…っ、……
[駆け寄った自分のコートの裾を引く力は弱々しい。
ついでに言うと名を呼ぶ声でさえ、だ。
赤く染った頬、トロンと蕩けた眼差し。
精力をありありとひょうげんしている、下肢。
ごく、と息を飲む。
魔物から得てしまった催淫効果は、倒したところですぐに消え去るものじゃない。
その上、今し方までその魔物と意識が混濁していたのだ。
理性が簡単に揺らぎそうになってしまう。]
フィル……
今は、あんまり優しくしてやれないかも、知れんぞ…?
[朝にお預けを食らったのは自分だって同じで
ズクズクと疼いたままの熱は、身体の中心に熱を有している。
ここでするのはまだ危険かもしれない。
また魔物を誘き寄せてしまうかもしれない。
頭でははっきり分かっているはずなのに
そんな顔をして求められて、我慢など出来るわけがなかった。]