205 【身内】いちごの国の三月うさぎ
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[いくらかあった此方の余裕も剥がれていく。
ぬるさを保った粘液を塗りつけ、握り込まれる。
イったばかりの身体に、その刺激はあまりにも強烈で
緩んだ表情の奥に濡れた欲を魅せられたら、
心臓が、ドクン、と激しく波打つ。]
ぁ、……ッ、ぅ……、
……ッン、
だ、め……ッ、まだ、
[さっき見せたばかりなのに、もう筋を浮かべる程に、
張り詰めている自身が恥ずかしい。
こんなにも欲を感じたことはない。
吐き出したい気持ちと、羞恥がまた襲って。
弱く、首を揺らすのに。
ねだる声が、甘いから許してしまいそうになる。]
[長い指が逃さないというように包み込む。
先端の弱い部分を、親指で強く押し潰されて。]
……ァ、ッ ……
そこッ、
ンッ……、また、
[汚れた掌を拭う余裕もなく、
両腕で彼の背を抱き寄せたのは許して欲しい。
その隙きを与えてくれなかったのは貴方だから。
額を突き合わせたまま、また一際大きな波が来る。
吐息も、声も、表情も隠せないまま。
彼に縋って、ぶる、と身震いが走って、
堪えきれずに白濁がまた、彼の手を汚した。*]
[ 直接与えられる快楽とは別に、
視覚、聴覚から得る興奮でそうなってしまう。
自分に覚えがある事だとしても、
相手がそうとは限らない、から。
もしも触れ合うことを許してくれたら
目一杯、気持ちいいことだけ、
してあげたい なんて傲慢な考え方を
見透かされたような気がした。
――テレビを通して、何万人もの人が
己を見て、理想として、恋をしてくれていたとしても
ただ一人に、愛される覚悟に、持ち合わせが
なかったのかもしれない。
自分が相手を愛したいと思うのと、同じくらい
相手もそう、思ってくれていると。 ]
[ 信じたいから、今。
ここで触れ合っているのにね。 ]
[ 淫らに揺れる腰を、がしりと
抱きとめて、限界を訴えると、
弱いところがなぞりあげられて、ますます
呼吸が乱れていく。
声を拾った耳が熱くなる。
下肢に集中していく熱が、全身に回って
いくように、 ]
ぅ……あ、……ンンッ……
[ 溜まった熱が迸るように吐き出されて、
君の手を汚していく。
全て出し切った後、大きく息を吐いて
ねだるように、名前を口にする
まだ体内の温度を覚えている精液ごと
包んだ手に、イッたばかりの体への気遣いなど
なく、激しく上下に動かして。
情欲に濡れた声を受け止めながら、
射抜くように、跳ねる体を、上り詰める表情を
見届けた。 ]
[ 一番近くで、その願いは無事聞き届けられたのに
己はどこまで欲張りになるのか、少し
恐ろしい。
吐精されたそれを見て、諦めるような色を持った
ため息を零した。 ]
………すごい、良かった。
のに、
[ 互い達した後で、まだ敏感になったまま
そっと抱きしめれば、伝わってしまうだろう。
萎えるどころか、未だ硬さを保ったままで
いるということに。 ]
[ 若さで言えば、彼のほうが盛りと言えようが
自分の年齢とて、まだ衰えを感じるには
至らないところ。 ]
……今日はね、気持ちいいことだけ
しようって、言うつもりだった。
男同士でするってなると、
痛い思いさせたりしたりするかなって、
だから、抱くとか抱かれるとかまでは
しなくてもいいかなって、
だけど、
