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【人】 宵闇 ヴェレス 7時は難しいけど、9時なら。 [ 6時前に目を覚ましたダンテがそのまま玄関に向かうのを目で追い、おはよう、と声を掛けた。 自分は夜半には寝台を抜け出し、本を読んでいた。戻ってきた彼は新聞を手にしており、出国制限が解除された旨を口にした>>26。 宿から市街地までの距離、その前後に宿を引き払い駅での手続き等考え、余程急くなら7時の列車も間に合いそうだが、9時なら朝食を摂っても充分にお釣りが来る段取りだ。 自分にも見せて、と長椅子からダンテに腕を伸ばして新聞をねだり、一面を走り読むとまた返した。] この時期の国内の新聞とか、貴重だから取っておいた方がいいかもね。 また来ればいいよ。 [ クローゼットから衣服を片付けながら、不本意の滞在でも、いざ出立となれば感慨を溢すダンテにそう応える。] こないだのお店にももう一度行けなかったし、それに、着そびれた服もあるし。 [ 後半は戯れだが、自分とダンテがそれぞれ選ぶと、数日に余る着数を買ってしまった。出来るなら早々に出国したい、というのが建前であった筈なのに、やはり異国でふたり買物をする、との行為に浮かれていたのは否めない。 増えた荷物はスーツケースの中になんとか収まった。こういった手筈はやはりダンテの方が手慣れている。まだ封の切られていない酒瓶は、一度鞄の中身を取り出し、その底へとしまわれた。 お互い荷を纏め終えると、卓の上に路線図と時刻表をまた広げた。昨日変更後の旅程を検討していたが、今日発つなら海べりの宿には予定していた通りの日数を宿泊できる。その分、帰路で立ち寄ってみようと相談していた街は諦めることになる。] (41) 2021/04/25(Sun) 23:43:30 |
【人】 宵闇 ヴェレス 仕方ないね。 [ 寄り道と言えば此処で充分した。それに、彼と旅をするのがこれきりではないと想いたい。 この国を出るならもう女性の形でいる必要はなく、着替えに合わせて姿を変えると黒いヴェールで隠すように身体を覆う。] [ 坂を下り、着時は市に寄った為に気付かなかったが、宿から駅まで直線距離を取ろうとすると王宮前の広場を通ることになる。まだ早い朝の光に、昨夜と違い白磁の壁が煌めいている。 昨夜、落日に映え色を変える王宮の姿を見た。陽が暮れる毎に夕闇に浮き上がるような蒼白の面を晒し、それから燃え上がるような篝火をその身に灯した>>27。 どの姿も美しいが、それは恐らく通りすがりの旅人が上辺を眺めるが故の感想で、あの城の内に巣食う血の濁り、市井の猥雑な活況も習俗も、この国に住まうひとどものものだ。] 寝てしまうかも。ごめん。 [ 目的地への列車の旅券は無事確保でき、出国の手続きも済んだ。夕方過ぎには当初の目的地へ着く。ボックス席に隣り合い座り、窓際に座る彼に欠伸をしながら身凭れる。昼の間は彼が窓際に座り、夜は自分と入れ替わる。そんな暗黙の了解ができている。 漸く車両が動き出し、耳慣れた、車輪が枕木を踏む音が響いてくる頃には、すっかり彼に体重を預け眠りに就いていた。]* (42) 2021/04/25(Sun) 23:47:17 |
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