124 【身内P村】二十四節気の灯守り【R15RP村】
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「ほらー、今までもちょっとずつ仕事を教えてたけど、
眞澄も15になったしさぁ?
そろそろ本格的に教えておこうかなぁって!
それには弟子より蛍の方が色々権限あるし、見栄えもあるからさ!
肩書があれば小娘って侮られることもなくて楽かなって!」
[本家分家の老害共が何言ってくるかわからないし。
こうしておけば、ひとまず僕の名代として立場は成り立つ。]
「父上母上にはすでに了承を取ってありまーす☆
あ、風見家には何も行ってないけど、許可くれるよね?
君、当主だったもんね? 朔風払葉くん?」
[風見家の蛍に尋ねている形だが、やはりこちらも答えは聞いていない。否と言っても押し通す気だった。
まあ多分信頼するこの蛍は断らないとは思うけど。
妹には、事後報告じゃなくて事前に言って。って怒られちゃった。てへ。
それでも諦めた顔で了承する辺り、また突拍子もない僕の思いつきだと思ってくれたかな?]
「君の着替え等々は全てここにあります♡
安心して、家の使用人に用意させたから。
僕は断じて君の部屋に入ってません。誓います。」
[目鯨を立てそうになる様子に慌てて付け加えて、君の部屋はあそこねー。片付けておいでー。と執務室から追い出した。
とりあえず、これで黒い思惑からは少し外れたところに置いておけるだろうか。
あの子にこういうことは向いていない。]
「さて、どうしようかねぇ。
……どうするのがいいと思う? 朔風払葉くん。」
[なんて言いながら、渡された資料に目を通していく。
いくつかプランは考えているが、このままだと僕が旅に出るのが一番簡単だろうか。
適当に仕事を片付けていると、この間亡くなった分家の当主の話を蛍に振られたか。]
「ん? ああ、
小椿家の当主が病死した件?
それは本家当主として弔辞を書くからさ。
後で見舞金と一緒に持っていってくれなーい?」
[しれっとお使いを頼んでいるが、仕事丸投げすることに比べれば可愛いものだろう。
了承の返事はすぐに取れた。その間も仕事を片付けていく。]
「しかしまあ、大それたことするよねぇ。
次期小雪を毒殺しようと計画するなんて。
そんなことを考えるから、きっと罰が当たったんだろうね。」
[片付けるものが多くて大変だ。*]
[ お母さんがぼくから目を反らしたように
ぼくもお母さんから目を反らした。 ]
― ぼくのお話5 ―
[先代雨水は人を頼るのが上手い人だった。
ぼくにもそれを引き継がせてくれた。
可愛がられるように。大事にされるように。
手助けをして貰えるように。
そうやって周りと繋がりを得て行って
引きこもりを少しずつ脱していって。
事務の仕事を覚えていく内にぼくは先代に質問をした。]
ねぇ、次の雨水をぼくにするのならさ
ぼくを蛍にしないの?
[その時の、先代の固まった表情は今でも覚えている。]
「……それは、わかっているんだがな」
[頭をかく姿。何かがあるのはわかった。
でも、聞けなかった。]
雨水様がそれでいいならいい。
[それだけ言い切って、なせばなる精神を発動した。
先代は気まずそうにする。]
「あー……灯守りってまぁ結構立場あるっつーか。
大変な側面もぶっちゃけある。
あと人の灯りを扱うのが主な仕事だ。
他の仕事は人に任せていい。けどそれだけはやるしかない。
花雨、お前俺の後継ぐ気……あるのか?
