202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
[答えづらそうにしてたから、答えたくなかったら答えなくてもいいんだけどと思いはしたよ。
こういう時、思っただけで言わないのが悪いところだとはわかってるけど。]
それは、なんていうか、うん、すげえ嬉しい、かな。
……柚樹?
[詰まりながらも返ってきた言葉に気を良くして体を寄せそうになってしまったところで、つい、と泳いで逃げられてしまった。
人がいないとことはいえ、外でそういうことって全然したことなかったし、発想としてもなかったのだけど。
身体を重ねるようなこととまではいかなくても、手を繋いだり以上のことは一人暮らしのオレの部屋でするのが常ではあるし、柚樹の家でしてしまったことはあるにしても、お互いの家以外だとイチャイチャするようなことはそうそうない。
一、二回だけやむを得ずにホテル的な施設に入ったことはあるけど、あれはそういうことをするところ、ではあるので。
非日常すぎて異空間だからある意味面白かったな、とか。
コテージも二人きりの密室と思えばそこまではって感じなんだけど、此処は文字通り外だしなっていう開放的な景色を横目に悶々と考え込んではしまう。
いや、一緒に風呂入ったら意識してしまうのはもう十二分にはわかっていたはずなんだけど。]
確かにくっついてたら手が出るから
この位置のがいいのかな……。
[そう呟いて、対面にきた足のつま先に軽く足で触れて。
どれくらいかはそのままお湯の温かさを感じていたのだけど。
でも距離が遠いなって思ってしまったので。]
――――何もしないからそっち行ってもいい?
[何もしないの範囲は自己裁量なんだけど。
泳ぎはしないものの、平石の張られたお湯の底に手をつくと、ぐ、と体を浮力に預けて横に移動した。
肩や脚は触れてしまっても、のんびり浸かる間くらいはとりあえず、大人しくしてるつもりはあるよ。]*
悪いが時間切れだ。
[景色を楽しんでいたのは微笑ましいが、あちらも受け入れ準備ができたようだ。発着所の人間が旗を振ってくれている。
流石にそれを前に遊覧などしては悪く、旋回をする―――つまりミツキを抱き寄せることにするアスル。
その腕の中の存在には目を向けなかった。
それは運転に集中していた―――のもあれば、昔を思い出してしまうからだろう。
到着。と元気よくいって降りるミツキに視線を向けた後]
ちょっと待っとけよ。
[その顔色まで見ることはしなかった。
気を遣ったとかではない。発着所の係員へと話す必要があったのだ。
主に滞在理由やらなんやらで、物資を補給したい。と、通貨を交換で得て、地上をゆっくりと走ることで飛行機を倉庫にいれる。
待つ間は座るところもあるし丘の上のおかげで風景もよく見えて暇にはならなかっただろう。
そうしているうちに免疫の少なく大切に育てられていたらしいミツキは回復しただろうか。]
[ちなみに回復していなくてもアスルは関係なかった。]
手続き終わったし行くぞ。
[ここでまだ赤かったら、風邪か?と無遠慮におでこに手をあててみたりしただろうか。
なにはともあれ丘をゆるやかに降っていくと、先程みた巨大な湖、その上に住む都市が見えてくる。
温暖な地域なのか服装がそもそも薄手であることが多い島民。当然露出することを目的としているわけじゃないのでそこにいやらしさはないが、服をしっかり着てる物、着ていても水飛沫などで濡れて服が肌に張り付いているもの。
そもそも下帯ぐらいしか着けていないものもいるが、だいたい身体が水で濡れているので泳いだりしていたのだろう。時には女性であっても上を隠していないのもいるから驚きだ。]
ミツキ…大変だったら手を繋ぐか?
[目を逸らすには限界がある。迷子にならないようにという意味でいいつつも、視界の陰になるようにミツキの少し斜め前を歩いていたアスルはミツキへとそう聞く。
だが手を繋いで歩くと、本当に役柄ではない従妹みたいだなぁ。などとは思いつつ、店にたどり着くと]
荷物落としちまってな。こいつの代えようの服を一式用意してくれ。
金額はこれぐらいで。
[と替えようの服をお願いすればサイズなどを測る時間になるだろう。
ミツキ。服が決まるまでに他のものを調達してくるから、終わったら待っとけ。
[と、そんな感じで買い物をしていき、ミツキと合流後はついでに買い食いなどもする。卵や小麦粉に野菜や魚をまぜた、チヂミのようなものであった。
そして晩御飯用にと、魚のスープとパンを二人分購入した後は、再び発着所へと向かいこの島を後にするのであった*]
[湯舟の中、濡れた身体は彼に支えられて目を閉じた。
霰もない姿を晒してしまった記憶がある。彼と過ごすうちに気づけば蕩ける時間が増えた。其れは心を許しているからこそ、年上の恋人で居られない。それは、本来なら見せたくないと羞恥も同時に芽生えてしまった。それでも彼の腕のぬくもりは心地よい。
抱き締められ、甘い息を吐き出して、そうして
力を抜く。
肉体を預けきり、快感に酔うなかで
彼が名前を呼ぶのを聞いた]
……ん。
[それに応える声は力なく。
彼が気にしていることに対して、何かを口にする余力もないとばかり、身を預けたまま目を閉じるだろう。流石に少しばかり力を使い果たしてしまった。腹部には彼の熱がある。満たされているのだけが確かに分かる中で抱き上げられた身体は湯で温められ、穏やかなぬくもりに包まれた。
小さな息ととも、押し倒された洗い場の上]
…ぁ …ん
[ん。そうやな。と吐く息は熱い。
彼の指先がピースサインをするように見せるのを目に収めれば、目線をちょっと逸らし、息を飲んだ。中をこれから洗うのだと此方側に意識させるその行為に緊張が走る。こんなにも蕩けた身体の中、指が入ればどうなるか。……きっと何もかも隠せない。
けど、自分でやるとは言わず]
……やさしい…してな?
[押し倒されたまま。
彼を見上げて、足の膝をたてて願うのはそんなこと。彼が自分をいじめることはあっても痛みをとのなう行為をしないのを分かった上で、うっすらと笑みを浮かべ。力の抜けた身体を投げ出して、そんな風に意中返しに返すのだ。
叶わへんわぁ。と正当な理由を前に。
自らの肉体を預け、綺麗にしてやと甘い息を吐いた*]
武藤も泳いで良いんだよ?
[うちのお風呂はまあまあ広く、そして武藤のご実家のお風呂も同じくらいか、いやちょっと負けるほどに広かった。
今、一人暮らしで日頃はユニットバスしか使えない武藤こそ、余程に"大きなお風呂"に飢えているに違いないのに。
"オレは泳がないけど"なんて良い子な事を言ってくる武藤 に、むう、と眉間に皺を寄せる。
"良い子"と"悪い子"の選択肢が目の前にあるとき、私は半ば無意識に"悪い子"に踏み出してしまうようなところがあるのだけれど、武藤は基本、"良い子"の側を選ぶ人で。
"悪い子"も選ばなくはないのだけど、それは"柚樹と一蓮托生にした方が良いだろう"みたいな、他の理由込みであえてそちらに踏み出しているところは多分にある。
こう見えてね、武藤の方が私より、実は余程に真面目なのかもしれないな、とは。]
[でもお行儀が良いのは人の目があるところだけで、こと、私と二人きりになると途端にやたらとぐいぐい来るのが武藤ではあるのだけれど。
なんでこんな場所で聞いてくるかな?みたいな頃をしれしれと聞いてきた男は、"すげえ嬉しい" なんて良い子なお返事をしてきて、至極御機嫌だった。
御機嫌と言うなら、私もまあまあ御機嫌ではあるのだけれど、武藤の手動きとか唇の熱さとかが、なんだかもう、夜の空気を纏っていて、ここでそうなってしまうのは、とても、まずい気がして。
するりとお湯の中、逃げてしまったは良いけど、そこそこの距離がある中、つくねんと向かい合って入浴し続けるのも、それはそれでなんだか違う気はしてた。]
……………………。
[うん、くっついたら手が出る よね、知ってる。
思わず頷いてしまうけれど、そわりと触れてくる足先の感触だけではどうにも焦れったくなってしまうのも事実で。]
……ん。
["そっち行ってもいい?"の言葉に素直に頷いたら、武藤がふわりと傍らにやってきた。]
……………………。
[な、んか。
武藤が"大人しくしてる"と、それはそれで居心地が悪いものであるらしいと、私は今日初めて知ったかもしれない。
別に、沈黙が流れて気まずい仲でもないのだけど。
でも、何ていうか。]
…………むとー。
[いつだったかデートの時にしたように、触れそうな距離の武藤の肘に自分の肘を絡ませたら、武藤を驚かせてしまうだろうか。
煽ってないよ?誘っても、いない……はず、なんだけど。]
あんな、嫌な感じの偽物じゃなくて、ね。
全部が私に本当にそっくりな偽物が、居て。
そんな偽柚樹の胸だけが人並の女の子な感じだったら……、
やっぱり、そっちのが良いなとか、思わない……?
[ああもう。私、何言ってるのかな。
ふっきったつもりでいて、まだ根に持っていたんだろうか。
林檎の匂いなんかより、もしかしたらこっちの方が余程にトラウマ級だったのかもしれなくて。
意識せず、抱えた武藤の右腕を抱き締める風になってしまっていて、己のささやか極まりない胸が、武藤の腕に当たってるなんてことも、全く自覚の外だった。*]
[目覚めた時にはもう深夜だった。
辺りは完全な闇、外の星明かりもここまでは届かない。
カップを片付けようか、と考えて、楓の腕の重みに離れ難さを感じていることに気がついた。朝になってからでも構わない、と、もう一度目を閉じようとした時、ふと、唇の傷がちくりと痛んだ。内側からほんのわずかに血の味がする。今まで獲物にしてきた人々のそれと全く変わらない、ただの人の血の味だ。自分にはもっと何か悍ましいものが流れているのだろうとぼんやり思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
身体を捻ってソファに膝をつき、眠る楓と向かい合った。こうして見ると、まだあどけなさが残るようにも見える。髪を撫ぜると、耳飾りが小さな音を立てて揺れた。少しの間眺めてから、そっと唇を寄せ。]
……任せてくださいね。
[彼を傷つけたりしないという全幅の信頼を受けているというのが自分の自尊心をくすぐる。
さらけ出された極上ボディは、どれだけ食べても飽きなくて美味しそうで。
全てを受け入れるかのように膝を立てて身を任せる要。
それはまるで、獣が腹を見せて服従を示すポーズのようだ。
性交自体より、こちらの方が男という性を持つ立場からはしがたい屈辱的なポーズかもしれない。
それなのに、要はやすやすとそれをしてみせる。それこそが、自分と彼の信頼であり絆であるかのようで。
しどけなく横たわり、甘い息で自分に命じる要に湯あたりでなく、くらくらした]
大きく足、開いてくださいね。
[自分は要の背中からの曲線が特に好きで、こういう時は作業がしやすいということもあり、後ろ向きになってもらうことが多い気がする。
しかし今日はそうではなく、彼が苦しがるかもしれないけれど、身体を折り曲げてもらって、足を開かせ、その恥ずかしい箇所は全部目の前にさらけ出してもらおうと思う。
ぐでぐでになって、蕩けて、指1つ上手く動かせないような―――。
まるで人形のようになっている要で遊びたいだけ。
指で赤く膨れてしまった菊部を優しく撫でる。
もう疲れているようだから、感じやすい場所は避けてお掃除してあげよう。
ここで抱きつぶして疲れきらせるわけにはいかないのだ。
明日は明日で、要には撮影という大事な用事があるのだし。
にゅく、ぬぷっと中のお掃除をしている間、自分は真面目でおりこうさんだったと思う。
中を綺麗に洗った後は、汲んだ湯で綺麗におこを流し、今度は要の身体にシャボンを塗りつけていく。同じように自分にも]
要さんの好きなおっぱいですよ、どうですか?
[自分の胸板を彼に押しつけて、ふざけて囁いた。
2人の胸がこすれ合い、性感帯である乳首がくすぐったくて笑ってしまう。
そして、まだ硬さの残っていたそれを要の太腿の隙間に押しつけて。
彼の膝を左右からぐっと力を入れてくっつけると、その間から屹立を出し入れし始めた。
ぬぽっ、ぐぽっという艶めかしい泡がこねられる音と共に、彼の方からは恋人の雄の先端部分が見え隠れしているだろう]
……っ あ、……いいっ……!!
