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人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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[外はまだ明るいけれど、お店の中は薄暗い。
ランプを光らせている脂の焼けるにおいと食事のにおいが
ざわざわした声に混じって、活気とも違う喧騒がある。

壁がときどき焦げているのは葉巻のせいだろうか。
椅子もテーブルも清潔なのに
欠けていたりガタガタしたりする。
柄の悪い、とはこういうことだろうか]


 ……ん……。


[運ばれてきたものに手を着けないまま、
彼の話したいことを待った。
これを飲み干したらいつもみたいに笑えるかな。
帰るまで自然にメグができるかな。
もっと強いお酒を頼めば一気に変われたかな。

そう思って伸ばした手は、グラスの水滴に触れているだけ。
最初に運ばれてきた串焼きは
暖かいうちに食べられるのを待っているのに、
どうしてもお酒を先に口にしたかった**]

 
[切実な願いは、聞き届けられた。

 ただ、
 諸手を挙げて…という訳では無さそうなことは
 躊躇いがちな口調と
 翳ってしまった表情から感じ取れた。


 ベルトに続き
 釦やチャックを外し
 スラックスを引き下ろそうとしながら


   (一体、なにを考えているのだろう…?)


 これまで標本にしてきた
 数多の虫たちの心なんか気に掛けたこともなかったのに
 貴方が今、どんな気持ちでいるのか
 気になって仕方なくなる。

 知りたいと願う反面
 深く刺さって抜けなくなりそうで
 知るのが怖い。]
 

 
[僅かな逡巡の後、
 一気に膝まで引きずり下ろした。]



   っ、……これは、また  すごいな、



[現れた景色に、ほぅと目を見張る。

 黒いベルトに縁取られた
 非の打ち所のない白い肌を
 レースが絶妙に透かしつつ隠しているのが
 艶めかしい。]
 

 



   ……美しい



[ガーターが開いて曝け出してくれた脇腹から
 布地を通って、太ももへ
 右手で撫で下ろしながら賞賛する。


 脱ぎ捨ててしまう蛹まで
 麗しい様は、オオゴマダラを思い起こさせた。
 彼らが包まる蛹は金色に輝いて
 人々を魅了する。

 でも、あれは本来、捕食者の目を意識したものだ。
 理由は諸説あるが
 生き残るために独自の進化を遂げてきた。]
 

 
[普段は見えぬところまで
 こんな風に拘り抜いて、
 貴方は一体誰の目を意識しているのだろう。

 必死に探して此処に来なければ
 逢うはずも無かった
 己では無いことだけは明らかだ。]


   …………


[訳の分からぬ苦さ。
 もやついた気持ちを晴らすように

 パチン、パチン、パチン

 留め具とシャツを別れさせ
 白さをより際立たせる額縁を取り払っていく。

 どうしても鎖が邪魔で
 まだ逃げられぬことを確認しつつ
 椅子の足と繋いだ片側をひとつだけ外した。

 自由になった すらりとした脚。
 恭しく捧げ持って
 革靴に続き、スラックスとガーター
 履いているなら靴下も抜き取ろうとするだろう。]
 

 
[黒革の拘束具だけは
 俺が施したものだから

 このままで、────良い。]*
 

 
[手枷と繋がる鎖に戒められて
 "諸手"はずっと挙げたままだけれど

 いま僕を見てくれているのは
 他でもない彼だから……、
 緊張せずには、居られない。]



   (変じゃない、かな……)



[ジム通いで余分な贅肉を落とし
 肌の手入れを欠かした日はない。
 万全と言っていい状態だが、
 それでも不安の種は育っていく。

 下半身など、普段他人に見せる機会はない。
 羞恥も伴えば、
 頭が沸騰しそうになっていた。]
 

 
[何か、気になることでもあるのか
 少しの間が置かれ
 不安が一層膨らんだところで

 ズボンを一気に脱がされた。

 膝上まで、冷んやりした外気に触れる。]



   ……、ええと、それは、……



[日本語は時に難しい。
 すごい、はどう受け止めていいのか。

 わからぬまま
 眉尻を落として見つめていれば
 賞賛を告げてくれながら動かされる手が見えた。]
 

