【置】 二年生 小林 友 人魚は香具師に逢わなければ幸せか、って 聞かれたら、否だね。 痛い手を我慢しながらロウソク書いて 奥座敷に閉じこもったまま。 そんな彼女を気遣う人間は 街のどこにもいなかった。 母親の望んだ明るく楽しい人間の街には 最初から人魚の場所なんかなかったんだ。 (L0) 2020/09/29(Tue) 8:46:14 公開: 2020/09/29(Tue) 8:50:00 |
【置】 二年生 小林 友 ……けどそれは物語の中の話でさ。 こないだ彼女にフラれた時なんか 同じバスケ部の連中がアイス奢ってくれて カラオケでわーっと騒いだんだ。 悲しいことがあり過ぎて見えなくなるけど そう、悪い所じゃないと思うんだけどね。 (L1) 2020/09/29(Tue) 8:47:52 公開: 2020/09/29(Tue) 8:50:00 |
二年生 小林 友は、メモを貼った。 (a3) 2020/09/29(Tue) 8:54:23 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[便箋に嘘の名前を書いた>>0:L5直後、ぶぶっとスマホが震えた。通知の窓が開いて、最初の一行だけ見える。『アキナ』。 メッセージはハルカからだった。ハルカはいつも、細切れにメッセージを送ってくる。だから開かなくても、通知だけで全ての内容が分かってしまう。 『もうすぐチア復帰だって』『それと』『気にしないでってさ』 小さく唇を噛んで、スマートフォンを見つめる。通知が鳴りやんで、画面が暗くなってから、思い切って手に取った。 『ありがとう』『心配かけてごめんね』 それだけ返信して、電源を落とす。画面が暗くなる一瞬前に、もう一つ通知が出た。『ナツキは来ないの?』] ……どの面下げて……? [チア部にも、アキナにも。] (19) 2020/09/29(Tue) 21:18:46 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[長い長いコロナ休みが明けて、久しぶりのイベントが新入生歓迎会だった>>0:39。 久しぶりに会った部員たちと、やっと発表できるね、あんなに練習きつかったのに、ずっとできないと恋しくなるもんなんだねって笑いあって。 一年前に私が心を奪われたみたいに、新入生にもチアの魅力を知ってもらえたらって、鈍った体を少しずつ慣らしていった。 だけど、歓迎会の二日前、急遽中止になった。 部員が熱を出したから。 私が熱を出したから。 『みんなにお願いしたい。誰かが熱を出しても、決して責めないでほしい。そしてこれからも、体調が悪い人がいたら、隠さずにすぐに教えてほしい。イベントが無くなってしまうとか、迷惑をかけるとか、いろいろ考えるかもしれないが、みんなの命を守るという選択を取ってください』 顧問はみんなにそう言ってくれたらしい。 PCR検査の結果は陰性だった。] (20) 2020/09/29(Tue) 21:21:28 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[誰にも責められなかった。 誰も悪くない、悪いのはウイルスだ。呪文のようにみんなが口にする言葉。 それは分かっていても、準備しても準備しても中止が続くと、少しずつ空気が濁っていく。 私はいつも以上にがむしゃらに練習した。顧問に頭を下げて、難しい新技に挑戦した。 シングルベース・エクステンション。ベースは私。トップはアキ。 たった一人の右腕で、一人の人間を持ち上げる、想像できないほどの力を必要とする技。この技の時、重みを分散させてくれるハルカとフユミは居ない。 この技は、男女混合のチームではよく見られる。ベースは男で、トップは女。 だけど私はそれがやりたかった。どうしても挽回したかった。 天に向けて伸ばした私の右手に、奇跡的なバランスでアキが乗る。テーピングだらけの右腕と、アキの体に、一本の芯が通る。私たちは繋がっている。 丁寧なバランスを保ったまま、アキはゆっくりと右足を逸らす。頭を高く保ったまま、さそりが尾を持ち上げるように。 アキのスコーピオンは、この世で一番美しい。180度に開脚し、そらした足を頭上まで上げる大技。その芸術的なバランスを、みんなによく見えるように、私の右腕が掲げ上げる。 右腕はテーピングだらけ。腕だけじゃない、身体中に貼られた湿布、腰を支えるコルセット。 やった、と、思った瞬間、 アキナを、落とした。]* (21) 2020/09/29(Tue) 21:23:14 |
HNアキナ 本名は 早乙女 菜月は、メモを貼った。 (a4) 2020/09/29(Tue) 21:33:40 |
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