100 【身内RP】待宵館で月を待つ2【R18G】
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目が醒めて、自分の異変に気づいて、耐えきれなくなって逃げ出したすぐのこと。
目眩がする。
どれだけ叫び、泣いて、暴れても。誰一人としてこちらを見てくれる人はいない。
昔からそうだった。
小さな酒場一つもろくに賑やかすことが出来なくて、センスも才能も無い吟遊詩人の声や竪琴に耳を傾けてくれる者などいやしない。
努力を続けるなんてことも出来なくて、すぐに酒と女に逃げては溺れる始末。
いてもいなくてもどうでもいい透明人間のようなものだった。
たまに視線が向けられていたとしても……それはろくでなしの自分を嘲笑うものだった気がする。
「気がする」と言うのは男が悲観的になるあまり見えないものまで見て聞こえないものまで聞いていたからだ。
皆が皆、自分を良くない目で見て馬鹿にするようなことを話しているんだ。
追い詰められた精神は、そうしてありもしない風評被害を勝手に描き出していく。自分で透明な場所に濁った何かを見出していく。
逃げるように館を彷徨い、その足は――時計塔へ。
▽
この体は壁や床などはすり抜けられないけれど、人や小物は触れない。扉は何故かすり抜けられるから、開閉して何かを主張することも出来ない。
物が掴めないのなら酒に溺れて酔いに逃げることが出来なくなる。ずっと毎日のようにアルコールで思考を溶かしていた身としては、拷問が始まるのだろうかと言う心持ちだった。
そうした小さな考えが浮かんでは消えを繰り返し、足はいつしか時計塔の階段の終わりまで来ていた。技師が入るであろう部屋がまだあったけれど、既に高度はある。もう十分だ。
窓から顔を出す。
重苦しい濁った気分を抱えた自分の頬を、何も関係ないとばかりに風が撫でて走り去っていく。
いてもいなくても関係ないのなら、いっそ死んでしまったほうが楽なのでは?
縁に両手を置いて、体を前へ倒す。
地面があんなにも遠い。
叩きつけられたらきっと、自分は、自分は……。
「死ね」
「――ッ!!!」
ひゅ、と。喉が鳴る。
▽
「いやだ、いやだ、いやだ……」
階段に蹲る。身を守るように体を丸め、がたがたと震えながら嗚咽を零す。
男は才能も努力を続ける根気もなかったけれど、勇気だって持っていなかった。
こんなところで死ねるほどの勇気があったなら、最初から酒と女に逃げる選択肢など取っている筈ないのだ。
怯える男の脳裏にとある光景が蘇る。蘇ってしまった。
命が潰える直前の記憶だ。
動けない。
何度も何度も命乞いをした。
ナイフが腹に突き立てられる。
泣いて喚いた。耐えられない痛みに絶叫した。
それで相手は満足したのか、より深く刃を差し込んでとどめを刺した。
思い出した。思い出してしまった。
「死にたくない、死にたくない……死にたくない……!」
それでも自分は一度、確かに死んだ。だからこんな事になっている。
死んだのに周り続ける世界にいなくてはならないなんて、悪夢以外の何者でもない。
じゃあどうしたらこれは終わるんだろう。
夢が醒めるには夜が過ぎ、朝が来る必要がある。
それなのにこの館は一向に夜が来ない。ずっとずっと、明るいまま。
酔いに溺れることも出来ず、来ない宵を渇望し続ける。
男は一人、寒さに震え続けた。
| >>22 アマノ 「あ?……このパーティ会場で酒以外の アルコールなんて何に使うんだ。ますます怪しいな」 床に転がったチーズを見て不機嫌そうな顔をさらに深める。 誰がネズミだと発しそうになった口を噤み それを拾い上げると、お望み通り食ってやった。 「ネズミにエサくれんだ、やさしいね。 パーティにも飽きたからなんか面白いモンでもないかって見てるだけだけど?コソ泥のオッサンは面白くもめずらしくもないな」 (29) 2021/10/20(Wed) 16:21:04 |
| その噂を聞いたのは、また誰かがいなくなったと聞いてからすぐ後のことだった。 「死神ねえ」 少年は真実など知る術もない、知ろうともしていない。 真実を知った者が狙われるものだから。本で読んだ話だ。 「最近たまに勝手に椅子が倒れたり、なんか浮いてたりするの見るだろ。ソイツの仕業だよ。退屈だからって仲間でも作ろうとしてるんだ。次はお前らが狙われるかもな!」 気を紛らわすためか、すれ違う使用人に、ゲストに、 あることないことを言ってひとりで騒ぎ立てた。 「 オレがそんなのに遇うわけないだろ! 日頃の行いが悪いやつから選ばれるんだよ。あといなくなってもどうでもいいやつとかさ!」 まるで自分にはそれが当てはまらないと言わんばかりだが 逆に当てはまるからこそ、言ってるようにも見えた。 あーこわいこわい、わざとらしく言い回って、少年はいつもどおり喧騒の外へと消える。 (30) 2021/10/20(Wed) 16:43:36 |
……
どれくらいそうしていただろうか。
もう一度覗き込んだ死の淵への怯えが鎮まり、体の震えの原因が強まる寒さだけになった頃。
「……あれは……」
ふと顔を上げ、窓から見える誰かを捉える。
キエがいる。彼は一体何をしている?
