【人】 帰宅部 津崎絵音── 放課後/2-C教室 ── [ 廊下から聞こえる足音も、意識の内には無い。 下校していく生徒の姿を見ているようで見ていない。 それでも名前を呼ばれれば、我に返るというものだ。>>510 窓の向こうを見つめることを止め、 目前に立ち並ぶ誰も座っていない幾つかの机を捉えた視線が、 ゆっくりとドアがある教室の右側へ移動して、 ああ、開いたままだったんだと思う余裕も無く>>508 ──声の主の姿を認識し、目を見張った。 今日一日、画面の文字列としてすら近寄れなかった相手が 気がついた時には既に境界の内側に。>>509 饒舌な軽口はおろか、自分からは声一つ発せられなかった。 ああ、しっかり姿を見たのは初めてかもしれない。 本当に姉に似ていない。 けれど、嬉しそうに駆け寄ってきた時の面影は今もそこに 勝手に見いだせてしまうものだから…… 今まで逃げていたことなんて、その瞬間は忘れてしまって。 ] (532) 2022/10/16(Sun) 18:33:21 |
【人】 帰宅部 津崎絵音[ 問いを、向けられてしまった。 その口調は昔に近いように感じられたのだけど、 やっぱりその声を、昨夜グラウンドで聞いた気がする。 なんて、お互い様だとは知らずに確信を強めながら。 低く喉で嗤った音は、聞こえてしまっただろうか。 ] …………、 [ 教室を辞めたことは母から知るしかなく、>>511 顔を合わせた時には慣れ親しんだ呼び方も変えられていて それでも優しく微笑んで、何も言わなかった「絵音さん」は 「秋氏vちゃん、と 小さい頃のようにはいかない距離感を分かっていながら 出来るだけあの頃のように、と接したものだった。 今は口許は覆い隠され、 自嘲気味の歪む笑みを見られることはない。 認識すらされたくなかったのにな。 夏実の時もそう、上手くはいかない。 本当に逃げるなら、学校を辞めるか死ぬべきだった。 ] (533) 2022/10/16(Sun) 18:34:10 |
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