【人】 橘――自宅にて―― [最後に実家に帰ったのは親父が死んだ時だ 倒れたと聞いて急いで帰り、看取って葬式が終わるまで 当然その時に船を降りるという話になったのだが、おふくろは「必要ない」と笑って見せた] 「まだ子供の厄介になるほど歳取っちゃいないよ」 [それは確かにその通りで、結局それに甘えて船に戻った しかし俺は親父とも約束していた。「母さんを頼む」と おふくろが怪我をしたと報せがあったのは二月程前のこと 後遺症が残りそうで一時的に療養施設に入ったことを聞いて、親父との約束を果たす時だと思った なんだかんだで嫌がりそうだが、男手があるに越したことはない そんなことを考えながら自宅に向かうと、無人のはずの玄関先に人がいた] (21) 2022/04/09(Sat) 18:29:00 |
【人】 橘 あれ? 幸さん、わざわざ来てくれたのかい? [そう声をかけると深々とお辞儀をして「幸」と呼ばれた女性が微笑む] 「そろそろ着くころかと思ったから、掃除くらい、って」 ありがとう。おふくろは元気? 「はい。わざわざ帰ってこなくても、って言ってますけど」 [予想通りの反応に声をあげて笑い、玄関へと入る。 幸さんはもうずっとうちでお手伝いをしてくれている人だ 今もおふくろについていてくれるし、こうして家の管理もしてくれる 親父の知り合いの身内だそうで、身寄りを無くしたと聞いて両親が連れてきてからずっとうちにいる いわば家族のような物だ 両親としてはあわよくば俺の嫁に……という思惑の一つもあったのかもしれないが あいにく互いにそんな気配の欠片もなかった] (22) 2022/04/09(Sat) 18:30:31 |
【人】 橘 「あ、お風呂と簡単なお食事の用意はできてます。 私は奥様のところに戻らなければなりませんけど……」 はは、大丈夫、自分のことくらい自分でできるって おふくろの所には明日にでも顔を出すよ、同居の話もしないといかんし ついでにみんなで花見でもって思ってるけど、どう? [いいですね、と幸さんは同意して「お弁当を作らなきゃ」と言いながらおふくろの所に戻って行った 一人でいるには少しばかり広い家で、俺はため息のように息を吐いた**] (23) 2022/04/09(Sat) 18:31:36 |
橘は、メモを貼った。 (a5) 2022/04/09(Sat) 18:36:51 |
【人】 虹彩異色症の猫[ 澤邑が炬燵を覗き込んでいると、なぁう、と背後で鳴き声がした。幾度かの呼び声への応答にも思える。 先刻まで確かに姿を潜めていたのに、まるで最初からそこに居たような顔をしている。炬燵の掛布に埋もれていたのか、それとも目を離した隙に続き間の襖の合間から駆けてきたのか。 澤邑の足元をうろうろと一巡りすると、脛に鼻先を擦り付けた。それから天板の上に勢いをつけて飛び上がると、澤邑が外から購い>>11、一旦は置いた紙袋に鼻を引くつかせる。外のにおいがするのか。止めなければそのまま紙袋を引き倒し、その中に潜り込もうとしている。]** (24) 2022/04/09(Sat) 19:20:53 |
虹彩異色症の猫は、メモを貼った。 (a6) 2022/04/09(Sat) 19:21:25 |
【人】 東天[天へと差し伸べられた指先に、ふわりひらりと桜の花弁が灯る。 ひたりとぜんまいの切れたから繰りのように静止した指先が滑らかに空を掻き、灯った火を震わせた。 拍子はない。 笛の音も、弦の音もなく。 狩衣の袖だけが風を鳴らす。 再び落ちていく花弁は風と出会い、再び宙へと吹き上がる。 男が体を翻せば桜色の扇が風を起こし、花弁を弄んだ。 ふわり、ひらり。 ひとつ、ふたつ………みっつ、よつ。 盛りの木々から零れ落ちる花弁が、くるりと舞う仮面の男の辺へと散り。 それが地に落ちると同時に舞いは止む。] (26) 2022/04/09(Sat) 22:13:15 |