 
[脇腹から太腿へと掌が伝い降りるのと裏腹に
 ぞくぞくとする何かが背筋を駆け上り
 頸の辺りで蟠る。]



   ……、……っ



[両目を細め、小さく震えながら
 慣れない快楽を甘受した。

 その声で褒めて貰えるのも
 その掌で触れて貰えるのも

 信じられないほど、気持ちが良いよ――…。]
 

 
[先程、虫ピンを刺される前に
 胸を弄られたときは、
 擽ったさしかなかった。

 心が無防備だと
 こんなにも……、違うんだ。

 
下着が、少し窮屈に感じる。

 

 


   そう見えるなら、良かった……



[賛辞に答えながら僕は
 身体まで彼に懐いていくのを
 自覚するけれど

 どうしてだろう

 彼の方は……、余り面白くなさそうだ。
 

 
[無言で裸に剥かれていく。

 腰や足を浮かせて手伝いつつ
 気に掛かる。

 足を持ち上げてくれる所作から
 僕を大切に扱ってくれているのは
 伝わってくるのだけれど

 彼は本当にしたいことを
 出来ているのだろうか。]
 

 
[シャツガーターを外され
 靴下まで脱がされたが
 鎖を離した足枷は足首に残された。

 脱がしきりたいのか
 それとも脱がしきりたくないのか

 何とも不思議で、少し首を傾げる。]



   (……ああ、)



[けれど、足元を眺める彼の表情は
 心なしか嬉しそうに見えるから……、

 このままが、────良い。]
 

 
[手足の拘束具。

 貴方が付けてくれたと
 改めて認識すれば
 一番の気に入りの装飾具になってしまう。

 この先ずっとつけていてもいい。

 僕の中、在原治人というひとが
 一秒ごとに大きくなって、占めていく。]
 

 
[自覚すればする程に不安も育つ。

 嘗て自身の基準の全てを作った人は
 最期には僕を仕上げるのを諦めて
 僕のことを捨てて
 自分だけのために生きて
 自分だけのために死んだのだから……。


 貴方に価値を与えて貰って、
 漸く得られた命だ。

 また手離されたら……と想像すると、
 ぎゅうぅ、と強く胸が締め付けられる。
 息がしにくくなって
 また、辛い方の涙が瞳に集まっていく。]
 

 
[生きることはかくも苦しいことなのだ。
 重い肺を働かせながら、想いを声に載せる。]



    Herr在原、治人……
    ……、僕を、最後まで仕上げて



[切望で、渇望していた。
 もう貴方のための僕だから
 途中で投げ出さないで欲しい。

 しかもそれだけじゃないと
 吐き出してから気づいてしまう。

 口をもごもごと動かし
 躊躇って、躊躇って、……付け足すだろう。]
 

 

    僕を、手元に置いて欲しい……
       叶うことなら、ずっと……


[声は怯えを孕んで震えていた。
 僕は、貴方なしに生きられないだろう。
 もし叶わぬのなら、今すぐ命を摘み取って欲しい。
 ……そんな想いで。**]
 

[行きますよって彼女は堂々と出て行き、途中微妙に頼りなさ気な足取りになりながら、辿り着いたのは公園だった。

よく喋ったのは彼女の方で、
言葉をたくさん飲み込んだのも彼女の方だった。

彼女よりずっとシンプルで身軽な己は、
答えももうこの手に持っていて、
彼女に差し出しさえした。

それでこれ以上泣かせる事はないと踏んだ通り、彼女は落ち着いた顔をしていた。
彼女が仮面を被っているとは、まぁ気付いていたけれど、
それでも大泣きとかされずに済んだ事に、
身勝手ながら安心していた。
飲みに誘ったけれど、
断られたって「そっか」となるだけだと思った。
でも、何か言いたげながらも頷いてくれて
嬉しい自分がいる事に驚いた]


  お願いするのはこっちだなぁ
 

[少し照れくさそうな顔を傾け、
結んだ髪がかかる首をかいかいと掻いた後、
今度はまた、自分が道案内をした]

