってある」

はるか遠くを過ぎゆくプレジャーボートのエンジン音が、波を伝い足元にまで響いてくる。
そうして、あなたの漏らした言葉には、一瞬きょとん、と目を丸くして。

「──ハ」

気色悪いこといってんじゃねえよ同じこと思ってんじゃねえよ

ははは、ははは、と。抑えきれなくなったような哄笑が、途切れ途切れに漏れ出して。

「──オッサン、コラ。ノンビリ吸ってんじゃねえぞ」

かつては大人と子供ほどに離れていた年齢は、今やすっかりと希釈された。
それなのに、その口調は悪態をつく子供のようだ。
ポケットに片手を突っ込んだまま、車に手をついてゆっくりと回り込む。
おぼつかなかったはずの足取りは、舗装された足元を引きちぎるかのように重く、強い。
ぴりぴりと、引き絞られたか弓矢のように、それは放たれる時を待っている。

#BlackAndWhiteMovie
(115) 2023/10/01(Sun) 9:41:54

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>115

「俺は変わっちゃいねえよ。周りが自分よりガキばっかりになっただけだ。
 だから面倒を見てやらなきゃいけない数が増えた、それだけの違いしかない」

自分が、自分たちが若い頃も、自分より年少の人間は面倒を見てやった筈だ。
その数が増えただけ。目下のように振る舞う機会なぞありはしない。
それでも、根底にあるものは変わらないままだ。

哄笑を聞いて、ひとたび眉を顰めて。それから、また仕方なさそうに口角を吊り上げた。
次第にそれは同じような高笑いに変わって、港にどうしようもない馬鹿笑いが響いた。
笑えば傷がずきりと痛む。体の震えに伴って新しく血が吹き出した。
そんな無粋の一つ一つが、奇妙な高揚の後ろに押し流されていく。
頭の中が晴れていくような清々しい興奮が、片方だけの瞳を爛々と輝かせた。

「――葉巻はゆっくり吸うもんだろ、小僧。
 ……だから此れはお前が台無しにしたことにしてやる」

親指が下から葉巻の胴を弾いた。燻った珈琲やナッツのような香りが舞う。
手元から離れた一本がくるくると回転しながら地面に落ちていき――

トッ、と小さな音を立てて路面にぶつかる。
それを合図とするように、車に体重を殆ど預けて予備動作を消して、
右足を大きく振り上げて蹴り上げた。距離が足りれば体の中央、
そうでなくとも当たれば顎は刈れる。

#BlackAndWhiteMovie
(116) 2023/10/01(Sun) 10:14:07

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>116
ガキみてえなことのけ反って蹴足を避け
  言ってんじゃ車の側面を蹴り跳ねあがって        
         空中に飛び上がり
            ぇえぇえええエエエエエよッ足を引き絞った!!!」



葉巻が撃鉄のように落ちて、
そらすら待たずにばね・・は動いた。
ほぼノーモーションで放たれた蹴りを避けられたのは、同時に動き出していたからにすぎない。
だ、だん、と鋼板をへこませる音と同時に、アレッサンドロの長身が車の天板よりも高く飛び上がる。
大きく孤を描き放たれる、横殴りの足刀。

──だが本命は、その陰。

先ほどまでポケットに突っ込まれていた拳が緩く握りしめられて、空中に身を躍らせた直後──
蹴りとワンテンポ遅れただけの奇妙なタイミング、そして間合いで突き出される。

当たるはずも牽制になるはずもない、ばたつかせただけのような手。それがぱ、と開かれて、

ばさり
、と。

握り込まれていた粉末・・が、
掠れた音とともにぶちまけられる。
派手な蹴撃に紛れて放たれるそれは、
アルミ片を削った・・・金属の欠片。

粘膜を容易く傷つける無数の礫が、潮風に逆巻きながら、顔面を狙ってぶちまけられた。

#BlackAndWhiteMovie
(117) 2023/10/01(Sun) 10:25:28

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>117

躱された脚を引く力に任せて上体を引く。
大仰な動きは、それが本命でないのも相俟って適切な間合いで避けられた。
問題はその次だ。

「っ、」

片目を庇うように瞑る。視界は一時的に制限されはしたものの、恒久的にそうなるよりはいい。
避けようもない攻撃は顔面に降り注ぎ、交通事故にでもあったように傷に金属片が食い込んだ。
見えないものを、やり過ごしきったと判断するのは難しい。
目を開くことが出来るのはもう一手先だ、故に。
見えずとも当たることが予測できるものを狙わなければならない。

