人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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 クラスメイトに声をかけたの、頑張ったね……


[聞こえないのは分かっていても、自分の声も使う。


 多分、私は友君にとって、苦手な人種。

 クラスに一人や二人いる、物静かな子たち。
 そういう子から、私は怖がられる。
 話しかけても目を逸らされて、
 一刻も早く会話を切り上げたい、
 そんな意志をひしひしと感じる。

 だから、友君がクラスメイトに話しかけるとき、
 どれだけ勇気を振り絞ったかは、
 想像できる気がした。]

[友君の言葉は、どんなに温かい言葉も、
 消
えてしまう。
 
 フリクションのコバルトブルーを、
 黒板みたいに書いては消してを繰り返したから、
 紙面はすっかり毛羽だって、よれよれで、
 青いインクは染み込んで、少しずつ消えなくなっていく。

 SNSだったら履歴が残るのに。
 便箋がたくさんあったら、本だってできるのに。
 神様が与えてくれたのは、たった一枚のダサい便箋で、
 友君からもらった言葉がどんなにうれしくても、
 形には残らない。

 せめて黒板みたいに頑丈だったら、
 ずっとやりとりができたのに、

 本当に、神様は残酷だ。

 それでも、限られた条件の中でも、
 私が臨む景色を、見せてあげられてたかな。]



 ── あはっ!
 なあにそれ、

 

[私はわざと大げさに口元を抑えて、
 笑顔を伝えようとする。
 表情が見えなくたって、ボディランゲージなら見えるよね。]

[私たちも夜に塗られて、
 一つの大きな闇になった。]

【置】 二年生 早乙女 菜月




   それから後も、やさしい星だけは、
   下の世界をずっと見守っていました。

 
── 「ある夜の星たちの話」   


  
(L2) 2020/10/04(Sun) 10:32:20
公開: 2020/10/04(Sun) 10:35:00

【人】 二年生 早乙女 菜月



「うわ!?」

[パチっと音がして、図書室の中が明るくなる。
 文庫本を胸に抱いたまま振り返ると、ドン引きした司書の先生と目が合う。
「電気もつけずに何してんだ早乙女。もう下校時刻過ぎてるぞ、帰れ帰れ。あとそこ座るの禁止の椅子だから」]


 あ……はい


[感染症対策で、座れる場所はかなり減った。椅子の半分には赤いテープでバッテンが貼られているし、机も同じ。
 さっきまでこんなのなかったのに。

 延長手続きを済ませて廊下に出る。
 廊下から外を見たら、チア部の横断幕>>0:23がはためいていた。
 中庭の明かりに照らされて、かろうじて読める。
 銅賞の文字が一瞬霞んで、優賞、と書かれているように見えたのは>>1:43、暗さで目がバグったんだろう。]*
(25) 2020/10/04(Sun) 10:33:58
[次の日も、その次の日も、私は図書室へ通い詰めた。
 少しずつ、私たちの世界の差に目を向ける。
 目をそらしていた溝の、絶望的な深さを知る。]

【人】 二年生 早乙女 菜月



「ナツキ、」

[と心配そうに友達が言う。]
「どうしたのここんとこ。図書室で見かけた時、ずっとぼうっと壁を眺めてたから、怖すぎて声かけられなかったよ。しかも、次の瞬間ふらっと消えちゃったし……どこ行ってたの?」


 どこ? ……デートかな〜〜〜〜?
 あんま無粋なこと聞かないでよね!