」
[その言葉に暫し沈黙が流れた。]
──────
[呆れすぎてとっさに言葉が出なかっただけだ。]
ぼくは、雨水さまに引き取られてから今までずっと
勉強してきて、側で見てきて
なりたい、と思うようになっていった。
大変な事でもやるよ。
雨水さまは……ぼくにとっては
恩人で、すごい人で踏み出す一歩をくれて、勇気をくれて
……お父さんみたいな存在になっているんだよ。
ぼくはね、雨水さまみたくなりたい。
だから
雨水になるよ。
[そう言ったら、先代はまた固まって、俯いて
それからぼくを抱きしめた。
泣いていた理由をぼくは、知らない。
ぼくたちの間には言葉にしていないことがある。
先代がどうして蛍を持ちたがならいのか。それにぼくのお母さんのこと。
ぼくはお母さんに必要最低限の衣食住以外は放置され
最終的にはいないもののように扱われた。
だから
お別れの時も、お母さんってこんな顔だったっけ、と思ったくらいだった。
彼と住んでいる間、ぼくはお母さんのその後をきかなかった。相手も何もいわなかった。
許せないのかどうか自分でもわからない。
ただ、今なら少し余裕をもってお母さんのことを考えることは出来る。
今頃一人になっているのかな。
今頃、どうしているのかな。
……今でも、ぼくの事が怖いかな。
それが怖くて、聞けないまま。]**
| [前日ぎりぎりまで準備していた書類と 優秀すぎる蛍さんのおかげで、 昨年よりはずっとまともに統治者らしく出来たと思う。
一番の緊張の種は自統治域内の近況報告だった。 だから、それさえ無事に終わってしまえば]
──立春域の報告は以上です。
来たる立春の祝いに際しましては 皆様方の御協力を賜りたく、 ご不便ご迷惑をお掛けすることもあるかと存じますが 何卒よろしくお願い申し上げます。
何かご希望やご質問がありましたら……
[一気に、肩の力がすとんと抜けた。] (96) 2022/01/22(Sat) 17:11:38 |
| [抑揚のない小難しい単語の羅列は 子守歌よりも強力に抗い難い眠気を誘う。 緊張が解ければ忘れていた食欲を思い出して、 お腹の虫がそこはかとなく元気になってくる。
大先輩方の前で新人が船を漕ぐわけにはいかない、 ましてやお腹を鳴らすわけにもいかない。 この場にあるお茶でなんとか堪えきらなければ。 起きなきゃ。そう、例えば指をペンで刺してでも。
ゆっくりと霞みだそうとする意識と闘いながら 円卓に着席する錚々たる面子を改めて順番に眺めてみた。
お隣の雨水さんはちゃんと卒なく会合に参加している。 流石巷で大物と噂される雨水さん、謎の貫禄が既にある。 啓蟄さんと蝶さんの才色兼備な御二方は安定したお仕事ぶりで 要点もわかりやすくて得るものが多かった。
春分さんと雀さんの可憐で華やかな御二方には、元々 カフェ『陽だまり』で度々お会いしていた。
春分さんは春の統治域全体のお姉さんのような存在で 灯守りとしてはもちろん個人的な相談までお世話になっていたし、 雀さんとも、歳が近そうということで 顔を合わせる度に会話を試みていたから こうして畏まった場で同席させていただくと 改めて凄い方々なのだと思い知る。] (97) 2022/01/22(Sat) 17:11:50 |
| [──ところで、小満さんをはじめとして 思ったより眠そうな方が多くないですか? 気のせいかな?? 小雪さんが私を落ち着かせようと話してくれた 先代様のお話が頭を過ぎる。 こういう会合に真面目に参加しそうな葵ちゃんさえ 後半に差し掛かるにつれて心なしか眠たそうに見える。 円卓を挟んでちょうど真向い、 自然と視線のゆく立秋さんとは何度か目が合っただろうか。 立春立夏立秋立冬、同じく"はじまり"を冠する立場同士 会合の場以外で何かとご一緒する機会も多いから お顔と名前は一致してもらえているものと信じている。 そのお隣の処暑さんはいっそ 清々しいほどにやる気が見当たらない。 その更にお隣、今は白露域を治めているローザちゃんが 居住まいを正すのが目に留まれば慌てて背筋を正した。 親友をお姉ちゃんと慕うローザちゃんは 僭越ながら私にとっても妹のような可愛い存在だ。 今回が会合初参加という彼女の前で 情けない姿は晒したくないと思ったら、 自然と眠気に打ち勝つことができた。] (98) 2022/01/22(Sat) 17:13:32 |
| [そんな折、不意に号を呼ばれて >>1:219、 声の主の方へと視線をやれば] はっ、はい!! …………っ …………!! [それまで緊張のあまり視野が狭くなっていて、 大寒さんの影にもなっていて見えていなかったのだ。 まあるい、ぽてぽてすべすべの、 抱きしめたくなるような愛くるしいボディが。] 灯りの融通ですね、たしかに [じいい。 じいいいいいいい。 じいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。] ……たしかに、立春承りました。 [ぴょんと跳ねたゆきうさぎに釘付けになって お返事が 94秒ほど遅れた。] (99) 2022/01/22(Sat) 17:13:49 |
| [冬至さんのお隣の方もお可愛らしい。 初めて見るお顔だけれどお可愛らしい。 可愛い×可愛いすなわち最強、今ばかりは配席に感謝したい。 座席から察するに大雪さんかな?
