69 【R18RP】乾いた風の向こうへ
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─── ご結婚、とでもなれば、
別なのでしょうね。
……なにか、あったのですか?
[ あまりに突然の純粋な問いかけに、
少し怪訝な表情を返した。
彼女の父になにか言われたり、
勘付かれたりしたのではないか。
ふと、そんなことを思う。
勘、と言うものは、侮れないものだ。
]**
[ できることなら対等でありたい。彼が夜に生きる自分を気遣うように、彼が生きる昼にも寄り添いたい。自分より限られた命の彼だからこそ、彼のままに生きて貰いたい。夜に生きて欲しい訳ではない。
昼に添うことやんわりと敬遠される度、それが何が由来であるかわかるだけ、彼への負担が心を塞ぎ、渡れない種族という名の河を眺めるような心持ちになる。
彼が自分を尊いものの様に扱うから傍にいたいのではなく、同じ卓で囲む食事を美味しいと思い、同じ想い出の酒の栓を抜き笑いあえるからこそ傍にいたい。
ダンテが女性を恋慕の対象としており、意識してかそうでなくてか、まるで自分をそうであるかのように扱うことは彼の好意であることぼんやりわかる。けれど自分は肉体だけでなく女性でないから座りが悪い。
それならばいっそ、女性のままで居て欲しいと願ってくれたらいいものを。そうしていたならやがて、身体に馴染んで彼が望むように振る舞えるだろう。]
[
、おかえり、という何気ないひと言にじわりと気持ちが暖かくなる。嬉しい──手放したく、無い。]
……そうだね、アンタルは魔法が使える人だけれど
俺は使えないから、なんだろ『防御力アップ』
みたいな?
例えば魚屋さんとか肉屋さんとか、刃物を使う
職業のひとたちは、傷の治癒が早くなる指輪を
つけていたり、いっそ『指が吹っ飛ばない魔法』
をかけた指輪を全部の指に嵌めてる魚屋さんに
あった事あるよ!
結構自由なんだよね〜面白いよね、魔法って
[空間を繋ぐ魔法で、会話できたりもする。自分は母や妹とそうやって会話をした事もあった。ただそれは、逆に寂しさが募るから、もう使ってないのだけれど。]
.
[試験の時のダレンの働きに惚れ惚れした事をで思い出した。情報収集力というのか。]
(自分は目の前に差し出されたモノの良し悪ししかわかんないもんな。……むしろ好き嫌い、かも……)
……宣戦布告、は、そっか……そうだね
(ここに戻って来ること自体がそうだよなって気づいてはいたけど。わざわざ荒立てる事もない。ダレンに負担がかかるんだ……
だから、ホントは今すぐ手を離すのが、お互いの為にはいいんだよ、ね)
[この関係を解除する『理由』を問われたら、全部話さなくちゃいけなくなるだろう。それは、躊躇われた。失望されたくない、ならば、せめて仕える意味がある存在で居続けなくてはと、焦ってしまった。
主人想いの従者の気持ち
にはまるで気づけぬまま。]
──ごめん!カラ回っちゃった。ひとまず明日は
『アルフシルバー』行って、他にも布製品
見て回ろう!
あ、そうだあとお米……買い忘れてたんだよね
また忘れないようにしないとな〜 *
.
街に下りないなら、城の中庭にカフェがあったよ。
[ お互いの声が既に眠い。生垣が整えられた庭園に、ガーデンテーブルが並べられているのを見た。
話し難い事を話しているのだと、跡切れ跡切れの彼の言葉からわかる。まるで告解を聞いているかのようだ。欲深いならよほど自分の方だと言うのに、どうして彼が罪を背負っているように感じさせてしまうのか。
彼があの日以上に踏み込むことを望まないなら、ただ傍に居られればいいと思った。ひとのこころは流れる川のようにうつろいやすい。]
僕は夢だとおもった。
[ 今。彼が自分を好きかと問うたから、受け取られなかった想いのあの日はやっぱり夢だったのだろうと閉じた目の奥が眩む。
ぎこちなく彼が自分を抱く。いつもより一回りも小さな身体は何の抗いも見せず彼の腕の中にすっぽり収まる。これもまた、夢なのだろうか。夢になるのだろうか。人の心は移ろいやすい。
頬を冷たい雫が伝い、それに気付いた時には道筋が出来たかのように溢れて流れる。
やがて頭を押し当てた、彼の胸元の布地に染みてゆく。]**
[日常生活に魔法を活用する例を聞いて感心しつつも、魚屋の例には笑ってしまった]
なるほどな。
そういう類なら、重い武装が軽く扱えるとか、
刃の切れ味が落ちにくくなるとか、
動いても音が立ちづらくなるとか、
そういったものが戦闘向きだろうか。
[戦闘に関わることが真っ先に浮かぶのも、やはり職業柄だろうか。執事を志したことがあるとはいえ、根はやはり兵士なのだった。
その試験会場では主に気に入られていたようだが、そんなのはお互い様なのである。
ダレンにとっても、主の天真爛漫さと疑う余地のなさが心の支えだったわけで]
アンタル殿なら疑わず受け取ってくれそうだな。
明日、持っていくかい?
