77 【ペアRP】花嫁サクリファイス 弐【R18/R18G】
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| お主の手にあった楽器を作る方が良さそうだな。 いつ大きくなるや分からぬしな。
[そうして疲れるのは薪割りと変わらぬことだ]
お主は疲れぬのかもしれぬがな。 その小さな手では回数が必要であろう。
嗚呼、此処に触れるは嫁の務めだ。 だから頬を引っ張るのは止めると良いぞ。 大きくなったら育っていると良いなとな。 願掛けをしておくのも大切なのだ。
[頬を引っ張られながら朗らかに笑う。 怒っているというよりは拗ねている気配を感じてまた頭を撫でてやろう] (42) 2021/06/19(Sat) 20:27:30 |
| 何を言う。 夫婦で共に生活するのだ。 労は分かち合い、楽は共に楽しむものぞ。 そうでも思わんと家事など面倒であろう。
[言われるままに斜め向かいの部屋の扉を足で開ける。 中には荷が積み込まれてあるのだろうが酒や味噌、米も一緒なのだろうか]
よしよし、では窓をあけて井戸で水を汲もうか。 して――窓はどこだ?
[案内してくれと胸元をせっついては窓に向かい開け放し、食材は冷暗所であると恐らくあるであろう貯蔵場所を聞いて確認しようか。 井戸の場所、風呂の場所、確認することは数多ある。 それら一つ、一つを尋ねて移動する間も男がリンを下ろすことはなかった]
確かに炊事場は使えるようだな。 暗くなる前に飯を炊いて夜は荷から何か作るとしよう。 お主、何か食べたいものはあるか。 道楽とは言えど好みはあろう?
[ほれ、言うてみやれと腕の中で温もりを分かち合う相手に問うた*] (43) 2021/06/19(Sat) 20:28:04 |
[よかろ?
問われ青年は、またひとつ喉を鳴らして、それからこくりと頷きを返す。
何が良いのかはよくわからないが、とにかく注がれる毒
が、甘くて、甘くて。
漸く継いだ息が、熱く零れた。]
ん、ぁ、
[もっと、と言わんばかりに嘴を開ければ与えられる、その事実に軽く酔う。
抵抗するなとは言われたが、欲しがるなとは言われていないなそういえば。
赦されるのを良いことに、与えられるまま吸うて、]
ぅぁ、ん…ッ
[かりりと掻かれた胸の先、またびくりと身体を跳ねさせる。
その反応に青年自身が驚くけれど、酔った頭に恐怖などは微塵も残らず、ただ、青年の指先が淡く『山神さま』の手に添うた。
唇が離れれば、その視線に出会う。
嗚呼……愉しんで、いるようだ。]
いい…顔……?
[はふ、と継いだ息の隙間、微かに問う。
それが意地悪だなどと、善良な青年にはあずかり知らぬことで、『いい』と言われたことで、安堵する。
ただ、その表情が新たに帯びる熱には流石に気づいて、つい……ぽかん、と、見惚れた。
だから数拍の間を置いて、つい、手を伸ばしたのはそう、完全に出来心だったのだ。]
ッァ、
[伸ばした手の先がどこへ向かおうとしたのか、直後与えられた刺激にびくりとまた身をすくませると、反射でその掌は空を握る。
まるで熱に浮かされたような脳みそはその瞬間、村のこともお嬢さんのこともすっかりと忘れていた。
茅という青年は、恐ろしいほどに順応性が高かったので。**]
[それから、幾日。
かんぅは立派な
野生人
に成長した。
どう考えても進化ミス。
腰みの一つをつけ、蔦を使い。あーあーと叫ぶ日々。また時代と歴史、文化が違う。今日も手刀で仕留めた鹿を肩に乗せ。
滝の前へ]
婿殿、今帰ったぞ。
[いい笑顔です。
ええ、武人というか愛の狩人。
細い婿殿に体力をつけさせようと山を飛ぶ姿は、まさに猿人。ふもとの村では魔物が活性化しているとか噂になっているらしい。どっちのことだって、どっちでしょう。
本人は押しかけ女房中。
ここ数日、色々した。【色々】
性的な方面ではなく心を掴む方向で。
突拍子がないのはもはや通常運転で日常
*]
[かんぅがこの明泉洞に住むようになって何日もすぎて。
どうなることかと思ったが、ちゃんとトイレのしつけもできているし、無駄吠えもしないので困らない。
放置しておけば一人で勝手に遊びにいき、そして自分の食い扶持分くらいの食糧を取って帰ってくるので、楽ではあるが]
おかえり。帰ってきたかの。
今日は何を獲ったのだ?