全く見当がつかない。
でも、あの何を考えているか分からないインチキ詐欺師探偵の動きは正直怖い。
「あいつ……あそこで、何を……」
ようやく腰を上げる。
なんだか酷く胸騒ぎがする。
行ったところで何かできるわけではないけれど、それでも、それでも……。
男は体を引き摺るように時計塔の階段を降り、外へと飛び出した。
「………」
キエは
夢を何処から食べようかと迷っていた。其れは子供がショートケーキの苺を何時食べるか思案する様な和やかな間だった。
「…………嗚呼、今君を悪夢から醒ましてあげるとも。
辛かっただろう、
唯一の友達に忘れられて。
苦しかっただろう、
誰にも気付かれなくて。
君は沢山の苦痛と孤独を味わった。
だから、そう⏤⏤⏤⏤
」
キエは心に疎いが、リーパーがゲイザーを心の底から憎んでいる訳では無いのだと薄々気づいている。只寂しいだけなのではないかと予想している。
身勝手で愚かな此のリーパーが、かつて
他者の為に怒っていた程なのだから。
尤も其れは“そう産まれたから”かもしれないが。
しかしそんな事は、キエにとってどうでも良い事だ。
走る。寒さはずっと残り続けたままだけど、そんなことも気にしていられなかった。
胸騒ぎが止まらない。
あの探偵が報酬としてW得体の知れない何かWを要求してくるのを知っている。自分もまた彼と契約してしまったからだ。
もしそれが、取り返しのつかないものだとしたら。
もしそれが、人の大切なものだとしたら。
「おい!やめろ、お前、そいつに何をするつもりだ……っ」
男は叫んで時計塔を飛び出す。
走る。走る。世界に無視をされていても、男は声を上げる。
届かなくても、叫ばずにはいられない。
手遅れで、どうにもならなかったとしても。
リーパーは目を瞑った。
これで、あの忌々しい呪縛から解き放たれるのだ!
ゲイザーの隙を見て顔を出すのはもうおしまい。
隠れて自らの欲求を満たすのはもうおしまい!
これからは自らがゲイザーに取って代わる!
殺人鬼『リーパー』として!!
ミズガネの声が聞こえる。
これはきっと神の慈悲か。
「ミズガネ、さん……?
あたし、あなたを殺したのに、なんで──」
か細い断末魔が響いて、消えた。
──さて。極上のパイのお味はいかが?
なんにも起こりませんでした。
触る気がなかったので。
「ギャーーーーーハハハッハ!!
あーーウケる! 最高! この躰! なあ!
オマエには感謝するぜ、キエ!」
「礼と言っちゃなんだが、次回の”神隠し”を
オマエにやらせてやるよ。
誰かいねェの? 世界から消し去りたいヤツ」
「
……すっごくわざとやった動作だったけど、そう見えるん だぁ……?
笑ったか吃驚したかなら、そうなんだね
」
| >>31 アマノ 「さっきからネズミネズミうっさい!オッサンの口からおままごとなんてカワイイ言葉がでてくるとはな。ここはアンタのお家じゃねえんだよ。バァカ!」 追い払う仕草を無視し、つかつかと歩み寄って指を差す。 「気をつけなよ。痛い目見るのはアンタかもよ。 あまりにも日頃の行いが悪いと神隠しに遇っちまうんだ」 チーズご馳走様。それだけ言い残せば、さっさと立ち去っていく。 (39) 2021/10/20(Wed) 19:44:13 |
| >>37 ゲイザー 少年は喧騒を離れた、中庭いる時間が多い。 だからあなたが探しに来た時にはそこにいた。 庭師がひとりいなくなった中庭で 花を目前にぼうっとしているだけだ。 (40) 2021/10/20(Wed) 19:46:15 |
「
あと抱きついたとか言い辛くって適当にそれっぽいこと言って
たら見事に誘導できてしまって困惑しているよ。ごめんってミ
ズガネちゃん。言ってくれてすごいうれしかったんだって〜〜
ってここで言ってもなんにもならないけどとりあえず言うわ?
