82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】
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鑑賞室。三人の共犯者たちが隠れ家として使う場所。
人払いは済ませてある。今ここに立ち入ることが許されるのは自分と二人の共犯者と、それから仮面をつけた者たちのみ。
隔絶された空間で、体を震わせるものが一人。
「……ぁは、あははっ」
「私はこれがしたかった!だから自分はこの身を汚してでもどんな手段を使ってでもこの立ち位置を手に入れた!
自分より偉い人間、強い人間、穢れのない人間。
みぃんなみんな、妬ましい。妬ましくて仕方がない。
だから……自分は。私は。
皆等しく地に落ちるこの瞬間が見たかったんだッ!!!」
「ああ、愉しい。最ッ高に愉しいよ!
こんなにも清々しい気持ちは久しぶり。自分じゃ到底敵わない地位や力を持った人間を私の土俵で打ち負かした時と同じくらい気持ちがいい!」
財産、権力、日常。
自分には無いものを持っている人間が妬ましかった。
それは共犯者の"暴食"に対しても例外ではなく。
憎悪、憤怒、嫉妬。
自分が持つものを持っていない人間が妬ましかった。
それは共犯者の"怠惰"に対しても例外ではなく。
「ねえグラトニー、スロウス。……どうして私がギャンブル好きなのか分かる?
煌びやかな社交の場。本職を全うするだけでは決して巡り会えないような縁遠い者とも出会い、遊べる華やかな娯楽場。
皆が天に身を任せ、勝った負けたと一喜一憂する……ある意味で理不尽で、ある意味で公平なシステム!
……言い換えれば。
地位も力もないこの私が、本来顔を拝むことすら出来ない恵まれた奴の悔しがる顔を間近で見ることができるんだよ!
ぁは、あははははッ!これほど素敵なことはない!どんなに偉い奴も、強い奴も!皆等しく負けるんだ!何も持たない私の目の前で!ざまあみろ!!!あははははははッ!!!!!」
仮面の下に隠してきた本性。長く、長く溜め込んできた嫉妬の思いが姿を現す。
もう止まらない。止められない。
ポーカーフェイスをかなぐり捨てて、"エンヴィー"は獰猛に吠えて、嗤う。
「見ているか、地に落ちた者たち!
私達はこれからも船の人間たちを裏切り、陥れ、引き摺り込んでいく!
チップは己の心身だ!
私達が消えてしまうか、君達が喰われるか!さあ、二人とも賭けるといい!
もうルーレットは止められない!もう誰も降りれやしない!
『個』を押し込められた仮面越しに、このゲームの結末をその目に焼き付けろ!!!」
「…………ああ、そういえばさ。
私、色んな人間が妬ましくて仕方ないけれど……何より一番許せない人がいるんだよね」
先程までの態度とは一変。
ただ酷く極めて静かに胸中を吐露する。
「私は手段の為にギャンブルを選んだ。
でも、その人はもはや生きる意味そのものとしてギャンブルを楽しんでいる」
許せなかった。
「勝った数より負けた数の方が多いのに、すぐ自分の全てを賭けようとするほど馬鹿なのに。勝つときはいつも華々しい逆転劇で周りを巻き込んで。結果がどう転んでもいつも楽しそうで。多くを失って地に落ちてもなお輝いていて」
ずるい。ずるいよ。
どうしてそんな姿でいられるの?
羨ましい。妬ましい。
許せない、許せない。
「私……私さ」
艶めく唇が弧を描く。
怒りも苦しみも憧憬も喜びも。
全て嫉妬で包み込んで。
たった一人に、放り投げる。
「……"研修"の準備をしてくる。
グラトニー、スロウス。私の分は時間がかかるから、好きに動いてて」
それだけを吐き捨てて、"嫉妬"はくるりと踵を返してその場を去る。
カツカツと鳴らされる靴音は忙しなく、苛立たしげで。持ち主の今の気持ちを如実に表しているようだった。
「……全てぶち撒けたのに、どうしてこんなに腹が立つんだろう。
………………ああ、妬ましいなあ」
「素敵だ。なんて素敵なのだろうね、『エンヴィー』。
欲を解放し、己の胸に渦巻く全てを燃やした君は、貴方は……とっても、愛しい」
まるで積年の愛を向けた恋人にそうするように、『グラトニー』はうっとりと声を投げかけた。
真っ赤なドレスは針金でしっかりと形を保っていながら、袖と裾以外、前は完全に開いている。
そこから乳房が、桃色の乳首が露出し。そればかりか女性器と、男性器の両方が完全に見えている。
『エンヴィー』の吠え声を聞いて蜜を滴らせる肉の割れ目にくち、と指を差し込んだ。
"研修"を前に下ごしらえされる、その前の二人の表情を見て舌なめずりをする。
その顔の前には、堂々と屹立した、睾丸の無い竿竹の陽芯がそそり立つ。
「『エンヴィー』、貴方の研修を決して奪わないようにするよ。
なにせ貴方の大事な獲物だ、それにこの踊り子……教育のしがいがありそうだものな。
どちらもたいへんな上玉だ、お客様の希望にお答えしないと、ねえ、『スロウス』?」
カーペットを刺すようなピンヒールが、絨毛の中にうずまる。
「………あなたはそれで満たされた?」
"嫉妬"の去った鑑賞室で独りごちる。
"怠惰"は誰の答えも求めていない。
「いいえ、あなたは未だ餓え続けている。