【人】 東天[とんと足先で地を蹴れば、突然音色を思い出したかのように鈴が鳴った。 りん、と澄んだ音色は一度きり。 身につけた狩衣に音が吸われ、押し黙り] ───ふむ。 [その声はやや満足げに頷いた。 閉じた扇を再び開いて、火照る体に風を送る。] (27) 2022/04/09(Sat) 22:13:34 |
【人】 東天[旅をして、舞いを納める旅芸人。 毎年この地へは必ずこの時期に来ては、いつも同じ桜の木の下で舞いを奉納する。 喜ばせるのは、主に人。 ひと柱に仕えるここの主とは違い、男は祭りあるところに現れる賑やかし。 狐の面で顔を隠すのはご愛嬌。 狩衣で体を隠す事も、"もう何十年と姿が変わらないように見える"事も。 秘密を纏うからこそ、ある種の注目も得られよう。 尤も、姿が変わらない謎の種は、ごく単純に代替わり故であるが。 いつ、どの年に、代替わりが行われたのかを、気付けた者が居たかどうか。 十分にまったと。 今は扇で肌を仰ぎ、凭れた桜でしばしの休息。**] (28) 2022/04/09(Sat) 22:14:22 |
東天は、メモを貼った。 (a7) 2022/04/09(Sat) 22:19:00 |
【人】 澤邑[ >>24炬燵をめくって中を見ていたところ背後から声がした。いつの間に?と声の方向を見れば子猫の姿があった。] あれ、どこにいたんだろう まあいいか、おいでおいで [ しっかりと確認したはずなのに、部屋の中にそう隠れられる場所は無さそうなのだが、炬燵布団の弛んだところや、屑入れの背後など死角がまだ色々あったのかもしれない。 おいでと言って従うことなんて稀だが一応の声かけ。紙袋のガサガサとした音が興味を引いたのか炬燵の天板へと飛び乗りスンスンと鼻先を押し付けたりしている。腕に鼻先が当たると少しひんやりする。中身を取り出して説明を読んでいる間、子猫は紙袋が楽しげに見えたのか中へもぐりたそうにしていてひどく可愛らしい。 紙袋の口をしっかりと開いてあげれば中にすっぽり収まったりしていたかも。] ああ、と、上に載っちゃダメだよ [ これもまた、言葉で言ったところで通じやしないのだが、説明書を読み終え、天板の上の小さな体を抱き抱えて膝の上に。孫たちが抱え上げればジタバタと逃れようと必死なのだが果たして。 自分に対しても未だ大差ないといえば大差ないが。最初の少しだけはじっとしていたかもしれない。飽きれば暴れ出す。それまでに片付けなければ。] こうかな、よし、練習してみよう [ 小さな体にハーネスをあてがい、寸法を調整してすり抜けられないようにしてしまう。両方の腕?前足を通す部分があるからちょっとやそっとじゃ外れることはないだろう。 上半身をしっかり包み込んで背中から紐で繋がれている。首に負担も少なくてこれなら良さそうだと思う。] 家の中を散歩してみよう [ こゆきを自由にしてやり畳の上へ。もちろんしっかり手綱は握っている。**] (29) 2022/04/09(Sat) 22:22:01 |
【人】 豊里― 職人街 ―[職人街の方へと移動してきた。 確かに休業と思われる所もあったが、全てではない。 火花が散る音、金属同士がぶつかる音、 職人たちの話声が聞こえる。 懐かしい。活気のある様子が窺えて、思わず笑みが零れた。] ふふっ。やっぱりこういう空気も良いなぁ。 [今でこそ独り身であるけれど、 嘗ては真希奈もこんな喧騒の中で仕事をしていた。 自分で進む道を決めたから、後悔はないけれど。 もう戻れないと思うと、どうしても感傷的になってしまう。] (30) 2022/04/09(Sat) 22:28:21 |
