『お前さんにはさあ、
人情っつーもんがなんか足りねーんだよなァ……
被告の未来少しでも考えたことあるか?
勿論、冷静さは大事だよ。
平然としてられるからこそ仕事が早くて、
結果出世出来てる訳だがね』
[昨年の年末、慌ただしい師走の半ばのこと。
所長から突然のお呼び出しを食らい、直々に何を言われるのかと思えば開口一番これだった。
法に照らし合わせ判例を参考にして、妥当な判決を下しているつもりだと答えた。罪人に慈悲はない。
「何か問題が?」と尋ねると、所長は何か思案するように顎に手を添えた。]
『ん〜……いや。何も。
そういや面白い仕事があるんだが、
手の空いてる奴が居なくてな。
お前さん、やってみねえか?』