[要に見られているというのと、要の身体を使って自慰しているという悪戯心とで、一人でしているより格段に達するまでの時間が早い。それまでにさんざん抜いているというのに。
彼の太腿の間で熱が決壊するのは早く、でも勢いはそれまでとは違って弱まっていて、とくっ…とろっ……と要の太腿や腹、臍のあたりを白でおもらししただろうか*]
[陽の光に誘われて目覚めると同時、飢餓感が襲い来る。
いつも、目覚めの瞬間に一番強く感じるのだ。
起きている間はだんだんに感じ慣れてしまうのに。
昨日よりもまた一段階増した感覚が、“食事”の必要性を訴える。
何でも良くなってしまう前に、理性を以て食べるものを選ぶのが楓の流儀ではあるが……未だ獲物に目星がついていない。
このままなら誰を食べることになるかは火を見るより明らかだ。それが望まないことなのも。
その前にここを去れるなら、それが一番いいのかもしれないが……いつ、どうやってここから去るというのだろう]
[彼が夜中に目覚めることは一度もなく、眠っていた間の出来事にも気付かぬまま朝を迎えた。
それだけよく眠れたのは、夢を見なかったからだ。
悪夢だけでなく、良い夢も]
[そうして旅だった先、故郷より手前の小島で宿泊する。
テントをたて、火を起こし、買っていた魚のスープを温めてパンとともに食べ、水を汲んでお茶を沸かす。ミツキは買ってきた服に着替えたりしただろうか。それならばテントが役に立ったことだろう。
そうして夜を過ごす。焚火のパチパチとした音をたて周りを朱色に照らし、温もりを与えてくれる中]
なぁ、ミツキ。聞いてくれるか?
[夜のように静かに話かける]
ミツキがあった、といっていた、ミツキにそっくりな女性のことだ。
その子は俺の故郷で、巫女という役割を担っていたんだ。
巫女というのは重要な役割でな。土地を枯らさないため、とか、土地が空を飛び続けているのは巫女の力を定期的に注いでいるからだ。とか言われている。重要な存在だ。
[彼女が、ペルラがどんな島において存在だったかを淡々と語るように口にしていく]
そして巫女はこうもいわれていた。
『巫女は祈りで力を使い果たすと消えてしまう。』とな。
[視線は感情を映すことなく、群青色の瞳はミツキをみていて、それ以外を見ているかのように見えただろう。]
そうやって……自分の身を犠牲にしてでも役目を全うした彼女なら、ミツキのことをなんとかするという言葉、責任をもって―――あるいは後悔しないようにやってくれるだろう。
[だから安心しろ。というように笑みかけた後、目をそっと伏せる。]
こっからはな、愚痴だ。
[目は伏せたまま、合わせることなく、ただ静かな夜に音だけは響く。]
俺は、そんな巫女を支える守り人……いや、彼女――ペルラの恋人だったんだ。
彼女は、消えてしまう未来を想像して俺に別れを告げようとしたことがあったんだけどな。俺はそれを拒否した。
自分の好きな人が孤独になっていくなんて許せるはずもなかった。
だから彼女を愛しきった。彼女に寂しい思いをさせないように、何があっても自分は愛されたんだという実感を持ってくれたんだ……って。
彼女が消えてから、俺も……毎日自分にそう言い聞かせた。
[ペルラが寂しくならないように抱きしめた。巫女だからではなくペルラは愛されるような魅力ある女性だった。]
[感情をそぎ落としたように淡々とした口調は続く]
淋しさも悲しさもあったが、心のどこかで満足していた。
だが虚しさも感じていた。
彼女と一緒にいようという気持ち。彼女を愛した気持ちがもうどこにも向けることができなくなってしまった。。
俺自身も長い間。彼女と言う存在を糧に生きてきた。
喜びも悲しみも一緒に味わってきた。後悔せぬように全力で……そして………そして感情が燃え尽きた。
美しくみえた空、風の感触、好きだったものを前に俺は楽しんでいいのか時々わからなくなった。
でもな、まだやりそびれていたことがあった。そのために旅に出て今帰ろうとしている。俺がそれを叶えたら情熱が戻るだろうか。そうしたら……
[見上げた月は細々としており、明日には三日月になっているだろうか。少しの間続きを口にするのを憚るように言葉を止めていた]
[ぼんやりと月を見上げる。旅の恥はかき捨てだったか…まぁもうここまでいったら全部一緒だろう。止めていた言葉の続きを舌にのせる]
そうしたら……彼女を…ペルラを想って泣くことができるのだろうか…。
……それとも俺には、ペルラを思って泣くことすら贅沢な願いなのだろうか…。
[どこか醒めたような薄い笑み。別に何かを言ってほしいわけでもなく、ただ聞いてもらうだけでいい事柄であったが、ミツキは、ペルラに似ているこの子はどう聞いていただろうか。
明日も早いから寝るぞ。おやすみ。と最後にはそう声をかけたことだろう*]
[広い風呂には飢えているけど、うん、泳ぎたいから広い風呂に入りたいわけではないんだ。
泳いで良いんだよ?という柚樹の言葉には曖昧に笑って返した。
それに、柚樹の前でも全裸で泳ぐのは若干恥ずかしいというのはあるよ?
柚樹が気にせず泳ぎだすあたりはかわいいとは言えるけども。
でも目のやり場に困るのは確かなので、そんなにちゃんと観察したりはしなかった。
確かに、病室に酒持ち込んできたりとか柚樹の方が"悪い子"であることは、ままある気はする。
持ってきてもらった分を一緒に飲んだ時点でオレも"良い子"ではなかったかもしれないが。
事実、オレの方がちょっと見よりか良い子なのに。
周りから見た時に、柚樹が碌でもないのに引っかかったというような見え方はされるらしい。
昔からの"柚樹様"の親衛隊に水をぶっかけられたりとか。
柚樹の項にえぐめの歯型をつけてしまった時にそれを見た陸上部の先輩女子に苦言を呈されたり。
その他諸々、オレの言動が原因で柚樹が周りから心配されるという事態はそこそこあって。
最初の以外はオレが悪いのかもしれないが、人からどう思われるかを特に気にしたことはない。
そう考えると特に良い子でもない気がしてきたが、別に意識してそうしているわけでもなく。]
[柚樹曰くではあるがオレは良い子なので、人がいないとはいえ公共の場、こと開けた空間でそういう行為に至る方が泳ぐどころの問題ではないとはわかってはいる。
着替えをうっかり見てしまったことや風呂場で寝てたことはお互いわざとではないといっても、裸や下着姿を見たらそういう気分にはなるということはやっぱりわかってないみたいだと無邪気に泳いでるところを見て思ってはしまったのだけど。
何で昨日の夜のことを聞いたかといえば見てたら思い出したから以上の意味合いはそんなになかった。
つい触れてしまったらそういう感じになってしまうのは不可抗力なので。
赤くなって困っているところはかわいいし、見ていてちょっと楽しい、と言ったら怒られそうだから言わないにしても。
思い付きを口にするのはいつものことなのだが、柚樹は大体それに真面目に答えて─応えて─くれるので嬉しいというのはある。
“武藤がすることだから“と言うなら何しても許されるのかなとか思ってしまう。
事実、無茶振りだと思うことを言っても大体叶えてもらっているし……と、過去の諸々を思い出してしまって、顔や身体が熱くなるのを振り払おうとはした。
柚樹が逃げなければ、首筋以外にも触れてしまっていたのは確実だったから。]
[向かい合わせのままだと、どうにも据わりが悪いし、その癖、お湯の中で見えづらいとはいえ体全体が視界に入るものだから。
横並びになった方がまだ落ち着くかな、とは。
後ろから抱き抱えたり、抱きつかれたりという体勢よりは密着度も当たる部位もまだ変な意識をしなくていいものではあるし。]
んー?
[隣に並んでからしばらく、くだらない話でもいつものようにペラペラ話してればよかったのかもしれない。
微妙な沈黙が流れてしまったのは、一応心頭滅却的なことをしようとはしてたからで。
呼びかけられて、柚樹の方に顔を傾ける。
あまり下の方は見ないように意識もしたつもりだ。]
……っ、
[一緒に歩く時は手を繋ぐことが多くて、腕を組んで歩くようなことは数えるほどしかしたことはない。
そんな風な感じで腕を絡められたことに、一瞬びくりとしてしまった。
変な感じじゃなく、くっつきたいだけなのかな、とは思った、んだけど……。
胸が、当たってるんだが……?
え、わざとなの??なんで??
ぶわ、と顔が熱くなって、意識しないようにと思うほどに全神経が胸の触れている腕の一部に集中してしまう。
そんな折、ぽつぽつと呟かれた言葉に、不思議そうな顔をしてしまった。]
別に胸のサイズにこだわりはないが……、
[抱えられている右腕はそのままに、指先を伸ばすと立てた膝に向かって伸びる太腿の内側に、つ、と触れて。
なんでそこを触ったかと言われても、捕らえられた手の可動範囲が狭いので、そのまま触れられるのが其処か下腹部になるから、まだ自重してはいる。
でも、そうだな……。
見られたり触られたりするのが嫌そうだったし、最初は触ったら身体を強張らせてたけど。]
柚樹のこと抱く回数を重ねて、少しずつ慣れてきて、
最近は気持ちよさそうなとこも出てきた、この胸がオレは好きだ。
[そういう変化も含めてオレのものなんだなって思えるし、記憶の中にある光景にあるのは今の柚樹の胸だから……、と言ったら伝わるだろうか。
オレが育てた(サイズは特に育ってなくても)みたいなことがいいたい、のかな。
“とら“って呼ばれると反応してしまうのと同じで、そういう時の記憶は全部セットになっているから。]
胸でもなんでも、
オレの身体を覚えてる今の柚樹の全部がいいよ。
[此処も今は感じる場所なのと同じで、と伝えるつもりで、身体を傾けて顔を寄せれば、首筋の痕を、ちゅ、と微かなリップ音を立てて吸って。
太腿に触れていた指先を脚の付け根に向かって滑らせた。]*
[まだ言葉を交わしてなかった頃の武藤を、要領ばかり良くて軽薄なウェーイ系チャラ男だと思っていた私が、人のことはあまり言えないのだけれど。
美術館の事故での一件後、この二人が付き合い始めたという噂が広がった時、私は陸上部の人たちや高校時代から"柚樹様"呼ばわりして纏わり付いてきていた後輩だとかに随分と心配された。
苦言の中には、"曜日がわりで彼女がいるような男だよ?"という噂話まであったかな。
そんなはずないよ?武藤も私も"初めて同士"だったよ?とは、さすがに口にはしなかったものの、どうやら武藤のことをよく知らない人たちの間で、武藤は随分な悪印象を持たれていたようで。
影での素行はまあまあ悪いくせ、大人たちからは謎の好印象を貰えがちな私は、その度、「武藤の方がよっぽど"良い子"なのになあ……」と思い続けている。
貸切風呂で"そういう行為"に及ぶのが"良い子"なのかというと、それは、うん……なのだけど、私は"悪い子"なので。
そんな武藤が、何しても許されるのかな、って?
そう問われたなら考え込んでしまうかもだけど、私が本当に嫌がりそうなことは武藤もさせたがらない、したがらないだろうなと思えば、首を横に振る頻度はそう多くないような気はしているよ。]
[わざとじゃないよ?本当に。
わざとじゃないし、あと、何度武藤に口で諭され態度で示されても、私の胸ひとつでそこまで興奮してしまえるのだということを、未だどこか信じられないでいるというのもある。
頭では理解したものの、心の根っこのところで本当に納得できているわけではないから、私は頻繁に迂闊な行動をしては、武藤に「煽ってるの?」と思われてしまうことになる悪循環。
本当に心底呆れられてしまう前になんとかしたいなと思ってはいるのだけれど……己の最大のコンプレックスと強固に結びついているものだから、なかなか紐解くことが出来なくて。]
…………っ。
[太腿の内側に武藤の指が伸びるだけで、身体がひくりと震える。
そんな事だけで、先の行為を期待して身体の奥、火が点いてしまうくらいには、武藤と何度も身体を重ねてきたんだ。]
……、…………っぅ、
["武藤がすることだから、きもちいい"のは、嘘じゃない。
首筋に落とされる唇が、こんなに気持ちが良いものだとは、知らなかった。
行為の最中、痣になるほどに立てられる歯に、煽られるように達してしまうくらいの快楽が走るものだとは、想像もしていなかった。
つまり、そういうの全部、積み重ねた心と体の記憶ごと愛してるから、最初に出会ったままのこの身体でいい……この身体がいい、と?]
