94 【身内】青き果実の毒房【R18G】
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| 普川 尚久は、視界の外の声を聞いた。 >>+70 あ。と思った。思っただけで、別に何も続きやしなかった。 (a50) 2021/09/26(Sun) 21:18:23 |
>>暴行現場
聞き馴染みのある声を持つ人が、聞き馴染みのない勢いで叫んでいるのを耳にした。
普段通りの堂々たる足取りでやってきた少年は、ただならぬ空気の片鱗を拾い上げ 眉を顰める。
「…………迷彩?」
迷彩、絶対分かってないなと思った。
そうして貴方を見送ろうとして────物騒な物音。激しい怒声。
「ッリョウ!
一体何をそんなに…………、」
慌てて駆け寄って、その場を見た。
優しく頭を撫でてくれた人物。
食べ物を共有した人物。
可愛がっている弟分。
全員が異様な雰囲気を纏っていて、これは一体どういう事かと視線を泳がせる。
「……、……大丈夫か?」
一先ず。
迷彩が飛び付かないかも心配だが
殴られていたらしい普川へ寄り、
はらはらと顔を覗き込むだろう。
その場の様子を静かに観察している。その顔には表情が欠片も浮かんでいない。
| >>暴行現場 思ったよりも人が集まってしまった。普川本人としては、いちにのさんのそれじゃあねで済む用事だったのに。 何かあれば聞く気だったので、黒塚が離すまで待つつもりだったが、そういう状況でももうないだろう。何かあればきっと後でも問題ないはずだし、何もなければそれでよかった。 「へいきよ」 黒塚の腕を抜けて、一言答えた。 >>+72「ご飯食べに行くとこだったんだ。ああ、えっとね? 肉豆腐がおいしかったよ。それと個人の好みになるけど僕野菜が好きで炒め物はオイスターソース使ってるのが好きだった。あとパン結構見かけたけど、どれも違っててなんか面白かったから、興味持ったら手に取って見てていいと思う。なんかこう、なんていうのか分かんないのが多いくって」 続けての早口は、事情を知らない者が見たら今の状況を誤魔化そうとしているように見えるだろう。実際には特別そんなことはなく、食事に向かうところに闇谷が居たから浮かびやすかっただけだ。 (19) 2021/09/26(Sun) 21:51:49 |
何とは言わないけどふみちゃん人気だねぇと思いました。
>>暴行現場
普通ならば、被害者に見える普川に駆け寄るのが当然だろう。
しかし少年は鋭い眼差しのまま、怒気も隠さぬ声色を響かせた。
「なおひー。
ソイツに殴らせるぐらいなら、
次からオレに頼んで
」
親しい人間へ語るにしては凄みの効いた、
嫌いな人間へ語るにしては奇妙な言葉。
自分でもどうしてこんなに腹立たしいのか、よくわからなかった。
普川に対する怒りはない。
自分の夢を嘲った、あの男の一挙一動が苛立たしいのは確かだ。
「……ツッキー、…………いや、いいや」
事情を説明しようとして、優先順位を決めた。
彼のどんな言葉も自分の友人に聞かせたくはない。
……黒塚と普川達 の間へ、割り込むように立った。
庇うように二人へ背中を向けたまま。
正面に立つ、黒い双眸を睨んだ。
自然と真上を見るような体勢になり、どうしても首が痛む。
「もう終わっただろ。帰れよ」
自分がこんなに低い声を出せることなど、知らなかった。
>>現場
「………………えっ?
