100 【身内RP】待宵館で月を待つ2【R18G】
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チャンドラ
「わからない。
この花弁が教えてくれたから……兄もこの館に来ていたこと、館であったこと、兄が得たもの、兄が捨てたもの」
今更捨てたものを欲しなどしないだろう。
ならば俺の行き場はどこにあるのだろうか。
「でも……一度捨てようとした命だから、あまり惜しくはないかな」
「…ん、見えた」
目的地を意識に捉えると迷う事なく速度を上げた。
キエは人を導かないし救いもしないし愛していない。されど人を大切にせざるを得ない曖昧模糊な存在だ。
人によってキエは善にも悪にも成ってしまうし、キエ自身も自ら其の在り方を選んだ。其れはキエの嫌う面倒が多く在る筈なのに選んだ道だ。
赤ん坊の泣き声が遠くなっていく。
「相も変わらずおかしな事を言うねェ君は」
ポルクス
「……お兄さんが?」
偶然か、双子の神秘がそうさせたのか。
でも偶然にしてはできすぎていて、わたしは驚いていた。
追うものと追われるもの。
あなたとお兄さんの関係は、聞いた話ではそんなもの。
それなのに、先にこの館に来たのはお兄さんの方。
そしてあなたが追うようにここを訪れた。
とんだ運命の悪戯ね。
それともこれも、館の主の意志かしら。
「惜しくはない……あなたはそう、思うのね」
ひとつ知る。
お兄さんの影がなくなって尚、あなたを蝕むもの。
わたしが思っていたとおり、そしてあなたの話していたとおり、あなたの中のお兄さんの存在はとても大きい。
ポルクス
「わたしはそうは思わないわ。
命は粗末にするべきではないもの」
ひとつ知ったなら、次はわたしの番。
わたしはわたしの道徳を語る。
そしてこれはわたしだけの道徳では決してない。
「命を危険に晒しても、やりたいことがあるなら別よ。
わたしはそれは、粗末とは別と思うもの。
わたしはあなたに、命を粗末にして欲しくないわ」
わたしは探して欲しいと言う。
どうせなくなってもいい命なら、それを賭けてでもやりたいことを。
叶うかは、また別の話。
それでも目標のために冒険する時間は、きっと有意義なもののはずだから。
チャンドラ
「ここに来ることが俺の到達点だったとしたら、何も悔いなんてありはしないんだ」
兄と分かれた魂を一つにしようと思ったことも、君にぬくもりを遺したことも。
「ここが通過点だったとしても、
自分がやった事に悔いはないけど。
だけど……俺は兄さんと違って、何も見つけてやしない」
半身を捨てて、手にできるものは何もない。
俺の中に空いた穴が大きすぎて、それは塞ぎようもない傷痕。
兄に返そうとしたもの全てが、きっと今の兄には一つも必要がないものだ。
「……そうだね、これから生きる時間があるのなら……
生きる理由を探すために生きてみるのは悪くないかもしれない」
| 「 冷たいって思う? やさしくしてはいるつもりなんだけどなぁ。 まぁつもりっていつでも“つもり”ですからね。 」 ナニカ は、異形だなんてこともなく、 案外普通に、人間の形をしています。 握手の手から窺えた通りに、 男性の特徴を持っていると思いました。 だから、あなたは ナニカの頬を撫でられました 。ナニカ も、触らせる気があったので。 ナニカ にその気がなければ、 相手から触れることは出来ません。 「 ズルいねぇ──ってば。口惜しいかぁ。 ごめんね? オアズケみたいなことしちゃって 」 「 罪滅ぼしでもないけれど、 そのもう少しは構いませんよ子猫ちゃん 」 自身の存在をしっかりと確立させているあなたは、 その通り、離れてしまえばこの冷たさをなくしてしまうでしょう。 「 これは夢、夢、夢。 最初から、そこになんてなかったのさ 。 」 あなたの意識が 寒さ に刈り取られてしまうその時まで、 この冷たい抱擁は、戯れは、続けられていたのでした。 (73) 2021/10/23(Sat) 20:56:08 |
| (a61) 2021/10/23(Sat) 20:59:53 |
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