人狼物語 三日月国


179 【突発R18】向日葵の花枯れる頃【ソロ可】

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【人】 室生 悠仁

 

  食卓に座れば、共に食事をする時間が始まる。
  いつも通りの談笑の中、いつも通りでないのは
  俺の心臓の鼓動と、俺の心のうちのみだ。

  話出すきっかけを探すように視線を向けた。
  トマト鍋を美味しそうに頬張る姿は
  いきいきとして愛らしいと思う。

  ─── 彼はずば抜けて容姿が良いわけではないけれど
  随所のパーツの配置が良く、整った顔だ。
  それでもそこまでモテる様子がないのは
  纏う雰囲気が二枚目より三枚目よりだからか。

  少し抜けてて、ばかみたいなところもあって。
  でも、そんなところも俺には良点に見えた。
  惚れた欲目なのだろうが、……好きだなぁと。
  感慨深げに心のなかでこぼした。
 
(0) 2022/10/20(Thu) 12:23:51

【人】 室生 悠仁

 

  食べている途中に告げると、もしかしたら
  食事をぶちまけたりと困ったことになる気がしたので
  一先ず食事が終わるまでは、いつも通りに
  話して、笑って、食べることに。

  水菜、しめじ、玉ねぎ、じゃがいも、そしてトマト。
  食材がふんだんに使われた鍋は
  この間カフェで食べたものと違って
  料理素人が作ったにも関わらず、大変美味だった。

  彼がいるだけで味の感じ方さえも変わってしまう。
  そのことが面白くて、声を漏らしそうになるのを
  皿を口につけることで回避する。

  俺だけがその意味を知る最後の晩餐は
  温かな雰囲気のまま進行した。
 
(1) 2022/10/20(Thu) 12:24:43

【人】 室生 悠仁

 

  食事も終わり、居住まいを正す。


   「 なあ、少し聞いてほしいことがあるんだ。 」


  本当なら顔を逸したいところを、
  精神力でもって抑えて彼の瞳と目を合わせた。
  少し色素の薄い瞳、普段なら吸い込まれそうなんて
  思うこともあるけれど。
  今はただ、その色が変わってしまうことが
  少しばかり恐ろしい。

  疑問の声を上げてこちらを見る彼に
  ひとつ、息を吸って、吐いて。
 
(2) 2022/10/20(Thu) 12:25:54

【人】 室生 悠仁

 


   「 俺、お前のことが好きだよ。 」


  俺と彼しかいない部屋。
  静寂の中に、ぽつりと告白の声が響く。
 
(3) 2022/10/20(Thu) 12:26:13

【人】 室生 悠仁

 
 
  ─── 言葉の意味を飲み込むためのような間があった。
  そうして、彼は首を小さく傾げる。
  どうやら、間を空けても意味が飲み込めなかったらしい。


   『 俺も好きだぞ? 』

  思った通りに理解していないという意味の
  言葉を吐き出した彼に、俺の頭の中で誘惑の声が上がる。

  わかっていないなら、そのままでいいんじゃないか。
  伝えるだけは伝えたんだ、そこからはもう
  頑張らずともいいのではないか。


  今更のような悪魔のささやきに、けれど俺は頷かない。
 
(4) 2022/10/20(Thu) 12:26:56

【人】 室生 悠仁

 

   ─── 決めたんだ。
  ちゃんと想いを伝えるって。

  伝えて、振られて、……嫌われて。
  そうして今後一切関わらず、
  彼から離れ生きて行くのだと。

  葛藤はあった。逡巡はあった。
  今まで通りで在りたいという、甘えた気持ちがあった。

  けれど、それはきっと永遠に
  彼を、そして自分を。
  裏切り続けることと同義なのだ。

  だからこそ、俺は言葉を重ねる。
  正しく想いが伝わるように。

 
(5) 2022/10/20(Thu) 12:28:19

【人】 室生 悠仁



   「 ちがうんだ。
     俺は、お前を。


         ─── 愛しているんだ。
 」
 
  
(6) 2022/10/20(Thu) 12:30:18

【人】 室生 悠仁

 
 
  その言葉が耳に入ると。

  少しして、彼は困ったように笑った。** 
 
(7) 2022/10/20(Thu) 12:30:44

【人】 室生 悠仁

 