肉豆腐……パン………………?」
何も無かったとでも言うような普川。
退屈そうに欠伸をする黒塚。
怒りの感情を隠しもしない迷彩。
そのどれもが、自分の普段見ている貴方達と違っていて
『いつもの』からかけ離れた全てが、信じられなかった。
ここに平穏はないと、
理解していた筈なのに。
一歩、後退り。
二歩目は、足が動かなかった。
フードを被った少年を見やり、その場を静観していた者はようやく動き出した。
藤色が揺れる。いつも通り、変わらずゆったりと。
「……暁」
とん、と名前を呼んだ少年の肩を軽く叩き。
それから、続けて口を開く。
「迷彩。普川先輩。
もう夕飯の時間だ、夕食を食べに行くぞ。移動するなら俺たちの方だ。行こう」
「黒塚。眠いのなら仮眠でも取ってこい。その欠伸をなんとかしろ」
その声色は揺らぎなく。ただ静かに、淡々と紡がれる。感情を殺して周りを見るのは慣れていたから。
言い終えるや否や、フードの少年の手を取って歩き出そうと踵を返す。名前を呼んだ二名にも小豆色の視線を向けて、どうするかを眺めながら。
暴行に関わる二人が普段のままで、最年少が怒りを露わにし続けては状況は悪化していくだけだと判断した。
故に、彼らを一度引き離そうと試みる。彼らが話し合いを望むなら、止めはしないが。
| 普川 尚久は、述べられたもの >>20に疑問はあったが、後でいいやと放り捨てた。自覚している癖だった。 (a52) 2021/09/26(Sun) 22:40:21 |
| >>暴行現場 「ああうん、次があったらリョウちゃんにお願いする」 拒否の言葉を返す方が面倒なので、適当な事を置いた。 >>+73実際はどうするんだろう。きっとその時に考える。 リョウちゃんは黒塚さんの何がそんなに気に入らないのだろう。何かが合わなくて、気に食わなくなるような事が起こっていておかしくない人種だとは思っているが。 本当に、なんだか大事になってしまった。みんなみんな、別に気にしなくっていいのに。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 何かを言おかと考えて、結局面倒になる。ため息すら、何かを言われそうで、開いた口は呼吸をするだけになった。みんなみんな、見たいようにものを見る。 (23) 2021/09/26(Sun) 23:46:00 |
| (a54) 2021/09/26(Sun) 23:46:06 |
| 普川 尚久は、「手当てはへいき」と言った。実際問題ない程度だったので。それでもしたがる人がいればしてもらった。 (a55) 2021/09/26(Sun) 23:46:17 |
>>暴行現場
「…………」
「……わかっ、た」
冷静な、もしくは淡々とした声が鼓膜を揺らし続ける。
それが何だか寂しく思えて、怒りが少し和らいだ。
結局大きな背中が見えなくなるまで視線を送った後、
踵を返し食堂へ向かう。
人を憎むのは、こうも遣る瀬無いのだろうか。
不特定多数を憎んだことはあれど、
誰かひとりに対してそんな感情を抱いたのは初めてだったから。
「ごめん」
その言葉は、誰に対してか。
小さく溢し、食堂へ入った。
>>普川
最年長の少年と寡黙な少年の暴行現場を見てしまった後の話。
食堂。または、そこへ向かう途中か。
兎に角一緒にいるだろう迷彩少年や闇谷少年の耳には入らないよう距離を取った隙に、最年長者へと詰め寄って声をかける。
「普川先輩。少々よろしいですか」
表情はいつもの仏頂面のまま。極めて落ち着いた様子で、貴方にしか聞こえないであろう声量のまま話を続ける。
「……事情を話したくないのであれば無理に聞きませんが。黒塚に殴ってもらうよう頼んだのは、貴方にとって必要だったからしたことなんですよね?」
>>【食堂】
とは言え、食欲もあまりないらしい。
海鮮鍋foodをゆっくりと食べ進めている。
「……あの。黒つ、アキちゃんとは何ともないから」
「急に怒鳴っちゃってごめん」
ルームメイトの呼び名を言い直し、再び謝罪を口にした。
明らかに何かがあったが、それを言う気はあまりないようだ。
以外に食欲があった。でも魚がいっぱい入っていたので、食べにくそうにしていた。
| (a56) 2021/09/27(Mon) 0:36:55 |
>>食堂
これは食堂に来た貴戸高志。
どこかの誰かさんのワクワクキッチンにより2回もえらいこっちゃになったので、もう食堂の食べ物は信じられなくなってきた。
ということで厨房を借りて夕食を作ることに。特別上手と言うわけではないが、レシピがあればそつなくこなせる少年だ。
白米にじゃがいもとにんじんの味噌汁、更に肉豆腐にもやしとツナの酢和え。デザートにしゃりしゃりの梨を切ってご用意。それを二人分持ってきた。
片方は闇谷に。もう片方は自分へ……と思ったのだが、迷彩の箸の進みが遅いことに気付くと肉豆腐の皿を少年の前に差し出した。
「迷彩。その鍋は嫌か?俺のものと交換しよう。此方に渡せ」
てきぱきと色々動いている。話は闇谷が聞くだろう……なんて丸投げしながら。
>>【食堂】
一人で去っていく黒塚にかける言葉が見つからないまま、
手を引かれてそのまま食堂へ。
普川の方へは、ルームメイトが向かっている。任せて良いだろう。
ゆるりと席に着いて、暫くして、
ルームメイトが手料理を運んできてくれる。
先程話したばかりの肉豆腐だ。
「……俺は、
迷彩が何もなく怒鳴るような奴だと思わない。」
それと同時に、黒塚も。
何もなく誰かを殴るような奴ではないと思う。
「無理に聞くつもりは無いが、
俺がお前を心配している事だけは覚えておいてくれ。」
味噌汁を啜る。
「……部屋、帰り辛くないか?