流れるように殴りつけにかかったのは足刀、過ぎ去った右足の膝裏だ。
勢い、空中から地面に引きずり下ろすようにしながら自身も背中を丸め、
頭上からの奇襲が追撃されることを防いだ。
握り込めるならばそのまま膝裏の布を引っ掴めたならいい。
そうしたなら落下する体の支点は言いようもなくめちゃくちゃになる。

#BlackAndWhiteMovie
(118) 2023/10/01(Sun) 10:39:48

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>118

爪先が何かを掠めて、あるいはまったく空振りをして、
けれどそんなものはどうでもいいと引き戻す。
格闘戦において、自らの肉体を伸ばしたまんま相手の射程内に置いておくほど愚かしいことはない。
──そんなものを分かっているとばかり、即座に叩きつけられた拳と脚刀がぶつかりあう。

「っ、っだ、」

膝裏を鉤のようにひっかける指を上から押しつぶすように、
器用に全身のばねをたわませてもう片方の足を叩きつける。
技術というにはあまりにも稚拙で力任せなそれが、
もつれあうようにして互いの手足をはじき合った。
人間が滞空していられる時間は、そう長くはない。
アレッサンドロが辛うじて両足を地面に着地した時には、
そんな一瞬の攻防を経て、互いが姿勢を崩したままだった。

No
僅かに、無茶な動きをしたアレッサンドロの方が姿勢が悪い。
それを補うように、咄嗟に距離を埋めるように左手の拳が突き出される。
──ちか、と。
金属の輝き。

握り締めた拳の指と指の隙間、
そこに握り込むように金属片車の鍵
拳から突き出す先端は猛獣の爪のように、防御すれば肉を裂き骨を打つ。
距離と間隙を埋めるように鋭く二度、三度、狙うは当然顔面、あるいは傷を負った胸元や肩口。


#BlackAndWhiteMovie
(119) 2023/10/01(Sun) 11:03:51

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>119

引っ掴んで頭を地面に叩きつけさせてやるには至らず、指はぱっと離される。
その代わり、指が潰れるほどではなかったのが幸いだ。
相手の不利を狙って畳み掛けるのが承知の人間が着地を見守っているか。
そんな筈はない。地面に落ちた雁を狙わない銃口は無い。

追う脚が一歩を大きく切り詰める。
互いに考えることは同じらしかった。
息をする間も与えまいと、両拳を使って顎下から肩、肋の合わせ、
そうでなければそれこそ向かってくる拳に平然と合わせて殴打を叩き込む。
それでもどうしたって肩の潰れた左腕は動きも鈍く痛みも走る。
右拳のように、相手の卑怯をお構い無しに血を上げながら迎え打つなんてのは出来ない。
そうしている間にも相手の左拳に挟んだ鈍い刃は己の拳や顔面を裂いていた。
新しく出来た傷口にまで、先に降り注がれたアルミ片が皮膚から剥がれ落ちて潜り込む。
いずれは勢いを失わざるを得ないのは必至だった。

だからそれを補うものが必要だ。
シガーカッター代わりのナイフはまだ左手にぶら下げられている。
勢いの無い左拳は代わりに、右拳に紛れて相手の上体を裂きに掛かる。
別段手段を選ばないのはそちらばかりでもない。

そして連撃の迫間、左手が引きに入った瞬間を見計らうと、
点対称の右足は視界の外より、相手の左足の肘を踏み付けにするように蹴り込んだ。
次に何が来るか予測するように、僅かに長身の背が曲がる。

#BlackAndWhiteMovie
(120) 2023/10/01(Sun) 11:23:16
ニーノは、あなたと同じものを見続けていたい。
(a38) 2023/10/01(Sun) 11:27:22

ニーノは、だから、「いっしょにいて」とねだった。
(a39) 2023/10/01(Sun) 11:27:27

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>120

極至近距離での白兵戦で、完全に攻撃を避けることなど不可能だ。
姿勢を僅かに整えるまでの数瞬に、
殴打は筋肉と骨で、刃は服の表面で受ける。
みしりという音が体内で響いて、足先が思わず溢れ、
それでも牽制を幾度と放ち、
そのまま押し込まれることを防ぎ切る。