他のご兄弟は、信頼できる者とできない者を
一人ひとり見極めていかなければならないだろう。
[菓子作りの好きな主のこと、親しい兄弟に差し入れたいのは本心だろうとダレンは提案した。
明日の話には微笑んで頷いて]
正確な場所はわからないが、看板は出ているようだし。
探してみようか。
市場からも遠くないと思う。
そうだ、米もだったな。
そうしたら、今日は早めに休んでおこうか?
[明日も今日と同じくらいあちこち歩くことになりそうだからと問いかけて。
己の寝室はどこだったろうかと思えば、自然と視線が廊下に向いた]*
うん、わかった。
そしたら日の出前に起きれたら出かけよう
せっかく日よけも買ったしね
[ 勝手に采配してしまっていたが、彼が言うなら、朝の暑くなる前の空気は気持ちが良さそうだと思える。日傘もあるから急いで戻れば大丈夫かもしれない。
彼の気持ちなんて自分は少しもわかっていなくて。ただ大切にしていたら自分の気持ちがが少しでも伝わって、振り向いてもらえるかもなんて一方的なことばかり考えていて。
ヴィだって自分に何かしてあげたいと思ってくれていることを、なぜか遠慮と言う形で避けようとしてしまっていた。遠慮なんて慎ましいふりをしながら、享受できるものは全部自分は受け取っていたくせに。*]
[ 自分の一方的な告白をヴィは黙って聞いていて、そのあと一言、彼は夢だと思ったと返した。
その声はやっぱり沈んで聞こえて、それどころか泣きそうにさえ。]
……一度もらった言葉を疑ったわけじゃなくて
僕が君の嫌がることをしてしまいやしないかって
結局また許しが欲しいだけなんだよ なんども
[ 自分がヴィを腕に閉じ込めたなら、彼は何の抵抗もせずされるがままにしてくれた。サラサラとした髪が鼻先に触れて、ヴィは一層潜り込むように自分の胸元に顔を寄せた。]
君が好き
[ 好きな人を抱きしめているのに、なんで泣かせるようなことをしてしまうんだろう。部屋着にしていた薄手の生地に冷たさが伝わり。ヴィの涙だと思った。]
[返ってきた答え
には感心してしまった。思わず間抜けに口をぽっかり開けていたのをモグッとして]
……なぁるほどなぁ〜!そっかぁ!すごく良いね!
そういう感じ!
……ふふ、ダレンの真面目さ?っていうのかな?
ふとした事でもそうやって出るね。
そういうとこ好きだな!
(うん、普通に言えるね。大丈夫)
[この恋心を持つ負い目が、好きな人に好きと言えなくなるなら困りものだなと思ったけれど、そうでは無さそうで。少し心は軽くなる。]
.
君は僕が好き
もう聞いたりしない
[ もう一度ヴィの髪にほおを寄せ、彼がじっとしたままならそのまま眠る**]
──えっ、いいの……?
[菓子類を持っていくか、と問われて
さらに心が逸ってしまう。
自分がこの別宅に籠もった時に気にかけてくれた兄はもうアンタルしか残っていないけれど。まだあったことの無い兄弟にも会えるならば、会ってみたい、本当は。]
すごい、ありがとう、ダレン……!
うん、じゃあ早く寝ないとね!
俺もお菓子作んないと……何にしようかなぁ〜
[の問いかけに呼応して。そうだ、他にもシーツを敷きにいかなくては、とダレンの部屋になる客間に案内する。
もっと小さい子どもだったら、一緒に寝られたかなぁ等と一瞬よぎるけど、これは良くない気持ちのような気がしたので掻き消した。]*
.
[思いつきに感心されると照れ臭くなって、ダレンは頭をかいた]
そ、そんなに真面目だろうか……?