[ほてほてと滝の入り口までかんぅを出迎えて、招き入れてやる。
かんぅがいない時は中の水を満たしているが、かんぅは水の中では生きられないから、かんぅが戻ってきたら水を呪術で外にくみ出して、の繰り返し。
服は用意していたはずなのに、体に合わなかったのだろうか。
腰みのをつけて奇声を発しながらの山をかけずりまわっている姿は、大きな猿のようである。
まさかかんぅの姿を見て、村人が怯えていることも知らず、滝壺のヌシは元気だなぁと微笑ましく思うだけなのだが]
[無垢な体は思った以上に反応がよく
無知な小僧は予想以上に順応性が高かった
今まで多くの嫁を迎えたが、此度は特に「あたり」らしい]
ああ、いい顔じゃ
[言いながら意地悪く刺激を送れば、伸ばされかけた手が空を掴む
無垢なくせにこうも感度がよいとなれば、自然欲は高まるというもの
元より時間かけて馴染ませるなどする気もなかったが]
どぉれ、もっとワシ好みになるようにしてやろうかね
[そう言うなり両の手で今だ僅かに重なっていた白無垢を広げ
その内に着ていた服をも剥いで小僧の体を曝け出してしまう
そうして、その肌に一つ、二つとまた印を刻み込み]
今日は鹿かの?
よくもまぁ、器用にとらえるものよの。
[食べるたんぱく源は基本的に魚なヤオディにとって、四つ足の獣は珍しく。
肉食系男子なかんぅはよく食べるので、これくらいでないと物足りないのではないだろうか。
ちゃんと食べさせておかないと、そのうち自分までも食べたいと言い出すのではとひやひやものだ。
これではどちらが贄だかわからないが]
これより鹿の処理をいたしてくるが……。
そちは絶対に入ってきてはならぬ。いいな?
[まるでどこぞの異種婚姻譚のようなことを言っているが、何をしているか素直に聞けば、普通に答えただろう。
単に凍るレベルの冷たい水の中で、腐らないように空気がない場所で処理をするので(いわゆる冷凍処理)かんぅが下手に顔を出せば死ぬので禁止しているだけだ。
入ったが最後、冷凍マグロならぬ冷凍かんぅの出来上がりだ]
そなたは毎日裸に近い格好で走り回っているが、着物を着るのは嫌いなのかの?
[随分と日に焼けている、とかんぅの肌を見てため息をつく。
対照的に彼の肌は真っ白だ。
少しずつ、少しずつかんぅがいる生活に慣れ、彼が言うように体力をつけねばとこっそり筋トレをしているのは内緒だ*]
こっからが本番じゃ小僧
ワシのもんになるっつーことがどういうことか
しーっかりと体に教えてやる
[言い終えて胸元から手を滑らせて下へ
何の前振りもなしに、下着の上から小僧の「小僧」を握り込む
天狗の毒を受けて、そこは一体どうなっていたか気付かせるかのように手を動かす]
なあ、ここもこうされると善かろう?
気持ちいいって泣いとるわ、ほれ
[下着が湿り気を帯びてくればわざとらしくそれを強調するように擦り上げ
小僧に問うこともなしに下着をはぎ取ってしまおうか
そうして、ついにははだけ落とした白無垢の上に、小僧の全てを晒させて
ふと、気付いたかのように繋がれたままの足元を見る]
あぁ、こいつは外さんといかんなぁ
[痛そうだからではなくただ邪魔なだけだが、足枷に手を触れればその戒めは解けるだろう
逃げる心配も、もうないだろうから
痕のくっきり残った足首を持ち上げべろりと舐めて]
これも、ワシのモンじゃって印じゃがの
本当の「
印
」はこれからじゃ
[足首を持ち上げたままもう片方の手で小僧の芯を弄ぶ
雫が零れだしたならそれをたっぷりと手に絡ませる
愉しげに、それこそ恐ろしいほどに愉しげに
承諾も確認もない、小僧は天狗のものだから**]
[あれ、これ飼い犬か何かじゃないか。
そんな可愛いものだと認識しているのか。とまず根本的な問題から始めないといけない。が、今は狩りの終わりを婿殿に報告しよう。すっかり気分は新婚生活。
ほてほてと現れ、水を汲みだす姿はいじらしくも映る。本人は無自覚のようだが、さすがのかんぅとて、共に過ごす時間が増えれば、婿殿の事が分かってきた。
この婿殿は無自覚に可愛い。
鹿を肩からおろし]
うむ、鹿を狩ってきた。
鹿は中々に逃げ足が速くてな
追いかけるのにも苦労した。
[追いかけたのか。
もはやこれぐらいでは言わないぞ。(ツッコミ)しないぞ。一見微笑ましい狩人夫婦のやり取りのように思えるかもしれない。現物は魔物と魔物だけど。もしくは野生人と文化人。
時代でも二人は隔てられるのか。
いやかんぅが勝手にこしみの一丁になっただけだが]
婿殿もどうだ?