とりあえず今日はうちに来るか……?
このじゃがいもの味噌汁美味いな……。
」
暴行現場を見た。
集まってなにやら騒いでいるのも。
みんな大変だなぁと、他人事のように思いながらそれを眺めていた。
だって他人事だもの。
自分に振るわれなければ、何が行われようと構わなかった。
……あ、でも早く仲直りしてもらった方が変な空気にならなくて楽だなぁ。
そんな事を思いながら皆が解散していくのを確認して、ちょっと遅れて食堂へと向かった。
>>【食堂】
「うん、じゃあ、お願い」
肉豆腐を差し出されれば、 素直に応じた。
本当は豆腐もあまり好きではないが、魚や野菜に比べればましだ。
皿を持ち、まとめて二本掴んだ箸で掻き込むように食べ始める。
かけられた言葉には咀嚼をしながら小さく頷いた。
「部屋はもうずっと帰ってないよ。
テキトーな空き部屋使ってるからヘーキ。
二人の邪魔にはなりたくない」
ずっと、と少年は言うが、企画が始まる前までは当然自室で寝ていた。
空き部屋で寝ているのはここ数日の話だとわかるだろう。
数口飲み込めば、重い口を開いた。
「……何もなかったんだよ。向こうにとってはさ。
だから余計にムカつくっていうか。
オレの気持ちが、どこにも存在してないみたいで」
崩れた豆腐を見つめながら、ぽつりと呟く。
| 普川 尚久は、付け足して言った。「二桁いかんくらいなら、いいよ」 (a57) 2021/09/27(Mon) 12:05:08 |
| 普川 尚久は、この企画中、異能での治癒を何度か受けている。 (a58) 2021/09/27(Mon) 12:05:13 |
| >>+77 貴戸 「んー……? うん」 寄ってくるあなたの動きをぼんやりと目で追って。それでいて、耳に入ってきた音には淀みなく答えられた。 「涙を流したら、スッキリするだろ? そのくらいのことさ」 それくらいのことか? 自問したが、そうだからそう言ったのだろう。 「ふつうは人にたのむことでないし、見せるもんでもないな。 もっと気をつかうべきだった。さわぎにしてごめんなさい。 おなじことがないように、よくよくかんがえてこうどうします」 渡された反省文を読み上げただけのような、誠意のない言葉だった。 (26) 2021/09/27(Mon) 12:23:48 |
>>【食堂】
「邪魔な訳あるか。
……寂しくないか?」
な、と、ルームメイトを一瞥。
からっぽな空き部屋で、彼は一人何を思うのだろう。
そんな勝手な想像だけが頭の中にある。
言い忘れていたいただきますと有難うを告げて
箸先を行儀悪く迷わせ、豆腐を割いた。
「……何かあったんだな。」
きっと何か、迷彩が大切な話をして
黒塚がそれを無視でもしたのか。
何にせよ、タイミングの悪い事故……のようなものか、と
一先ずは気楽に捉えた。
大きなことが起こっているとは、あまり考えたくはなかった。
「……多重人格か」
少年の言葉を反芻し、時間をかけて嚥下し。そんな推察をぼそり、呟いた。
回答を期待しない、会話未満の音だった。
……つくづく、似て非なる。
ベッドに押し倒され、抑えつけられたまま下半身の服を脱がされ、そのまま行為が始まった。どうしてか追い詰められたようになっていく朝倉を余所に、普川は困惑気味ながらも冷静なように見える。
その内に感情の堰を切ったように喚き出す朝倉。一瞬の間、その後。殴られたように普川の頭が弾かれる。それを皮切りに、見えない拳と独り善がりの律動との暴力が始まった。