体躯では負けている。
体重ウェイトというものは格闘戦において絶対だ。
それでも、正面からぶつかり合う。僅かでも腕のうちに潜り込むように身をかがめて、

「っ、づ」

抉りこむような蹴りが、突然そこに現れたかのように肉を打つ。
ばぢん、という音を遠くに聞きながら僅かに体を引いて、
じんと痺れる足をかばうよう片足でかるくステップを踏みながら、ノックするような軽く早い拳をフリッカージャブ叩きつける。

体力と血液を絞り出すかのように打ち、打たれ、削り合う。
喧嘩でも殺し合いでもある、それはひどく原始的な闘争だった。。

#BlackAndWhiteMovie
(121) 2023/10/01(Sun) 11:39:49
ロメオは、「オレの事拾ってくれて、ありがと」
(a40) 2023/10/01(Sun) 11:45:18

貴方が見せたいものがあるのならそれだけを見続けているのも良かっただろうか。
だけれどだいすきだと思うからこそ、全部知っていたいとも思ってしまう。
何かあったときも足元を揺らがせることなく、同じ言葉を紡げるように。

弱弱しく名を呼ぶ声に戸惑っているなと感じながら。
それでも嫌がられているわけではないから、抱きしめたままだ。

「……うれし」

貴方を甘やかしたいし、こうすることで自分だって甘えている。
柔らかな髪を幾度も撫でてはここに在る愛情を伝えるように。

「他はぁ……ええっとさ、街出ようと思ってて。
 オレ、ニーノって子の代わりしてただけなんだけど、死んだことになったから。
 死人歩いてちゃだめでしょ、だからそう……出るんだけど……」

「……それまでの家がないです。
 野宿でもしようと思ったんだけど」

お金はたくさんあるとはいえ有限だ。
節約するべきところは節約しようかと考えていたが。
抱きしめていた腕を少し緩めて、そぅと貴方の瞳を見つめた。

「街出る準備できるまで……ろーにいの家に泊まっちゃダメ?」

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>121

眼前を血しぶきが舞う。鈍くえぐれた傷口は鮮やかな肉を垣間見せ、直に赤を滲ませた。
段々と温む拳と襟首がその凄惨さと、負ったダメージを物語っていた。
休みの一つも挟まない連打は徐々に勢いは鈍っていく、故に仕切り直しの蹴りを放ったのだ。
持っていけなかったのなら足は弾むように引き戻されて地面を叩く。
その勢いのままに体は沈み込み、肩より下まで降りた。
幸いであったか不幸であったか、予測による行動が拳の当たる先を決めた。

「ぐ、」

ジャブは傷ついた右目の端を掠めた――正確には掠めただけで十分だった。
瞼の横手を叩いた拳は元よりあった傷を広げ、こめかみまで薄い肉を切開した。
潰れて瞼の中に溜まっていた、眼球だったのだろうものがどろりと頬を落ちる。

沈んだ体はナイフを握った左手を回すように後方まで引き絞らせる。
胴を狙うか、脚を狙うか。選んだのはそれ以外だった。
顎下を見上げられるくらいまで沈み込んだ姿勢から焦点を合わせる。
アッパーカットの要領で、逆手に構えたナイフを腹部から頭部まで駆け上がるように振り上げた。
深く当たれば骨に当たって止まる。浅ければ傷は広がる。
逆手に持ったのは射程を腕の長さより外へと伸ばすためだ。

今の状況において表情を緩めていられるほど余裕があるわけではない、というのは、
筋肉を緊張させておく必要があるからだ。そうでなきゃ、笑っていた。
これが楽しくない筈がない。

#BlackAndWhiteMovie
(122) 2023/10/01(Sun) 12:10:40

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>122

「ッダ、…っあぁ゙あ!!」

振り上げられたナイフに対し、踏み込んだのは本能的な反射行動だった。
刃ではなく、それを握る腕を止める。
それもガードと呼べるものではなく、飛び込み、胸板で受けるだけ。
どんという衝撃が肺を貫き呼吸を止めるが、
構わず、かじりつくようにナイフごと腕を抱き込みひっつかむ。

「……
っラ、
ぁ゙!!」

命を振り絞るような格闘戦では、ぱたた、と水音が響くものだ。
それは汗か涎か、血か、あるいは髄に近いものか。
生命の雫が撒き散らされていくように
二人の足元になにかが飛沫く。
笑顔はない。
だが高揚し、滾り、燃えていた。
その勢いのままに大きく体を捻り、
砲弾のようなストレートが放たれる。
技巧も戦術も殴り合いの中に消えていき、
あるのはただ肉と骨を叩きつけるような気迫だけ。