【人】 豊里[のんびりと、思い出に浸りながら散策をする。 途中で大きな櫻の木を見つけたので、木の下に腰を下ろした。 麗らかな春の陽気。 傍には僅かに菜の花も咲いていて、色彩鮮やかだった。] 「おばさん、他所から来た人?」 [はしゃいだ様子で走ってきた少年に、声を掛けられる。 "おばさん"には一瞬顔を顰めてしまったけれど、 すぐに気を取り直して、笑顔を作る。 幼子から見たら、真希奈は十分"おばさん"なのだろう。 こういう時に、 むきになって"お姉さん"へと 訂正を求めるのは、 大人げないと思った。] (31) 2022/04/09(Sat) 22:33:41 |
【人】 豊里ああ、そうだよ。 ん?其の手に持っている物は? [少年が手にしているのは、玩具の鉄砲だろうか。 と云っても、ガラクタを繋ぎ合わせただけの代物だった。 「一寸貸してごらん」と云うと、 最初は渋られたが、少年は玩具の銃を渡してくれた。] (32) 2022/04/09(Sat) 22:34:16 |
【人】 豊里[トランクを開けて、 中に入っている工具を取り出す。 まぁ、気まぐれでやることだから、 そこまで手間暇も資材も使わないが、 一寸手直しをしただけで、 随分と銃らしい見た目に変わった。] 「噓!?おばさん、すげー」 ふふ、私の手にかかればこんなものさ。 [自慢げに云って、少年に玩具を返す。 少年が暫し、矯めつ眇めつして 喜んでいるのを見守っていると、 少年の妹らしい、少女もやってきた。] (33) 2022/04/09(Sat) 22:36:46 |
【人】 虹彩異色症の猫[ 帰宅した飼い主に一通り匂いを擦りつけ終わると、炬燵の天板の上に身軽に飛び乗った。外から持ち込んだものは検分せずにはおれないらしい。興味津々に紙袋を嗅ぎ回り、中身が取り出されたそれにすっぽりと躰を収めてしまった。 天板から下ろそうと>>29、紙袋から取り出す手が伸びてきた時は袋奥に丸まって抵抗した。打粉の様な足先で人の手を叩く。爪は出ていないので戯れている範囲だ。 年寄りの手は子どものような無遠慮さがないのがいいのか、それとも澤邑が主に己の世話をしていることくらいは理解しているのか、膝に抱き上げれば大人しく丸まった。 躰を伸ばし、よくわからぬ布地を当てられ右前足を上に、左前足を下にと良いようされるがままとなっていたが、そのうち苛立ちをみせ喉奥でウゥ、と小さな唸り声をあげた。 澤邑が畳に猫を離すのと、猫が膝上から飛び降りたのは殆ど同じ折り合いだ。 躯を丸め張り付いた見慣れぬ器具をフンフンと嗅いでいる。背から伸びる紐に気付いたのか、飛び掛かろうとして畳に転がり、紐の長さに余裕があるならそのまま床の上で戯れついている。]** (35) 2022/04/10(Sun) 0:03:23 |
【人】 九朗[早速明日の約束をとりつけた九朗は、機嫌もよく一二三の工房で針と糸を借り、白い縫いぐるみのほつれを一刺し一刺し丁寧に縫っていた。 車輪に踏まれて折れた骨芯の代わりを削り出した一二三の方は、歯車の欠けや摩耗がないか、小さな部品をひとつひとつ改めている最中だ。 黙々と作業するふたりの間は静まり返っていたが、会話の口火を切ったのは意外にも一二三のほうだった。 唐突に前振りもなく。 そういえばと言って続けられた言葉は 「昔お前が作ったものが修理に回ってきた」 という短い一言。 どこか抑揚を抑えた一二三の言葉に、九朗の瞬きがひたりと止まる。] …………おや、 それは……… ふむ…、驚きました……ね。 [本当に驚いたという顔で目を丸くする九朗に、一二三の顔が苦虫を嚙んだようになる。] (36) 2022/04/10(Sun) 0:07:14 |
