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【人】 田中 天美ふふ、遊んだなあ。 [伸び切った声を漏らす隣に笑う。本当にここ数日遊びまくった。行き当たりばったりの予定がここまで充実したものになるとは、山を目指した時には思いもよらなかったことだ] お、深江、ここは肌の病気に効くんやって。 あとは生活習慣病だと。 贅沢したし丁度ええな。 [ご馳走も毎日食べとるし、とくつくつ喉を鳴らす。病気に縁のない身と知っていても、会話はまるでただの人間と変わらない。そんな風にして生きてきているからおかしいとも思わない] (233) 2023/03/14(Tue) 6:05:05 |
【人】 田中 天美[そうやって他愛無い会話を繰り返す内に、男女の切り替えの知らせが入った。一旦上がるも、でも折角来たんだからともう一つぐらいは入らないと損な気がする。 狐で入るならそりゃ貸切だが、内湯の檜風呂も捨てがたい。ちょっと悩んだが、どちらともなく口にするのは] まあ、悩んだ時はどっちも行きゃええな。 [愉快げに笑うと目を合わせる。湯上がりで普段よりちょっとすべすべしたような気がする手を握って引っ張っていく] (234) 2023/03/14(Tue) 6:05:41 |
【人】 緑山 美海これはこのキャンプ場で働く1人の従業員のお話だ。 朝早く出勤し、受付に行き、帳簿を確認する。それがその人のルーティーンであった。 その日の宿泊客の名前や人数を把握する、それは当たり前のこと。 受付の帳簿、普段は個人情報を守る為に閉じたままになっているそれが、珍しく開きっぱなしになっていた。 『誰かがそのままにしたのかな、後で注意しなきゃな』と思いつつ、視線をやれば。 ”緑山” の名前の横に チェックアウトを表すレ点が印されていた。 (236) 2023/03/14(Tue) 8:39:50 |
【人】 緑山 美海数日前に自身が受付を担当した、仲睦まじい夫婦。 その人たちの幸せそうな笑顔と左手の薬指に煌めく指輪が、何故か記憶に残っていた。 『楽しんで頂けたのだろうか』 受付をした時の光景を思い出しながら、そのことを考える。 あれだけの大荷物だ、きっと早くから準備をしていたに違いない。 お客さんの笑顔を見るのが好きなその人は、帰る時にも会話をしたかったな、と。 少し名残惜しい気持ちを抱いたが、人には人の都合があるし仕方がないと諦めた。 奥から同僚の1人が出てくれば、声を掛ける。 「あのご夫婦、もう帰ったんですね」 『あれ?今日は私が担当なんだけど、チェックアウトの受付なんてしたかな』『どのご夫婦ですか?』 「ほら、お揃いの赤い髪をしたご夫婦」 「紅葉みたいに綺麗な髪をしてたろ、目立つから記憶に残ってたんだよな」 同僚は不思議そうな顔で首を傾げ、口を開く。 (237) 2023/03/14(Tue) 8:43:16 |
【人】 緑山 美海『そんなお客さん来ましたっけ?』 「············え?」 ───受付の机上には、薄い茶封筒の中に入った宿泊費とホトケノザだけが残されていた。* (238) 2023/03/14(Tue) 8:45:06 |
【人】 黒崎柚樹────……ん……。 [目覚めて見上げた天井は、丸太が組み合わさった、もういくらか見慣れたもの。 武藤の部屋でも私の部屋でもなかったことには、さして驚きはしなかった。 いくらか身体が重いのは、昨日、ボート漕ぎとか魚捕りだとかの慣れないレジャーをそれなりしたのもあるけれど、それ以上に、あれから更に(2)1n4回、身体を繋げ続けたのが大きかったのだと思う。 どうにも気持ちが昂ぶってしまって、もっともっととねだったのは、私の側。 ごめん、武藤。きっと疲れてるよね。 でももう、けっこう良い時間になっているようだから。] ……武藤、おはよう。朝だよ。 [このキャンプは、やっぱり、"鍵を返して"おしまいなのだろうから。 なら、ちゃんと後片付けしてからチェックアウトしないとね?] (239) 2023/03/14(Tue) 16:08:39 |