…………雛鳥の刷り込みかな。
[苦笑混じり、呟いてしまう。
ちょっとだけはぐらかされたような気がしないでもないけれど、武藤は本当に心から"胸のサイズにこだわりはない" と思っているのだろうし、こだわっているのはひたすらに私の側なのだろう。
武藤が気にしていないことを私一人が抱え悩んでいるのは不毛だし、武藤をずっとやきもきさせ続けてしまうのは本意ではないし。]
わ、か……った、もう、言わない……。
[声が跳ねるのは私の腕の力がいくらか緩んだのと同時、武藤の手指がきわどいところを辿り始めたから。]
あの……、武藤、お湯、汚すのは……っ。
[ここが夢の世界であろうとなかろうと、他の人も使うものを汚すのはさすがに、いかな"悪い子"でも抵抗があるので。
だめだよ、と囁きながら、でも私の身体はそんな理性的な言葉とまるで逆な風に動いていた。
するりと身体を反転させ、岩風呂の縁に寄りかかっている武藤の腿の上に座るよう、向かい合わせになって。
胸を重ねるように抱きついて、ちゅ、と唇にキスをした。]
……本当、いい男で、困る……。
[男としては大きな胸は浪漫ではあるよな、なんて言ってくれたなら、やっぱりそういうものだよねと私はがっかりしながらも、きっとどこか、安堵する気持ちも沸いたのだと思う。
なのに武藤は何度問うても不思議そうな顔で否定してきて。
むしろ、なんでそんなことを聞いてくるんだ?と言いたげに。
それはその都度、男とか女とか関係なく、"黒崎柚樹という人間が好きなんだ"と言われているようで、それが、それこそが、私がずっとほしかったものだったんだ、と気付かされることになって。
もう、本当、武藤には敵わないなあ。大好き。]
私も、武藤の全部がいい。好き。
[囁き、再び口付けた。*]
そろそろ日も高くなりはじめる頃。マテ茶を淹れて、キッチンのテーブルでひと息入れる。
煙草にも似た香りの茶を飲みながら、いつまでここにいれば良いのだろう、などと考える。どうやって来たのかも、どうすれば出られるのかもわからないこの場所は何だろう。考えても答えの出ない問いは、自分の生きてきた道に少し似ていて、ならばやはりこれは死の間際に見る夢なのだろうと、そんなことをぼんやり思う。]**
[柚樹からの最初の印象がチャラいと思ってたと言われた時は若干ショックは受けた記憶があるものの、それは仕方ないことだし言葉を交わすようになってからはそうではないのだからと気にしてなかった。
それに、仲良くなる以前も、割とよく見てくれてたらしいことを知ったのは比較的最近だけど、嬉しかったなって。
他人からの評価は殊更気にしたこともなければ、風評被害的なものの原因は事実無根ではあってもオレ起因なこともあったので。
面倒なので正さないというのもあれば、柚樹が気にしてないならまあいいかと思ってるところはある。
柚樹的にはそんなことないのにという複雑さはあるのかもしれないが。
風評があまりひどくなるようなら、柚樹の方がそう言ってくる相手にキレてしまうようなことがありそうでそれは心配ではある。
実際、後輩女子に水をぶっかけられた一件が柚樹にバレた時は、食堂という公衆の面前で柚樹が盛大に相手を怒鳴りつけたことがあって、赤裸々なことまで口走り始めたのを慌てて止め……、止められなかったから最終的には抱えてその場から退場させるという事件もあったくらいで。
柚樹と二人きりの時に“良い子“でいられている自信はあまりなかったりもするのだが、それも柚樹が気にしてないなら問題はなかった。]
[そんなだから別に柚樹がわざとでなく煽るようなことをしてきたところで呆れたりはしない、しないんだけど。
柚樹の意図と反して、触れたりなんだりはしてしまうわけで。
太腿に触れた先、肌が震える感触や唇を落とした首筋に息を飲むような反応が返ってくることにも、身体の熱が燻ってしまうのも仕方のないことだった。]
ん……、柚樹も偽物のオレがもう少しうさんくさくなかったとして、噛んだり無茶振りしたりしないだけ、とかだったらそっちのがいいと思ったりする……?
[後はなんだろ、すぐ発情したり早々に達したりしないとか?
アレのサイズ的な部分がどうあれ気にしないとは思ってるんだが。
積み重ねた記憶にこだわってしまうのは、身体のことも、それ以外も全部だから。]
不安なんだったら、何度でも教えるから。
[もう言わない、と上擦った声で告げるのに、既に熱を持ち始めている下肢で証拠も示せるのだけど、わざわざ気づかせるように身体を寄せたりしないように今は我慢した。]
お湯?うん……、わかってる……、
ッ…………、
[家の風呂と違ってお湯を汚しても流してしまえばいいわけじゃないからとは理解しているので。
湯の中でするようなことはしないように、とは頭ではわかってる。
腿の上に座ってこられて、そうならないように我慢しろというのは結構酷なこと言われてる気しかしないんだが。
重ねられた胸元も唇も全部熱くて、くら、と目眩のする感覚はのぼせたせいではないのは、触れた先から熱を持っていることからも明白だった。]
……うん、柚樹の全部が好きだし、欲しいと思ってるよ。
[こちらからも口付けを返して、薄く唇を開くと舌を差し入れる。
背中に腕を回すと、身体を引き寄せて熱を持って勃ちあがったものを腹の辺りに押し付けた。
直接触れられてもいないのに、こうなることは柚樹に触れていたからで、それは腕に押し当てられた胸のせいも大きいので。]
……あれ、使ってもいい?“挑戦券“。
今すぐ現物は出せないけど。
[絡めた舌を吸い上げて、柔く噛んでから唇を離せば、言ってる意味は伝わるだろうか。
誕生日に貰った貴重なものだけど、夢の中でも有効なのかな。
どう考えても、こんなものオレに与えてよかったのかとは今だに思うんだけど。
使わずとも叶えてもらえる可能性はあっただろうかとは思わなくもないが、外だし公共の場だしともなれば抵抗が大きそうだから。
オレの我儘でもこれを持ち出せば、柚樹の罪悪感も少なく通るのでは、なんて。
挑戦内容はそうだな、“温泉で恋人とそういうことをする“とか?]
出来ることと出来ないことがあるんだっけ……?
お湯は汚さないようには、する、けど。
[一応の努力はしようと思ってはいる。
その場合はお湯から上がったところでになるのかな。
ちらりと脱衣所から温泉までの何もない平石が張られただけのスペースを見て。
したくなって限界が来たらのつもりではあるので予約みたいなものだけど、と首筋から鎖骨、胸元に唇を下らせる。
背中を緩く撫でると腰から臀部を下って、窄まりを掠めた指先でその先の割れ目を押し上げるようにして中へと指を沈めた。]*
[辺りを見回したとき、嗅ぎ慣れた香気に似た匂いに意識を引かれた。
いつの間にかかけられていたブランケットがずり落ちたのに気付いて、拾い上げて畳み、ソファの上に置く。
ソファから少し歩いてみると、カウンターの向こう、キッチンのテーブルで何か飲んでいる彼女の姿が目に入った]
ああ、おはよう……。
椿、腹減ってないか?
減ってないなら自分で作るけど……。
先、シャワー浴びてくる。
[声をかけて、返事を聞いて、それから螺旋階段に足を向けた]
[初めて研究室で顔を合わせ、最初の講義で武藤の自己紹介を聞いた時こそ、"ウェーイ系チャラ男"と思ったけれど、ほんの数週間くらいでその印象は180度変わっていた。
同じ学部だから重なる講義もいくらかあって、出欠が誤魔化せる系のものでも彼は至極真面目に出席していることに、まず気付いた。
声が大きくてやたらと目立つというだけで、何かと漏れ聞こえてしまう会話からは人を馬鹿にしたりとか揶揄ったりというものは欠片も無くて。
ああいう人にありがちな、人を値踏みするような視線や素振りも全然、無かった。
気がついたら目で追うようになっていたし、美術館のことがある前から、気になってたし、もうきっとあの頃から、好きになっていたよ。]
[なのにあんまり誤解されてることが多いから、頭に血が上った私が爆発することもあったわけで。
あれ は、なんだっけ。"柚樹様を汚さないで"なんてたわけたことを武藤へ告げてきた後輩女子たちが居たんだっけ。
『馬鹿なの?ふわふわなその頭の中に詰まってるのはホイップクリームか何かなの?大体"汚さないで"とか私にどんだけ夢見てるのよ笑わせないでもうとっくにやってるわやりまくってるわなんならきもちいいわ』
────とか、だったかな。
武藤に負けず劣らずの声量で、そんなことをランチタイムの学食で吠えまくり。
"もうとっくに"のあたりで武藤に止められた私はドップラー効果つきの叫び声をあげながら退場するという、本人も聴衆もあまり遭遇したことのないだろう体験をしたのは昨秋のこと。
後悔なんかしてない。
武藤におかしな事を言ってくる輩が居るなら、何度だって同じことを言ってやるとは思っている。]
…………?
それはないな?
[武藤からの問いかけ には、聞き終わるなり被せ気味に返事をした。
噛んだり無茶振りしたりしない武藤。
……つまり、すごく紳士な武藤ということなんだろうか。
なんでこんなに、こんなことで火が点いてしまうのかなと思うことはあれど、別にそれを止めて欲しいとかは、ちっとも思ってないのだし。]
"この武藤"が良いし、"この武藤"じゃなかったら気付くと思うよ?
[多分だけど、私の五感全部を欺けるような武藤が居るなら、それはもう、もはやもう1人の本人みたいなものなのだろうし……いや、それでもきっと解るな?とは。
そんな会話を続けていたものだから、もっと沢山くっついたいなと思ってしまっても、仕方がないと思うんだ。]
[自分でも、するなと言いつつ密着するという、矛盾溢れた言動になっている自覚はあるけれど、でもどうしても武藤に触れたくて。
どうしよう、お湯から出るべき?いや出るべきじゃなくて、出なければ、なんだけど。
すっかり勃ち上がったものが、大きく開いた足の前、腹下を擦るように動いても、もう怯んだりとかはしなかった。
むしろ、嬉しい……なんて、思ってしまって。]
…………ぇ……?
[大きく目を見開くことになったのは、忘れていたわけではないけれど、口に出された"挑戦券"という単語。
それは、2ヶ月前に誕生日を迎えた武藤へのプレゼントの一つ。
武藤へ名前刻印つきのピアスは贈ったものの、経済的及び心理的事情で片耳分しか用意できなくて。
なにかもっとあげたいのになと悩んだ末の"肩たたき券"的な、"挑戦券"と"真実券"のセットだった。前者が2枚、後者が3枚だったっけ。
クリスマスに、武藤と"真実か挑戦か"というゲームをしたのになぞらえて、言われたことは何でもするor何でも言う、という回数券。
電車の回数券に似せた風にPCで作って、厚紙に印刷したのを渡したのだった。]
[未だに1枚も使われてはいなかった、その回数券。
────"温泉で恋人とそういうことをする"。
ひく、と喉が引き攣ったけれど、嫌とは言えなかったし、言わなかった。
嫌だと私が告げていたら、武藤はあっさり引いてくれたのだろうけど。]
……わか、った……。
[でもそれは、"武藤にそう乞われたのなら仕方がない"と私の心に逃げ道を作ってくれる、武藤の優しさでもあったのだと、私はとうに気付いていた。
武藤の視線を追ってちらりと視線を巡らせれば、屋根が突き出たスペースの端には、ちゃんとカランやシャワーもあった。2人分。
じゃあ、まあ、"中"も洗えるな……なんて思いを巡らせてしまった私は、挑戦券なんて渡されずとも、武藤とする気しかなかったよね、と、苦笑いしたくなる。
でも、だって、昨夜はあんまり平静ではない状態で繋がってしまったのだし。
私だって、ちゃんと武藤と、愛し合いたいんだよ、と。]
そうね、少し。
[答えて、シャワーに向かう楓を見送る。
先に野菜を用意しておこうか、と、待つ間に人参とブロッコリーをコンソメで軽く煮て、サニー・サイド・アップを二つ。
お腹は減っていないのかしら、と考えて、なんだかおかしくなって吹き出してしまう。その場合、喰べられるのが何かなんて火を見るよりも明らかだ。自分はそれを望んでいるのだろうか。決して、そうして欲しいわけではないけれど。]
(それならそれで、構わない)
[その思いはずっと変わらない。それで僅かな間でも平穏を得られるのなら。]
…………ぅ……っふ、
[でもここは露天な以上、声は殺さないと、と息を飲みつつ、辿る唇を背を反らしながら受け止める。
胸元に落ちてきた唇にも、もう嫌だという気持ちは欠片も沸かなかった。]
ん……っ。
[指が腰を辿れば、察したように少しだけ前傾気味になって武藤の指を受け入れる。
常にはない浮遊感の中、固い指が敏感なところを擦っていくのに、甘い吐息を漏らしながら武藤の首へとしがみついていた。
目の前には、興奮にいくらか赤く染まった武藤の耳があって。]
────とら。
[囁いた時の効果を重々承知しつつ、私は足の間の武藤の屹立にそっと指を伸ばした。
きゅ、と指先で、ごくごく軽く、握りしめて。]
したい。
…………させて?