【人】 九朗ふふ、なんて顔してるんですか。 単純に驚いただけですよ。 [もういい加減旧式の部類に入るだろうに。 まだあれらを使っている人がいたのか…とか。 わざわざ修理してまで、まだ使おうとする人の手に巡り合えたのか…とか。 たとえ修理の依頼だとしても、遠くへ旅立った我が子の知らせを聞いたようで。 少し長めの瞬きとともに伏せられた九朗の視線に反し、加齢による皴の増えた口元がゆっくりと弧を描く。 対して九朗の表情の変化をつぶさに観察していた一二三は、褐色に近い短髪をガシガシと乱暴に掻いた。] ん? 戻ってこないのか…ですって? 戻るも何も、私はここにいるじゃないですか。 [くすくすと笑う九朗に、はぐらかされてたとわかっている一二三は言葉を重ねる。 はぐらかすことも、言葉尻をとって茶化すこともできないよう、はっきりと。 「職人として戻ってくる気はないのか」と。] (37) 2022/04/10(Sun) 0:08:33 |
【人】 九朗戻るつもりはありませんねぇ… 十年、あちこち旅して見聞を広げたつもりですけど。 作れるものは作ってしまいましたし…。 [そう言いながら、九朗は縫い終わった糸をくるりと玉止めし、糸切り鋏の先でパチンと切った。 十年、二十年。 人生の大半をかけて、作れるものは作ってしまった。 その果てに、本当に作りたいものは創れないのだと気づいてしまったというだけのこと。 そしていままでにあった「作ること」に対する熱意は、見る間にしぼんで消え失せてしまった。] 言ってしまえばこれは、 挫折の末の逃避なんでしょう。 ………なぁんて顔しているんですか。 今の生活だって、結構気に入っているんですよ? [一二三の顔を見て困ったように首を傾ければ、光の加減で鉄色にも見える髪がさらりと揺れた。**] (38) 2022/04/10(Sun) 0:10:20 |
【人】 豊里「ごちそうさまでした。おねえちゃん、ありがとう」 [団子を食べ終えた妹の方が、ぺこりと頭を下げる。 どうやら妹の方が、礼儀正しく育ったようだ。 「美味しかったかい?」と云って、柔く頭を撫でる。] 君たち、この職人街で 人形を扱っている所を知らないかな? 私は人形技師なんだ。 もしあるなら、見学したいと思っていてね。 [その様に聞けば、兄の方に心当たりがあったらしく、 詳しく場所を教えてくれた。 「おねえちゃん、おにんぎょうさん、つくるんだ」と、 妹の方は興味津々の様子であった為、 トランクから、設計図を取り出していくつか見せた。 設計図と云っても意匠の案を絵にしたもので、 「きれい!ほんものを、みたかった」と云ってくれた。] (39) 2022/04/10(Sun) 13:43:34 |
【人】 豊里[兄妹と別れて、兄が教えてくれた工房へと向かう。 程なくして辿り着いた其処は、こじんまりとしていた。] こんにちは。何方かいらっしゃいますか? 少し見学させて頂きたく、参りました。 [やはり祭で休業なのか、人の気配はあまりせず、 暫し立ち尽くしていると、奥から男性が一人やってきた。] 突然お邪魔してすみません。豊里真希奈と申します。 人形技師をしておりますが、是非此方の工房を拝見したく。 ……宜しいでしょうか? [同業者の見学など、煙たがられる可能性も高いので、 きちんと素性を明かして許可を求める。 「別に、好きに見てくれていいよ。でも、触るのは駄目だ」 と、案外あっさりとお許しが出た。] (40) 2022/04/10(Sun) 13:46:14 |
