人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

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メモを貼った。

彼らと花火を見終えたら、盆踊りに混ざりに行くだろう。

『青嵐って悩みなさそうだよな』

これは恐らく俺が最もよく言われる言葉。

初めて言われたのはいつだったか
もう覚えてはいないけど。
確かに特に深く悩んだこともないし
何かに悩まされたこともない。

だから去年部活で県大会で負けて全国行けなかったときに、
3年にとっては最後の試合だったからどうにか先輩を励ましてやりたくて冗談言って笑わそうとしたら
「悩みないやつはお気楽でいいよな」

って言われたことも全然悩んでないし、

俺に求められてたのは表面の賑やかしだけだったってこともすぐ悟ったし、それから人の悩みとかにも深く突っ込まないようにした。
俺って立場弁えてるからね。

「……今が楽しければ、なんでもいいよ、俺は。」

皆だって、それを求めてるんだから。


「いつかの未来。
 やがて今≠ノなる日。

 そこになって、楽しくなくなって、
 そこでやっと後悔したら遅いんですよ」

本当にそうだろうか?
編笠晶も、竹村茜も、一ノ瀬卯波も、
そうあることを望んでいるのだろうか。

聞こえてきた言葉に、
面と面を向かって言うでもなく、
遠くを見ながら、声を発している。

「俺は一度諦めた。でも後悔は絶対にしない。
 夢が叶わなくても、
 それは夢を持っちゃいけない理由になりませんから」

風を受けて色をつけた写真を覗き、
四人が枠に収まってることにうんと頷く。

何度も皆を撮りに行く。
そして、何度でもみんなと遊びたい。

「うかうかしてると、
 今度は俺が皆を置いていっちゃいますよ」

そう言って、花火のあがる方へ一歩踏み出し、
嬉しそうに振り返って、笑い続けるのだ。

時は先へ。

飴の食べ切った棒を捨て、
金魚とヨーヨーは暫く預かってもらい、

写真の詰まったカーディガンと、
祭りの淡い光で良く映える紺色の浴衣、
どこか怪し気な狐面を斜めに被って。

待ちに待った盆踊りへ、向かう。
十年前と何も変わらない懐かしい民謡が、
あまりにも懐かしすぎて笑ってしまったりして。

そういえば、失敗しないように、
こっそり練習したりもしたっけと思い出して。

首から揺れるカメラを片手で持ち、
その上から軽く手を叩いて、空へ向ける。
踊るのは久しぶりなのに、
身体が覚えているのもなんだかうれしかった。

「…置いてかれるのはやだなあ」

わかっている。
夢の中にいつまでもいられないこと。
これが現実逃避だということ。

竹村茜は知っていた。

「みんなで結婚出来たらいいね、ほんと。
 そうじゃなくっても、また違うところのお祭りとか…ううん、何もなくたって集まりたい」

 約束をした僕たち

「格好いいって言われたくて頑張ってきたのに。
 慰められちゃった、あーあ……」

ありがとう、小さな言葉で呟いて。
涼しげなあなたの髪にすり寄った。
まるで恋人のような仕草は青い夏の中では絆を確かめ合う行為だ。

「約束、しよう。涼風。
 夢も将来も、これから一緒に。
 ――あの頃みたいにいっぱい話そうね」

やっと会えたのだ、奇跡のようなこの時間。
夢を、やりたいことを後悔をしないように。
誰かが与えたチャンスだったんだ。
今だけは不思議な時間に浸りたい。
そんな気持ちで感じた温もりは、涙が出そうになるほどあったかくて。
独り立ちなんて、暫く出来そうにないって、答えを先に知ってしまった気分だった。

涼風。涼風くん。夕凪達とも遊んでよ。
射撃でもいいよ、それとも何か食べたいものでもある?
今度は三人で、ううん、もっと多いかも。
僕ら双子はみんなを連れ回しちゃうからね。
大勢誘って。また。
もっと笑える思い出を語り合おう。これからもずっと。