[もうすっかり婿殿だ。
一狩いこうぜ。その勢いである。もちろん自分の腹を満たすという理由もあるが、これは婿殿にも食べてもらいたい為の狩りである。あまりの細さにいつ折れるやもと思うのだ。それはいけない、体力は付けなければ、そう。
人は簡単に死ぬ。
将軍であったかんぅは知っている。
婿殿は魔物であるが、見た目は細く華奢なのだ。]
…あい分かった。
婿殿が言うのなら守ろうぞ。
[守るのか。守れるのか。
疑惑。だが、真面目な理由であればかんぅは頷かないはずがない。むしろこうして此方を思ってくれるのが分かるのがむずがゆくも嬉しく少しずつ距離を縮めていこうと考えていたのだが、冷凍かんぅを回避した身はきょとんとして
服の話題に目を瞬かせ]
ん?花嫁らしい衣装がなかった故だが。
[急募、妻の衣装。
どんな理由だこれは。ため息を吐く婿殿が密かに体力をつけるために頑張っていると露しらず、明後日の返答をしつつ、そうだとこしみのに手をつっこめばがさごそ。
白い百合の花を取り出して]
婿殿に似ておると思うてな。
…つい、取ってきてしまった。
[いかがであろう。
そう問いかける目は最初の日より変わらぬ慈しみに溢れ。唇に触れぬ代わりにその花びらでちょんと触れてみた。
こしみの・・
]
愛しておるよ、婿殿。
[そうして告げるのは、日課。
トイレのしつけや無駄吠えをしないのと同じように。一途に彼の知らぬ言葉を綴り、微笑むのだ。
いい雰囲気(全裸)
*]
[ああ、いい顔じゃ、って
また聞こえたものだから、青年は無意識に淡く笑む。
『これは良いこと』と認識したものだから、踏みとどまる理由がない。]
ん……ッぁ……、あ、
[肌に華を咲かされる度、喉を鳴らして身を震わせて、洞窟内の湿った空気は夜陰に更に冷たいのだろうに、青年の肌は与えられる熱に汗ばんですらいる。
触れる熱が、心地よかった。
……まるで、求められているように錯覚して。
だから、『抵抗するな』という命令に関わらず、その手に逆らおうという気持ちなんて、今やこれっぽっちもなかった、のだけれど。]
あ……ッ、ゃ、ぁ!