[ 背を撫でる手の優しさだって、真実なのに、 ]
今、どうしようもなく、君を抱きたいって
思ってしまって、
[ 君に
溺れたい
この体のほうが、言葉よりも
よほど素直かもしれない。
背を撫でる手を、するりと形の良い尻へ滑らせて ]
いいかな
[ 問うた。
粘液でぬるついているほうの手も
決して受け入れるための場所ではない、
そこへ、向かわせながら。* ]
[テレビの向こうで活躍する姿を見たのは、
その日の夜が初めてだったと言ってもいい。
MVで見た彼の姿が過去の彼に重なって、
ようやく同一人物だと理解したぐらいの知識。
それまでは耳で得られた彼が懐かしく話す声しか知らなかった。
俺が惹かれていったのは、液晶の向こうではなく、
優しく穏やかな声で月を想うような、
Hare悪戯めいたサービスを思いつくような、
大事そうに俺が作ったデザートを写真に収めるような
そんな、あなただったから。
触れたい、と、思う。
まだ知らないあなたを。
スクリーンの向こうに居るあなたも、全て。
――――欲しい。]
[彼の手をまた汚してしまうくらいに吐き出した欲。
擦り合わせた額が痛いぐらい、
擦り付けぐちゃぐちゃになった前髪がら絡み合う。
射精後のぼうっとした感覚を味わいながら、肩で息をして。
は、……と鼻先に熱を零す。
達した後なのは彼も同じ。
互いに上がった体温で肌が汗ばんでいる。
近いからこそ、紡がれる呼吸が少し荒いでいるのが分かる。
切なげに呼ばれた名前を、今更頭の中で反芻して。
甘えるみたいにまた前髪を擦り合わせたなら。
落とされる溜め息に気づいて、首を少し傾けた。
のに、と続く音。]
…………、……?
[柔らかく抱きしめられて、腰を引き寄せられたなら。
達したはずの彼のモノがまだ硬さを保持していることに、気づいて。
ぁ、と触れた瞬間、甘い声が零れた。]
[ゆっくりと彼の手が背を撫でる。
まるで落ち着かせるみたいに動くその手に、
身を委ねながら、紡がれる言葉に耳を傾けて。
男同士のSEXについて、考えていたことを知る。
気持ちいいこと、の次に口にした
痛いかもしれないこと。
その言葉に想像する先は予習済みの身には、容易くて。
つう、と優しく背を撫でていた手が滑り落ちていく。]
……ぁ、ッ、
[腰筋を辿り、やがて指が辿り着くのは。
男女では想定されていない場所。]
[抱きたい、というストレートな物言いと、
向けられる熱の篭った視線が情欲を孕んでいるのが分かる。
肩に添えた手に僅かに力が篭もる。
想定してない訳じゃなかった。
ネットで調べた知識、動画を見ることは躊躇ってしまったけれど。
その。
彼が俺を見詰める瞳の奥に何度か。
今日と同じような色を感じる事が、あった。]
[はく、と唇で酸素を取り込むみたいに喘がせて。
肩を掴む指先で彼の背を軽く撫ぜる。
口にすることを躊躇ってしまうけれど。
真摯に求められる思いに、応えたい気持ちはある、から。]
自分じゃ、……気持ち悦く、できなくて……
感じるか、分からない、けど、
[瞳を伏せて、彼を受け入れる為の準備を、していたと。
伝えたなら、それは。応と言ったことになるだろうか。
かぁ、とこれ以上ないくらい頬が熱くなって、羞恥が浮かぶ。今までで一番恥ずかしい。*]
[ 同じタイミングで落ちた声、ひとつ。
「ああもう」と言いながら天を仰ぐ仕草に
何を想起したか察して、猫のように口角を上げた。 ]
……なにか変なこと、考えました?