[私は笑ってごまかす。

 紙はすっかり傷んでしまったから、裏面を丁寧に補強した。
 一面に、縦にも横にも張り付けたセロハンテープ。
 パッと見ると市松模様みたいで、ああ、そういえば、オリンピックもどうなるんだろう。
 あれだけ大騒ぎしてたのに、今年もどうなるか怪しいや。

 筋トレとランニングの時間が減って、少し、体重が落ちた。]**
(26) 2020/10/04(Sun) 10:39:03
二年生 早乙女 菜月は、メモを貼った。
(a9) 2020/10/04(Sun) 10:40:16

― 小さな事件 ―

[生まれ育った盗賊団での生活と違い、屋敷に住まわせてもらう様になって、ハラハラした事なんて数えるくらいしかない。
無理して大荷物を抱えているメイドに、持とうかって声をかけたのに断られて、最後に階段を踏み外しかけているのを目撃しただとか、飲み過ぎて荒れたユージーンを介抱していたら顔面に吐かれた事だとか、
まぁ、物騒とは程遠い。

それらに比べれば、暗がりの中でも顔色を悪くしてたシャーリエとの庭での出来事も、目に見える被害者がいなかっただけあり、事件としては記憶にも挙がらない。

何か途中、頭を抱えてしまった彼女が転がったけど。
笑わないでほしいとか言われたけど、笑ってないぞ。
顔を伏せていたから、言われる前に手を差し出していた事に彼女は気付かなかったんだろう。まぁ急に転がるから少し驚いたけれど、恥ずかしい事だとは思わなかったし、女って大変だなと同情したくらい。

難しい事はわからないので、
彼女の言う事も鵜呑みにして、言われた通りの仕事をこなした]


  ご褒美とか、別に。


[言われるまま動いただけで、褒美とか気が引けた。
何だかすごくご機嫌な彼女に首を傾げながら、
賞賛ならユーディト様に、と、謙遜でもなく譲っただろう]

[特定の人をつけろなんて仕事はおそらくそう無かったから、
覚えていないではない事件。
けれど小難しい事は理解していなかったし、
今のこの状況と結び付くのもきっとずっと後になるだろう]


  お嬢様……?


[突然の暗闇の中で、主人を探して喚く。
少し離れたところで、どこか意図的に作られた様な、食器の音がした。返事の様に聞こえたなんて、おかしいだろうか。

暗闇の中でも、又、灯りが戻っても素早く動く事の出来なかった自分を詰りたい。
彼女の姿がそこに無い事なんて、これ迄の状況から予想出来ただろうに。
復旧した灯りに店内が余計にざわついている中で、
己だけが茫然と立ちすくんでいる]


  ───……


[不自然に片方だけ転がった女物の靴。
拾い上げて、どこぞの御伽話の王子の様に見つめる。
彼女が履いていたものと迄は記憶していなかったが、
彼女のものと思いたくないのに、心臓が身体から突き出てきそうなくらいにうるさい]

[暗闇の中で己に注がれていた視線の数々は、
灯りが点いた事で散って行ったが、
席に案内してくれた女性店員が恐々と声を掛けて来た]


 「あの……裏口から、
  たぶん誰か出て行きましたよ……
  お連れのお姉さんじゃ?」


  ………


[どうやら彼女は裏口へ続く道の傍に居たらしい。
先程の己の錯乱を気に掛けて教えてくれた様だ。
人の厚意に触れて、少し冷静さを取り戻せたのか、
ツケといてくれ、と彼女に告げて、裏口に走った]

[外はまだ真っ暗とはいかなかったから、
傍に出来た新しい馬車の轍を見付ける。
こんな所に馬車?
止まった跡があったから、余計に引っ掛かった。
あたりに居た人間に聞いている間も惜しんで、地面の目印を追った。

無我夢中で走って、遠くにその後姿を見たのは、
彼女が濡れ鼠になって震えていた頃か。
エンブレムは見覚えがある様なない様な……そんな事はどうでもいい。
あの馬車の中に彼女がいるかもしれないと思って、]


  お嬢様!!


