69 【R18RP】乾いた風の向こうへ
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[ シャワーを浴びてからしばらくは窓際で、昨晩から今まで、見たことや思ったことなど、メモに書き込んでいたが、だんだんに眩しくなってきたから長椅子に移動した。
ヴィの眠っている場所は天幕で遮られてはいたが、レースのカーテンで窓を覆っておく。
風が吹き込むようで涼しく室内は心地が良い。自然なもののようだが、魔法の道具が使われているというのが不思議だ。]
え?もうおきちゃったの?
[ だんだん飽きてきて、持ち込んだ本をめくったり今日の新聞を読んだりしていたら昼少し過ぎくらいにヴィからの問いかけ]
ちょうど集中できなくなってきたから、何か食べにいこうかなって考えてたところ
[ 何となく、日が沈む前までは眠るものだと思っていたから、割合早い目覚めに少し驚いたのと、嬉しさと。]
君は何か食べる?
ルームサービスを取ろうか
酒も飲めるし
[ ふふと笑って、いっぱいにはいなら夕方出かける時には抜けているだろうと思い堕落の誘い。*]
| うん。思い出したらね。
[ 急かなくとも、まだ時間は充分にあるのだと思いたい。 そうして自分が思い出したというように、市街地と異なり必要もなく、今はふたまわりも大きい彼の手に指を掛け、薄明の石畳を歩く。]
僕らの故郷じゃあんまり見ない果物だものね。
[ 種明かしをすると、流通の良い現住の国の、市で屋台が出ていたのを見たことがある。汁を絞るのではなく実をそのままカップに盛り匙を差したものを並べて売っているのも見たから、粒を剥くのが面倒なのは多かれ少なかれ誰しも思うものなのだろう。
幾つかの実が割られては絞られ、屑箱に捨てられまた絞り機に挟まれ赤い汁を垂らすのを目を細めて見る。]
楽しいよ。
[ 今のは無し。そう遮ったと言うのに律儀に彼は答える。]
今も楽しい。
[ 楽しければいいと言ったのは彼だと言うのに、今の自分の気持ちこそ告げる。何度もこうして伝えられる時に伝えなければいけない気がした。それが許される間に。 旅へ行こうと誘った彼の言葉が気紛れであっても、行き摺りの彼がまた訪う幸運が50年後の先であっても、多分自分は、ダンテと過ごした数日を、得難くしめやかに輝く想いとして、繰り返し胸に反芻していただろう。
当のダンテは何だか面白げに此方を眺めていたので、次第に膨れ面になった。]** (133) 2021/04/22(Thu) 23:45:43 |
よく寝たよ。
[ 寝台の上に起き上がると大きな欠伸とともに伸びをする。朝食を採った後からすると、4、5時間は寝ていたのではないか。]
そろそろ退屈してたんじゃない?
お酒、お酒飲んだあとダンテ出掛けられる?
[ 昼を摂ったかと聞けば、部屋で摂ろうかと応えが返る。
既に酒に弱いという前提で答えている。基準は自分である。]
僕はお酒だけでもいいけど。
[ 昨日取った干葡萄とチーズが、些か干からびながらまだ残っている。それを肴に食べれば充分。後はダンテが頼むものを横合いから摘めばいい。
酒だけでいいと答えて、それから不意に黙り込む。ダンテをじっと見詰めたまま、黙り込んでいる。]**
[ ヴィの言葉が本当かなと、彼の様子を眺めればしゃんとしていて。無理をしておきたのではなさそうだ。昨晩少しとはいえ眠ったのも関係しているんだろうか。]
うん、じっとしてたから疲れた
[ ルームサービスを頼もうかと言いながら伸びをして、そのあとの言葉は彼なりの冗談なのかと思ったがどうやら本心から出た様でわざとらしくため息をつく。]
流石に昨日買ってきたアラックを開けるなら自信はないけど、
[ ヴィが強すぎるんだよとぶつぶうと言いながら、食べ物は特別要らないというから飲みたいものを訪ねようと彼に視線を向ける。]
[ すると彼は突然に黙り込んでこちらをじっと見ていた。天幕の向こう、影の濃い場所に、いつもより小柄な彼が広い寝台の上にぽつんといるから何となく寂しげに見えて歩み寄る。]
手に触れてもいい?
[ 許されるなら膝をついて両手で彼の片手を取り、指先に口付け頰で触れる。返答がなければ跪くだけにして。どうしたのと彼の言葉を待つ。**]
外出してもよかったのに。
[ 凝った身体を解すように彼も伸びをする。
応接室の卓には彼がいつも書付けに使っている手帳や万年筆が置かれている。手帳は閉じられているから、書き加えた内容の墨は乾き、暫く前に作業は止められているのだろう。
そう言いながらも起きれば宿の室内に真っ先に彼を探し、姿を見つければ安堵する。]
それは今は僕も遠慮したい。
[ 拗ねたように自分が弱いんじゃないとかなんとか、呟く彼に一頻り笑う。
物言いたげに彼を暫く見詰めていると、腰掛けから立ち上がった彼が此方へ歩み寄り自分の手を取った。まるで貴重なものかのように許可を請うて、指先に口吻け、頬で触れる。]
起きたから。
[ 歯切れが悪い。目覚めの口吻は朝だけなのかと、当然ではなかった筈のものが与えられると、それを当然のように強請りたくなるから、どこまでも強欲だと思う。]**
| [ 一月、二月流石に足留めされることはなく、悪くて数日だろうと >>0:2国境を務める公吏は言った。明日か明後日かこの国を経つことになり、そうすればおあずけされた海にようやく辿り着く。] 青い方の海。 [ 故郷も国の一辺を海に接する形だったが、それは断崖の下に白い泡の波をぶつけるものと、鈍色に光る港のものだ。青い海など、物語か海を内装に模したカフェ >>1:174でしか見たことがない。] 楽しみだね。 [ 夜には波打ち際が発光する様子も見られるという。昨晩買い付けたこの地の酒を、それを眺めながら呑むのもいいかもしれない。 また目を細めたのは今度は気分を害したのではなく、陽の角度が変わって疎らに差す木漏れ日が、そこに彼がいる風景があまりに眩しかったからだ。]** (143) 2021/04/23(Fri) 7:20:49 |
[ そばに寄り、許されれば手を取って指先に口付け頬で触れた。寂しげに見えていたが近づけば言いたいことがあるのを我慢しているように見える。]
…
[ それから、起きたからとだけ一言を彼が呟いて、自分は暫く血の巡りが悪くて気付けた時には破顔してしまったと思う。]
君が好き
[ 昨日の夜中に返し損ねた言葉を添えて、立ち上がり彼のひんやりとした片手も名残おしかったが離して、彼の頬に手を添えて目元と頬に口付け。
それから大きな犬がするみたいに額で彼の髪に触れた。**]
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