#BlackAndWhiteMovie
(123) 2023/10/01(Sun) 12:19:44

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>123

ぎ、と歯ぎしりをする音が鳴る。肩を砕かれている左腕を固められれば、
どうしたって押し引きに依る力の均衡は負傷した部位に集められる。
呼吸が乱されれば攻防のリズムも自然と崩れる。

掴まれた腕を引いて振りほどこうとして、軸足に体重を掛けた、
その瞬間に破裂音じみたものが響いた。
体重の乗った一撃は頬を殴りつけ、ぐらりと首から上を揺らした。
まともに食らえば隙を生じる。ふ、と体から力が一瞬抜けた。
それしきで降参なんてつもりはないが、一手分の空隙を晒すには十分だった。

密着した体の間で、からんとナイフが地面に落ちる。
一瞬吹き飛んだ頭の中身を引き戻して攻め手を考えるにしたって、
どうしたところで相手の次撃が先になる。

#BlackAndWhiteMovie
(124) 2023/10/01(Sun) 12:43:24

【置】 きみのとなり リヴィオ


好きも嫌いも、愛も恋も多くのものを知らないまま。
それでも、誰かを、何かを大切に出来る心はあった。

それは、こんな自分を慕ってくれた君やエル、
こんな自分に何となくでも贈り物をくれたダニエラ君、
こんな自分でも友人になってくれたルチアーノや、
同じ立場で、落ちる前に手を掴んでくれたニコのおかげだ。

破滅願望消えない思いはあるけど、
それでも、生きているうちくらいは前を向いていよう。

俺はもう、ただのリヴィオひとりの人間なのだから。
 
(L3) 2023/10/01(Sun) 13:33:26
公開: 2023/10/01(Sun) 13:35:00
リヴィオは、貴方の作る料理を大層、気に入っている。
(a41) 2023/10/01(Sun) 14:45:57

リヴィオは、柔らかに微笑んでから店を後にする。それは──5日目の午後のことだった。
(a42) 2023/10/01(Sun) 14:47:07

エリカは、柔らかに笑んで、店を後にする彼を見送った。──ある日の午後の出来事。
(a43) 2023/10/01(Sun) 14:58:28

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>124

振り抜いた腕が、拳が、びきびきと軋む。
指がひしゃげてしまったかのような衝撃。
─構わず、再び握り込む。

「…、っ、お休みしてンじゃ、ねえぞおっ!!」

ナイフの音、体勢、隙。
それらを自覚しながら、けれどどうでもよかった。
2度。3度。その一撃一撃で殺すつもりで、
拳を叩き込みながら前に出る。

突き進む。
もつれ合うほどに飛び込んで、めちゃくちゃに殴りつける。
どちらのものかもわからない液体が飛んで、びたびたと落ちていく。

それらすべてを振り払うように足を振り上げて、
そのまま蹴倒す様な前蹴り。
姿勢を崩せば、あとは絞め殺してやるだけだと、

前へ。

#BlackAndWhiteMovie
(125) 2023/10/01(Sun) 18:22:36

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>125

数度に渡り拳が頭部を殴りつける。頭を上げはしない。
上げられないのは顎を打たれるのを厭んで、頭蓋の丸みで受けているからだ。
それだって苦し紛れのやり過ごしであって、ガードしたほうが良いのは確かだ。
顎を引き、狭い視界で相手の拳の動きを潜り込むように見遣る。
それでもまだ尚眼光は諦念を宿しては居なかった。
いつも日常を過ごし、他人と過ごしている時よりもよほど活き活きと殺意に燃えていた。

「っ、づきは」

攻め手を変えた動きを、見ていた。
ふらつく頭をどうにか押し戻し、屈めた姿勢は蹴り"に"立ち向かった。
傷ついた左手が脛を掌底で受け、浮き上がらせた膝の下に肩を半ば差し込む。
重心を上にずらさせながらに踏み込んだ体は右肘を前に出して滑空し、
全体重を肩から肘の上腕筋に乗せて鳩尾めがけて倒れ込むような、
頭上まで持ち上げない形のパワーボムだ。

「地獄か、――」

日の頂点の沈みつつある、海の音が近かった。
踏みとどまることが叶わなければ互いの体は、海の中へと落ちる。

#BlackAndWhiteMovie
(126) 2023/10/01(Sun) 18:47:05

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>126
がつがつと頭蓋骨を殴りつける拳が、恐らくは指としての機能を失いつつある。
だとしてもそれは打突部位として、最後までそこに在る。