身につけたい効果と思って考えたのだが。
[生真面目とか堅物とか、あまりいいニュアンスで言われたことがなかった。兵士としては良いことなのだが、私生活においては、と。
だから素直に好意的に評価してくれる主の態度は嬉しいものだった。
嬉しそうな主には微笑み返して]
アンタル殿は本心から
ハールーン殿が大切なようだった。
有事のときに頼れる相手だと思うよ。
[一度会ったきりだが、そのときの印象で言う。
もしそうでなかったときは、そのとき考えればよいか、と彼に関しては気楽に構えていた]
[客間に案内してくれた主がシーツを敷く気なのには苦笑が浮かぶ]
どちらが従者だかわからないではないか……。
でも、ありがとう。
[これから毎日、どっちが先にベッドメイクを済ませるかの戦いになるのだろうか。それはそれで楽しそうではあった。
主が小さな子どもで、今と同じように「普通の暮らし」を望んでいたなら、一緒に眠りたいと言われたら応じたかもしれない。
今は理由次第だろう。身の安全のために最良なら同室も辞さないだろうが、必然的な理由がなければ別室のほうが“安全”だろう、という判断になりそうだ]*
起きられるかなあ。
[ 日の出前と言うなら彼の起床如何で、諧謔を混じえる声音は平常より力無かったのかもしれない。]
君と朝食を食べられるなら何処でもいいよ。
[ 身を寄せ応える、これは本心だ。夜の底であっても、光の強さに眼底を灼く昼最中でもいい。夜に生きる自分と雖も、朝は厭わしいものでなく、美しいものだと知っている。ただ、彼から自分がそれを奪うことを恐れているだけだ。]
忘れてしまったのかと思った。
[ 小さく笑う。笑ったつもりだが、喉は引き攣れて、吃逆のように聴こえたかもしれない。君が好きだと彼が言う。ほんの瞬きの間としても、なんて甘美な時間だろう。]
とどめようもなく涙が溢れる。悲しいとは思ってない。思っていない筈だが、意に反して涙は溢れ続けるままだ。]
からだに引き摺られてるのかな。
[ 誤解を解こうとする困惑した声音。こんな筈じゃないのだと、いやいやと首を振るように彼の胸元で涙を拭う。]
何度だって聞いてくれていいよ。
[ それだけでうつろいゆく人である彼が自分の傍に居てくれるなら。
応えは彼からあっただろうか。暫くして静かな寝息だけが彼から響き、自分もそのまま夜の底の一番深い時刻に少しの眠りを得た。]
[ 夜が朝に染められていく、その端の時刻に目を覚ました。
本当はそれより早く目を覚ましていた。自分を閉じ込めるような彼の腕の中に甘んじ、寝台に持ち込まれた本は差し置かれていた。
僅かに身を捩り、厚い表紙に手を伸ばすと、ちりり、と小さな鈴の音がした。いつか彼に貰った鈴の音だ。旅先で紛失する事を顧慮し、いつもは通した革紐で手首に括り付けているものを、代わりに栞に結びつけていた。
夜目は効くが、月のあかりで明暗を区切られた室内が、徐々に朝焼けに朧んで、白い頁を照らしていく。]
[彼のいろんな表情が見られるのは、役得だなぁと思った。]
(ダレンって怒った事あるっけ……? 真剣な表情は記憶にあるけれど、怒りまでは見たことないかな?)
[できれば見たくないと思う。失望と軽蔑も彼にはされたくない──あの日々の兄弟たちからみたいな。]
アンタルは……そうだね!
俺も、信頼できると思う……
[もちろん、一番信頼してるのはダレンだけどね!と付け加えて、ベッドメイク合戦に興じた!]*
狩りをするなんて、本能には抗えないのかしら。
まだ、今のところ狩猟の結果を
持ってくることはないけれど、覚悟しておくわ。
[ 猫というものは、そういう生き物だと
彼が教えてくれたか、他の誰かが言っていたか。
あれ以来ピヤールは随分と彼を気に入り、
一緒に遊びにきては勝手に腕の中から
彼の膝の上へと移動するようになった。
座るものがあるわけでもないので、
彼女はしゃがみ込んだり、立ち上がったり、
普通の貴族の娘からは考えられないことを
この場所にいる間、よくやっている。
他の誰とも会うわけではないので
しゃがみ込むことに慣れていることには
まだ気付かれていないと信じていたい。 ]
そう、よね…………
[ 彼の返事に、彼女はゆっくりと頷く。
そう言われるとわかっていて、
彼に質問をしたのだから。
でも、どこか動揺を隠さないでいる彼女は
彼の瞳を見ることまでは出来た。
その後は、少し呼吸を置いて。 ]
…………お父様が、輿入れを…
まだ、正式に決まったわけではないの。
でも……全く会ったこともない方のところに
行くことになってしまいそうで。
──────あなたなら、よかったのに。
[ 彼女の両親が、彼と会っていることに
勘付いたわけではないと思いたいけれど
先日、父親が縁談を持ち込んできた。
慣例として数ヶ月に及ぶ婚礼の儀式を
省略して早ければ数日以内に、と