[屋敷に仕えているものだから流石に店は選んでいるけれど、たまに足を運ぶ。彼女を連れてやって来たのは、奥まった立地のせいで少し暗い、そんな店。
何かいつ行ってもやっていて、そこが楽しい様などこか不安になる様な気もする。
おめかしした彼女を連れて行くと、ある人は不躾にジロジロ見て来るし、ある人はちらちらと気付かれない様に視線を寄越して来た。
あー流石にお嬢様嫌かなと思って引き返そうとしたが、
人懐こい女性店員が席を用意してくれて、
半ば強引に席につく事になった。
彼女へ向けられる視線が大半の中、己に向けられる視線があった事には気付けないまま。

彼女の方はこっちの気もしらないでか、
まぁ浮いているのに態度は毅然としたものだった。
店員もまわりの客も絡んで来ないし、まぁいいかと、レモンの酒を頼んで一息ついた。

彼女の酒の好みは把握して……いるという事はなかった。
お出しする機会がなかったものだから。
果物の味の強い酒がふたつ並んだのが、何だか面白かった]


  え?
  ここじゃ話せない様な事、
  話しちゃう?


[さっき迄はよく出来た大人だったのに、
今こちらへ向ける顔も視線も、アウェイの少女だ。
おどけて返してみたが、彼女の反応がどうであれ、調子に乗り過ぎたなとこっそり反省して、運ばれて来たグラスに手を伸ばした。

……こういう場所は昔の匂いがする。
呑まれない様に気を付けないと]



  えーと、何から話そうかな……
  そうそう、この手だけど。

  あんたが思ってるほど、オレはこの手が好きじゃねぇよ。
  悪い事をしてきたからな。


[「こういう」と続けて、
隣に座る彼女のほっぺを左手でムニとつまんだ。
こんな可愛い悪戯じゃない、と示す様に、少し力を込めた。
抵抗したって唇が開くくらいに。

……さっき気を付けないとと思ったばかりなのに。
今一度反省したという訳ではないが、するりと手を離した]


  あると便利だ、普通の奴みたいに生活出来るし。
  でも、駄目になったら駄目になったで、オレは構わない。
  きっとすぐに諦めがつく。

  もともと、あの時駄目になってる筈だったんだ。
  だから、こいつの事は気にしないで良いんだ。


[片手でも真っ当な仕事もあればそうでないものもあるだろう。
それは両手でも同じ事で、
とどのつまり、手はそう重要ではない]



  これからは……まぁ、どこに行こうかな。


[出て行くのは屋敷をなのか、国をなのか。
アテも含めて決めてないが、この場で「屋敷」とか言えないので濁す。
とりあえず、先の手の話から、技師を求めて国を出ると迄決めている訳ではない事は伝わるだろうか。ただ、結局国をも出る事になる様な気はする。

「あ、それ美味いよ」と、運ばれて来た串焼きに話を移したりしつつ、]


  ……オレがあんたに何をして
  そんなに気に掛けてくれてんのか、
  やっぱりよくわかってねぇんだけど、

  でも、この手で出来る事を求められた訳でもなく、
  女みたいな顔だから服を脱げって言われるでもなく、
  気に入ってくれんのは嬉しかったよ。


[ふ、と笑って串からひとつ肉を食い千切って。
もむもむと、使用人顔で上品に咀嚼して飲み込んでから、また笑みを向けた。ちょっと複雑に眉を下げていたが、哀しみや苦悩を含んだ笑みではなかった]


  でも、オレがあんたの傍に居る事を
  疎む奴も居るだろうし、
  オレ自身も、あんたを悩ませるタネでありたくない。

 



  例の場所でオレが倒れ…寝転がってたのだって、
  オレが今迄悪い事をして来たからだ。

  またあんな事、嫌だろ。


  ……オレも……いやだよ………


[血に染まった庭を見て、当時彼女はどんな顔をしていたんだろうか。どれだけ胸を痛めたんだろうか。
想像してしまえば、
最後の言葉は彼女でなく、
薄いレモン色のグラスに向けられた]

[恩返し、と言って屋敷に居ついたし、その気持ちも本当。
いつ迄、とか考えてなかったけれど、
永遠に居る事は良くないだろう。
彼女の結婚と、彼女の想いで考えさせられた。

盗賊団に見付かって屋敷や彼女に迷惑がかかると迄考えた訳ではないが、己の過去が暴かれて何か取り返しのつかない事になる可能性は大いにあるんじゃないか、とは思い至ってしまった。
例えば彼女が結婚を断ったとして、身辺を調べられて、
彼女に危害が加えられなくとも、原因になったオレが見せしめの様に殺されるとか。
別に死んでも構わないけれど、
彼女に死体を見せ付ける様な過激な奴だったら?