[ 背伸びして、それでも20cmの差が埋まらないなら
屈んでくださいと訴えるように服の裾を引いて。
そんな問いかけを囁いた、あと。 ]
……車の中でも、こっち、見てたでしょ。
今のうちに、教えておいてあげますね
──明日の分の着替え、ちゃんとタートルネックですよ。
[ 同僚とその恋人も連れ合いとはいえ、
お泊りは当然二人一室。
恋人との一泊二日のデートで、夜なにもなく寝るなんて
……付き合ったばかりの頃の私じゃないから
そんなことは多分ないと、思っているので。
期待して、二日目の服を選んだのだし。
]
[ 触れ合わせるような動きをしなくても、
触れ合う鼻先、唇、吐息もまた、
互いの熱を冷ますに至らないほど、熱いまま。
甘えるように額を押し付けて擦り寄せてくる
愛おしい存在に、胸がいっぱいになる。
快楽に追い詰められる顔も、
達する顔も、そして達した後の
くったりとした表情も、全部が全部、
愛おしくて、仕方がないのに ]
俺も、こんな風になる俺のこと
知らなかった。
[ 抱き締めたことで、ぴたりと重なり合う体は
鼓動の音すら誤魔化せない。
硬いままのそれに気づいたのか、
甘い声が耳を擽って、ふ、と笑う。 ]
[ このまま、くったりとした身体を
優しく撫でながら眠りたいと言えたなら
優しいだけの男で居られただろうか。
性にしても、愛にしても、
これほど欲深だとは、思わなかった。
次々と湧いて出てくる性欲を、
そんな風になったことはないから、
飼い慣らすように、堪えることすら
楽しいとすら思っていたのに。
腰から下へ伸びていく手に、声が上がれば
また。新しい自分を知った。 ]
[ そこまでは、想定していなかっただろうと
決めつけてしまっていたのは、やはり
愛する覚悟はあっても、愛される覚悟が
足りていなかった何よりの証だと思うし、
恋人になって欲しいと願った日があって
泊まりたいと提案された日があったと言うのに
それを何処か、
「自分に応えるため」に「そうしてくれたのだろう」
と、君の気持ちを、君が傾けてくれている心を、
これだけでいいからと おざなりにしていたのだ。
――好きと伝えることに、戸惑いがなくても
伝えられたものを上手に受け取ることが
出来ずに、遠慮されるなんて、
どれほど、切ないことだろう。 ]
………? え、
[ 君のほうが余程、どちらの覚悟も
決まっていたのだと思い知らされて、
目を丸くさせてしまった。
自分じゃ、……できなくて、
真っ赤になって、それを伝えてくれて
今度こそ、息ができないくらい、
胸が詰まった。 ]
[ 恋とはこんなにも、恐ろしく苦しく、
そして、泣きたいくらい胸が詰まるものだったのか。
臆病な俺は卑怯にも、
目の前のいとしいからだをきつく抱きしめて、
その涙を隠してしまうけれど、
どうか、責めないでほしい。
愛
を知るのは、はじめてなのだ。 ]
痛みは?
[ ぬるつく指を、こわごわとその場所に侵入させていく。
異物感は拭えないだろうが、それでも
優しく少しずつ。
おもったよりもすんなりと、指一本飲み込んで
いくので、ああ本当に自分で試していたのだと
知り、不謹慎にもその姿を思い描き、
密かに、興奮してしまいながら ]
……あったかい。
ゆっくり、抜き挿しするね
[ 中で指を少し曲げて、宣言通り、
ゆっくり、その動作を繰り返しながら、
気を散らせようと、胸の突起に歯を立てる。
二人分の体液が纏わり付いた指が
行き来すると、卑猥な水音が響いて。
気が逸ってしまうから。* ]
[ぐ、と言葉に詰まる。
この表情と言葉は「察している」やつだ。
随分と性に対しての勘が良くなったものだ。
ずっと手玉に取られている。]
準備の良い彼女を持って僕は幸せ者だよ。
[お預けの後、狼がどんな状態になるかを知っていて、
家に帰る前にそれを解禁してくれるのだから。
――夜は覚悟しておいてほしい。]
[合わさった肌を通して感じる鼓動。
その速さと、知らなかった、と呟く彼を
笑える余裕は自分にもなかった。
同じぐらい速い鼓動、興奮と胸の高鳴りが混ざって、