押さえつけられたまま、痛みに耐えるように身をよじる普川の姿は正しく『強者に抵抗できずに理不尽を受ける弱者』で、そのくせ表情だけはひんやりとしたままだった。
「……アレの言葉を借りるなら」
「『人格』とは、人に存在するものでしょう」
「ならば多重人格でも何でもない。
私は、
本当の『南波靖史』は最初から私しかいない。
「──アレは、
貴方達がずっと『南波靖史』と認識し続け、この舞台上で話し続け、人を『幸せ』にしようとし続けていたあの存在は、」
「名付けいわく本名は、」
ネウロパストゥム・パトロヌス
「neuropastum patronus」
(操り人形の守護者)
「──自我が芽生えた、私の『異能そのもの』です」
だから、多重人格と言うのはおかしい。
経緯を知らない人間なら、最早それは『寄生』にも聞こえるような話。ただ、この『本人』はただ諦観しか見せていないが。
ダウンした榊に縋りつかれたまま、ひとつずつ制御装置を外して台に置いた。鍵を使っている様子はなかった。
ほどなくして影が盛り上がり、榊にまとわりつく。その黒は意思を持って動いていた。彼を普川から引き剥がし、軽く持ち上げる。
影は触手のように何本にも枝分かれして、榊の着衣を脱がしていく。下半身をうまれたままの姿にしたところで、影がローションのボトルの蓋を開け、小指よりも細い細い影の束に垂らして広げた。
一本、二本、三本……少しずつ増やされていく影は、結局何本榊に咥えられていただろう? 榊は抵抗しているようだが、人形と変わらないくらいにいとも簡単に動かされていた。
一方の普川はトロピカルな色のカクテルを飲み切ってから、榊が残していた透明な酒に口を付けていた。ちょっとふわふわしてきたみたい。
>>【食堂】
「邪魔じゃないなら、うん。今日はそっちで寝る」
温かい手料理など口にしたのは、ここに来てからだ。
きっと栄養もあって美味しいけれど、それでも何かが足りない気がした。
「でも寂しいのは、今に始まったことじゃない」
友人に作ってもらった食事を残すのは気が引けた。
調理に割いてくれた時間を無かったことにするのと、同じだと思うから。
薄く色づいた野菜を、肉と一緒に食べ進めた。
「そう。オレにとっては、何かあったんだよ」
貴方に心配はかけたくない、という気持ちはある。
だから、何も心配いらない。
そう意味を込めて、短い説明をした。
「……夢の話、した。
そしたら、笑われた。それがムカついた。そんだけ」
大人が禁じた、愚かな夢だ。
しかし少年にとっては、ようやく見つけた生きる希望だった。
本当は願っている。再び元の生活に戻れることを。
本当は期待している。もしかしたら、自分たちが許されるのではないかと。
世界はそんなに甘くない。
子供は知っているつもりで、ちっとも知らなかった。
「異能に、自我。そうか」
ここまで、さほど気にかけてもいなかった言葉を思い出す。
ああ。だから人間ではないと言ったのだな。そういう、答え合わせ。
「……つくづく、似て非なるな」
そうして今度ばかりは思考の外、声になった。
もっとも、一番初めに抱いたのは『難解な本名だな』という間の抜けた感想だったのだけども。
「初めまして――か? 『本当の』『南波靖史』。
……で、お前のことはどう呼ぶべきだろうな」
遠回し、一人と一つを別物として扱うべきかと問うている。俺がアレを靖史と呼ばわることは知っているんだろう?
直截的でないのは、この男にしては、たぶん珍しいことだった。
>>【食堂】
「………良いよな?