【人】 豊里[中に入ると、球体関節の素体が幾つか並んでいる。 一体、殆ど出来上がっている人形があり、 その化粧の美しさに目を見張った。 目尻には朱が引かれることが多いが、 この人形は 煌 び や か な 玉 虫 色 。 これは何で色を付けているか、 この人形は何をするものなのか……など、 つい質問攻めするように、熱く語りかけてしまった。 真希奈も別の工房で修業はしたものの、 工房ごとに特に人形の意匠に関しては、 かなり違ってくる。 だからこのように、自分にとって未知の物を見るのは、 とても有難いことに思えるのだ。 工房の男性も気の良い人で、 真希奈の質問には、きちんと答えてくれたし、 細かな所など褒めれば、 少し照れた様子で自身の拘りについて話してくれた。] (41) 2022/04/10(Sun) 13:55:15 |
【人】 豊里[話が弾んで、お互い自分の描いた設計図などを持ち出して、 意見を交換するまでに至った。 夢中になって話し込んでいれば、時間の事など忘却の彼方。 硝子窓から差し込む光が、すっかり茜に変わった頃に漸く、 そろそろお暇しなければと話を切り上げた。] ご親切に色々教えて頂き、勉強になりました。 本当に有難う御座います。 私は祭の間、榛名に滞在する予定ですが、 明日は祭を楽しもうかなと思っています。 [丁寧に謝辞を述べると、祭を楽しむならと、 櫻の木の下で奉納されるという舞を薦めてくれた。>>28 真希奈は榛名へは今回初めて訪れた。 土地勘もないし、祭の順序もよく分かっていないので、 上手く予定が嚙み合わないかもしれないが、 折角お薦めされたのだ。 出来れば舞を拝みたいなと思いつつ、旅籠へと向かった。**] (42) 2022/04/10(Sun) 14:04:18 |
【人】 澤邑[ >>35紙袋のそばへ手を出すと白い手がたしたしと己の手の甲へと伸びてくる。まだ戯れ付きなのか爪は出ていない。 袋の奥で丸まって抵抗していたがなにぶん小さな子猫だし逃げ場はなくて膝の上に乗せて仕舞えばしばらくはじっとしていた。] ごめんごめん [ とうとう好き勝手にされるのに飽きたのかうーと抗議の声を上げ始めたのと、設えが終わるのが同時で助かった。 こゆきを畳の上に下ろすと見慣れないものが体についている事に興味を示したあと、背中から伸びる紐にじゃれつき始めた。] よしよし [ ころころと転がって床でしばらく紐を追いかけているのを好きにさせている。目を細めて眺めている様が丸くなったなどと言われる所以なのかもしれないが気付いてはいない。] 庭に出てみようかゆきちゃん [ こゆきを抱えると座敷に続く襖とは別に、縁側に出る障子を開けて、さらに庭に続くガラス戸を開ける。商業区の一角であるから庭と言っても限られたスペースではあるが。今は桜の時期で鉢に植えた躑躅(つつじ)も綺麗だ。 突っ掛けを履いて、こゆきを地面へと下ろす。春先の緩いような冷たいような風が吹いている。**] (43) 2022/04/10(Sun) 14:31:30 |
【人】 虹彩異色症の猫[ 視界の端をちらつく紐に飛びつき、飛び退き、子猫であっても狩猟本能の真似事だけは一人前だ。飽きもせず畳の上を転げ回って、ひとり鬼ごっこを続けている。 抱き上げようと伸びてきた手も遊びのひとつと思ったか、前足ではっしと捉えたと思えば、後ろの足が忙しなく蹴りつける。我を忘れた様子に細く、小さい子猫の爪が掠める。 胴を抱えられるとじたばたとしていたが、それも手足が床を離れるまで。腕の中にちょうどよく尻が収まると、神妙にじっとしたと思うのも束の間。澤邑の肩に前足を付いてよじ登り、見渡すようにぐんと躰を伸ばしている。] なぅ。 [ 硝子戸が開くと、気に留める程でもない遠くの雑踏、風の揺れ、外気の匂い、そういったものに直接触れるのが物珍しいか、乗り掛かった澤邑の肩の上で鼻を引くつかせ、耳をそばだてている。 猫の姿が見えない、何処へ逃げたと言ってもそれは敷地内、精々表側の店舗までだ。殆ど外に出たことのない子猫は、土の上に下ろされると慣れない感触に背を丸めた形のまま固まっている。それから土の匂いを検めると、全く唐突に駆け出し始めた。 ハーネスに結わえ付けられた紐が、背で限界までピンと張った。]** (44) 2022/04/10(Sun) 17:09:19 |