」
「消し去りたい相手はいないけれど、そうだなァ。世界の真相を見せてあげたい子は幾らかいるね。
チャンドラ君にはきっと良い刺激になると思うし、ユピテル君は自然の摂理が気になる質であるようだから。
しかしユピテル君の方には折角だし僕らの手を取らずに“館の自然現象としての神隠し”を体験して欲しくもあるんだよねェ」
キエが特定の存在に対して好悪を抱く事は無い。好悪を示すのは感情に対して程度だろう。相手の抱く感情に興味はあっても愛情と呼べるものは持ち合わせていなかった。
「はっ、……はぁっ……ゲイザー……ゲイザー…………?」
一度死んで幽霊のような身になったのに、走れば息が上がる。肩を上下に揺らして呼吸を整えれば、何度か咳き込んだ。本気で走ったなんていつぶりだろう。怠惰に生きていたツケなのかもしれない。
男は裏庭までまだまだ遠いところにいる。
だから、裏庭から少女が出て来たところしか見ていない。キエとゲイザーが何をしていたのか男は知る由もない。
でも、か細い断末魔が聞こえた気がした。
勘違いかも知れない。けれど、『勘違い』で済ませたくない。
そうやって『勘違い』で透明にしてしまった者たちは、きっと何人いたのだろう。
「……ッ、ああクソッ!面倒だ面倒だ面倒だ!なんで僕だけこんなにあっちこっちに苦められなきゃいけないんだ!」
濡羽色の髪を掻きむしり、癇癪を起こしたように苛立たしげに叫ぶ。
しばらく自分勝手に喚き散らして、結局また咳き込んで。呼吸を整えるのに幾分か時間を費やしてから――男はまた駆け出した。
何か出来ることはないだろうか。
酒も手に取れないし竪琴も触れない。
何も出来ないかもしれない、でも何か出来るかもしれない。
何にも分からないから、確かめる。
あの探偵が余裕ぶっているのが気に食わない。
自分を殺した奴が今も尚笑っていると思うとそれも腹が立つ。
自分の知っている人達が自分のような文字通り死ぬほど苦しい思いをするのも嫌だ。
身勝手な男は、身勝手な理由で走り始めた。
知らないけれど、自分の部屋を最初に訪れたのはあの人だ。
「チャンドラにユピテルぅう?」
それはゲイザーにとって大切なひとだったが。
リーパーにとっては、『ゲイザーにとっての大切なひと』だった。
「オマエに任せるぜ。オレぁドッチでもいい。
オマエの感じる『面白そうなほう』に賭けろ。
……てか、“館の自然現象としての神隠し”なんざ
そうそう自発的に起こせるモンじゃねェだろ」
「問題は其処だよ。しかし願わねば始まらない事でもある。其方に関してはあくまで運が良ければって感じだなァ。
だから先ずはチャンドラ君にヒントをあげに行こうと思うよ。
…しかし僕ァ目を付けられている様だから、君も成功を願っていてくれないかな」
/*
キエが再びランダムで吊られた場合に備えて、リーパーさんもチャンドラさんに襲撃セットをお願いします。
「オマエ……。ま、そうか。
何やらこの場所の願いは、力を生むらしい」
/*セットしました。
「……なあ、オマエなんでこんなことしてんだ?
ヒントを与えて、何になる。
人間を引っ掻き回して……愉しいから、それでおわり?
オマエ、そんな単純な動機で動いてんのか?」
「オレはそれでおわりだけど!」
「其れを説明するには先ず僕の在り方から説明する必要があるね。
知っての通り僕ァ夢を食うが、普段は夢其の物を食べる訳じゃない。夢から滲み出る感情を⏤⏤負の感情だけを食う。
夢を丸ごと食べれば記憶も失ってしまうのは説明したね?
其れは林檎の木を根から引っこ抜く様なものさ。林檎の実だけ食べれば其の木はまたいつか素敵な果実を実らせるのだから、木を抜く必要なんて無いじゃないか」
キエの物言いは誰かに苦言を呈するかのような言い方だが決してリーパーに向けたものではない。
「賢者というのは視野が広すぎて中々絶望してくれない。
しかし皇族、一族の長……彼ら賢者はその他大勢の愚者を動かす事ができる存在だ。
。
僕ァね、チャンドラ君には人災を振り撒く側になって欲しいんだ。だから賢者に至る手助けをしようと思う」
「賢者は肥料、愚者は土壌と喩えれば判り易いかな?
良い肥料と良い土壌、此の2つが揃えば上質な
果実が実る可能性が高まる。実際には天候も関わるから絶対に上手くいく訳じゃあないが可能性は限りなく高くしたいだろう?」
「オマエ……やっぱムカつくぜ。
自分が賢者──自分がそれ以上の存在だと信じて疑っていない。
まるでマリオネットを動かす人形師だ!」
感情喰らいと称すべきだろうか。
そんなヒトならざるものであるあなたにとって、
ニンゲンの負の感情を肥やすことは、
正しく林檎を育てるような行為に他ならない。
けれども一際怒りっぽいリーパーは、
それがまるで、自分を下に見ているようで腹立たしかった。
自分は林檎でも愚者でもない。
「ま、オマエがこれから何をしたいのかは分かった。
どうして暗躍しているのかも……。
オマエ、探偵からそろそろ脚本家に
仕事変えた方が良いんじゃねーの?
……しかし、チャンドラか。チャンドラ……ふん!」
ゲイザーとチャンドラは友人だ。
「好きにすれば!」
| >>50 アマノ 「痛!」 驚いて目を白黒とさせながら、振り返った。 少年の腕は細い。大人の力に逆らえるはずもなく立ち止まる。 「殺される?殺されてるたぁ限らねえだろ…… だって、死体なんてこの館で出たことなんかねえし。 あの血だって、本物かもわかんねえし……ああ、でも……」 なにかをあなたに呟いた後、離せ、と腕を振りほどこうとした。 (56) 2021/10/21(Thu) 14:04:56 |
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