[告げながら、はくりと耳朶を囓ったら、いや、囓らなくても、意図は正しく伝わると思う。
武藤の記憶が戻らない間、もしかしたら、こういうことをするのは、もう二度とないのかもしれないと、ほんの少し覚悟をしていた。
武藤の全部、もう一度確かめさせてよ……と、風呂の縁石に座ってもらって。
こんな明るい昼日中にこれをするのも稀なことなら、木々の葉が揺れる青空の下で……なんていうことは初めてのこと。
長閑な空気の下で愛しい人の怒張したそれを見つめるというのも気恥ずかしい心持ちだったけれど、でも躊躇なく口内に含んでいた。
相変わらず、"喉を開いて"なんていう技術は習得できていないのだけど、でも、きもちよくなってほしくて。
舌を強く押し当てながら、窄めた唇で、できるだけ奥まで武藤を招き入れた。*]
[柚樹の最初の印象はまず男だと思っていたのもあって、美術館の一件で話すようになるまでは“王子様とか呼ばれているらしいイケメンのクールガイ“ではあったのだけど。
馴れ馴れしいことと声がでかいのは事実なので、ウザいと思われてないかなとは少し心配はしてたかな。
かわいいと思うようになったのは、笑った顔を見てからだし、生まれつきそういう生き物というわけではない。
美術館に向かうバスに乗り込む前には好きだと思っていたからオレの方が先だと思っていたのに、その前から好きだと思ってくれていたことは純粋に嬉しかった。
どっちが先とかは気にしないんだけどね。
よくよく考えたら、まだ言葉を交わし始めて数時間程度で踏み込んできてくれた時点で柚樹が人のことよく見てるってことはわかることだったから、ちゃんと見てくれてたらしいことも意外ではなかった。
オレのために怒ってくれるとこもね、嬉しいと思うし、学食で爆発した時は照れてる場合じゃないのに途中までその口上を聞いてしまっていたし。
あれ以来“やりまくってるって本当?“みたいな話を振られることが多くなったのがちょっと、困ることがあるかなくらいで。
オレはどう思われてもいいんだが、柚樹のそういうとこを他人に想像されるのも嫌なのでっていう。]
……よかった。
オレと全く同じだとしても、そっちと何かあるのは嫌なので……。
[偽物のオレが客観的に見たらまともな、それこそ風評なんてないような場合でも“この武藤“が良いし、きっとわかると食い気味に答えるのに、じゃあお互い同じ気持ちなんじゃないかな、とは。
一緒にいた時間込みでお互い好きだということは嬉しいことだし、テーマパーク行った時だったかな、“会うたび、話すたび、顔見るたび、好きになってくのに、どうすればいい……?“と問いかけられたことを思い出して。
尚更に記憶が戻ってよかったなと心から思うし、今こうしていられることが幸せだと実感するのは美術館から還ってきて抱きしめた時の感覚に似ているなと思いながら、抱きついてきた身体を抱きしめ返した。]
[重なった胸元の下、体の間にある自身の熱が押し当たって擦り付けても腰が引かれる様子もなくて。
このまましたい気持ちが強くなったところで、なし崩しに挿れたりしてしまったら柚樹もいろいろ気にするかもしれない、なんて。
拒まれないだろうことも予想はしていても、この方がお互い気兼ねなく出来るんじゃないかなとは思ったから。
“真実券“は3枚あるけど“挑戦券“は2枚だけだから、ほんとに貴重ではあるのだけど、こんなところでする機会もなかなかないのだろうしと、ここぞとばかりに使ってしまった。
真実か挑戦かゲームは柚樹がものすごい弱くて、あれこれと無茶な要求をしたというのに、こんな券を作ってくれるくらいには、オレが何を言い出しても許してくれるってことなんかなと思ってしまう。
その最たるものが柚樹の両耳に開いた小さなで穴でもあるのだけど、と半ば強引に開けてしまったことを思い出して、耳に光る銀の輪を見つめた。]
……じゃあ、しよ?
[わかったと呟いて返すのに、わかりやすく笑みを浮かべる。
昨日の晩は意識も朦朧としていただろうし、一回しかしてない……、なんて。
朝から燻りを抱えたままでいたから、早々に唇や指を肌に辿らせ始める。
受け入れるようにしがみついてきた体の、浮いた腰の下、指を深めに差し入れた中を緩慢に擦って。
するなら準備しないとなと深くへと指を押し込もうとしたところで、耳元に囁かれた愛称に、ずくりと腹に擦り付けていた雄芯が熱を増すのに、思わず指を止めた。]
ぁ……、
[次いで手のひらで包まれた屹立が脈打つ感覚に小さく声を漏らす。
早々にもう挿れてしまいたいと思い始めていると、“したい“、“させて“と囁くのがそっちの意味ではないとわかったことに噛まれた耳が余計に熱くなった。]
ん、してくれる……?
[お湯から身体を上げると、ちょうど気候に寒さは感じなかった、どころか体が内側から熱いから肌寒さが心地よいくらいで。
外気に晒された下肢の熱源が涼しさを覚える前に、熱く柔らかい粘膜に包まれて、また血液が其処へと流れ込むのを感じていた。]
っ、ふ……、
[先程まで入っていたお湯より余程熱く感じる口内の中、ひく、と芯が痙攣する。
眼下にある顔を見下ろせば、開いた脚の間に途中まで竿を咥え込んでいる伏し目がちな顔が見えて。
なるべく深くまで招こうと口いっぱいに自分のものを受け入れていく表情に昂りが増してくる。]
ゆずき……、っ……やらしくて、かわい……、
[いくらか窄められた頬に手を触れて指でなぞると、頬の内側にある熱いものが意識されて。
じわりと滲み出した液を舌腹に擦り付けた。]
んっ……ぁ、……そこ……、
上手、……だよ、
[先端の太い箇所から竿の境目に這う舌だとか、深くから浅く滑らされた唇の加減に息が荒いでくる。
喉を開くとかはオレが一度だけ口走ったせいで、覚えようとしてくれているらしいのだけど、そんな必要は全くなくて。
本当にしてもらう度に上手くなってるからただでさえ耐性がない……、有り体にいえば早漏な身としては達するのは避けたいところなんだけど。]
挿れてほしくなったら、いって……
[なんて、挿れたいと此方が言い出す方が先のような気はしているのだけど、堪えるようにくしゃりと黒髪を掴むと眉を顰めた。]*
[囁きには乗せず、声にも出さず。胸の内だけでひっそりと呟く。
自分にはついぞできなかったこと。
彼にまだこの先があるのなら、たとえ絶望しかなくても、正しい道など存在しなくても、その中で一番ましな道を歩んでほしいと、そう願いながら。]**
[食べたくない相手を食べたとしても、得られるのはほんの僅かな平穏。
飢餓感という話であればひと月もしないうちに戻ってくるし、限界まで耐えるとしても3ヶ月が限度。
もう、同じことを繰り返すべきでない。
そう思っても、その次を考えるためには、目の前の飢餓にだけはどうにか対処せねばなるまい]
[いっそ、恐ろしいのを耐えて死を選ぶべきなのだろうか。
これまで何度か思い浮かべては放り捨てている考えがまた浮かび、その度についてくる理不尽さもまた覚えた。
生きてはならない種が存在するなら、なぜ、生み出されるのか。
この世に生み出される以上は、生きていいのではないか。
全ての人に生きる権利があるのと同じように、全ての動物に生きる権利があるはずで、そうなら魔物でも化物でも呪われた獣でも同じように生きていいはずではないのか。
どうすれば希望が得られるか、いくらかでも“正しい”と言える道に近づく可能性はあるのか。その答えなど出そうにないけれど、少しでもマシな道を選びたいという思いはあった。
それが純粋に楓の心の中から出でる思いなのか、彼女の祈りが届いた結果なのか、はっきりと知れる機会は無いかもしれないが]
[のんびりとした日常風景。
今を逃したら二度と得られないかもしれない稀少なもの。
楓にとっては現実逃避でしかなくとも、もう少し楽しんでいたい気持ちもあった。
今日の夜が明ける頃には、どちらからともなく元いた場所・時間へ戻ることになるだろう。楓がそのことに気付くことはないかもしれないが]**
[女にしては背が高くて男顔というだけで、さして愛想もなければコミュ強とはほど遠い自分より、武藤の方が余程に"王子様"だと思っていたよ。
人の輪の中心で屈託なく声をあげて笑っている笑顔とか、一見がさつなように見えて、その実、地味目な後輩女子とかにもマメに声をかけてチョコ菓子を配っていた姿だとか。
だからあの日初めてまともに会話して、"武藤君"とおずおずと呼びかけた自分に対して、"君とか付けなくていいのに"と言ってくれたのは、すごく嬉しかった。
"トラとかトラちゃん♡でもいいぞ"という、その難易度はあまりに高すぎたから、結局あれからずっと、今も、"武藤"呼びになってしまっているけれど。
武藤のご実家に行った時は、すごく頑張って"景虎さん"呼びしてみたものの、お互いなんとなく居心地が悪くて、ご実家を出た直後には再び"武藤"呼びに戻っていたっけ。
……で、本人が"トラとか"と言ってた割には、今、「とら」と呼びかけると挙動がおかしくなってしまうのだから、微妙に理不尽と言うか……いや、悪いのは私なんだろうな、とは。]
「そう。真実か挑戦かゲームは、じゃんけんで勝敗つけ始めたところ、私が笑えるほど弱いものだから、途中からトランプ勝負にした。それでもやっぱり弱かった。
何回連続で負けたんだっけ。5回くらい?
あんまりに負けるものだから武藤は途中、手心を加え始めて、私が「遠慮はしないで」って言い出すことになって。
正直、武藤のあの時の優しさは有り難いものではあったので、そのお礼も兼ねての誕生日にあげた券だった次第。
……なので、何を言い出しても許すよというのとは、ちょっと違う、とは思う。
とはいえ、"挑戦"で、"恋人にピアスを開けてもらう"なんて、かなり重いお題を出され、挙げ句それを承諾してしまったのだから、それを越える拒否事例なんて、そうそう生まれない気はしているよ。]
[私の"したい"と"させて"は正確に伝わったようで、武藤はすんなり縁石に腰掛けてくれた。
常ならベッドの上でする行為、こうして、椅子に座る風にしている武藤の足の間、跪いて……みたいな姿勢は、あまり取ったことがない。
ましてや今はこれ以上なく明るく、春の温かな木漏れ日がちらちらと皮膚に降ってくるような場所。]
……っ、ぅ…………ん……ッ。
[いつだっけ、武藤のって大きいよねと告げたら、目を白黒させていた。
件の"喉を開く"というのが、乞われたものの、理解できなくて。
後日、調べ調べて、辿り着いたのが、"無修正動画"というものだった。
タイトルが"咥えきれない巨根を云々"みたいなものだった記憶があるのだけど、それを見た時に私は首を傾げたのだった。武藤の方が大きいよ?って。
なかなか上手にできなくて、苦しくなってしまうのは武藤のが大きいからなのかな?と思い至り。
他にも学びのためにいくつか……いや、けっこうな数の動画を見てしまったのだけど、なるほど、"自称巨根"にはお粗末なものも相当数混ざっているものだなという知見を得ることができたのだった。]
[お互い初めてだったから、最初のうちは戸惑うこともたくさんあって。
私は痛いわ居たたまれないわで、身体の緊張もなかなか取れなかったくらい。
緊張するのはお互い様なのに、あの頃は武藤ばかりたくさん頑張らせてしまったから、いくらか慣れた今は、私も武藤にきもちよくなって貰いたいと、思ってるんだよ。]
…………っ、ん……ぅ、
[ぺろ、と舌先で切っ先に滲んだ液を舐めあげる。
口に含むままだと、疲れてあまり動けなくなってしまうから、唇と舌を雄芯に滑らせるようにしたり、はくりと上の方だけ口に含んだり。
舌腹に擦り付けられる雫も、全部飲むつもりで舌を動かし、"上手"の言葉に目を細め。]
ん…………、
と、らが……挿れたくなったら、言って……?
[だって私は武藤をイかせるつもりだもの。
先端から滲むものが、滲むところか"溢れる"くらいになってきているところで、私は状況を察して、唇と舌の動きを強くする。
ぢゅう、と、強めに吸い上げたら、武藤の腿が膝ごと跳ねて、ちょっと愉快な気持ちになった。]
……っ、イッて、いい、よ……?