残りの会合は、お姉ちゃんを中心に 皆様のお顔を眺めているうちに終わった。]
あっ、あの……!! 今度のお祭りで振る舞う予定の和菓子を 皆様に味見していただきたくて。
もし甘い物が苦手でなければ、よろしければ 召し上がってご感想をいただけると嬉しいです。
こちらに置かせていただきますね。
[そう言って取り出したのは 春らしい桜色が綺麗な桜餅、 桜餅と似ているけれど椿の葉で道明寺を挟んだ椿餅、 邪気を払うとも言われる黒豆をふんだんに練り込んだ大福。
どれも師匠直伝のレシピで作った 立春特製、新春を祝う定番のお菓子だ。
どうか皆様のお口に合いますように。 祈るように和菓子の行方を見守りながら、 自分はオレンジジュースdrinkを手に取った。]** (100) 2022/01/22(Sat) 17:14:28 |
――もう随分と昔の話――
「小満さまはもうご承知おきかと思うのですが、何年か前に、森の方の牧場の旦那が亡くなったじゃないですか」
[発端は、軽い噂話からだった。]
「あの家の残された息子がね、なんというか、不思議な子なんですよ。いえね、気味が悪いとかじゃないんです。むしろいい方だとは思うんですけど」
「母子とふたりじゃあ回らないからって、あそこ、随分と動物を売ったでしょう。それで、母親が羊だの馬だの世話しながら、息子は教会を手伝ってるそうなんですが」
[話好きのおばさま方やら、その旦那やら。
街ゆけば時折、その子供の話を聞いた。]
「教会のみなし児なんかがね、まだ子供だからよくよく喧嘩だってするじゃあないですか。そんなときにその子が仲裁に入ると、しばらくしてすっかり仲直りしちまうんだってさ」
「泣いてる子供をなだめるのもうまいなんて聞くね。普通にしてるとなんだか捉えどころのない静かな子なんだけど、こと人の輪に入ると空気が変わるってんで、こないだあっちの爺さんなんかは『天使さまが宿ってる』なーんつって」
[だなどと言うから、さてどれほどたおやかな美少年がいるだろうかと様子を見に言ったら、
まあ見た目はまだあどけない線の細さもあって相応だったが
蓋を開ければ御し難いクソガキであったのだが。閑話休題。]
[その天使と呼ばれた少年は、器用にも教会の裏にあるオレンジの樹の上に登って、枝張りに背を預けながら木漏れ日の中で笛を吹いていた。
そうしているとそこらの牧童と何も変わらないという印象だったが、まだ13のその子供――それでも、教会の孤児と比べれば年長の方だ――が、なんらかの"能力"持ちであることは、会話の内容からピンときた。
人の心か、意識か、そういったものに作用するたぐいのものだろう。
ただ、それよりも俺が興味を惹かれたのは、その子供と目があった瞬間、自身の灯りが微かにふるえて、引き寄せられるような、そんな感覚があったからだ。
それが予兆だったのかどうかはわからない。
ただ、こいつなのか、という確信めいたものが脳裏によぎったのは事実。
もとから
能力を得ているなら、素質も充分だ。
発端は噂話。しかして確実に、出会うべくして出会った。
これを天命と言うならそうかもしれない。出会いは喜ばしく、
――そしてとても、悲しかった。
]
菴ィ。
[ある会合のタイミングで、真反対の灯守りに目を留め。]
子育てって難しいな。
[などと戯れにこぼせば、一体どんな顔をされるだろう。
驚かれるか、腹の底から笑い飛ばされるか。
それから数年後に彼が赤子を押し付けられるとは、まだどちらも露と知らない時期の話だ*]
――回想:処暑からの贈り物
[ 処暑との始まりは 何気ないものだった。
高性能端末であれど 完璧ではない。