だったら、十分だ。

いつのまにか取り落としてしまった車のキーは、もう見当たらない。
苦し紛れのように腕時計を外して、それを握り込み、
僅かに重みを増した拳を何度も何度も叩きつける。
油断は、しない。慢心も、しない。
このまま殺しきるつもりで打ち、殴り、叩き、蹴る。
呼吸することすら忘れ繰り返す打擲の末、

「っ、お」

先ほどナイフを握る掌を受けた時の、逆回しか。
蹴りが威力を発揮する前に受け止められ、
ぐわんと体が持ち上がる。不味い、と体を引く――

より
、も、
そんなことよりも。


「…っがッ!!!」

一撃入れる・・・・・ことばかりが、脳を焼く。
持ち上げられた肩口に重心を預けて、倒れるに任せて。咄嗟に跳ね上げた軸足を折りたたみ、

  ――顔面に、膝を叩き込む。

踏みとどまるつもりは、なかった。もろともに海へと叩き込むその狭間に、がづん、と。
#BlackAndWhiteMovie
(127) 2023/10/01(Sun) 18:56:14
「え。街出んの? 近場?
 てか今そんな事になってんの? 難儀だな……。
 遠かったらやだな……会いに行けなくなる」

街を離れる事については、素直に寂しそうな顔をした。
きっとパン屋で会える事も今よりずっと少なくなるかもしれない。
死人が歩いていちゃあいけない理屈は分かっているけれど。

腕が緩まれば距離は少しだけ離れる。
何を言うつもりなのだろうかと見上げればきっと目が合って。

「………………」
「なんだ。オレが断ると思ってんの?」

にま、と笑った。
そういう事ならお安い御用だ。むしろ嬉しくもある。
いつか話していたお泊り会が、
ちょっと長めに開催されるようなもの。
ロメオはそのまま身体を起こして、今度は貴方に手を伸ばす。
叶うならそのまま、むぎゅっと抱きしめて。

「いいよ。泊まりなよ、オレの家は自由に使いな。
 鍵も渡しとくかな……あ、落とすなよ。色んな意味で危ない」
「あと夜帰り遅かったりとか……他の人が来ても良いタイプ?
 多分たまに来たりすると思うから……」

そうやって撫でくりまわしながら、注意事項の確認。

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>127

血の絡んだ髪が引きちぎられて頭皮が飛び、切れた瞼の下からは白い骨が見える。
鼻骨は折れて元の面影を残す面は少しずつ削られて尚、スカイブルーが貴方を見ていた。
しっかり組み付き切った膝は肩でホールドしたまま。
脚が地面を蹴る。二人分の重さが急に重力を失ったようにふっと軽くなって、
きらきらと海面の光る水の上へと投げ出された。

それでも尚視界に迫る膝を見て咄嗟に出来たことと言ったら。
勢いをつけた殴打は手段としては取れない。
基点となっている肘をぐるりと回して、指が伸べられたのは、
包帯で塞がれた、傷ついた眼窩の内側だった。

どっちが有効打であったのかが判明するよりも早くに、
スローモーションで動く秋の海の冷たさが迫ってきていた。

#BlackAndWhiteMovie

(128) 2023/10/01(Sun) 19:11:27

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>127

――続きは。

「海の底で、やるか」

これで決着がついたとは思わない。相打ちだとも思わない。
だったらこれから先の予定なんてのも決まっている。
それを未だ楽しみだと思えることにか、まだ互いを付き合わせていけることにか。
着水の瞬間、ようやく頬を緩めた。

果ては地獄の底でさえあっても。

#BlackAndWhiteMovie
(129) 2023/10/01(Sun) 19:11:38

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>128

「てめえ」

口を大きく開いて、
    赤い飛沫が白波を横切り、
橙の燦光が瞼を過り、
    視界と天空が回転する。

「なあ」

がづん、がづん、がづん、がづん。
   肉と骨が打ち合う衝撃が、今も続いているのか、
それともずきずきと鈍く残る残響なのかもわからないまま。
  誰も逃れられぬ運命のごとく、
                重力が追いついてきて、

 

