人狼物語 三日月国


221 Pledge ~sugar days~

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月が姿を変え、新たな一日が始まった。村人は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?

現在の生存者は、ルーリ、田臥 志麻、大守 威優の3名

――とある日――

[3週間ほど出張することになった。
支店の視察で西日本各所を回る日程だ。

関東ならば多少遠くても無理矢理帰るのだが
流石に西日本では、それも数日置きに別の県に移動するのでは、
強行軍は使えない。

志麻が専務付秘書ならば帯同できたのに、と
思わず考えるが現実は甘くないし、
その個人的感情だけで志麻にその役職を与えるのは
本来その職務で日々真面目に働いている秘書に対しても
転職活動を頑張る志麻に対しても失礼だ。]



 実家に帰るか?
 勿論、こっちにいてくれても実家でも
 夜には電話するよ。

 残業で食事に困りそうならハザマさんを
 呼んで作ってもらえば良い。


[勿論、掃除も普段通り頼んである。
3週間を過ごすにはこの家は広すぎるかもしれない、
とも思うが志麻の意向に合わせるつもりだ。]

[もうこの家は「志麻の家」でもある。
自宅部分はどこでも行き来できるし、
客間部分に友人を泊めることも可能だ。

暇つぶしになるかわからないが、
最近受けたインタビュー記事が載った雑誌や
学生時代に頼まれてモデルのようなことをした時の
コンポジットや写真集を引っ張り出して
ベッドの近くに置いておいた。

最近のものはともかく
学生時代の少し青臭さの残る己の写真は
気恥ずかしいものがある。
とはいえ、卒業アルバムも見たがった志麻には
新鮮に映るかもしれないと思って。]

[出張先から顔を見ながら通話できるなら――

邪なことを考えていることは、
まだ内緒だ。*]

── とある日 ──

[威優と出会ったのは夏の最中、
 それから一緒に暮らし始めたのは秋に差し掛かった頃。
 番になった後からは然程時間を置かず、
 隙間を縫うようにして逢う時間を作っていた為に、
 その出張報告には驚いたものだった。]


  三週間……?


[それほど長い間、威優と離れるのは初めてで。
 互いに共に過ごす時間を大事にしていたのだと知る。
 プライベートならともかく、
 仕事での都合ならば口を挟めることもないから。]


  ふぅん……、

  そうだな、週末は久しぶりに顔出すか。
  ……夜には戻ってくるけど。


[威優が見たがっていたアルバムを
 取りに戻るのも良いだろうと帰省の案に頷いた。]

[両親も莉久も、威優と暮らし始めて以降、
 心配しなくてもいいと志麻が実家に戻ることを
 気遣うようになり、以降、実家に顔を出す機会は
 少しずつ減ってきている。

 それでも、威優が仕事で遅くなる日や、
 数日間の出張の時などは戻ったりもしているが、
 通える距離でもあるから夜にはこのマンションに
 戻ってくることが殆どだった。

 ────というのも。

 最初はこの広さに落ち着かなかった志麻も、
 今ではベッドやタオル、威優の衣服に残る
 彼の香りがないと恋しくなってしまうから
 と、いうのが理由だ。

 実家に泊まる時もこっそりと、
 威優のシャツを拝借してしまう時も稀にある。]

[威優が居ないというのなら掃除は最低限に済ませて、
 ハザマさんに暇を与えることも提案しつつ、
 一人で集中して試験勉強に精を出すのもいいだろう。]


  三週間なんてあっという間だけど、
  威優が寂しがらないように
  オレが声を聞かせてあげるよ。


[見送るときにはエレベーターを待ちながら、
 頬にキスを送り、それだけじゃ物足りず
 人目がないことを理由に、口付けを交わす。

 もちろん出かける前の日の晩には、
 いつもより長く抱き合って
 こっそりと威優に変な虫がつかないように
 肩口に噛み跡をたっぷりつけておいた。]




[────そんなことを言っていた口がぼやく。]



 

 
 

  まだ一週間しか経ってないのかよ……。


[スマホのカレンダーを見て威優が発った日を数える。
 どう数えてもまだ7日しか経っていない。
 あれから毎日通話はしているが、声を聞くと
 顔も見たくなるし直接触れたくもなる。

 一人でやる勉強にも少しずつ飽き始め、
 暇潰しに威優が掘り出してきた学生時代の写真集や
 (なんとあの男、写真集があるのだ!)
 インタビュー雑誌をキングサイズのベッドに
 存分に広げながら、ばふんとクッションに沈んでいた。*]

―― 一週間後 ――

[旅立つ前に齧歯類の本気を見せられた肩は
いまや内出血の点が少し見えるだけ。
歯型は消えてしまったので、たとえ着替えを誰かに見られても
それが番によるマーキングだとは気づかれないだろう。

彼の頸には一生消えない痕があるのに
どうして己には残らないのか。
触るだけではどの位置かも特定できないことが悔しい。]


 ふーーーー……


[逢えない時間はまだあと2週間ある。
だが仕事は一週間でもかなりハードで、
その疲れは最高級のホテルの寝具や食事でも取れない。

志麻が足りない。]



 ――もしもし志麻?