>>編笠

「さみ……しー……なー」

 大事な友達と再会できたのに。
 夕凪に楽しい夏を与えると決めたのに。
 やっぱり隣に誰かがいないと寂しいんだ。
 何故か心の何処かでもうすぐ終わってしまいそうな気がする。

 "あの狼の子"が寂しがっているのがわかる。
 自分と似たような感じがした、あの子。
 大事な誰かに隣に居て欲しかったあの子。

 突然傍にいなくなる寂しさや辛さを、
 思い出してしまったのが運のツキだ。
 夢ならば都合よくずっと夢のように過ごしていたかったな。

 なんだか心まで女の子になってしまうのかもしれない。
 だけど、いまこのままで聞きたいことがある。

 聞いておかないと。

「よっし。編笠を探そう」

 たとえ、この夢が終わったって。
 伝えたいことは変わらないけれど。
 動かなければ始まらないよね。

 編笠

「うん、探してた。どう? 浴衣似合っているかな。
 みんなに褒めてもらったから聞かなくても返事はわかってるけれど」

話しかけてくれたのは、暗い顔をした魚を見つけてくれたのはあなただったのに。
今の印象はなんだか黙ってばっかりの人だ。
本当にその口が開くのはいつなのか。
いつまでも待てる気分なのは確かだけれど。

「編笠くん、ここに来て、ここで話してくれたこと。
 ――何処まで本気にしていい?

 夕凪は、夜凪が居ないとすぐに落ち込む寂しがり屋さんで。
 夜凪は、夕凪のことになるとすぐに考え過ぎるお節介屋。

 まだ、夕凪たちのことが好きで。さ。
 代わりになってくれるっていってくれるかな。
 ううん、代わりとかじゃなくって。
 居て欲しいなって頼んだら、隣に来てくれる?」

「…誰も置いてきゃしないって。な。」

不安がるアカネにぽんぽんと頭に軽く手を置く。
こういうの、ガラじゃないって?
うっせー、ほっとけ(笑)

「…卯波には昨日言ったけどさ、今生の別れじゃないんだし
望めば会えるよ、俺は。まぁ受験やら大学で忙しくなるし、
アキラに至ってはどうなるかわからんけど…。」

でも、と続ける。

「俺は何処にも行かないし、俺たちはずっと友達だ。
8年くらいしか村には居なかったけど、
今の俺を作ってるのはその8年間だし
その中でお前たちと会えて良かったって思ってるよ。
…ありがとな。」

最後の花火が咲いて散る。
きっと俺はこの花火を忘れないのだろう。
例え、これが泡沫の夢だとしても。

あ、たまやーっていうの忘れた。

「ふふふ、みんながついてきてくれたら、
 置いてくこともないですかね〜?」

なんて、意地悪なことも言ってみたり。

「みんなが忙しかったら俺が会いに行きます。
 幸い、漸く進路が決まったところで、
 全然時間がありますからね。

 俺もみんなと会えてよかった。
 この田舎で生まれて本当に、よかった」

自分らしくあれるのは、
この田舎の人たちの前だから。
性別とか、そういうしがらみから離れられる。

最後に咲いた花火も、四角形のなかに切り取った。

盆の暮れに、盆踊りをする。

田舎を楽しむための行事が、田舎を終わらせることに繋がることに気付いている。

それでも、この田舎のことを愛していた。それだけだ。


  編笠

「そっか、……わかった。
 じゃあ、――いまは夕凪と編笠の夢で、一夏の思い出

 難しいことを考えないで」

あなたの思い出と、夢と、夕凪が重なる。
ゆっくりとその頬に手を触れて、優しく撫でた。

「答えられなかったのは、どうしてかなって考えていた。
 はじまりすら与えられなかったのはなんでかなって考えた。
 それは、――なにも物語が紡がれていないから。
 君も夕凪も、黙ったまんまだ――……ねえ、一つだけお願い」

 




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