【人】 黒崎柚樹[朝食は、ありものを全片付けようとした結果のホットサンド。] ……合わせてもだいじょぶかな……。 カレーは懐が深いから、きっといけるよね? [と、冷蔵庫内、1食分にも満たないくらいに残っていたカレーと、昨夜の残りのわさび風味のポテトサラダ、それと、とろけるチーズをぎゅうぎゅう詰め込んで焼いてみた。 わさびがカレーの味と喧嘩しないかなというのが心配だったけど、どうだろう。全然気にならなかった。良かった。 卵も数個残っていたからオムレツに。 ちまちま残っていた野菜も全部刻んで炒めて混ぜて、丸い形のスパニッシュオムレツ風にした。 あとは……と、残ってたジュース出したり、ココアも作ってしまったり、果物全部並べたり。 ちょっとばかり無節操かつ盛り沢山な献立だったかもしれないけれど。] (240) 2023/03/14(Tue) 16:09:21 |
【人】 黒崎柚樹[────そして最後、出立前に身支度を調えておこうとした私は、自分のドラムバッグを開いて幾度も瞬いた。] …………え……。 [だって、無かったよ?朝には。 朝に私、寝間着から一度部屋着には着替えていて。その時には、こんなの無かった。] 武藤ごめん、洗面所使わせて15分くらい! [言い置いて、色々引っ掴んでバスルームに駆け込んで。 15分どころか(21)20n30分くらいかかってしまったかもしれない。] (241) 2023/03/14(Tue) 16:10:06 |
【人】 黒崎柚樹[次に武藤の前に立った時の私は、春色の淡いピンクのブラウスに先週買ったばかり──武藤にもまだ見せてない──透け感のある淡いグレーのプリーツスカートを身に纏っていた。 ブラウスの下は、しっかり、"寄せて上げる"系。 ごくごくごくごく、うっすら、胸の膨らみが、あるかなあるよねあるといいなくらいの効果でしかないものの。一応。 薄く色づけた瞼や唇も、なんだかすごく久しぶりな気がしたお化粧だった。] えと…………、かわいい……かな……。 [現実世界ではもういくらか慣れた格好ではあったけど、今は、なんでかひどく恥ずかしくて。 もじもじしながら、でもこの格好で帰るねと、武藤を見つめて微笑んだ。] ────それじゃあ、帰ろうか。* (242) 2023/03/14(Tue) 16:11:05 |
【人】 鈴木 深江[はしゃいで騒いで楽しんで、 こちらに飛び込んできた身を受け止めて共に沈んだり 用意周到を褒められ得意げにしたり 施設に同じ感想を抱いたり 共に心地よさに身を沈めたり 永く過ごしてきたと思えぬほどに、 今の一瞬一瞬が大切だと思えている。] 肌の病かぁ、そら浸かっとかんと。 狐の毛並みもきれいになるんかな? ふふ、天美が贅沢病なったら まずは俺以外の飯しばらく禁止にしよな。 (244) 2023/03/14(Tue) 17:55:12 |
【人】 鈴木 深江[温泉に着く頃には陽が落ち始め、 空には夜が訪れかけていた。 夕闇のグラデーション、 そこに浮かぶ三日月は細く、 何かの爪痕のようにも見える。 あれが狐の爪痕だといいな。 そうしたら、 天美が死んでも、 空を見上げたらいつでもきっと、 思い出せる。 だめだな、まだ感傷的が続いている。 けれどきっと、 明日にはまた能天気に戻れるだろう。 でも自分たちには時間があるのは本当だ。 無限に見えて有限の。時間制限が。] (245) 2023/03/14(Tue) 17:55:26 |
【人】 鈴木 深江帰ったら山菜のあく抜きして、 明日にでも食おうな。 そんで、その後はさぁ、 [そうして明日の予定を立てる。 キャンプ場を出た後の予定も。 一度家に帰って、それからどうしよう? また別のところに旅行に行こうか。 次は海かなという話もしながら、 きっと夜は更けていく。 キャンプ場をあとにするのが惜しい気持ちはあれど、 また来たくなれば来ればいいし、 二度と来れないとしても思い出す事はできる。] (248) 2023/03/14(Tue) 17:56:55 |
【人】 大学生 寿 達也― その後 ― え、特賞!? [授業が終わり、スマートフォンを見れば着信記録がついていた。 誰だろうとこちらから電話をし直すと何かの事務所に繋がって。 あちらから言われた内容に、思わずスマートフォンを取り落としそうになった。 大手のフィルムメーカーが主催している写真コンクール。 一般募集されてはいるけれど、プロも出品ができるということでなかなかレベルの高いコンクールに、要と行ったキャンプでの写真を出品したのだ。 もちろん公序良俗に反するようなものではなく、河原の裸足の要を写したものだけれど。 よくて入賞できれば、程度で送ったものだったのに、まさか第一席を受賞するなんて。 驚いている自分をよそに、電話は続いていた] (250) 2023/03/14(Tue) 17:59:30 |
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