[お湯は汚さない、という目標(?)がある以上、勿論、吐き出されたものは全部、飲むつもりで。
もういい、と強い口調か行動かで止められたなら不満気に顔を上げただろうけど、そうされない限りは、口中に白濁が吐き出されるまで武藤への愛撫を止めるつもりはなかった。*]
[最初からトラとかトラちゃん♡と呼ばれていたら(別に♡を付けるようなニュアンスではなくて良い)、ここまで意識することはなかったんだが。
聞き馴染んだ“武藤“って呼ばれるのも好きだし、ドキドキもする。
気が緩んだ風に“むとー“って呼ばれるのもかわいいなと思うし。
オレの家族の前での“景虎さん“は気恥ずかしさがすごくてお互いもじもじとしてしまうから、慣れるのには時間がかかりそうだけど、結婚しても多分二人の時は“武藤“って呼ぶんだろうな、とは。
“とら“って呼ばれるのだけは、あからさまに体が反応するのがどうにも居た堪れない気持ちになるものの、呼んだだけで煽ったと言われるのは柚樹的には理不尽かもしれない。
オレの方は大学ではいまだに“くっきー“とは呼んでるのだけど、そろそろ“柚樹“呼びの方が馴染みすぎて、うっかり口を滑らせたのは一度や二度じゃないからそろそろ諦めている。
“柚樹“と呼び出したのは初めてそういう雰囲気になった時だから、性行為の最中に他の呼び方をしたこともなければ、二人きりだというのに“くっきー“を連呼してくる一昨日のオレは柚樹にとっては結構つらいものがあっただろうし、体の感覚が巻き戻っていたのも仕方ないことかもしれない。]
[真実か挑戦ゲームでは無茶振りも大量にした気はするが、“恋人にピアスを開けてもらう“という身体に穴を開けさせろというのは戸惑わせたことは確かだし、あれ以上の無茶振りはそうそうない、とは思いたい。
そのカードを切ったくらいには、今の状況……“外でしたい“というのも結構な無茶振りだとは思うのだけど、柚樹が口でし始めるとは思ってはなかった。
喉を開いてなどと言ったことは正直後悔はしていて、あの時は半ば無理矢理此方が動くようなことをしてしまったから、怖い思いをさせた自覚もある。
そのことをオレが気にしないようにというのがあったのだろう、して欲しいとはオレから頼んだことはないのに、度々柚樹は自らしようとしてくれるから、その度に申し訳ない気持ちにはなるのだけど。
申し訳ない反面、気持ちはいいし興奮もするのが余計にオレの中では抵抗があるような気はしている。]
[柚樹がオレに気持ちよくなって欲しいと思ってくれてるのはわかってるし、この行為をするのが好きらしい、とも思っていて。
そんなことしなくてもいいよと思いながらも、懸命に口や舌を動かしているのを見ているとぞくぞくとした快感が背に走ることも否めなかった。]
……っ……、く……、
[唾液混じりの卑猥な水音が木々のざわめきが近い開けた空間で響いて。
部屋の照明とは違う陽の明かりの下、臨戦体勢のモノを晒していることも、眼下に跪いたような形でそれを咥え込んでる姿も現実味があまりなくて。
夢だから現実味がなくても当たり前なんだろうかというと、この類の夢は脳内だけの妄想とも違うことはもうよく知っているから。
滲んでくるものを全て取りこぼさないつもりでもあるのだろうかというくらいに、鈴口を舐め上げる舌が視界に映ると、追って溢れてくる液がそろそろ掬い上げるのも難しいくらいになってきていたと思う。]
……ッ、……挿れ、たいけど……、
[挿れたくなったら言ってと言われても。
ずっと挿れたいんだが?と思ってしまうものの、このまま達してしまいそうなのも確かだった。
このまま出したら柚樹は飲むんだろうし、お湯を汚さないつもりなら口から溢すことも出来ないだろうに。]
……っ、ぅ……、ぜんぶ、こぼさないように、できる……?
[口端に光る唾液か先走りかもわからない液を指先で拭って顎を軽く持ち上げるようにすると、艶めいて蒸気した表情に、預けている雄芯がひくりと震えて。
達する時の無防備な表情だったりは、お互いに切羽詰まっているわけでもないのに一方的に晒すのは羞恥がひどいのだけど。]
ふ……、ッ、……ゆず、き……っ、
[びく、と脚が跳ねそうになって、髪を掴んでいた指に力がこもってしまう。
どうやら吐き出すまで続けるらしいとは、張り詰めた肉茎を吸う口の力が強まって、速度が増したことにわかれば、吐精感が迫り上がってくる。]
変わっているでしょう、燻したような香りがして。
シナモン・シュガーを振っても美味しいの。
[機嫌よく答えながらパンを用意する。
軽く焼いて、バターとマーマレードを添えて。
自分の皿をつつきながら、楓の方をちらりと見やる。
不意に、弱い衝動が湧き起こった。今は無視できるほど小さいそれを、椿はそっと受け止める。昨日ほど強くはない理由はなんとなくわかる。おそらくは、もうその必要がなくなりかけているのだ。残された時間は少ない。]
ぁ……っ、やば……ッ、
……ッ、……も、……、……っ、
[ただでさえでかい声が響きそうになるのを、口元に手の甲をやって押し殺そうとして。
“もう出すから“とは言葉にはならなかったし、飲んで、とも、見せて、ともつかない言葉を飲み込んだ。
どく、と大きく雄芯が脈打つのと同時、ビリビリとした快感が走って背を震わせる。
きつく閉じそうになる瞼を薄く開くと、白んだような視界の先、柚樹の口に含まれたものがビクビクと血管を浮かせて脈動するのが見えて。
その先に吐き出された熱い飛沫を受け入れる喉が動くのに、罪悪感とも満足感ともつかないものは快楽に塗りつぶされて曖昧だった。]
……は……、
柚樹がえろくて、無理……、
[荒いだ息を整えながら、頬に触れて小さく呟く。
もう少し堪えようとは思ったのだけど、なんて。
出すつもりも飲ませるつもりもなかったんだけど、とは、とても言えそうにはなかった。
飲めた?と唇をなぞって口内に親指を差し入れれば、労うつもりで舌を緩く撫でた。]*
どうしようかしら、これから
[空はまだ十分に明るく、しかしどこか夕方の気配が滲み出してきた頃、椿はぽつりと呟いた。]
ここにずっといるのも素敵だけれど。
旅に出るのも、悪くはないわ。
どこかに、狼の国があるかもしれないし。
[冗談めかして、半ば本気で、
ありえないことと知りながら。]**
[例えばここが鍵のかかる貸切露天風呂ではなくて、混浴?と言うのだっけ、男女が誰でも一緒に入れるお風呂だったとして。
そういうところでなら武藤と一緒に入れるね?と私は素直に思ってしまうところがあるのだけれど、武藤は絶対絶対、私をそういうところへは連れていかないだろうなと思う。
まだ遠い話だけれど、夏になったら海かプールへ行こうかなんて話をちらりとした時に、トレーニング用の競技用っぽいのしか持っていないよ、ビキニみたいなの……と告げたら、隠しきれない程度には渋い顔になっていたくらいだし。
他の人が使うところを汚すのはいけないと思うものの、外で裸になるとか、外でえっちする、とか……そのあたりの禁忌は、それほどには感じていなかったのだと思う。多分。
"したくなったから"と、そんな理由で武藤のを抵抗なく口に含んでしまうくらいには。]
[正直言えば、出されたのを飲むのは美味しいと思えるものではないのだけれど、でも、私の手指や舌や唇で武藤が昂ぶっていくのを感じるのは、とても好きだと思う。
常の行為ではそこまでは聞けない苦しげな喘ぎ声とか、あまり顔を見る余裕はないものの、精悍な顔が快楽に歪んで眉を寄せている様とか。
その反応が色っぽいし、かわいいなとも思うし、這わせた舌に跳ねる肉茎の反応にも、目を細めてしまう。]
…………?……ぅ、ん……?
["挿れたいけど"?
でも、"止めて"じゃないんだな?と私は、報告承りましたとばかり、動きを止めることはせず。
"こぼさないように、できる?"の問いには、無言でこくこくと頷いていた。
どうしても口端から溢れてしまいそうになる雫を武藤の指が辿っていき、熱に浮かされたような顔で武藤を見上げる。
実際、武藤の熱とか味とか、におい、とか。
────欲しい。
武藤が、欲しい。
獣じみた欲望が、首をもたげつつあった。]
────出して、いいよ。
[出してよ、とら、と。
またうっかり口から溢れそうな雫を拭ってぺろりと舐めついで、再び武藤の顔をちろりと見上げながら、囁くように告げる。
武藤の瞳には──きっと私の瞳にも──隠しようのない情欲の色が浮かんでいるのが見て取れて、煽るように雄芯を根元から先端まで少し強めに擦り上げた。
膝や太腿の内側が、何を我慢しようとしているものなのか、ひくつくように震え始めれば、限界が近いのはこちらにも否応なしに伝わってくる。
なるべく喉の奥へと招くようにしつつ、強く吸うように促せば、熱い飛沫が叩きつけるように口中に吐き出された。]
……ッ、ふ……、……ぅ。
[二度三度と続く吐精は、もうよく知った脈動だしと、合わせるように喉をこくりと鳴らしていく。飲むのもね、いくらかは慣れてきたんだよ?]
[口中からずるりと勢いを失ったものが滑るように落ちていく。
話に聞くところによると、男の人は、一度達してしまうと続けて二度三度とできるものではないらしいのだけれど、なんでか、武藤はそうではないらしく。
勢いを失ったとは、先の張り詰めていたものに比べれば……くらいのもので、これで終わりではないよね?というのは、私と武藤の共通見解だったとは思う。]
…………えろかった?
[褒められたと思って良いんだろうかと首を傾げながら、微かに微笑む。
我慢しようとしたのをできなくさせたくらいにはきもちよかったのなら、良かった……と、笑みを一段深くした。]
ぇ?……ぁ……あ、ん、
[口中に差し入れられた指に、でも今、ちゅーするのはお勧めできないよ?とばかりに、戸惑いの視線を向けてしまう。
飲めたよ?飲んだよ?と応えるように、武藤の指先をぺろりと舐めて。]
[ええと……、これは、立ち上がって、お湯から出た方が……良い、んだろうか。
だって、立って繋がるとかじゃないと、この場所では多分……むずかしい……のだろう、し。]
お湯、出て……"続き"、する……?
[今更ながらに、ここが屋外だと改めて思ってしまって、武藤のを舐めている時よりも余程に顔を赤くしてしまったよ。*]
[シナモン・シュガーを振ると言われてもどうにも風味が想像できず、やはり彼は首を傾げるばかり。
ならば試してみるのが早かろうが、あいにく甘味をとりたい気分でなく、謎が残されたままとなった。
せっかくパンに添えてもらったマーマレードも味わわないまま、バターだけで食べていた]
椿って……あいつと二人で暮らしてた、んだっけ。
どんなところでだったんだ……?