[叫んだけれど、何やら男が近くの岩の方へ歩いて行って、手を伸ばそうとしている姿が見えたから、

持っていたシャーリエの靴を、思わず投げた。
当てるつもりだったけれど、
男のデコに当たって自分でもちょっと驚いた]

[男が怯んだ隙にぐっと距離を詰めて、
男の前に割って入った]


  お嬢様……


[驚いている男から目を逸らすなんて愚かだったけれど、
後ろを見遣って、そこにシャーリエがいる事を確認する。
ずぶ濡れだったけど、酷く怯えている様子だったけれど、
彼女がそこに居て、生きている事に救いを見た。

よかった、とか、下がって、とか気の利いた言葉が出て来ないまま、男が振り上げた拳を避ける為に腰を屈めた。
ひらりと身をかわしたその流れでジャケットを脱いで、
びしょ濡れの彼女の肩に貸した]


  お嬢様、隠れてて


[それだけ言って、腰の後ろの方に仕込んでいたナイフを抜いた。彼女の護身用のナイフよりずっと安物で、けれど同じ様に刀身が綺麗なのは、手入れが行き届いているからではない]


  ………


[抜いたはいいけれど、
これだけでビビって引いてくれる気はあまりしていない。
予想の通り、男は刃物すら持ち出して、躊躇いもなく振るって来た。……オレとは違って]



  ん、グッ……


[それはナイフで受け切る事が出来ない強い力で、
吹っ飛ばされるかと思った。
地面から足が離れなかったのは、刃物が義手の隙間に入り込んだから。
そこに痛みはないが、
受けた振動と、義手が壊れる感覚にぶわっと汗が浮かぶ。
男は腕の硬さに不思議そうにしながらも、ギリギリと義手の中で刃物を動かしている。
男の動きが止まっている今が好機なのに、
ナイフを振るえなかったのは、義手へのダメージを考えたからではない]


  、はぁッ、はぁっ……


[人を、斬った事がない。
こんなロクでもない奴相手でも………怖かった]

[バキン、と音がして、男の刃物が抜けた。
ばらりと部品が落ちるのがわかったけれど、
左手がうまく動かせない事もわかったけれど、
今はそんな事どうでもいい。

男は御者の他に仲間はいただろうか。
最低でも一人の仲間が増えれば、とうとう覚悟を決めなければいけないと思った。

シャーリエの方を振り返ってはいられない。
彼女の顔を見たら、決意が揺らぎそうだ]


  お嬢様、


[だから、
己の後ろにいてくれるだろう彼女に声だけ掛けた]

[すぅ、と息を吸った]


  ………お前を殺す。


[小さく呟いた。
彼女へ優しい声で願った己は一旦黙ってもらう]


  お前を殺す。


[もう一度、さっきよりはっきりと口にする。
言霊というものを信じている訳ではないが、
言葉にすると力が湧いてくる様な錯覚を手にした。
足に芯が出来て、簡単には吹っ飛ばされないと思える。
震えが隠せなかったナイフを持つ手は、今はぎゅうと握り込まれている。
ナイフで人を斬る自分の未来を見る。


人を斬った事がない弱い己は、
彼女を守る為に、少しだけ強くならなければいけなかった]



  オレが、殺す。

  お前を殺す。


  殺す………


  殺して やる !!!


 

[殺さずに撃退できるなら良かった。
でもそうするには、己は弱過ぎた。

何度も「殺す」と声にして、時に叫んで、
同じ命と肉体を持つ人間を斬った。
弱い心が恐ろしさを感じそうになれば、
自らを洗脳する様にまた「殺す」と言葉にした。
そうすれば、何度でもナイフを振るえた。
二人でも三人でも立ち向かって、
斬り返される痛みにも、肉の感触にも決して怯む事なく、
道を赤に染めた。

今怖い事は、
斬られる事より、死ぬ事より、
彼女が傷付く事だった。

だから一人残らず殺すしかない。

一人が怯んで命乞いをしかけたが、
聞き入れずに喉を裂いた。

崩れゆく男の手の刃物が己の右手を滑って、お返しの様に深く裂いた。思わず呻いたが、連中を一人残らず始末する迄、この手は動いてくれた]