どうしようもないから、収め方を教えて欲しい。
吐き出されるように笑う息すら肌を擽るから、
彼の動き一つで、身体が敏感になっていくのが分かる。
じゃれ合いの延長だと思っていた撫でる手も、
気持ちを伝えるためのキスも、何もかも。
小さな快感を掬い上げていくみたいに、確かめられて。
――俺で、感じて。
そう言われるままに、身体が彼を
覚えていく。]
[恋人として、彼と向き合うと考えたあの日から。
今日に至るまでを考えていなかった訳じゃない。
それは、泊まりたいと口にした時も変わらず。
恋の延長線上に性愛があることは、
恋をした人間ならば、誰もが経験することだろう。
手を繋ぐだけ、隣に居るだけ。
それだけでも「幸せ」と呼べるのだろう。
だけど。
欲情を隠した瞳と視線を交えた時から。
彼が、四葉のチョコレートソースを口にした時から。
そんな予感は、していたし。
そのことに嫌悪どころか、心臓が跳ねたから。]
[抵抗がなかったわけじゃない。
彼との性交との拒否反応というよりも、
自身で、双丘の奥底に触れて解すという行為に。
躊躇って、踏み込めなくて。
何度か断念して。
滑りを助けるというローションすら買うことすら出来ず。
自身の唾液と吐き出したもので、触れた。
襲ってきたのは、異物感と苦しさ。
快感なんて、すぐに拾えるはずもなくて、
何度か、指を往復させても、慣れなくて。]
…………
は、
[達することも出来ないまま、指を引き抜いた。
自身の気持ち悦さを得ることよりも、
彼の欲に応えられるのか、という。
そちらの方が気になって、溜息を洩らしたのは。
まだ、彼にも知られていない。]
[それを、今、口にしたことで。
固まってしまった彼に、少し後悔を覚えながら、
朱に染まった顔を、背ける。
これじゃあ、俺のほうが欲しいって言ってるみたいだ。
あながち間違っては、居ないけど。
もしかして、そこまで考えていなかったんだろうか。
でも、さっきは「抱きたい」って言ったし。
ぐるぐると思考が困惑と動揺で揺らぐ。
やっぱり、不味かっただろうか。
先走りすぎてしまっただろうか。
どう言い訳しよう、なんて。
視線を泳がせながら、必死に脳をフル回転させていたら。
先に言葉を落としたのは、彼の方で。
口をついたものが謝罪の言葉であれば。]
……また、謝ってる。
[ふ、と苦笑を浮かべ、眉尻を下げて笑ってしまった。]
[きつく身体を引き寄せられて、隙間すらなくなるくらい。
感謝よりも謝罪の言葉を先に口にしてしまう。
そんな彼の脆さに、寄り添うように背を撫でて。
胸元に埋まった頭を緩く抱き込んだ。
胸元に濡れた感触がしたとしても、
気づかないふりをして、艶やかな髪に唇を落とす。]
言ったでしょう、触れて欲しいって。
たくさん、触って。
景斗さんの手で、全部。
[そんなわがままをまた口にして、目を細める。]
[臀部を辿った手が双丘の間に割入っていく。
粘液を伴った手が、ぬるりと双丘を撫でて、
その奥の蕾へと伸びていく。
最初は指先だけ、それからゆっくり一関節。]
……ッ、 ……
く、
ンっ
痛み、は、ない……けど、っ
[やっぱり最初に感じるのは異物感だけど。
自身で触れた時よりも、前触れがないせいか、
息を吐き出したタイミングを測って埋まっていく指を
戸惑いながらも受け入れていく。]
[彼の長い指が探るように中で蠢いて。
中の温度を伝えられたら、羞恥に埋まりたくなる。]
……、
言
わなくて、いい、からッ……
[少し慌てるみたいに、ツンと髪を一束引いて。
気を逸らさせたのに。
言葉通りに指がゆっくりと抜き差しされて、
いやでもその感覚を覚えさせられていく。
伏した瞳を、睫毛で覆い隠して、小さく震え。
胸の尖りを食まれたら、さっきは感じなかったはずの
甘い痺れが背を駆け抜けていく。]
……ぅ、
[思わず、びくと肩が跳ねて、
自分でも驚いたみたいに目を瞬かせ。
戸惑いの色を浮かべたまま、顔を見合わせて。*]
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