言ってきたのだ。
勿論、彼女は何を今更、と嫌がった。
だから、返事はまだしていないと思う。
そんな話を鉄格子越しに彼と近づいて
指を絡めながら出来ただろうか。
彼女にはまだ好きという感情も未知で
どうして彼ならいいのか、
不明瞭な部分はある。
けれど、何度も話をした相手だから
安心してしまっているのかもしれない。 ]
どうしたら、良いのかしら…………
[ 困った顔で声を潜めて、
彼女はまた、彼に聞いてしまう。
彼を困らせる内容でしかないというのに。 ]*
[ダレンが怒りを露にするとしたら、敵に対してだろうか。温厚といえばそうかもしれない。
一番信頼していると主に言ってもらえるのは嬉しくてたまらなくて、誇らしげに微笑んだのだった。
ベッドメイクが完了して客間で独りになると、旅の疲れと今日一日の疲れとで急激に眠くなって、あっという間に眠ってしまいそうだ。
何か物音や人の声がすれば目を覚ますかもしれないが、そうでもなければ朝までぐっすり眠るだろう]*
起きるよ
[ 無理に冗談めかしてくれたのかもしれない。いつものような楽しげな響きはなく。それから続いた言葉は、文章よりもたくさんの意味があるように思えた。
暑い国の朝はきっと涼しくて綺麗だろう。
自分が心配という、拘束で彼を美しいものから遠ざけようとしていたのかもしれない。]
覚えてるに決まってる
[ 腕の中で小さく潜り込んでしまったようなヴィが、やっと言葉を発してくれて、その声は笑おうとしてくれたんだろう、それでもやっぱり涙混じりのかすれた声で。
だけれどそれを聞いて自分もひどく安堵してしまった。彼が笑おうとしてくれた。まだきっと足りてない気もしてしまうけど、自分はちゃんと、理解したと馬鹿みたいになんども伝えなければ。]
本当はすごく独占欲も強くて、
[ そんなことはもう知られているだろうか、彼を必要以上に構うことはそれらの表れだろう。うんざりしないでと言おうとして今更かと黙る。]
性別で少しちがったりするの?
僕だって泣きそうになってるから
[ 自分も多分勤めて明るく言葉にしようとしているが多分涙声になっている。性別なんて変わりはしないのではと思ってしまう。自分だってこんな有様だ。]
明日目が覚めたら
[ 君に口付けても良い?とは言葉にできただろうか。何度だって聞いてくれて良いといったから、確認も同じことだと都合よく考える。
言葉にできていなかったら、また口にする。*]
[ 寝返りもできないほど自分はヴィをずっと抱えたままだったようだ。うつらうつらしながらも何度か彼がそばにいることを確認しては安心していた気がする。
明け方、遠くの方から白んでいく、青白かった室内はもうすっかり朝の雰囲気に変わっていただろうか。腕の中で身動きするような気配がして、逃がさないと閉じ込めるようにしていた腕を夢うつつで移動させる。
それから手を伸ばす気配と、聞き慣れた鈴の音が響き覚醒が早まるのを感じた。澄んだ音色が反響を残すような特別な鈴だから聞き間違えるわけがない。]
[ 思ったより寝ぼけた声が出てしまったかもしれない。便乗して、いかにも寝ぼけていますというようなふりをして、勢いに任せてすぐそばにいるヴィの体を抱きとめる。]
夢じゃない
[ 額と額で犬がすり寄るような真似をして、彼の体を解放した。]
[ 窓際から移動の際、ヴィが近くにいるなら、目的の洗面所へ行く途中一度寄り道をして、少し屈む。]
昨日僕はちゃなと言えた?
おはようのキスをしてもいい?
[ 許されるなら、目元とほおに触れるだけの口づけを落とす。*]
[ 笑う以外になにがあったろう。ふとすれば溶けゆく儚い泡を、宝石のように大事に抱え込んでいた。覚えているに決まっているというからまた笑った。
何度でも聞いてくれたらいい。その都度、また彼の水面から泡沫を掬い直せるのなら。]
そうなの? 兄弟がいるって言っていたから。
[ 独占欲が強いとは寧ろ自分にとっては意外だった。女性の様に扱う素振りは置いても、彼の上に兄弟があることは聞いていたから、やたらと面倒見が良い習性は、上から受けたあしらいを彼から見れば庇護への対象と見える自分に施しているのだと思っていた。]
どうだろう。泣きたい訳じゃないんだけど。
[ 勝手に溢れる涙を、また勝手にダンテの夜着で拭う。泣いた記憶など殆どないから、情緒が慣れぬ身体に引き摺られているのかという僻見だ。けれど彼も泣きそうだと言うから違うのかもしれない。]
どうして君が泣くの……。
[ 頭の芯は冴えるばかりであるのに、泥の様な眠気が身体を浸す。明日、目が覚めたら、との彼の言葉の続きを拾えなかったのは、自分が暫し意識を手放していたのか、彼が寝入ってしまったのか。]
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