今日だけと言わず、いつでも。」
言って、気付く。
勝手に決めても良いものだろうか。ルームメイトへちらりと視線を送る。
布団は……近くの部屋から持ち込んで来ても良いだろう。そんなことを考えつつ。
「……煩かったらすまん。」
自分は何とも思わないが、ルームメイトの声が大きい。
……寂しさは紛らわせるのではないだろうか。
「…………、」
貴方の夢。
かつて自分勝手に口を挟み、怒らせたもの。
背中は押せないが、貴方の思いはよく理解していた。
「悲しいな。」
彼のために、何が出来るだろう。
探偵だ何だと名乗っておいて、余計なところで飛び込む癖に、いざ目の当たりにすると足が止まる。戻れないな、と、自虐の言葉と共にもやしを飲み込んだ。
「話して、笑われて……何か言われたか?」
普川
「そうですか」
手短に反応する。殴られる事を求めた理由に関してはその程度だった。
貴戸がもっと反応を見せたのは、その先。貴方の謝罪に関してだった。
「……俺が切り込みたかったのはそこです。
事情はどうあれ、殴るという行為は良い顔をされないものだ。己が当事者じゃないとしても。
だから、もし求めるなら人の目に触れないところでやる事をお勧めします」
目的であった話を伝える。話し終えるまで眉根は八の字に下がり、些か困惑の色を滲ませていた。
「…………先輩、謝り慣れていますか?」
迷彩を歓迎している。断る理由が無いし、心配する気持ちがあるのは相方と同じなのだから。
| >>【食堂】 >>+84>>+85 三人からはちょっとだけ離れた、それでも会話をするには遠くない所に座っている。料理を作り始めるのに少し問答をしていた貴戸と闇谷には「僕お腹いっぱいになる量取ってくから」と暗に自分の分は作らなくていいとの発言をしていた。 「ふぅん……プリンを毎日食べられるようになりたいも、 空を飛びたいじゃなくて飛行機になりたいも、 別に立派な夢なんにね」 暗に笑うことはないのにと言っている内容を、事も無げに呟いた。笑う人間の心理は分からないでもないので、普川本人としてはそう思っているわけではなかったりする。 普川はリョウちゃんに本当の願いがあるだなんて知らない。それを欠片でも察せる鋭さを持っていたら、普川はもっと思い通りに人生を過ごして来られた。 (27) 2021/09/27(Mon) 15:34:22 |
| >>+86 貴戸 「……? 慣れてたらもっとそれらしく言えるんと違うかな」 我ながら相当気持ちが籠っていない謝罪だったと思っている。口だけで守る気が特にない、そんなふうには聞こえなかったのだろうか? 普川は首を捻った。 「貴戸さんがそういうことを言うと思って、 だから先に言われそうなことについて言ったよ。 意図のりかいはします。先のはつげんどおりです」 (28) 2021/09/27(Mon) 15:49:57 |
| (29) 2021/09/27(Mon) 15:50:41 |
| (a62) 2021/09/27(Mon) 15:51:21 |
>>【食堂】
「うるさい方がいい」
家に誰かがいるのが当たり前だった。
それでも時々、留守番をしたことがある。
テレビを付けたまま、硬い布団で寝たことを覚えている。
悲しいと言われれば、ややあって頷く。
あの時は恐怖心を覆い隠す為に、怒りを募らせたけれど。
怒りと恐怖の下に、悲しみがあったことに今気が付いた。
「え、うーん……」
何か、と言われて思案する。
あまり思い出したくない記憶を、隙間から少しだけ覗き込む。
黒い瞳と目が合って、すぐに目を逸らす。
「母さんに報いる気がないんだな、とか」
「だったら今ここで死んでも同じだ、とか」
少年の夢は、そう言われて当然の形をしていた。
ルームメイトの言葉は全てが正論だと、きっと誰しもが納得する。
それが正論で生きていけない子供の神経を逆撫でした、ただそれだけの話だ。
普川
殊更困った顔をした。少し考える為に瞼を下ろす。小さなため息を一つついて、それから瞼を持ち上げる。
「そうですか。
……先輩。その言葉に誠意がこもっていようがいまいが、口から出た発言には責任がついて回ります。
別に俺は、貴方が自ら殴られるのを求めることに思うことは特にありません。先輩には先輩の事情がありますから」
淡々と言葉を紡いでいく。
「……ただ。こうして口先だけでも約束してくれたのに。それを破ってしまったら。……いいや、破るだけなら別に良い。
それで万が一、暁が再び困ってしまうようなことがあれば」
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