【人】 大崎―蒸気帆船― [船内に響く放送に、男はうっすらと目を開いた。 客席にてフードのついたマントに包まりながら、長旅の疲れでうたた寝していたようだ。] ん…… ……。 何番が、何番だったかな…… [まだ眠気の滲む声を発しながらもぞもぞと動き、荷物を背負って立ち上がった。**] (45) 2022/04/10(Sun) 17:45:44 |
大崎は、メモを貼った。 (a8) 2022/04/10(Sun) 17:58:23 |
【人】 澤邑[ 澤邑の手の甲や手首などは小さな引っ掻き傷がたくさんあるのだが、全く気にならなくなってしまった。遊びの延長や勢い余っての子猫から付けられた傷だ。 今も抱き抱える際に戯れつかれた挙句後ろ足で蹴られてしまった。魚のおもちゃでも買ってあげようかなと思ったりする。 それと猫の鈴も買ってやりたいものだ。チリチリと音がすれば、隙をつかれて逃すことも減るかもしれない。] よしよし 怖くないよ、お父さんがいるからね [ 庭に出れば外の喧騒がより近くに聞こえる。蒸気帆船の到着を知らせる汽笛や、鳥の声に風が鳴らす草木の葉音。 こゆきは最初のうちは緊張して、耳を立てておっかなびっくりのようだったが>>44そのうち自分を脅かすものは無いとわかったのか興味の赴くまま駆け出した。] おっと、 [ 手首に輪っかを通してさらに掴んでいるという念の入り方だったから逃すということはないが、紐がピンと張ってこゆきはそれ以上進むことができずにツンのめっている。] (46) 2022/04/10(Sun) 19:01:25 |
【人】 澤邑まったまった [ ごめんねとこゆきに近づけば、紐が撓んだ分また動く。少しすれば慣れたようで庭を少し一人と一匹でうろうろとしたのだが、カサカサなんて茂みの方で音がすればこゆきが駆け寄ってしまうのでやっぱりピンと紐が張り詰めてしまったかもしれない。 もう少し練習が要りそうだ。] おーい、足拭きを持ってきてくれ [ それから半刻ほど遊んでから、家の中にそんな声をかけた。家人の誰かが濡れた布など持ってきてくれるだろう。 こゆきの体を拭いて、それから四つ足を丁寧に拭うつもり。**] (47) 2022/04/10(Sun) 19:02:43 |
【人】 虹彩異色症の猫 んなぅっ。 [ 上衣を着るように、胴を包む形のハーネスであるから、食い込むということはないが、紐の遊びの限りに駆け出せば、勢い余って転がっている。 不平の響きの鳴き声を上げれば、澤邑が近づいた分また駆け出しては足止まる。 そのうちまるで澤邑が邪魔しているとでも言いたげに、振り返り、んなぁ、と鳴いた。 暫くするとどうも一定の距離しか進めないことを理解したようで、歩んでは立ち止まり、歩んでは澤邑がちゃんと着いてきているか確認するように振り返る。 それでも例えば塀の向こうを走る車の警笛、子の騒ぎ声、茂みの物音>>47、そういった慣れぬものに反応しては駆け寄ろうとしたり逃げ出そうとしたりするので、白い躰は何度か土の上に転がった。 疲れたのかやがて蹲った躰を抱えあげられると、湿らせた布で躰を拭われるのも四足を丁寧に拭われるのもされるがままにしていた。されるがままにしていたが、んな、んな、と、一丁前に文句に似た鳴き声を上げている。 それも小さな口の中でもごもごとした響きに変わると、そのまま澤邑の膝の上で眠ってしまった。**] (48) 2022/04/10(Sun) 19:40:16 |
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