[電話を掛けて空振りになるのが嫌で、
いつも先にメッセージで都合を確認してから掛けるようにしている。]


 夕飯はもう食べたか?
 
 ……俺は今日は少し胃の調子が悪くて、
 部屋でとらせて貰うことにしたんだ。

 流石にね、各支店それぞれ気合を入れてくれてるのは
 わかるけど、毎日続くと重くて……ごめん、愚痴。


[ルームサービスで頼んだ中華粥の器はもう下げてもらった。
基本的にはもう誰とも会わないので、
シャワーを浴びて寝る体制を整えてから
電話をすべきだったかもしれないが、
一刻も早く志麻の声が聞きたくて焦ってしまった。

ネクタイを抜いてドレッサーに置く。
鏡に映るのは疲れてクマのある顔。

こんな顔、志麻には見せられないなと思う癖して
志麻の顔は見たいのだから我儘なものだ。*]


[先程メッセージが届いていたから
 そろそろ電話が掛かってくる頃だろう。
 ベッドで手持ち無沙汰にごろごろと寝返りを続ければ、
 広げたままのインタビュー雑誌が手の甲に当たり、
 横向きに体勢を変えてパラパラとページを捲る。

 インタビューの内容は殆どが仕事の内容に関しての
 ことばかりだったが、中にはプライベートなことまで
 踏み込んでいるものもあった。

 『──大守家は番を大事にすることで有名ですが、
  威優さんには心に決まった方は、
  いらっしゃるのでしょうか?』

 まだ自身とのことは対外的には発表もしていない。
 発表したところで、βの一般家庭に生まれた
 志麻のことなど名前が上がるはずもない。
 でも、番が出来た報告くらいはしているだろうか。

 質問の続きに目を通そうとしたところで、
 スマホが小刻みに震えた。]

 
  威優だ。


[着信画面を確かめれば件の人物の名前が表示されている。
 名前を見ただけでも心が弾む。
 思わず表情を綻ばせ、通話ボタンを押した。]


  もしもし? 威優?

  うん、食べたよ。
  今日は牛肉のフォーと生春巻き。


[第一声が夕飯の心配であることにくすりと笑う。
 出会った当初から食べ盛りであることは知られている。
 一緒に暮らして以降は冷蔵庫の貯蓄も増えた。]

[出張に出かけてからは会食も多いのか、
 電話が来るのは遅い時間になってからだったが、
 今日はいつもより少し時間が早い。
 だが、それも理由を聞けば納得した。]


  あー……、メインディッシュも続くとたまに
  さっぱりしたものが食べたくなるよな。

  ……大丈夫?

  愚痴ぐらいいくらでも聞くから、
  話していいよ。
  

[声の覇気の無さにスピーカーに耳を近づけてしまう。
 音声だけでは顔色も伺えないから、
 せめて呼気でその様子を図ろうと。]


 
  ……こういう時に、顔が見れれば良いんだけど。
  声だけだと、顔色も見えないな。


[ビデオ通話を殆ど使わないせいで、
 その機能があること自体も、
 すっかり頭から抜け落ちてしまっている。*]

[インタビュー記事が載っている雑誌は
政財界向けの情報誌の側面が強く、基本的には事業の話題で
構成されている。
だが「大守の次期社長が最近夜遅くに見かけない」という噂が
あるからか、今回は珍しく踏み込んだ質問をされた。

事前に打診があったものではない。
恐らくインタビュアーの独断だ。

だから、己としては回答自体を拒否する権利があった。]


 『そうですね。他の親族同様に、これまでの慣習通り
  番の発表の場は設けたいと思っています』


[シンプルに答えて。
後は微笑んで口を噤んでいた。

「そうですね」は単なる相槌にも使われる「肯定」の言葉。
日本語は便利だ。

発表の場を設ける、と明言することで、
その前に「飛ばし記事」でも上がろうものなら潰す、という
牽制の意味も込められている。

もし番の存在を掴んでいたとしても
(そもそも取引先の「もう一軒」を「家で番が待っていますので」と
断っているのだから、そこから知られていても不思議はない)
発表までは明かさないという意思表示でもあった。]

[守りたい。
――志麻との平穏な蜜月を。]


 ああベトナム料理も良いな。
 そっちに帰ったら二人で色んな具を入れた生春巻きを
 作りたい。


[食べたい、よりも作りたい。という気持ちが出て来たのは
志麻と一緒に暮らすようになってから。

二人でした手巻き寿司もトルティーヤも楽しかったし、
オリジナル生春巻きを作るのもきっと楽しいだろう。]

[つい弱音が零れれば、心配の声が返る。
ふう、と溜息を吐いて、ハンズフリーにしながら
衣服を脱いでいく。
電話の向こうには衣擦れの音が届くか。]


 志麻の顔を見たら元気になるけど、
 ちょっと今の俺の顔は見せられないな。

 好きな子にはいつだって「かっこいい」って思われたいから。


[カチャリとベルトの音が鳴る。]



 志麻。
 ……この一週間、一人でシた?