[突然の強い刺激
に、青年は眼を見開いて高く啼く。
青年のまだ、子供じみた格好をした中心は、それでも健気に『悦』を主張していた。
そこを急に握りこまれたものだから。
なお、青年自身には自ら触った記憶はほとんどない。
それがどういう反応なのか教えてくれる者はいなかったし、一度触れてみたら何やら未知の感覚がしたものだから、それ以来どうにも触りづらかったのだ。
与えられた刺激に軽い恐怖に似た感情を覚え、握りこむ大きな手へと己の手を伸ばすが、触れたところで指先で何かを訴えるのみ、力などまるで込められたものではない。]
ぁ、あッ……ゃぁ…ぁ、
[気持ちよくて泣くのは握りこまれたところだけではない、青年本人もだったりする。
やぁ、と泣くと、揶揄するように下着を奪われてしまった。
とたん、下半身がすぅとして、それすら刺激になり、ひくひくと薄い下腹を震わせる。]
ぁ……
[足首を縛めていた枷が、いともたやすく取り上げられて、ほっとしたような声を漏らす。
足首を掬われて、縛められていた痕を舌先がなぞり、またひくりと内腿を震わせた。
舐められたところが熱を帯びる。
なんだか『山神さま』のその行為が、傷を労わられたような、
そんなはずはないのだけれど、まるで……慈しまれたような、
錯覚を覚え、ぶわと心臓が熱を帯びる。
けれどその正体をゆっくりと考える間など与えられないから、持ち上げられた足首をそのままに、股を開かれるようにして、立ち上がり切ったその場所をまた握られて、遊ばれて]
や、ゃぁ、もう……ま…って、
[ぁ、あ!と啼くと同時、赦されるなら白濁が弾けたことだろう。
赦されなかったなら、体内を駆け巡る熱にまた泣いて。
それが、『気持ちよい』のだと、『快楽』なのだと、青年が学ぶまで、あと僅か。**]
| [ 最初の嫁が眠りにつき しばらくしてまた、次の嫁が来た その嫁もまた眠りにつき その後の時間は初めより長かった
けれど、寂しいと思ったことはない それを口に出し、誰かに訴えたことも
そも、応える声があるのなら はなから己を独りにはしないだろう それでも独りにするということは 何かしらの事情があるということで ]
──そうか蘇芳は 帰ったのではなく旅に出たのか
里へ帰ったのならば また会えると思ったが……
[ 冥桜の言葉通りなら 緋扇もまた、近いうちに旅立つのだろう
人には人、神には神 それぞれ理があると知ってはいても やはり胸の奥がシン、となる
これが「寂しい」なのか、と その感覚は己の中に深く沁みていき ] (44) 2021/06/20(Sun) 0:24:18 |
| 笛も詩も教わろう 楽器の方も、勿論
[ どれほど共にいられるかは知らない この嫁とて明日には眠りにつくかもわからない ならば少しでも残るものを 手がかりを、と教わるものを欲張りつつ ]
胸元に触れるのは務め、か ううむ、我にはよくわからぬが
そういえば緋扇は柔らかかったが お前は我より平らで硬いな
[ 務めであると云うならば 触れるのを己から止めるつもりはない
好きなだけ触れれば良いと 頬を引っ張る手を離し 代わりに冥桜の胸元へ手をぺたり 硬さが面白いと餅つきの如く触れていき ]
(45) 2021/06/20(Sun) 0:24:45 |
| [ 指差し示した部屋の戸が ガラリと音を立て、開かれる
先と同じ足でガラリ けれど、先とは違うのは それを見る己の心の方であり ]
降ろさぬとはな それほど我のことが好きか?
ふふっ、まぁ冗談だ だが我は抱き心地は良いらしい 暖をとるに抱えられたものよ
[ 通した部屋は先より片付いているものの 北向きのため、先より暗く肌寒い
部屋の奥には扉が二つ設けられ 片方は炊事場へ もう片方は貯蔵庫へと続いている
捧げ物の類などは 炊事場にある勝手口を通り この部屋へ運び込まれる仕組みだ
窓はこちら、戸はこちら 井戸は炊事場は、米は味噌は、と 手綱のように冥桜の着物を引き、場所を教え ] (46) 2021/06/20(Sun) 0:25:15 |
| 食べたいもの、か? んーむ、茄子の田楽か……
いや、まて。金柑の甘露煮も 法蓮草の胡桃和えも捨てがたい
[ 作ってくれるのか、と 好みの品を遠慮なく列挙して* ]
(47) 2021/06/20(Sun) 0:25:35 |
| ……気づかなかった 千太郎は賢いな。それに、何でもよく見ているようだ [ 細い指が一輪を摘み上げる。 >>29 出会った時程ではないが、早まる瞬きが鬼の驚きを示した。 それは教えられた内容と、 やはり関心が無さそうだと思っていた千太郎が 不意に寄りつき起こした行動への。 誂いに対してそういうわけではないと返しはしたが >>28 この地で生きた年月を考えれば、 花弁の仕組みが一度も視界に入らなかったとは思えない。 目に入っても気づかなかったのか、知ろうともしていなかったのか それとも無数の花を通して別の数多を視ていたせいなのか。 ──自分のことながらよく分からなかった。 ] (48) 2021/06/20(Sun) 2:08:31 |