    「──ふざ」







#BlackAndWhiteMovie

(130) 2023/10/01(Sun) 19:18:23

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡



   音も衝撃も、感じなかった。

   気が付いた時には、全身に泡がまとわりついていた。

   どちらが漏らしたものかもわからない
   気泡が全身を覆って、
   海面で乱反射する夕日が薄暗く差し込んで、


がぼ。



この泡は、自分の口から出たものだ。
それだけを自覚しながら、

  ごぼ  ごぼぼ。

  ――握り締めた拳を、そ
の顔面に
叩き




#BlackAndWhiteMovie

(131) 2023/10/01(Sun) 19:19:32

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>130 >>131


      
ごぼ。





(132) 2023/10/01(Sun) 19:20:01

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

(133) 2023/10/01(Sun) 19:20:32




    
「――ねえ。
     三日月島の夕日が見たいんだ。
     連れて行ってよ。

     …珈琲の恩が、あるでしょう?」




#AlisonWaterston






「悪い。
 一人で見に行ってくれ」



#AlisonWaterston





くそヴィト・・・・・に、
 もう一発くれてやる」



#AlisonWaterston


【人】 黒眼鏡

>>133 >>*2



   
ばぎん、と。

   海中で一発、その鼻面に拳が届いて。





#BlackAndWhiteMovie
(134) 2023/10/01(Sun) 19:25:01
黒眼鏡は、ヴィンセンツィオとケリをつけた。 #BlackAndWhiteMovie
(a44) 2023/10/01(Sun) 19:25:35

「近場……かなあ。
 まだ決めてない、とりあえず知り合いあんまりいないところ〜って……」

貴方があんまりにも素直に寂しそうな顔をしたので。
寂しくさせるのが自分だってわかってるのに、なんだか笑ってしまった。
嬉しかったのだ、そうやって求めてもらえることが。
なのでもう一度、いや二度ぐらい、やさしく髪を撫でてから。
にま、向けられた笑みに更にこちらも笑みを深めていれば……むぎゅっと。

「ゎ」

貴方に抱きしめられると本当にいつもすっぽり収まってしまう。
あの牢の内に居たときからそうしてほしかったと、
望む心が満たされていくのを感じて、しあわせだ、と思った。

「へへ……
 ろーにいならいいよって言ってくれると思ってた」
「はぁい、鍵は失くしません、大事にするし」
「帰り遅くなってもいいよ。
 オレ寝てておかえり言えないかもだけど……」
「誰か来るのも大丈夫、だめなときは外に居るし。
 そうじゃなかったら家の中で大人しくもできます」

注意事項にはきちんと全てに返事を返す。
だって大事なことなんだろう、そして全部大丈夫。
ぎゅっと抱きしめながらも顔だけは上げて、貴方を見上げて。

「……だから、しばらくよろしくね?ろーにい」

無職なので家事はしまーす、と。最後に付け足して笑っていた。

【置】 Commedia ダヴィード

昔、両親に言われたことがある。
「人を叩いたり、悪口を言ってはいけないよ。
 ダヴィードもそうされたら悲しくって泣いちゃうでしょう?
 誰にでも優しくしてあげるようにしようね」


その通りだ、と思った。
両親は優しかった。
今も甘ったれた性格のままなのは、どちらに似ていたんだろう?

昔、叔父に言われことがある。
「お前が居なけりゃ良かったのになァ。
 どうせお前の人生もこれからお先真っ暗だよ」


そんなはずない、と思った。
一年とすこしの間の叔父との生活は、積み上げられた酒瓶と気まぐれに押し付けられたアイロンの熱さしかもう思い出せない。

永遠に続くと思っていた日々は突然に終わった。
幸せな日常も苦痛の責苦も、等しく。
そして今回も、また。
未だ分からないままに、幸せに置いていく日々を開封する日が来るのかは、これまた分からない。

ただひとつだけ分かることは、
慕わしいものはすべて地獄へ堕ちると言う。
地獄とは永遠に許されることのない罪人が集められ、永遠に責苦を受けると言う。
ならばそれに倣って、己もいずれその場所に行こう。
(L4) 2023/10/01(Sun) 20:13:04
公開: 2023/10/01(Sun) 20:15:00

【置】 Commedia ダヴィード



「両親に二度と会えないことよりも、
 大切な人たちに二度と会えない方が怖いんです。
 アハハ、俺は親不孝な息子ですよ」
(L5) 2023/10/01(Sun) 20:14:51
公開: 2023/10/01(Sun) 20:15:00

【人】 黒眼鏡

>>-419

──PIPIPIPIPIPIPIPI.


潮騒に紛れて、電子音がする。
壊れた赤い車の後部座席からだ。
すっかりと扉が拉げたそこから、
けたたましくアラームが鳴り響いている。
(135) 2023/10/01(Sun) 20:17:59