[彼女の生活に少し興味が湧いて尋ねてみたが、答えは得られただろうか。彼に無理に聞き出す気は無かった。別の話題に変わっていっても引き戻しはしなかっただろう]
[共に食事をし、食事を終えてからもなんとなく場に留まり、取り止めもない話題をのんびりと交わしながら過ごした時間は、随分と長かったようだ。
合間に何度か茶を淹れ直してもらったこともあったかもしれないし、途中で食器を洗って片づけたりもしたかもしれないし、話す場所を移したこともあったかもしれないし、ずっとその場にい続けたのかもしれないが。
“二人暮らしの休日の一幕”
この時間だけを切り取れば、そうも思えるものだった]
[そうして昼過ぎ。これから太陽が傾いていくのだろう、けれどまだ夕暮れまで間がある頃合いになって、彼女の呟きがあった。
ずっとここにいること。
旅に出ること。
そのどちらも彼女の望みなのだろうか。
もし『一緒』を望んでくれるなら──
昨夜巡らせた思いが浮かぶ]
行くか? 一緒に。狼の国探しの旅。
[戯れのつもりで問い返し、彼女の様子を窺った。
今すぐここから旅立つのはあまりにも現実味が無かったが……。今二人で過ごしている時間が本当に夢なら、目覚めた後に彼女の元へ向かってみようか──時が過ぎる間に、そういう考えが楓の中に芽生えていた。
“狼の国”は言うなれば、椿と共に過ごしたあの遊戯の中で楓が作ろうとしたものだった。それが現実に作り得るものなのかどうか、探し求めてみるのも一興だろう。見つかっても見つからなくても、変わらないつもりの暮らしの中で罪を塗り重ねるより楽しい気がしていた]**
……私のバカ。私が1番、バカだ。
[抱き寄せられて暴れる心臓はなかなか大人しくなってくれず、丘の上を吹きぬける風に頬を冷ましてもらった。
異性に免疫がないといえばそうなのだろう。
アスルに触れられて何も意識しなかったとは言えない。
嫌ではないのは、数日間だけでもアスルを知ったおかげで、元の世界で絡んできた男性たちのような気配はなかったから。
アスルが純粋に操縦の安全を考えているのは伝わる。
ただ顔が見られなかったのは、――幼馴染に似ているから。
幼馴染に似ている彼に心臓がおかしくなるのは、自分にとっては当たり前なのだけれど、自覚するのは複雑だった。
それに似ていても違う人なのだ。
ドキドキすると自分が自分を裏切っているような気分になる。
そして同時に、そう思う自分が、何も隠しきれず、なかったことにできていないのを思い知らされた。
誤魔化せない、なにも騙せていない。]
はーい。
[手続きを終えたらしいアスルを振り返る。
滝を通り抜けた涼やかな風は顔の赤さを戻してくれたかと思いきや、自分の動揺のほうが上回ったらしい。
額に手を当てようとする仕草にぴゃっと後ずさる。
もう、なんでそう、幼馴染がするみたいなことするかな。
大丈夫平気大丈夫!と声を張り上げると、最初の警戒心とはまた違う、素直でなく懐かない猫のような距離感を保ち、アスルの後ろをついて歩いていくのだった。
ただし、それも途中まで。
肌も露わな住民たちは平和な日常を過ごしていそうだが、こちらは平常心を保とうとしても目線がとても泳ぐ。]
ダイジョウブ……。
[でも迷子の危険的には大丈夫じゃなかったので、悩んでから、アスルの服の裾を摘まませてもらうことにした。
結局歩きにくいとかなんとかで手は繋ぐことになったのだが、親戚のお兄さん――髭を剃らないままならおじさん呼びにしようか検討している――だなぁとここでは思う。
幼馴染と違う手だった。
大きさも、指の太さも、タコができている場所も違う。
ふたりとも何かを目指す手だった。]
[店に辿り着くと、手を繋ぐ時間は終わり。
アスルが店の人に手早く頼み、終わったら待っていろと言うのに、何事か唇が動きかけたけれど止めて。]
……分かった。
良い子で待ってまーす。
[そんな風に笑って頷く。
そうしてなんてことないように手を振ったのだ。
緊張で身体を硬くしながらも、店の人の手際は良く、服など一式が決まるのにそう時間はかからなかった。
少し心配していたが言葉も何故かちゃんと通じた。
兄妹かと問われたのにはゆっくりと首を振り、親戚みたいなものだと当たり障りなく答えておく。]
……。
[幼馴染になら、置いていかないで、と言っただろう。
ひとりだと心細いと我が儘言って、遠慮なく困らせて、やっぱり別行動すべきと諭されたらむうっとした顔をして頷くのだ。
相当甘やかしてもらってきたと自分でも思う。]
……でも、いつまでもそんなんじゃ、ダメだよね。
[分かっている。
だから最近の自分なら我が儘は我慢できたかもしれない。
幼馴染離れしなきゃ、とか。
兄離れしなきゃ、とか。
そういう理由ではなくて。
自覚してしまった“想い”のせいで。
幼馴染としての永遠を望めば望むほど、幼馴染として愛想を尽かされるのが怖くなってしまったのだ。
雅空兄ぃはそうしないって思っていても。
ずっと、ずっと、変わらない関係が欲しかった。**]
色々、試したわ。
辺鄙なところに暮らしてみたり、
逆に堂々と街中に入り込んだり。
私は、外には出ないでずっと隠れてた。
それでも何か、だんだん噂になってしまったりして……ひとつの場所にはそう長くはいられなかったの。
[身元を隠して暮らせる場所は、意外とあった。
街に暮らした時というのはつまり、住処を乗っ取る訳だが、その点は楓には伏せることにした。あまり気持ちのいい話ではない。]
あちこち転々として、最後にいたのは森の奥の放棄された小屋だったわ。荒れ果てていたのを少しだけ直して、なかなか住み心地は良かったの。
少しだけど野菜を作ったり、罠を仕掛けて動物を狩ったりしたけど、料理は上手くはならなかった。私にできるのは、茹でるか、煮るか、焼くかだけ。
[それは遠い昔のことのようにも思えるし、つい最近だったような気もする。ただ、懐かしい思い出ではあった。時折、血に塗れていることを除けば。]*
[柚樹と入れるのはいいんだけど、混浴風呂だったらちょっとな……とはなっていたと思う。
いや、ちょっとどころではなく渋るだろう。
そういう気分になりかねないとかではなく、それもあるけど、それ以上に他の男がいる可能性のある場所で柚樹を見られるのが嫌なので。
水着とかつけて入るにしても無理だな、とは。
プールや海はまだしも、というのはなんなんだろう。それこそ泳ぐわけでもなし、近い空間で見られるのが嫌というか。
夏になったら水遊び的なこともしたいとは思うのだけど、水着を選ぶのに何かと口を出しかねない。
今時セパレートでないものの方が珍しいのはわかるんだが。
かといってあまり可愛くない水着を着せるのもな……というような葛藤もあるので難しい。
夏になるまでの課題かもしれない。
人のいないところであれば外でするのもそんなに抵抗ないのか……、なるほど……?とは、一度了承した後は躊躇いなく動き始めたあたりで思いはした。
人に絶対見られない、且つ、野外とかはそれこそ貸切露天風呂くらいな気はするので今後に活かせるかどうかは知らない。]
[してもらうのが申し訳ないと思っていた頃もあったが、したいと言われたら素直にして欲しいと言うようになったのは最近のことだとは思う。
それでも、美味くはないだろうものを口内に出すのは抵抗があったし、途中で止めたことも何度かある。
その度にそれなり不満そうな顔はされたから、最後までしたいものなのかなというのは大義名分的な感じで。
自分のモノを口に含んで愛撫する様子を眺める視覚的な刺激と、わかりやすい直接的な刺激に昂りが増して。
吐精感の迫り上がってくる頃には、“口に出すのは悪い“という思いが、“飲んで欲しい“に飛躍する辺り、相当に快楽に、というか、柚樹との行為に弱いのだろう。]
……ん、わかった……、
[零さないように出来るかの問いかけに頷くのに、薄く笑みを浮かべる程度の余裕はあったのだけど。
吐精を促すような動きに変わってすぐ、そんな余裕はなかったし、お湯を汚さない云々はどうでも良く、与えられる快楽を追うのに必死で、その先に吐き出したものを全部受け止めてほしいという思いに変わっていった。]
[出していいと告げられるのにも、いくらかもう少し堪えようという謎の気概はあったものの、“出してよ“と乞う言葉に言い換えられるのと、何より“とら“と呼びかけられたことで限界が近づくのが早かった。]
……っ、ふ……、……っぅ……、
[呻きともつかない掠れた声が喉奥から漏れて、獣のような自分の吐息がやけにうるさく感じる。
熱で視界が眩む感覚はしても、柚樹の方を見つめた視線は逸らせないまま、一度視線を交わした先、強く擦り上げてくるのに腰が跳ねて。
達してしまったのは、昂った熱を吐き出したいと下肢が痙攣じみた挙動を始めてからすぐのことだった。
勢い良く散った飛沫を飲み下す喉の動きは、断続的な射精が収まるまで口を外されることがなかったことに、愛おしさを感じて知らず口角が上がる。]
……うん、えろかったし飲めたし褒めてるよ?
ありがと……、きもちよかった。
[残渣も然程残っていなさそうな舌をゆるゆると撫でると、応えて指を這った軟体に目を細めて指を引き抜いた。]
しないの?
[疑問系で言われた続きへの言及に首を傾げて返した言葉は、するよね?って意味しか含めていないつもりで、手を差し出してお湯から上がるように促す。
此処ではどうしたってお湯は汚してしまうからと、陽の光でいくらか温まってはいるものの冷たく感じる平された石の上を歩いて、少し先、カランやシャワーのある辺りまで柚樹の手を引いた。
石造りのひやりとした壁を背に立たせて向かい合うと、唇を重ねて壁に押し付ければ、自分の吐き出したものの味が舌に残っているのも構わずに舌を絡めて。
胸元に手を滑らせると柔く手のひらで掴むように五指を肌に押し付けた。
片手を下腹まで辿って、脚の間に指先を伸ばしかけてから、はたと手を止める。]
……ん……、前からだと無理なんだっけ?
[立ったまま片足だけ上げる体勢は特に問題なく出来るけど、そのまま挿入して動かしてしまうと足に力が入らなくなるようなことがあったのを思い出して。
やっぱ後ろからのがいいのかな、と肩に手を置いて背を此方に向けるよう促せば、後ろから抱き竦めて頸に唇を押し当てた。]
……柚樹、
[特に言わなくてもわかるだろうと頸から背中に唇を辿らせれば前傾するように無言で促して、腰から下を手のひらでなぞると割れ目へと指を挿し入れた。
つぷ、と軽く音が立つくらいに中は熱く濡れて感じて、幾度か指を出し挿れしながら背中から辿らせていた唇を腰まで落としていく。]
……声、我慢できる?
[聞かれたところでというのはあるかもしれないが、腰を此方に突き出すように促して膝をつくと、双丘を割って舌先で窄まりを押してから下方へと舌を這わせたら、しなくてもいいと言われるかもしれない。
でも、挿れてしまうと口でするのは嫌がるんだよなというのが頭にあるからもあって。
それにオレも柚樹には気持ちよくなって欲しいので。
舌を入り口へと差し入れて軽く音を立てると、奥から溢れてくる熱い液を吸った。]*
そうこうしているうちにあの人がいなくなって、最後に「できれば人として生きてくれ」なんて言い残して。
……本当にひどい人。自分がいなきゃ、私にそんなことができるなんて思っちゃいなかったくせに。
[椿は初めて片割れに不満を述べた。生きているうちに言ってやればよかった、とも思ったが、何もかも過ぎたことだ。わずかな後悔と、恨み言の混じったため息を吐いたものの、続けざまに彼に関するさまざまのことが思い出されれば、すぐに笑みを取り戻した。]
でも、私は幸せでした。
あの人は私を大事にしてくれたわ。
本当はいない方がよかったはずの私を。
[それは、まごうことなく彼女の本心だった。]*
[故郷の島には何事もなければ夕方頃にはつくだろう。
そう告げて、アスルとミツキはまた空を飛んでいた。
空を飛ぶ心地よさを直に感じるよりも懐かしさを覚えながら、珠月はどうであったか。昨日は文化の違いにショックを受けていたし…夜にも色々いってしまったし、自分もまた言葉も少なくあった。
それに優先するのは操縦だ。空を飛ぶといっても、砕けて漂う岩が点在するときもあれば、気流の影響で進路を変えねばならないこともある。
その都度、風詠みのできるアスルは早い段階から飛行機の進路をずらしながら、広い空を悠々と飛んでいく。
なお、今回は途中休憩ができる場所がないため、食事は保存食をそのまま食べることになった。]
ペルラ次第なところはあるが、早ければ今日にでも帰れるだろう。
満月、新月、半月、三日月。その月の日に力を注ぐからな。
[今回を逃せば次の機会は半月となるが、そう長く待つこともないだろう。その時はもう別の手段を探すようになるまでだ]
俺は連れていくことしかできん。よくわからん空間にいってからは自力でどうにかしなきゃならねぇんだろうから、体力は温存しとけよ。
[と、必要事項を口にした後に声が少しだけ和らげて]
…ペルラ以外を乗せることなんてなかったが、ミツキとの空の旅も悪くなかった。
[違う文化の話を聞いていたことも、飛んでいた時の彼女の初々しい反応も、どれも不快ではなく、楽しい思い出といえるものであった]
[そう話した頃に、故郷の島が見えてくる。]既に夜が近づいてくる茜色の時間である。
あれがそうだ。とミツキへと伝える。
故郷の島は外側は牧歌的なとこが多く、だが中央は工業化が進んでいるようにも見えただろう。]
あれは街灯に火をともしていっているやつだ。そういう能力があるやつが担う役割だな。
それにあの煙が一番たってるとこが俺の働いてたとこだな。
[などと軽く伝えながらも中央からは離れた位置へと飛んでいく。]
寄ってたら間に合わなくなるからな、儀式の場所まで直行でいくぞ。
[そうして中央を横切るようにして飛行機は飛び、森深き地へと進んでいく]
降りるぞ。背中にしがみつけ。
[目的地。真上から見たら広い森の中に大きな湖がある場所へとたどり着く。
今回は背中にしがみつけ。といったように発着所を待つタイミングではないため、ミツキはゆっくりと背中へいけたことだろう。
そうして水に着水して、そのまま岸のほうへとゆっくりと水面を泳ぐように飛行機は進んでいく。
目の前には木でできた小屋があり]
今日はここで夜まで時間をつぶすぞ。
[羽根を折り畳み飛行機はそのまま湖の上に留めておきながら、夜までの時間を過ごすのであった*]
[思いもよらぬ答えが返ってきた。
椿は一瞬呆けたようになって、楓の琥珀色の瞳を見つめた。頬に血が上るのがわかる。同時に、目の奥がじわりと熱を持ったように感じられた。慌てて、瞬きをして誤魔化す。]
そうね、そう。
貴方となら……いえ、でも……
[自分の時間が残り少ないであろうことを思い出す。元々ひとつのたましいであった片割れがいなくなってしまったのだ。自分の命も、じきに尽きてしまうのだろう。夢から醒めて彼と再び出会えたとしても、どれだけの間生きていられるかわからない。ことによると、夢から醒めた時にはもう——。だから、そんなことに付き合わせて良いはずがない。
しかし。]
——ええ、貴方さえ良ければ、どうか一緒に。
[最後にひとつだけ、
本当に幸せな夢が見たかった。]**
[力が抜けた身体、その奥を彼が洗おうとする。
肉体の奥、他の誰も知らない場所。其処に触れるのを許したのは1人だけ。彼以外に暴かれる事も愛される事もない。身を預けるのは信頼しているからこそ、自らさらけ出す。本来なら羞恥と屈辱が宿る恰好も、彼相手ならと考える。
其処に煽る意思がないとはいえない。
笑う唇はくらくらとする彼を逃さずにいて]
……ん、…こぅ…?