  視界に入った彼の表情に、考えていた反応ではないと
  虚を衝かれた気持ちになった。

  本来、今俺がしているような表情を
  彼がするはずではなかったのか。
  それがどうして、まるで動揺することなく
  眉を下げた顔になるのかわからなかった。

  彼の性格を考えるに、真実を知ったとしても
  ひどい言葉を投げかけることはしないと思っていた。

  それでも、怒りや戸惑いを露わにするものと
  素直な感情を表すものだと、思っていたのに。
 
(23) 2022/10/22(Sat) 8:49:38

【人】 室生 悠仁

 

  慈愛のようなものさえ籠った眼差しで
  俺を見つめる彼に心がざわめきを覚える。

  なにか言わなければ、
  ─── 彼の口を開かせてはいけない。
  そう思考は確かに回っているのに、
  凍りついたように唇は戦慄くばかり。

  二の句が継げない俺の様子に
  彼は何を思っているだろう。
  眼差しをそのままに体感ゆっくりと
  形の良い唇を開いていくと、喉を震わせる。


   『 知ってたよ。 』

  
 
(24) 2022/10/22(Sat) 8:49:55

【人】 室生 悠仁

 

  聴こえた単語に、その意味に。
  俺の思考は止まり、ざわめいていた心も静まった。
  真っ白になった頭は「は?」というような
  疑問の声とも呼べないものしか上げられず
  彼の続く言葉を待つことしか出来ない。


   『 俺たち、どのくらい一緒にいると思ってるんだ。

     こんなに長くいて、
     わからないなんてことはないだろ。 』
  

  …… 思いもしなかったわけではない。
  バレている可能性にだって思考を伸ばしたことはある。
  けれど、彼は傍にいることを許してくれていたのだ。
  
  男が男を、なんて前時代的考えかもしれなくても
  恋愛対象としていない相手に想われていることなんて
  気持ち悪い以外のなにものでもないだろう。
 
(25) 2022/10/22(Sat) 8:50:21

【人】 室生 悠仁

 

  告げる彼はやはり困ったように眉尻を下げている。
  彼の多くの思考は把握しているつもりだったけれど
  今、何を考えているのか俺にはわからない。


   「 じゃ、あ。
     なんで離れなかったんだ。
     こんな、気持ち悪いだろう、男相手に。
     お前は女好きで、友達にこんな、 」


  想いを抱いている相手になんて。
  動揺は思考にも及び、言葉も判然としない。
  それでも、彼の考えていることを知るために
  拙くも言葉を吐き出していく。


   「 離れる機会なんて、いくらもあっただろう。
     それこそ、中学の時に、 」


  それとも、あの頃は俺の気持ちなんて
  知らなかったのだろうか。
  …… それとも。

  知っていて、離れないことを選んだのだろうか。
 
(26) 2022/10/22(Sat) 8:50:54

【人】 室生 悠仁

 

  ─── 俺のことを、嘲笑っていたのだろうか。
  そんなやつじゃないことは長く見てきて
  わかっているつもりでいても、
  後者だとするならそれ以外の理由が思い当たらない。

  俺の気持ちを知って、その上で
  眼の前で女性を口説いて、
  嫉妬させていたというのなら。
  それに一体、他にどんな理由があるというのか。


   『 好きだったんだよ、俺も。 』


  は? と二回目の声が出た。
 
(27) 2022/10/22(Sat) 8:51:06

【人】 室生 悠仁

 

  すぐさま『友達としてな?』と返ってきたので
  誤解をすることはなかったが、それでも
  俺は口元をへの字に歪め、目付きの悪い目で
  刺すように彼を見つめてしまう。


   『 想いには応えられなくても
     好きだったんだ、お前のこと。

     だから傍にいてほしくて、
     ずっと知らないフリをしていた。 』


  本音だろう言葉を零す彼はバツが悪そうにしている。
  今までにもそういう表情は見たことがあったが
  ここまで本心を伝えてくれたのは初めてかもしれない。

  初めての場面だというのに、心が踊るより
  動揺や混乱が脳裏を占めるばかりだ。
 
(28) 2022/10/22(Sat) 8:51:16

【人】 室生 悠仁


  最低だよな、と苦く笑う彼にその通りだと
  頷こうとして、…… 頷けずに彼を見つめた。

  俺の気持ちを知った上で、それに対して
  なんの答えも出さず。
  自分は同じ気持ちを返せないのに
  愛されていたいなんて。
  自分勝手で、酷くて、ずるいことだと感情が言う。