内に秘めるものらの発露の先を、獲物を捜し求めている。
ああ、実に好都合ですね。」
たった一人地に落として、それっきり満足するような
この船が、そのような人間を寄越すはずがない。
空腹を紛らわす為の獲物は他に幾らでも居る。
一度毒牙に掛けたものを、気が済むまで冒涜し続ける事もできる。
それでいい。
我らに満足する事など許されていないのだから。
「あなた達がその餓えを失わない限り、勝つのは僕達です」
片一方の瞳を閉じて、何処か確信を持った声色で
あるいはそうである事を祈るように、そう呟いた。
「……ええ、研修に関しては、その通り。
僕もあなたの意見に賛成です、『グラトニー』。」
今夜も扇情的な装いの、
けれど新たな遊戯を前に沸き立つ少女のような声色の
共犯者の言葉に僅かに嘆息するような息を吐いた。
「今、この場はあなたに任せます。
僕はお客様からの『ご意見』を伺ってから動くとしましょう」
次の『標的』も決めなければならない。
二人が特別な獲物を見付けたのであれば、話は別だけど。
グラタンfoodとカルーアミルクsakeを手に唖然としている。
/*カンカンカンカンカーーーン!
全員集合!お嬢様会議の時間ですわ!!
現在あがっている話題ですが、複数人での連絡の都合上、赤窓を使った方がスムーズかなと思ったのですがいかがでしょうか!
ちょっと空気ぶち壊しではなくって!?という感じでしたらわたくし引っ叩いてくださいまし!!!
/*
よくってよ!
どうせエピローグ入ったら独り言や秘話と混ざって大乱交ですわ!
双方に伝えた通り、スロウス個人としては【OK】でしてよ!
/*
こちらもよくってYO YO おまたせしました。
概要あらまし聞いておりますので、いい感じにまとめてまいりましょう!
「さて、お二方。貴方がたはこれより、船のための"もてなし"を受けていただくのだけれどね。
ワイルドなギャンブラー殿、それに皆を釘付けにした踊り子のきみ。
あなた方はなにより、お客様のモノであるから、彼らに気に入られるように仕立てなければ。
そこでだ、まずあなた方を選びになった方々、あなた方に魅了された彼らに。
あなた方のどのような姿を見たいのかというのを、見ていただこうじゃないか」
本格的な研修を控え、まずは従業員となった二人が、どのように求められているのか。
それを見せつけようと、観賞室の奥にVIP達の声を映写する。
その間にも陶酔したようにあなた達を見下ろし、肩に触れ、仮面越しの頬を撫で。
ほとんど裸と言っていいような体にきらびやかなアクセサリを付けた『グラトニー』は、
二人がどうなるかを想像しただけで、色素の沈着した男根をいきりたたせた。
『グラトニー』にとってもまた、研修は大変に楽しみなものなのだ。
/*
ということで、ご自身がどんな人物であるかはそれぞれがよくお知りだと思いますわ。
秘匿の形、或いはお客様の声というロールプレイで、どのような路線がいいかなどあれば、
ご本人からのリクエストなど募りたいところですの。
もちろん全ておまかせのコースにしていただいても、こちらで色々と工夫を凝らしますわ!
これは『エンヴィー』の特別研修コースとは別のお楽しみですのでお気軽に……。
その"剛直"を喉奥まで突き入れられ、地面に血泡を吐いた。
踊り子なのだから、傷を付けるべきではない。
いや、付けるべきだ。そういう存在にこそ映えるものだ。
―――どちらにせよ、見世物の真似事が得意なのだから。VIPルームに閉じ込めておくには勿体ないだろう。
仮面を付けた青年に向けられた声は、おおむねそのような意見で固まっていった。
内容は問わず、公開で辱めを受けるのが良いだろう と。
/*
ちなみに返答は「OK!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」です。
いい感じに回していくことをお約束いたしますわよ。
「ハッ……何を勘違いしてるか、知らねえが。
誰が望み通りテメェらの悪趣味に付き合うかよ……。
誰が都合よくテメェらの飼い駒になるかってんだ……」
お前らがそういうつもりなら。
こっちだって己の尊厳をテーブルに乗せる自由くらいはある。
目の前に映る悪趣味な客たちに向けて、画面越しに唾を吐く。
こちらが嗤うと、何が楽しいのかそいつらも笑声を上げた。
屈服を、屈従を、この獣に与えよ。
肉体と精神、貞操と尊厳、全ての官能的な破壊を。
口々に好き勝手なことを俺に求める、
ぜい肉を蓄えたこの船の賓客に思った。
コイツらの方が、よっぽどオレなんかよりイカれてやがると。
/*グラトニーによるナフとムルイジの希望の研修調査ロールと並行しつつ、こちらでドッキリ襲撃計画の進行もしておきますわね〜
という事で、ちょっと気になっていたことをナフから伺ったので代理で記載させていただきますわね
☆以下、ナフ側からの連絡☆
ロールは概要だけやり取りを済ませておりますわ!(ロール自体はペースがのんびりでゆっくり進めており全然終わってないので、合わせて変えていけるかとおもいます〜
対象者―――××様(魔術師じいやとムルイジPLさん誰が襲われるのかドキドキしながら待っててね)からは墓下に連れていっていただけるなら自由で大丈夫ですと頂いておりますわ!