[疲れた体を動かし、彼の言われるままに脚を開く。
後ろ向きになり中を掃除してもらうのもいい。けど、力尽きて動けないというのを免罪符に霰もない姿を曝け出す。身体を折り曲げて、羞恥の滲む吐息を吐きだして、晒す其処は赤く彼に抱かれた証拠を主張する。なあ、見てやとばかりに訴える目は、彼に愛されるのを誇るように輝いて。
優しく撫でる手に後で薬塗ってや。など
気だるげな声を綴る。
明日も明日で彼と過ごすのだから、ケアも彼の仕事だとばかりの顔を覗かせて、中を掃除する音に熱くどこか夢を見るような声を落として]
……ふ……ぁ …ぁ ん
[またすぐ足りなくなる。
いやらしい雌穴をヒクつくかせながら、真面目な彼の指を力の抜けた肉体で受け止めただろう。洗い終わった頃にはくったりとして、上げていた足もおろしてしまい浴室の床でぼんやり彼を見上げていた。その身を起こされ、泡に包まれたまま彼を眺めていたが、突然の発言とともに胸板を押し付けられ少しばかり、力ないままに吹き出して]
…ふっ、あほぅ
そんな、違うやん …んっあ
[そりゃ胸は好きだけど。
それはちょっと違うやん。とくすぐったさに笑うはずが、開発された其処はすれれば、笑いの中に喘ぎが漏れてしまい。少しばかり戸惑い、口を閉じようとしたが、すぐに彼の熱を意識することになり、そちらに気をとられてしまう。
――すっかり、彼にお熱だ]
……っ!!
は…ぁ んっ ふあ
[見えるのは彼の先端。
疲労感に苛まれる身体はそれでも其れを欲しいとばかりきゅんとしてしまう。わざとそうやって見せているのだろうと分かっているのに、彼の声に、彼の熱に肉体は反応してしまい。決壊までの瞬間を熱い吐息で迎え入れ。力のはらぬままに捩り。
湯とは違う液体に濡れれば、瞬き。
漏らされた其れを指で拭い舐め]
…… …たりんかった …ん?
[堪忍な。堪忍。
またたっぷり食べてええから。とその頭を撫でて。
ぽんぽんと手で探れば、そのまま目を閉じ。]
…いっぱい、味わって
僕のこと、…要薫を たくさん
[これからもと
微笑みを携えて、腕を伸ばして
そのまま意識を少しばかり手放そう。起きたらまた煽ってほんですきやっていって抱きしめて、やる事はいっぱいや。やから、いまは彼の前、揺蕩いたいと力を抜いたまま無防備に眠りの中へ*]
[どうやら武藤は、水着着用の混浴であっても渋るレベルなのであったらしい。
「え?お風呂だよ?お風呂は水着とか着て入らないよ?」
お湯に入るまではタオルは巻くけど、お湯に入ってしまえばほとんど見えないよ?とばかり、堂々素っ裸で入る前提で混浴も歓迎レベルだったと知ったら、それはもう全力で止められたことになったのだろうな、とは。
水着についても、着る当人がほとんど拘りはないというのに、そこそここってりめに色々考えて貰っていると気付くべくもなく。
武藤にとって私の身体はすごく魅力的に映るものだということは理解したけれど。
でも世間一般的にはタオル1枚で風呂場に行っても、水着を着ていても、「男か?」という若干の奇異の目を向けられる程度のものだと思うのだけどな?
それを口にしたら、激しく武藤を脱力させてしまう気がするくらいには、武藤の思いは解っているつもりではあるものの。]
ぅ"…………、しま、す……。
["しないの?"と無邪気に問われてしまうと 、すると言いつつ照れくささに俯きがちになってしまう。
なんていうか、こう、"さあ、しますよ"という風にお湯から出るのがどうにも恥ずかしくはあって。
全身が湯から出て、心地よく乾いた外気に触れると、こんなところで私たちは何をしようとしているのかなという気にもなるし。
先までの身体を硬直させていた武藤はどこへやら、すたすたと戸惑うことなくカランのあたりまで連れて行かれて。]
……っ、ちょ、……だめ…………っ、
[だめ、だよ。
今、私の口の中、……っ。
絶対、歓迎できない味がするよ?と伝える前に舌を絡め取られて息が詰まる。
深い口づけは情事の時に交わすもので、否応無しに身体の裡、そこここに点り始めていた火が本格的に炎を上げ始めた。]
[うん、立ったまましたことは、ある。ある、けど。]
ん……、長くは保たない……かも。
[片足を上げ、残る片足を地に着けて正面から武藤を受け入れる姿勢は、したことがあるものの、さすがに長くは保たなかった。
揺さぶられ、快楽に溺れ始めると、どうしても膝が揺れてしまって、立ったままでは居られなくて。
そも、一般的な女子の筋力と身長では、そもそもその姿勢を取ることも、維持することも、それ以前、挿入すること自体身長差で難しいものだとは、私も武藤も知る由もなく。
なので、いくらか慣れてはいる(……というほどに、立ってしたことはないんだよ?本当に)後ろからの姿勢へと促されても、少しも疑問には思わなかった。
口にされずとも受け入れるように足を緩く開き、腰をいくらか突き出すようにして、縋りやすそうな場所にあった段差に手を置いて。]
[次に辿り着いたのは、この世界に文字通り落ちてきたときのような小島で、あの時のような野営の準備を手伝った。
今回も火をおこし、魚のスープの温かさにほっとする。
お茶はやっぱりほのかに甘かっただろうか。
テントの中で服も着替えた。
店の人の勧めで選んだのは、元の世界でいうとリネンのような涼しげな素材で作られたワンピースだ。
一枚布を貼り合わせたようなデザインでウエスト部分を同じ素材の紐がついていたのでリボン結びにする。
あの島の気候や文化を表すように袖もなく、丈も水に浸かりやすいように膝丈で、空よりも深い湖のような青色をしていた。]
うん、……いいよ。
[小さな島の静かな夜に焚き火の音が優しく響く。
揺れる炎を眺めていた視線を一度アスルへ向けて。
静かな口調になにか察したかのように、小さく頷いた。]
…………、
[じっと動かず、アスルの話を聞いていた。
今ばかりは語る声が幼馴染に似ていると過らない。
アスルの声は深く、静かで、重みがあった。
彼が過ごしてきた時間と想いが詰まっているようだった。
事実その通りなのだろうと思う。
恋人だった、という言葉に。
不思議な青の空間で出会った女性を思い出す。
自分と似ていて、違う色を持っていた人。
アスル、と紡いだときの声の揺らぎと。
ペルラ、と初めて音にされる抑えられた震えと。
心に迫ってくるようで息をするのが苦しい。
淡々とした口調が逆に彼の想いの強さを伝えてくる。]
[アスルが語り終える。
こちらもまた細く儚い月を見上げ、そっと息をつく。]
アスルさんも、……ペルラさんも。
とてもお互いを想っていたんだね。
……ううん、今でも、想ってるんだね。
[愛しきった、と自らに言い聞かせ。
感情が燃え尽きた、と醒めた笑みを浮かべる彼。]
……。
[立ち上がる。
焚き火越しだったアスルの元へ静かに歩み寄り、前に立った。
背中に熱い空気を感じる。でも気にしない。
青いワンピースを着た自分は彼の両肩にそっと手を置いた。]
……ぅ、く…………ッ、だ、いじょぶ……。
[声は殺すよ。もちろん。
武藤を口で愛撫している間にも、足の間には熱が満ち続けていたようで。
さして丹念に愛撫されなくとも容易に武藤の雄を受け入れられるだろうくらいには、綻んでいる己を自覚していた。
それは武藤にも伝わっていただろうから、指が離れていったところで、熱く固いものを待ち望んで私は小さく息を吐いた────のだけど。]
……ぇ?……ぁ、むと……っ!?
ぁ、ゃ……や、ぁ…………、…………っ!
[それ要らない、別に要らないよ、と、焦った声がいくらか大きくでてしまって、慌てて口を噤んだ。
あらぬところを舌先でつつかれ、地に着いた足から腰から背まで盛大に跳ね上がってしまう。
するりと落ちていく舌のぬめりに何をされているのか改めて理解して、ふるふると首を振った。]
目は閉じて。
まぁ、言うほど私とペルラさんは似てないと思うけど。
アスルさんから見ても、そうじゃない?
[むしろ声だけの方が似ている可能性すらあったが、気遣いが逆に向かう可能性には気付くことが出来ない。
アスルが目を閉じたら、そのまま彼の前に膝をついた。
座っている彼の手の上に自らの手を乗せる。
繋ぐのでも、指を絡めるのでもなく、重ね合わせる。
抱き寄せることはしない。頭を撫でることもしないで。]
贅沢な願いなんて、ばかじゃないの。
誰もそんなこと決めないよ。
アスルさんが泣きたくなったら、泣いていいの。
[こちらの声が震えかける。]
ペルラさんは、そんなこという人?
それはアスルさんが1番分かっているんでしょ。
誰よりもそばに居たんだから。
やりそびれていたことを見つけて、ひとりで旅に出て、大好きな人と過ごした場所にちゃんと帰ってこようとしている……そんなアスルさんへ、……ね、表情が想像できるはず。
[酷なことを言っているかもしれない、けれど。
大丈夫だよ、と紡ぐ声はあの日の幼馴染のように。]
ちゃんと、愛してるって言えた。
愛しきったって言えるように生きてきた。
それってすごいと思う。
ふたりとも……お互いに向きあって生きてきたんだね。
[別れの時がくるのを意識しながら、覚悟をしながら、手を繋ぎあう強さが、心を締め付けるようだった。
同時に、ひどく眩しく、羨ましくすらあった。]
[頭では解るけど。
私が武藤のを口でしたいという欲があるのと同様、武藤も私のを……と、それは同じことなのだと。
私も武藤のに対してそうだけど、武藤の側も"柚樹の味にも匂いにも興奮する"とは、直接言われたことがある。
理解はしているとはいえ、だからといって恥ずかしくないわけではなくて。
私の場合は、バナナというか、ええと、ズッキーニというか……みたいなものを舐めている風で済むのに対して、武藤の場合は、足の間に顔を埋められてしまうことになるわけで、もうその光景からして既に居たたまれない感じはする。]
の、む……とかし、ないで、いい……っ、……ぅっ……ッ!
[それでも愛撫に悦んでしまう自分はいるし、足の間、奥の奥から熱い液が滲み零れ始めてしまうし。
耳を塞ぎたくなる水音と、そこに舐め取るような響きも加われば、ますます逃げたくなりそうになる。
けど、ぐずぐずに溶けそうになるほどの快楽を感じていることは、漏れる声がどんどん甘さを増していくのと、震える足と、何よりも熱く溶けた風になっているくせ、武藤の舌や指に吸い付こうとし始めている内壁が何よりも雄弁だったろうとは思う。*]
そんな大好きな人とお別れして、……すぐに何かを楽しんだり、情熱を取り戻すのは難しいんだろうなって思う、けど。
[そこまで言いかけてから。
一時迷うように、でも、ひとつ呼吸した。]
――あのね。
ペルラさんは、ちゃんと、居たよ。
私が元の世界からここの世界に来る間の、不思議で、一面青くて……まるでアスルさんの瞳の色みたいな世界に。
幽霊になってなんかなかった。
手を握ってくれた、空色みたいな瞳で見つめてくれた。
アスルって、声にしてたよ。
……全部覚えてて、きっと、待ってるんだよ。
[巫女が消える、その意味をよく分かってはいないだろう。
でも生を全うしたのとは違うように感じるから。]
この世界に通じる道へ、私の背中を押してくれた。
きっとペルラさんが……1番帰りたかっただろうに。
[今なら感じられる。
その覚悟の強さが。]
……私には、この世界の理なんて分からない。
巫女が力を使い切ったら消えるというのも、不可思議すぎて、頭がついて行ってないところもある、けど。
アスルさんの気持ち、今も伝わるんじゃないかな。
不思議なことがそんなにおこる世界なんだもん、世界の壁なんて越えて、きっと、届いてるって私は思う。
ずっと、大好きなんでしょ?