  しかし、それとともに冷静な部分も声を上げるのだ。
  なにも告げていないのに答えてほしかったなんて
  俺の思考回路だって、相当自分勝手なものじゃないかと。
  
  ─── 俺が勇気を出して、嫌われることを厭わず
  告白していたのなら、きっとこうはならなかった。
  
  ならば、彼を怒るのは筋違いというものだろう。
  
(29) 2022/10/22(Sat) 8:51:28

【人】 室生 悠仁

 

  …… 彼の手が持ち上がり、そっと俺の頬に触れた。
  こんなときなのにどきりと跳ねる心臓を
  気にもしないように、なにかを拭う動作で
  指が頬を滑っていく。

  どうやら、理性では理解していても心では納得できず
  気持ちのまま、瞳から涙がこぼれ落ちていたらしい。

  だからといって、自分を好きなやつに
  こんなことするなんてどうかしている。
  優しさのようで全く優しくない行為に
  俺は彼に恨みがましい想いを抱いた。


   「 …… ずっと好きだったんだ。 」
  
 
(30) 2022/10/22(Sat) 8:51:40

【人】 室生 悠仁

 


   「 お前の全てが好きだった。 」


  うん、と彼は静かに頷く。
  その間も涙を拭う手は止まらない。


   「 なのに、どうして。

     何も言ってくれなかったんだ ……。 」
 
 
(31) 2022/10/22(Sat) 8:52:22

【人】 室生 悠仁

 

  正しく恨み言が、ぽつぽつと溢れるように出てきた。
  彼はひとつひとつに頷いてくれる。
  そうして少しして一言、ごめんな、と
  謝罪の言葉を穏やかに零した。

  幾許かの間、俺はさめざめと涙を落としていた。
  彼は一瞬腕を持ち上げる動作を見せるも
  その腕が俺の体を包むこともなく、ただ
  頬を滑る雫を拭い続ける。

  越えてはいけない線が俺たちにはあった。
  そして彼はそれを、越えない選択をしたのだ。
**
  
(32) 2022/10/22(Sat) 8:52:40

『カズさん。急ぎで、ちょっと話せませんか?』

…こんな連絡して来るなんて、一体なんだろう?
ダンス関連のこと?
でもそれなら別に急ぎでもないだろうし……。

送られて来てから、随分経ってしまったかも。
今はもう話せるような状況じゃないかもだから
チャットだけでも返信しておいた。

「なに?どうした?」

その後、1分も経たない間に既読になった。
これは話せるってことで良いのか?

なんて考えていたら、電話が掛かって来た。

【人】 室生 悠仁

 

  某日、パンプキンタルトの美味しかった店にて。
  俺は一人、まだこの店で食べたことのないメニューを
  注文するため、カウンター席に座っていた。

  時間は前と同じように休日の少しピークから外れた頃。
  人が多いのもそこまで気にならないほうだが
  今日は静かに食べたい気分だった>>12

  デザートだけでなく、きちんとした食事を摂るため
  昼食を食べることなく来店したものだから
  俺の胃袋は空腹に鳴き声を上げている。

  泣いた子どもをあやすように、腹をひと撫ですれば
  SNSを見て既に決めていた本日の昼食予定のメニュー
  ジャック・オー・ランタン≠、
  やって来た店員に注文するのだった。
 
(75) 2022/10/23(Sun) 9:40:19

【人】 室生 悠仁

 

  先日、俺は愛しの彼に告白して振られた。

  とはいっても、当初は振られたといえるような
  はっきりとした言葉を貰えていなかった。
  彼の態度として俺がそう察知していただけで
  曖昧なまま話が進んでしまっていた。

  だからあのあと、きっぱりと気持ちに
  蹴りをつけるため、改めて言葉にしてもらうことした。


   「 この先、未来を考えても
     俺の方を向かないというのなら

     きちんと振ってくれ。 」


  涙で濡れた声で言うには少し恥ずかしかったが
  泣いてすっきりしたのか、淀みなく声を発せたと思う。
 
(76) 2022/10/23(Sun) 9:40:32

【人】 室生 悠仁

 
 

『 お前の想いには応えられない ───。 』  



  彼の声を思い出していた頃に、
  ジャック・オー・ランタン と名付けられた
  季節限定ハロウィンメニューが届く>>2:*1

  黄金色に光る卵の上では赤いカボチャのランタンが
  楽しそうに目を光らせて笑っている。
  もしかしたら時によって表情を変えていたり
  することもあるのかもしれない。