[唐突に声が低くなる。]


 志麻の……感じてる声が恋しい。


[切なく訴える声は何時になく弱く響いた。
瞳に慾が灯り口元が弧を描いているのは、
ビデオ通話ではないので見えていないだろう。*]



  そう、パクチーとか酸味好きなんだよね。


[食べたものを挙げれば作りたいと返答が返る。
 食べたい、ではなく作りたい、というのが威優らしい。
 彼の根本には「喜ばせたい」があるのだろう。
 それとも「一緒に」のほうに重きがあるのか。
 くすりと笑い、いいよ、と応じる。]


  エビとアボガドが一番好きだけど、
  スモークサーモンときゅうりとか、紫蘇とか、
  チーズにささみ、豚しゃぶもいいかもな。

  威優は辛いのも大丈夫でしょ?


[好き嫌いがないと作る幅も広がって楽しい。
 手巻き寿司の時も、自分で巻く行為を物珍しそうに
 楽しんでいたから、きっと作る工程は好きなのだろう。]

[声に耳を傾けつつ、インタビューの先へと目を落とした。
 是とも否とも取れるような絶妙な回答。
 さすが、こういった手合いには慣れているのか、
 躱し方が上手い。
 出会った頃の腹の探り合いを思い出してまた笑う。

 答えを明確に示していないのは、
 会社に伏せている自身を慮ってのことだろう。
 
 感応のいいマイクが衣擦れの音を拾っている。
 着替えている最中なのか、少し声が遠い。]


  ……なに?
  そんなに頼りない顔してるんだ。
  それは返って見たくなるけど?

  疲れてるときほど、
  愛しい恋人の顔見たくならない?


[くすくすと笑いながら、雑誌を閉じると。
 表紙には穏やかに笑う威優の顔が映っている。
 傍らにある写真集と見比べると学生時代の頃から、
 大人びた顔つきではあるものの、
 随分と精悍な顔つきになったものだ。]

[不意にスピーカーの向こうの声が低くなった。]


  ……ぅん?


[シた?という問いかけに首を傾げた。
 続いた欲求にぞくんと腰に響くような感覚を覚える。]


  ……ッ、……、
  さぁ、……どっちだと思う?
  
  感じてる声って、どんな?


[表紙の端正な顔立ちを指でなぞる。
 写真の威優は同じ表情のまま動かないことが口惜しい。
 機械音で濁りつつも威優の声は一瞬で、
 自身の脳髄を蕩けさせるみたいに甘く響く。

 無意識に舌が覗いて、渇いた唇を舐めた。*]

[刺激があるものが好きなのは何とも志麻らしい。
情事の際に少し痛くしても、寧ろより感じているように
見えるのも関係しているのかもしれない。]


 巻くものによってはサンドウィッチみたいになったり
 クレープみたいになったりするんだよな。
 流行ってると聞いたことがあるよ。

 ギリシャヨーグルトとバナナとか。
 ハムとチーズのブリトー風とか。

 辛いのも普段は平気だよ。
 コチュジャンでトッポギ風になるっていうのも見た。


[手を出してみたら料理はかなり楽しいものだった。
志麻が美味しそうに食べている姿を見るのが好きだから
余計頑張れるというのもあるかもしれない。]

[今は少し胃が疲れているが、
食事の話題で気分が悪くなる程体調は悪くない。
特に今日は夕食を外で食べなかった分、
体力を温存出来ている。]


 恰好つけさせてくれよ。
 まだまだ惚れて貰ってからじゃないと見せられないな。

 うん。疲れてて愛しい恋人の顔が見たい。
 後で写真送ってくれるか?


[本当は動画が欲しいが贅沢は言わない。

己の写真は残してきたものの、志麻の卒業アルバムは
タイミングが悪いのもあって出張の荷物に潜りこませられず、
新規の供給に飢えている。]

[――そう、例えば電話越しに聞く志麻の善がり声とか。]


 シてて欲しいなって思ってる。

 俺はシたよ。
 志麻のちいさな口をこじ開けて、全体を舐め回す時に
 鼻から声が抜けて膝がすぐガクガクする志麻の姿とか、
 乳首が出てくるまで爪でカリカリして引っ張る時
 声が上擦って尻が揺れちゃう志麻の姿とか
 俺のを咥え込んで幸せそうに甘く喘ぐ志麻の姿とか

 思い出したら、すぐ、


[ハンズフリーは続けている。
声が熱っぽくなり呼吸が荒くなっているのが
電話の向こうにも聞こえているだろう。]



 聞きたい。
 志麻が自分で胸やペニスや尻の孔を弄って
 気持ち悦くなってる声。


[今は触ってやれないから。
自分で慰めて啼いてほしいと請う。**]

 




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