見聞きする力には当時から秀でていれど
大きすぎるものは口に入らないし
それ以上に最も劣っていた性能は 嗅ぐ力。
だからこそ。
その劣っている筈のものを通じて
本体に感知させたその存在――…
…嗚呼、そうだった
あれは 葡萄だったかもしれない
雨水に渡している恵みの正体が
瑞々しさを伴う香りが果たして何であるのかと
目も心も ひとしきり奪われたのが始まりだった ]
[ 処暑はいろんなものをくれた。
実際に顔を合わせた事は少なくとも
会合だけでなく、時にそれ以外の日も。
逢うたびに恵みを貰い、小さな礼を返す
そんなささやかな日々が 確かに好きだった
漬け物、酢昆布、チョコレート――…
吐き出すものは日々様々だったけれど
矢張り金平糖を贈る事が多かったように思う。
小さな頃からずっと、好きでいるお菓子が故に ]
[ 数年ばかりの刹那
けれど 数え切れぬ程続いた処暑活
形の残らぬものばかりの中に於いて
其れは今尚、残り続けるもの。
――部屋に飾られる 一つの写真立て。
処暑が収めた、一枚の写真
陽の差す雪景色にちょこんと座すのは
南天の葉と実で化粧を施されたゆきうさぎ
いくら時が経とうと褪せる事無く
融けることのない世界が 其処には在る ]
[ 時に その写真から雪うさぎが消えること
知っている者がどれだけ居るかは、また別の話 ]
[ 処暑の領域を訊ねたのは
その贈り物が届いて 程なくの事だった ]
こんにちは、夕来。
先日は素敵な恵みをありがとうございました
新しく蛍を迎えることにしたので
あなたに 一番に挨拶したいと思いまして
[ 連れ立つのは 二匹のゆきうさぎ。
足許に居るのはきっと見た事もあるだろう蛍――おつる
そしてもう一匹。
腕の中 すやすやしていた目が不意に開いて ]
[ ぴょーん!
元気よくおつるの隣りへ降り立つ雪うさぎ。
おつるより一回り小さいうさぎがぴょんぴょん跳ねる ]
こちらが 新しい蛍です。
末候 雪下出麦――いづる、と名付けました
[ 処暑の足許にすり寄れば
南天の葉をぴこぴこと揺らし
南天の実の如き双眸で足の主を見上げた。 ]
[ 雪の無い其処で 二匹のうさぎがはしゃぐ
己が地に於いては 決して見る事の無い景色 ]
並んでいると
なんだか兄弟みたいに見えます
おつるもすっかりお兄さんの顔で
……たまに さびしそうにしていましたから
本当に ありがとうございます
[ 見上げれば 一つ笑みを浮かべて
そうして処暑の領域を 目に留めるひととき ]
……。
すてきな恵みのお礼に
何を贈ろうかと考えていました
でも だめですね
いいものが思い浮かばなくて
なにかほしいものはありますか?
あなたのお願いを 叶えさせて下さい
[ ――私は 私なりに。
このひと時を愛しいと そう思っていた
彼と 彼が想う大切な存在
二人がどうか幸せであるようにと
この世に巣食う数多の闇の中にも
確かに差す 柔らかな光の中に
どうか二人が居られますように、と。
一人の灯守りとして想い
一人の人間として、願う程には ]
[ いつか 口にした言葉
優しすぎる存在への苦言――或いは自戒 ]
――夕来。
どうか、気を付けて下さい
世界は自分が思うより残酷です
灯守りは最強でも ましてや無敵でもない
敵と味方の判断を違う事があれば
自分だけじゃなく 大切な人も苦しめる
……。
私は、苦しめてばかりでした
だからどうか
――…気を付けて
[ 解っていた筈の、自明の理。
それでも繰り返した 弱さと 罪と 罰 ] *
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