  そのお茶目さにくすりと笑みを浮かべて
  けれど写真を撮ることもなく
  スプーンを柔肌に差し込んでいく。

  抉られた黄色の皮膚からはきのこたっぷりの
  炒められた赤色のご飯が覗いた。
 
(77) 2022/10/23(Sun) 9:40:44

【人】 室生 悠仁

 
 
  ─── 写真を送る相手はもういない。
  とはいえ、別に彼との縁が切れたわけでもない。
  SMSを頻繁に送り合うことこそなくなったが
  きっと連絡すれば返事は返ってくるだろう。

  それでも、未だ燻った想いがもう外に出ることはない。
  子どもの頃から続いた長く重い片想いは
  やっと手放される機会を得たのだから。

  想定していたより穏やかに進んだ物事を終えると
  舞台の幕は下ろされ、客もいないそこには
  ただ一人の男が残ることとなった。

  再び同じ舞台で幕があがることは永遠にない。
  いつかこの傷口が痂になり、塞がったとしても
  前の形に戻ることはあり得ず、傷跡は残り続けるからだ。
  
(78) 2022/10/23(Sun) 9:41:00

【人】 室生 悠仁

  
 
  椎茸に舞茸、エリンギにしめじ。
  見ただけで様々な種類の食材が使われた
  このオムライスは、普段のものとは一味違うらしい。

  口に運びながらSNSで書かれていた内容を思い出す。
  しかし思えば、この店の普段のオムライスというものを
  知らないから比較をすることが出来ない。
  それでも、他の店で食べたことのあるものと
  大分趣が違うことはわかった。

  きのこに合うようにだろうか、クリーミーな味付けは
  まろやかに舌の上で踊り、きのことともに
  味覚器官を刺激してくる。

  匂いも芳醇で、視覚的にも楽しく
  五感に訴えてくる商品はこれもまた
  店長の手腕なのか、それとも他の社員のものか。

  今まで食べたどの食べ物よりも美味しい>>1:10
  とは言えないまでも、今まで食べたものの中でも
  美味しい部類のオムライスは。
 
  ─── それなのに、どこか味気なく感じた。
  
(79) 2022/10/23(Sun) 9:41:09

【人】 室生 悠仁

 

  恋の病とは度し難いものだ。
  勝手に燃え上がり、その気がなくとも溺れさせられ、
  思考を永遠に蝕み苛んできて。
  一度かかったら簡単に治ることはなく
  治療のための期間は数日から年単位まで様々に及ぶ。

  人生を振り回す大病は厄介に過ぎるが
  人は愛することをやめない。

  それは繁殖のためであったり、娯楽のためであったり、
  長い人生を生きていくためであったり。
  はたまた、なんの意味もないときだってあるだろう。

  俺の恋はどの部類だったのだろうか。
  人間の心は複雑で、全てを全て、
  言葉に当てはめることなんて出来やしない。

  俺はひとつの恋を手放した。
  わかっているのは、その事実だけだ。
 
(80) 2022/10/23(Sun) 9:41:48

【人】 室生 悠仁

  

  枯れた向日葵の花びらが散っていく。
  夏の季節が終わり、秋を越えて、
  もうすぐ冬の季節がやってくる。

  動物たちは活発だった動きを止めると
  長い休眠期間に入るだろう。
  やがて陽だまりのようにあたたかな
  春の季節がやってくること夢見て。


  瑞々しくも可憐な、新しい花が咲く日を夢見て。
 
(81) 2022/10/23(Sun) 9:42:22

【人】 室生 悠仁

  

  オムライスを堪能すれば、締めのデザートに入る。
  先日は店長拘りのパンプキンタルトを頂いたから
  次は違うものを頼んでみようか。

  店員を呼んだあと、注文している最中に
  ふと思い立って黒猫のホットココア≠燉鰍だ。
  気まぐれで愛らしいその顔を、今の心境で
  見つめてみたい気分になったから。

  さて、商品を発案した店員と話す機会なんてのはあったか。

  口に含む味はあの日飲んだものと変わらない。
  それでも、今日は黒猫が優しく
  愛嬌のある顔で微笑んてでくれている気がした。**
 
(82) 2022/10/23(Sun) 9:42:30
 




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