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【人】 天狗[此度の嫁がその村から送り出されたことは皆知っている その嫁が眷属となりこの先も「山神様」を支えるなら、それはとてもめでたいことだ] 良き嫁を得た礼に、久々に村に下りたんじゃ…… じゃがの…… [その村は酷い 業病 に蝕まれていたと天狗は言ったもっと正しく言えば、何か良からぬものに「憑りつかれて」いたようだと それに気づかなかったのは天狗の不徳と言い置いて] 人を狂わせる病じゃ……互いに殺しおうて手に負えんかった ワシらにまで刃を向けてきての……火まで放って酷い有様じゃった [ 嘘ではない、事実彼らは自らの手で滅んで行ったのだから ]あれは放っておけばほかにも広がるもんじゃった ワシはこのあたり一帯を護らにゃならん……あんな業病にさらすわけにはいかんかった [だから、浄化したのだ、と] (131) 2021/07/03(Sat) 2:34:26 |
【人】 天狗[そう、あの村は病んでいた、病み腐っていた 嘘は言っていない そうして、他の村の者たちもそれを疑いなく信じた そう信じたくなるようなものを、人々も感じていたのかもしれない] 浄化はしたがの、あれは人に憑りつく魔物のようなもんじゃ あの村は……まあ、元から少しばかり変わっとったがの そこに付け入られたんじゃろう あれはワシの力じゃ防げんものじゃ だからの、お前たちも努々油断召されるな 皆で協力して支え合っていくがええ、それが多分一番じゃ [「山神様」の言葉に人々は頭を下げる やはり村を守ってくれているのだと 、もう長い事天狗は悪さをしてこなかったので ] (132) 2021/07/03(Sat) 2:36:14 |
【人】 天狗[それから、件の村の跡地は必要なら皆で管理するようにと伝える あのあたりは土地がよいから放置して荒れるのはもったいないと そうしてもう一つ それまでは禁足としていた「嫁の岩屋」のある洞穴付近を解放し 新たな禁足区域を山頂付近のみにすると伝えた 山頂付近は天狗の力の影響が強く物の怪が寄り付きやすいから、と 解放した区域の山の幸は皆で分け合うようにと] 皆がこれまで通りあり続けるなら ワシもこれまで通りにこの地を護ろう 変に祀り上げたりする必要はないが、そうじゃの 怖がらんでくれたら、ありがたいかの [冗談めかして言えば村人からも笑い声が届く 使いは、つまりは天狗は満足げな表情を残して村を去った] (133) 2021/07/03(Sat) 2:38:16 |
【人】 天狗 さて、茅よ、これでよかったと思うかの? [と、傍らで……正確には腕の中で全てを聞いていた「嫁」に問う もっと言えば 寝床の中 なのだが、そこはとりあえず置いておこうかつて悪行を重ねた物の怪は、いつの間にやら本物の「山神」になっていた そのこと、今だ天狗に自覚はないのだが、この「嫁」の影響は大きいだろう] (134) 2021/07/03(Sat) 2:40:07 |
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