  ───ぶじ、ですか

  お嬢様……


[斬った男たちの安否は……わからない。
多分殺したと思うけれど、しっかり確認できた訳ではない。

立っている人間が自分だけになって、
ようやく血に染まった顔で彼女を振り向いた。
怖い思いはさせたくなかったが、
無事を確認しないと倒れられない。

彼女がそこにいてくれたなら、
その場に崩れ落ちるだろう。

彼女が恐ろしいものを見る目でこちらを見ていても、
軽蔑のまなざしを向けていても、
気にしなかった。

生きていればそれで。
それだけでいいんだ。

流石におおごとになって周辺から人が集まって来ただろうか。
薄れゆく意識の中で、そんな喧騒を聞いたかもしれない。**]

[卵60個食べて筋骨隆々になったのは
 確か町一番の変わり者に恋した力持ちだっけ?
 本ばかり読む変わり者には
 ぴったりかもしれないけれど、それはさておき。

 滑るペン先を見つめる瞳が
 じっと紙に注がれているのを感じながら
 俺はくるりとペンを回す。]


  嘘なのかよ。


[聞こえてないだろうけどノリツッコミ。]

[でも、ほら。
 俺なりのプロポーズに
 隣の影が大仰に驚いてみせて。

 
(そういう反応が女の子なんだよ)


 心の中で語り掛ける。
 しばらく待っていると、
 震える黒炭の筆跡が、ゆっくり、ゆっくり
 菜月の気持ちを表してくれる。

 強くて、背が高くて、女子っぽくない菜月の
 やわらかくて、繊細な心の中を。]

[窓の外が暗くなっていく。
 星も見えない真っ暗闇が、
 図書館の中を満たしていく。

 紙が、もう見えない。
 シャーペンの軌跡も、ブルーのボールペンも
 ダサい天使の描かれたピンクの便箋も
 全部全部、黒一色に染め上げられて。]

[その一瞬、隣に座る影の手に
 俺は自分の手を重ねた。

 結局その手は何にも触れないまま
 すとん、と木の机に受け止められたけど
 心做しか、辺りを包む暗闇は
 とくり、脈打つような温かさだった。]*

【置】 二年生 小林 友

  

  「その子供が、かわいそうじゃないか。
   だれか、どうかしてやったらいいに。」
   といいました。
   「私は、その子が、目をさまさないほどに、
   揺り起こしました。
   そして、それが夢であることを
   知らしてやりました。
   それから子供は、やすやすと
   平和に眠っています。」
   と、やさしい星は答えました。

  ─────『ある夜の星たちの話』
            小川 未明*

 
(L3) 2020/10/04(Sun) 15:26:53
公開: 2020/10/04(Sun) 15:25:00
 
[つい先刻まで彼にとって僕は
 ただの盗人だった。

 彼の態度が豹変したのは
 僕の見てくれを
 好いてくれたからだと思う。

 母と、同じように。]
 

 
[彼には言うなと言われたけれど
 WこんなW僕には
 親から貰った容姿しかないのだ。

 スポーツは怪我や日焼けをするからと
 最初からさせて貰えなかったし
 母の仕事を手伝うために
 薬剤師の資格の取得を目指しても
 特段喜んでは貰えなかった。

 いつだって誉めて貰えるのは見た目だけ。]
 

 
[その唯一の見目が損なわれることは
 死より辛いことだった。

 けれど、いまの僕の容姿でも彼は
 美しいと言ってくれるから
 すべてを許された気になってしまう。

 アクスル・パームは一度死んだ。
 新たに命を与えたのは貴方。
 無責任に投げ出すことを許したくない。]
 

  
[捨てられた時を想起してしまうから
 胸が苦しくなる。

 見つめる先の顔が、
 ぎこちなく笑みの形を作った。
 拒まれることを予期して
 一瞬だけ、哀しげに眉が寄る。]


   ……え、……


[けれど返されたのは、是だった。
 眉を戻し、瞬きをゆっくりと繰り返す。
 その間にも、穏やかな声は続いた。]
 

 




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