それなら、オレがおとなしくどっかに去った方が、
色々と問題が回避出来るのではないか。


そんな事迄すぐに思い浮かぶほど、
オレはオレの過去を煩わしく、又、重く見ている。


出会ってすぐ聞いた替え玉の話は記憶に薄い。
盗賊の仕業と考えている訳ではないが、
少なくともオレ達は、攫った人間は返した事も逃がした事もないから……。**]

[「めいっぱいおしゃれ」したアキナを
 瞼の裏に思い描いて、
 その日は珍しくシャツにアイロンかけて
 学校に行ったんだ。

 口を開けて、閉めて。
 ちゃんと目の前でも喋れるように。

 少し明るい色の髪をセットした青柳を見て
 「あー、ワックス、買ったことないや」なんて
 色んなことを考えてたり。

 でもアキナに会ったら、まず謝らないと。
 俺はバスケ部じゃないし
 生まれた年齢=彼女いない歴。
 もしかして彼女の頭の中に
 俺が明るく陽気な人間として描かれているなら
 それはすごく、大きな間違いで。]

[─────だけど、俺の予想を大きく超えて
 放課後の図書館にいたのは
 あの日、俺に襲いかかってきた影
 また立ち塞がるでもなし、
 ぺこり、と頭を下げてみせる姿に敵意はない。]


  ………………アキナ?


[そっと呼び掛けても多分言葉は通じない。
 影みたいな俺だけど、
 本当に影と話すのなんか初めてで。

 言葉がすんなり喉から出ない。

 はっきりした姿かたちは分からないけど
 ぼんやりと、スカートと前髪が揺れてるのが
 何となく分かるくらい。

 でもこれがアキナだって、分かってる。]

[影と俺と、二人きりの図書館を
 静かに風が吹き抜ける。]


  アキナ。


[俺は彷徨わせた視線を上げて
 明確に、影へと呼びかける。]


  ……俺、ユウだけど。


[ああ、そうか、通じないかもしれないのか。
 書架の片隅、いつもの席に腰掛けると
 隣の席に座るように、椅子を引いて促そう。

 カバンから取り出したのは
 いつも持ち歩いてる『赤いろうそくと人魚』。
 やり取りの長さの文だけ皺のよった便箋に
 いつもの青いインクを走らせて
 アキナに宛てたメッセージを書き始めた。]

[はらり、頁をめくって、ダサい便箋を
 『とうげの茶屋』と『金の輪』の間に挟む。

 続きの話は、『金の輪』の後にしよう、と。]*

[剣呑でお互いを刺し合う話でもなく、
泣いてばかりでなにも話せない訳でもなく。
ふと柔らかい表情を見せてくれるのがありがたい。

一緒にドアをくぐったお店では
いくつもの視線を浴びることになった。
注目されることに慣れてしまったシャーリエでは
視線を探り当てて笑みを返してしまうのだけど、
今日はそういうの必要じゃないから、
ふうって目をそらした。

「席はこちらで」って
高い声でやってくる店員と彼の間に挟まって、
他にこっちに向かう視線がないか偵察をしている最中。
1つ彼に向けられた視線を見つけた。
込められていたのは、ミーハーな女性の視線っぽくなく、
なんだか、こう……]

[席に座ってもう一度そっちを見れば、
もう視線は切れてしまっていた]


 話せない話って…… もぅ、からかってる?
 ……悪い子。


[真面目な話かと隣のリフルを見つめたのに、
抑揚つけておどけた語尾に冗談だと気がついた。
こういう話し方で私に接する人なんていないので、
どうしても気がつくのが遅れてしまう。

顔をテーブルに戻す前に「悪いこと」までされて、
しかめっ面をして義手を捕まえようとした。
ひらりと翻されて触れることもできなかった私の手は、
お酒混じりの空気をわたわたかき回して、
テーブルに落ちた。]


 私は、その手、すきですよ
 きっと片手をなくして困っている人の夢になる


[リフルの手、なら二文字言えるんだ]

 




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