| だが、簡単に摘んではならないぞ 花もまた命であり、意味も無く奪ってはいけないのだ 特にこの花は、全てが実を結ぶわけではないのだから [ 相手へと伸ばされる手は、今度は重ねる為ではなく >>27 花を受け取ろうと指先へ向かうが、無論乱暴なことはしない。 渡す気がないのなら、諦めて戻るだけ。 咎めはすれど、花よりも目の前の若者が鬼には大切で 彼のこれからの為に語ったつもりだった。 ] ……ああ、そうだ 花を書物に挟んで重石を乗せておけば、平らに形と色を残せるらしい 聞いた話で経験は無いがな [ 教えてくれた誰かは、清潔で豊かな家に住む若い村娘で 自分にも千太郎にも似合ったものでは無いだろうが 少しは意味が、生まれるかもしれない。 潰される花は決して喜びはしないだろうが、 犠牲に生じる意味とはそういうものだ。 ] (49) 2021/06/20(Sun) 2:08:55 |
| 色々言ってしまったが、お前の気持ちは嬉しかった やはり、さとの子だ [ 心よりの言葉に対して不服を態度に示すのも >>23 想い届かずつかれたため息も >>24 冷めきった笑いも >>26 きっと、置かれた環境で生まれた歪みの表れ。 しかしその奥にあるのではないだろうか 他者と何も変わらないような、温度のある部分が。 母親のような優しさが。 浮かべた表情は違えども──面影を宿す言葉に、 あの時息を呑んだことを彼が気づいたかは知らない。 >>25 ] これからも、瞿曇な私に気づいたことを何でも教えてくれ [ 違う目線で同じものを見る誰かが側にいるというのは、 とても幸福なものなのかもしれないと、鬼は思った。 ]* (50) 2021/06/20(Sun) 2:09:42 |
| ── 鬼と鬼の子の日々 ── [ それから鬼は毎日花嫁を外へと連れ出した。 最初は寺の敷地内を歩きながら、見えるものや山について話をし、 時間を掛けて出掛ける範囲を広げてゆく。 決して自分から離れないように、 迷った時は探すよりも寺に戻るように。 その頃には既に上手く隣を歩けるようになっていたが、 奥へと初めて連れて行く時何度もそう繰り返すように教えた。 魔を退けるとは鬼が側に平気で棲まう以上迷信なのだろうが あの花の香りは、山の妖怪の殆どが嫌っている。 一定の時期だけでもきっと、何かあれば守ってくれるだろう。 帰る時間はいつも鬼が決めた。 輿入れの日もそうだったが、 千太郎は聞けば答えど自分から疲労を訴えはせず平気な顔でいる。 限界が来なければ見ているだけでは分からない。 小さき者には覗き込むのも辛い程目線が離れている時も、 >>22 鬼の目にはいつでも白色ばかりが映っていた。 ] (51) 2021/06/20(Sun) 2:10:16 |
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[ 山の中になど花嫁を迎えるのなら、 生活に必要なものをその同族に求める必要が当然生まれる。 ……きちんと行うのは全員ではなく、長くも続かないが。 鬼も色々なものを求め、事前に廃寺に運び込んでいた。
慣れてきた頃山の中を流れる川を教え、魚釣りを試みた。 もしつまらなさそうにしていても、 本来饒舌ではない身でなんとか話を見つけて場に留め 釣り上げた時はどれだけ小さな小魚でも褒め称えた。
廃寺の中で汚い壁を眺めていては、座敷牢の日々と対して変わらない。 体力と生きる知恵を付け、世界を見る必要がある。 千太郎の身体に少しずつ少しずつ、生命力を戻しながら 自分は寺の中保管している干し肉ばかり食べるようになっていた。 ]
(52) 2021/06/20(Sun) 2:11:08 |
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[ 摘み取られた花がどうなったのかは、千太郎次第だが 嫌がることが無ければ鬼はあの日寺に戻った後 埃をかぶった古い書物を彼の部屋に持って来ただろう。
誰かが村に帰るのを嫌がった時、 此処で読み忘れて行った、遂に取りには来なかった歴史書だった。
ただ、いつまで閉じておけばよいのだろうか。 それは聞いていなかったと少し経ったある日に首を捻る。 まあ、忘れた頃にはらりと落ちてくる。 思い出とは案外そんなものかもしれない。 ]**
(53) 2021/06/20(Sun) 2:11:49 |
[ 小さき者を見守り見つめる一つの紅色
静かな凪ぎに密やかに宿った温かなものに
遥か昔に死んだ──とされている誰かの面影があったように。 ]
[ 仏の名の元繰り返される輪廻転生。
繋がれてゆく人の血。
それらとは違う何かが齎した影の中の面影は
今や誰も気づくことが出来ないだけで、きっと最初から奥底に
この山の中、あちこちに犇めいているモノたちにも。 ]
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