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【人】 魔術師 ラヴァンドラ呪いを体内で解呪するには、 術者の魔力をぶつけ、調和する以外に道は無い。 込められた負の感情と、呪った本人の記憶の幾らかを ――― その全てを文字通り受け入れ、消し去るのだ。 はふりと息を零し、冷えた指先を握り締めた。 愛した人に捨てられた魔女の恨みも 愛した物を奪われた、魔女の嘆きも …… その辛さは痛い程に良く分かる。 (200) 2021/12/16(Thu) 22:23:17 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ傷付けられたら、同じだけ傷付けてやりたい。 自分の手を離した相手を赦せない。 故に呪いという道を選んだ魔女のことを、 魔術師は責め立てる権利を持たない。 ―――― 同じことを考えた過去故に。 (201) 2021/12/16(Thu) 22:23:21 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ねえ、ママ 私のどこがいけなかった…? 」 「 ねえ、パパ 普通の子なら、愛してくれた? 」 振り払われた手の痛みごと。 ―――― 思い出しては、眉を顰める。 復讐がしあわせに繋がると信じてしまうのも 故に人を呪う気持ちも、 … 理解ってしまうから (202) 2021/12/16(Thu) 22:23:25 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ…… けれども。 「 ―――― だからって、 関係ない子を苦しめるのは、 …… それは違うでしょ……! 」 傷付いても、誰も助けてくれない苦しみは ―――― 誰だって識っているだろうに。 魔術師は恨みを訴えてくる呪力を飲み下し、 文字通り、魔力で呪いを押し込んだ。 (204) 2021/12/16(Thu) 22:23:53 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラそうしている間に、人魚が役目を終えて帰って来たなら おかえり――と迎えようとして。 許可なく手を取られ、不服を訴える海色の右目を見るに 女の行いは、説明するまでもなくバレているようで。 「 …… えへ。 ごめんね、……怒らないで……? 」 なんて、可愛い兎の真似事をして許しを乞うけれど さしもの彼も、この甘えを受け入れてくれるかは―― …… あまり自信がない。 (205) 2021/12/16(Thu) 22:23:59 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 …… 大丈夫だよ。 テレベルムのおかげで、……平気だから…… 」 ―――― あの、猫のような少女は。 女が誰かを本当に呪ってしまった未来の体現みたいで。 …… それがどうにも居心地悪くて、 だからこそ、こんな手段を取ってしまったけれど。 自分を抱き締める彼が気を病んでしまわないよう、 そっと背中へ腕を回し返した。 変わらず命を刻み続ける心音が聞こえるように 何の隙間も生まれないよう、―― ぎゅう、と。* (206) 2021/12/16(Thu) 22:24:44 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― その後の噺 ―――― 祝祭が終わっても、女は結局人間には成れなかった。 垂れた兎の耳は変わらず毎日風に揺れて、 尻尾は驚いた時にぽふんと膨む。 溢れそうな魔力を消費し、道端の猫と睨み合って 変わらず誰かの世話を焼いての繰り返し。 呪いに苦しんでいた子猫の少女は、 あの後どんな様子で魔術師を訪っただろうか。 ―――― 無様でもいいから生きたいと叫んだあの願いが どうか何の柵も無く叶えばいいと、願って。 (282) 2021/12/17(Fri) 21:43:28 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ淫魔の友人がこの街を再び発つ前に、 女は彼の元を訪って、パイ屋の特大パイを御馳走した。 もしかすれば彼は驚いたかもしれないし、 ―― 等価交換ではないと言われたかもしれないが。 「 メレフ、あのね …… ありがと。 私は御伽噺の女の子にも、人間にもなれないけど あの時助けてくれたの――嬉しかったよ。 」 唯のラヴァンドラを、友人として慈しんでくれた ―― 彼の不器用にも思える優しさは けれど確かに、寂しがりの兎を助けてくれたから。 (283) 2021/12/17(Fri) 21:43:32 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― 少し時間を置いてから、魔術師は暫くの間 人魚を伴って姿を消した。 目的地は極少数の友人にだけ伝え、 旅には向かない身の上で、それでも彼と歩くことを選び。 街から出たことのない女は、あちこちへ興味を示し けれど逸れることを恐れて人魚の手は離さなかった。 「誘拐されたら困る」と本気の顔で告げて、 そしてその誘拐対象は女ではなく人魚であることも 付き合いの長い彼には理解るだろう。 (284) 2021/12/17(Fri) 21:43:37 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ彼は妹を見つけられただろうか。 無事に――使命など関係のない、家族の再会を果たせたなら その時ばかりは女も彼から手を離し 家族のみの空間にしてあげようとしただろうけれど。 …… 本当は。 女の知らない、温かいだけの家族の形を見るのが怖くて 妹に再会した彼が どんな道を選ぶのかが分からなくて 見ないフリをしようとしただけ。 識らなかった頃には帰れないから。 (285) 2021/12/17(Fri) 21:43:40 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラけれども結局女の危惧とは裏腹で、人魚は女と共に 住み慣れたエオスの街へと帰って来てくれた。 ―― それがどれだけ嬉しいことなのか、なんてこと 彼はずっとずっと知らない儘で、良いのだけれど。 「 リル! 」 兎は月を見て跳ねる、――と東の国では歌われるが この街の兎は、訪った親友を見て跳ねる生き物だ。>>262 ぱっと顔を輝かせ、自宅の扉を開き そこに立つ彼女をぎゅうと抱きしめよう。 (286) 2021/12/17(Fri) 21:43:44 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ私の大切なお友達。 人間になりたいという願いも、私の存在も 初めて肯定してくれたかわいい貴女。 世界への復讐を希っていたと、もし私が識れたなら ―― 私もきっと彼女の全てを受け入れる。 それが誰かを傷付ける結果になることでも、 それで彼女の全てが掬われるのならば、と。 復讐に心を堕としても、誰かを殺めても …… 貴女は、私の。 (287) 2021/12/17(Fri) 21:43:46 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ…… なんて、沢山の手土産を持参してくれた彼女へ いたずらっぽく囁いてみせれば。 あの時のように可愛い反応を見せてくれるのか、 或いは受け流されてしまったか。 「 リル、こっちきて! 一緒にご飯食べよっ 」 どちらにせよ女は、彼女の腕を逃がさないように抱き締め 家の中へと招き入れた。 …… やや過剰に思えるスキンシップの理由は、 いつの間にか彼女が傍へ置き始めたホムンクルスなのだが。 そんな子供じみた嫉妬心は隠してしまって。 (288) 2021/12/17(Fri) 21:43:56 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 …… ねえ、その子の名前は? 甘いもの用意してるんだけど、好きかなぁ。 」 ―― 兎は出来る兎なので。 そんな風に、可愛いばかりの友人へ尋ねてみては 恐る恐る交流を計ることも、あっただろう。* (289) 2021/12/17(Fri) 21:44:00 |
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