☆
とのことでした!
/*
ひとまず連絡事項から!
把握いたしましたわ〜、順番的には実行はスロウスにお任せいたしましょうか。
それぞれで行われただろうロールをつつがなく受け継ぐためにも、この仕事請け負いましょう。
全体的にゆっくり進行しつつそのへんも依頼者とロールで出来ると自然なのかしら……。
ロールでやり取りはしたくないな〜! とかあったら言ってくださいましね。
/*
襲撃対象に関しては了解しましたわ。
その方は我々狼お嬢様が責任を持ってお連れするとして、
あとは担当者ですわね。
エンヴィーは休養日、グラトニーは研修として
そろそろスロウスも働くべきかしら?
せっかくならこうしたい、こうしてほしい等
ご要望があったら依頼者お嬢様も遠慮なく仰ってね。
多分これスロウスが何も考えず担当すると
かなりの割合で曇らせ及びメンタルリョナに振れるので…
/*
依頼ロールについてはもし抱えてる秘話とかが大変だったら
軽くフックだけ投げてもらうくらいでも全然大丈夫ですわ。
或いは客から指定があった事にしてもいいですわね。
色々とやりようはあるので
被襲撃側含む各々のこうしたいを極力尊重したく思いますわ。
「貴方たちは思ったより大変に手強いひとたちのようだ。
けれどね、この研修は全く意味のないものではないんだよ。"従業員"として必要なのさ。
自ら望んで、彼らのために働き、傅くことを当たり前としなくちゃいけない」
優しい手付きで二人の髪をそうっと撫でる。"準備"の為に不要な衣服は取り外し。
いかにも悪趣味な衣装や、毒々しい色の性玩具がモニターにうつされる。
見るに下品なローターから性器を象った尾付きのディルド、痛々しいピアス。
それは今仮面をつけた彼らのために用意されたものだ。
「せっかく二人いるのだから、ノン・ゼロサムゲームを講じるのもいいかもしれないね。
例えば双方の歯に、双方の毒そのものが解毒薬になるような毒を埋め込む。
手を縛り付けてワイヤーで固定し、向かい合わせる。口付け合わねば解毒は行えない。
牡犬が二人で睦まじくする様子は、客にも喜ばれるだろうね。そうしなければ、
君たちは死ぬ
」
――不意に二人の膝の裏をヒールが蹴った。躱すことをしてもいいだろう。
軽い蹴りが当たったなら、床に膝をついて跪くことになるだろう。
「己の命を優先した者から先に死ぬ。助け合う二人は、美しいだろう?」
後ろから蹴られ、グッ、と地面に這いつくばりながら牙を剥いた。
「最悪だな、テメエ……。
何が沸いてる脳してたらそんなこと思いつくんだよ……」
……悪趣味が過ぎる。ナフをチラリと見た。
「……こうなるなら、コミュニケーションくらいは取っておくべきだったな」
仮面を付けた、もう一人の"従業員候補"に顔を向ける。
その声は、その容姿は。見覚えがあったから。
露わになった身体を隠す事はしなかった。
それが今求められている動作ではない事を、青年は理解していた。
一方で、淫猥な玩具や衣装に興味を示さなかった。そういった物には疎かったからだ。
膝を蹴られ、床に膝をぶつけると その端正な顔が痛みに歪む。
「……おれは、毒の類が…あまり効かない。そういう体に、なっている。他の方法を、取った方が…楽しめるんじゃないか」
「………………」
観賞室の扉を背に凭れ掛かり、成り行きを眺める。
冷たく無感動な瞳がただ人間が当たり前に持つ権利を剥奪され、
人が人以下に堕とされるさまを見ている。
二人の"研修生"が妙な気を起こして逃げ出さないように。
静かに獲物を呑む機を窺う蛇が、
番人の如く、逃げ道を塞いでいる。
「だとよ。残念だったなァ?
そうなりゃオレはともかく、コイツの"研修"にゃなんねー。
そうだろ……オイ?」
裸に剥かれて、古傷まみれの肌が、床で新しい擦過を作る。
なんだっていい、コイツの体質とかも関係ねェ。
悪趣味に並べられたソレをブチ込まれるのも、
雄狗同士で何かをやらされるのも、ゴメン被る。
「おれは…、…あまり、面白みのない人間だと思う。
あんた達の、期待通りの反応が出来るかは…保証が出来ない」
同期―――と呼ぶのが相応しいかどうかはさておいて
彼とは違い、このような扱いを受ける事自体に抵抗はないようで。
「ああ、でも―――痛い事は、あまり得意じゃない」
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