[そこまで言って、重ねた手を離した。
アスルが醒めていない笑みを浮かべられれば良いと願った。
そうしておやすみという言葉の後、細くも儚くも確かに世界を照らした月は隠れ、夜は更けていく。**]
[一瞬、時が止まったかのように思った。
次いで彼女の頬が上気するのを見て、思わず触れようと手を伸ばす。届くかどうか考える前に。
彼女が『一緒に』と言ってくれるのなら、縋り続けた日常を捨てたとしても、生きる意味まで消え去りはしない]
森の奥……だっけ、なんて森だ……?
迎えに行く。探してでも。
[少し前に聞いたばかりの彼女の暮らしの話を思い返した。
それを尋ねてみたくなったのも、過去に訪れた場所の近くだったりはしないかと興味が湧いたからだった。
彼は元々よく旅に出る身だ、多少行き先が不確かでも冒険するようなもの。覚えのない地名かもしれないし、探し当てるのに苦労するかもしれないが、それでも彼女の元へ行きたいと思った。
“在るべき場所”が彼女の隣かどうかなんて、もっと共に時を重ねられてから考えればいいことだ]
[彼女に残された時間が少ないのかどうか、楓は思考が及んでいない。
“たましいを引き裂いた”
そう聞いてはいても、その細かな原理まで理解したわけではなかった。
元々、魔術に関する知識は疎いほうだ。
楓が唯一持ち合わせるのは魔導具の類に関する知識だが、それだって仕事に必要な範囲に特化されている。
だから彼女の“余命”のことなど、彼女自身が言い出さなければ知り得ないことだけれど。知ったところで思いは変わりはしないし、言動を翻しもしないだろう。
彼女は楓にとって、少し未来に存在していることになるようだが……その時間のずれは救いとなるだろうか]
[これから陽が傾き、落ちて、夜が更ける。
夜明けとともにこの夢は終わるだろう。
それまでの時間が共に過ごす最後となるのか、
それともその先に未来はあるのか。]**
あ、要さん、寝ちゃったかな……?
[腕を伸ばして、ぎゅっと抱きしめられて。
濡れた肌同士がくっつき、彼の熱い吐息が頬に触れる。
そして、そのまま彼は眠ってしまった。
よほど疲れたのだろう。
よほど安心しているのだろう。
自分のことを頼り切っている様はまるで無垢な子供のようで。
彼をもう一度湯舟に戻すのは起こしてしまいそうだし、無理だろう。
となれば、と湯をくみ上げれば静かに眠る彼に何度もかけて、彼の身体にかけてしまった自らの熱を洗い流す]
いつだって足りないんですよ、俺は。
[子供相手のように頭をぽんぽんとされて。
要が疲れているのが分かっていても、貪ってしまうくらいに、足りてない。
またたっぷり食べていいと言われていても、これは我慢のしどころだろう。
彼は自分を甘やかしてくれるだろうけれど、このままだと彼が風邪をひいてしまいかねないから、彼を食べるのは彼が目を覚ましてからにしよう。
指を滑らせ、彼の肌をすみずみまでチェックをしてから、彼を抱き上げて風呂を出る。
そのまま彼をベッドまで連れていって、綺麗に身体を拭いて、念のためお薬を塗ったりしてから一通り服を着せよう。
彼は服をうっとうしいと思うかもしれないけれど、まだ寝る時間には早すぎるから、目を覚ました時にすぐに活動できるように]
ご飯の支度でもしておこうかな。
[そう呟くけれど、すこしばかり眠くなってきた。
彼の隣で寝る魅力に逆らえなくて。
ちょっと一休み、とベッドで眠る彼の隣に潜り込むと、自分も目を閉じた*]
[自分の目指す最終地点は、アスルの故郷の島。
そこで彼と、そしてペルラという女性は過ごしてきたのだ。
昨夜の今日であるしアスルの口数が少ないのは気にしない。
こちらはこちらで心に渦巻く想いが、軽口も歓声も上げさせてくれず、ただただ美しく感じる景色を眺めていた。]
了解。長いようで短かったなぁ……。
[今は太陽の昇る青い空を仰ぐ。
雲間を抜けて、風に乗る感覚にも慣れてきて、ようやく今朝から手すりを掴まずにいられるようになった。
現在は腰掛けて、スカートの裾をパタパタさせている。]
月の満ち欠けに合わせてなんだね。
そういえば、ここに来た日、向こうも新月だったっけ。
[体力温存に関しては。]
実は昨夜はあんまり眠れなかったけど、今は元気。
[素直に言うと、にかっと笑ってみせる。]
……あははっ、
[悪くなかった、なんて。
きっとアスルという人らしい言い方なんだろうなぁと思う。
悪戯猫のようにまた微笑むと足を大きく揺らした。]
私も空の旅、楽しかった!
最初は自分が落ちないか怖いときもあったけど、不思議と墜落するかもなんて心配したこと一度もなかったよ。
アスルさんを信頼して良かった。
ここまで連れてきてくれて、守ってくれて、ありがとう。
[まっすぐにアスルの瞳を見つめた。]
[空が刻々と色を変えてゆく。
夕日に染め上げられる彼らの故郷はやはり美しかった。
険しい山と谷の合間の小さな集落。
石造りの家に人影と小屋に帰る山羊や羊たち。
中心地だと言われたところは全く雰囲気が違って、元の世界の工業地帯にも似た金属の色味にもくもくと煙が上っていた。
薄暗くなる街並みにひとつひとつ明かりが灯る。
手動だからこそだと、アスルの言葉で知った。]
へぇ、あそこがアスルさんの?
[目をこらして眺めれば人影などはあるのだろうか。
なんとなく大きく手を振ってみせ、夕暮れに沈む、過ぎてゆく景色たちを目に焼き付けていった。]
[茜色が濃くなり、世界の端が夜の色を覗かせる。
この空の色の変化はこの世界でも変わらないようだった。
アスルの合図に今度はちゃんと動ける。
立ち上がり、引き絞られた硬さを感じる背中に、遠慮することなくしっかりとしがみ付いた。]
わっ、水の上に降りるの?
[静かな湖に飛行機が近づけば、風に波が立ち広がっていく。
ざぁぁぁ、と音が後をついてくる感覚。
細かな飛沫が風に混ざって、アスルの背中のおかげで直接当たりにくいけれど、時に頬を撫でるのが気持ちよかった。]
ここが、目的地なんだね。
[アスルとともに飛行機を降りて湖畔へと立つ。
広い空は茜に濃い紫が混ざり合い、藍色になっていく。
夕方に空の色が変化するのは、太陽の光が大気層を通って届くまでの距離が長くなるからとかなんとか、最後の方が曖昧になっているが、前に幼馴染が教えてくれたのだ。
帰ったらもう一度聞かせてほしいな。]
ねぇ、アスルさん。
[夜まで過ごすのは、小屋の中か外か。
希望を聞いてもらえるなら外で焚き火をすることを望んだ。
最後の火おこしも任せてとワンピース姿で腕を組んで。]
お茶が飲みたいな。
[んんーと大きく伸びをして。]
今更なんだけど、もしかして何か入れてくれてた?
[初めから甘いお茶なのかと思ってたとか。
蜂蜜入りだったと知れば照れくさそうに笑って、美味しかったと伝えることだろう。*]
生憎と、楽しいっていう相手は先約がいてな。
[少し苦笑気味にいう。
愚痴った夜のことを自分からあげることも厭わなかった。
愚痴をいったのは初めてだったが、この痛みを理解できる奴が今までいなかったからだ。
だがこの娘…ペルラと似ているからではなく、ミツキが同じようにミツキの幼馴染と離れ離れになった、そんな似て非なるものの近い怖れをもつ人だから言えたのだろう。]
そりゃーよかった。
空のエスコートが下手くそだったなんて思ったままだと帰ってもらうわけにはいかなくなったしな。
[などと冗談めかしたりして笑いつつ、故郷の島にたどり着けば、簡単にその説明などをしつつ、三日月の日に儀式する地へと降り立った]
[荷物を軽く小屋へといれる。
中は簡素な作りの小屋のため特筆すべきものはなかっただろう。
そして外で過ごしたいという希望を聞いて、火おこしに気合をいれるミツキをみて、服装もこちらに馴染んだせいか本当に従妹みたいだな。なんて少し楽しく思う。]
いいけど、何の変哲もないこの島のお茶だぞ。
[向こうでいうところの玄米茶の少し苦いやつだろう。]
ばれてたか。ハチミツ入れてた。
[蜂蜜をいれるとぐっと飲みやすくなるもので、美味しそうに飲む姿は姉妹のように重なって、でもミツキはミツキで、ペルラはペルラだ。
ふふっと思い出すのではなく照れくさそうに笑うミツキを見て優しく笑い、はちみつをいれたお茶を渡す。]
[確かに、何かをやり遂げた後、他にやる気がなくなるなんてことはあるだとう。とは思える。ただどうしても虚しさでぽっかりと心に穴が空いていたが、今でも想っているといえばその通りだ。
浮気できる甲斐性じゃなかったらしい、未練たらしくずっと思えるぐらい愛されたことを幸せだと思うにはまだ遠くて――――
でも、彼女は居る。といった。
幽霊ではなくて、ちゃんと居るのだと、それに搭乗者が―――ミツキが信頼してくれているといってるのに飛行士の俺は、なんとも情けない。]
ミツキ…頼みがあるんだ。
[低く呟くような小ささではなくはっきりとした口調で]
……俺に、信頼されてくれ。
[目を向ける。どこかやる気のないような視線ではなく、強い意志を感じさせる。そんな勝気な瞳で見つめる。
ミツキは見たことがなかっただろうけど、不思議としっくりきただろうか。]
…まずなんだが、ペルラがミツキを呼び出した時だが、これを渡してもらっていいか?
[懐から出したのは、南側を向く鳥の嘴。この世界の星座が掘られたコイン。
飛行士にとってこの鳥の星座をみて方角を確認するためのものだな。というのを軽く説明して]
あいつ…どうせ消えたんだからもう無理だ…なんて頭硬いこと思ってそうだからよ。それを渡して、まだ戸惑ってるようなら自分が居た方向に押し出すなり引っ張るなりしてくれるか?
[彼女が身に着けていた真珠のイヤリングに彼女の力が宿っているならば、ずっともっていた御守りのコインに、俺の風が残っているだろう]
[混浴風呂に堂々裸で入ろうとしたらそれは全力で止めるとは思う。
お湯にタオルを入れるのはマナーが云々みたいなのはさておいて。
罷り間違ってオレのいないとこでもそんな行動に出たりしないだろうかとは心配になってくる。
風呂やプールや海にしろ、それこそ保護者の如く目を離せないと思うし、無駄に(オレとしては無駄ではないが)周囲を威嚇して回らないといけない未来が若干見えるくらいだ。
それでもデートはしたいし水着も見たいという素直な欲求には抗えないので、行ったら行ったで楽しいとはわかっているのだけど。]
[さっきまではあんなに積極的だったのに、いざお湯から上がるとなると急に恥ずかしそうになるのは何故なんだろう。
お湯に入ってたら見えてないとでも思ってないよなとズレたことを考えてしまいながらも、“します“との返事に、若干急いた風に出来そうな場所へと向かいはしてしまう。
床は割と平たいし、寝転がるようなのは抵抗あるにしても、タオルでも敷けば立たずとも出来るかもしれないなとは少し思ってはしまいつつ。
壁際で唇を重ねようとすると、戸惑った風な声の意図は察したものの、オレは気にしないのでと言葉を塞いで舌を絡めた。
自分の出したものを口にしたくはないものの、柚樹の口の中なので問題はない。
口内で唾液が混ざって青臭いような苦味も気にならなくなってくると、交わす吐息に熱いものが混じった。]
じゃあ、後ろからにしとく。
柚樹も嫌いじゃない……、好きだよね。
[“動物になったみたいで、ちょっと興奮する“だっけ、初めて立ったまま後ろからした時に言われたことをわざわざ言う必要もないのだけど。
何かと執拗に前に言ってたことを持ち出すのは確認みたいなものだから気にしなくていい。
この姿勢になるのはそれこそ風呂場くらいでしかないから、数える程度しかしてないけど。]
……っ……、あつ……、
[緩く開かれた足の間に指先を挿れると、甘く締め付けるように内壁が絡んではきても充分に濡れているのを確認して。
さして触れてもいなかったのに咥えていたせいか準備が整っている様子に、かわいいし興奮すると機嫌良く指で中を掻き混ぜて。
指を引き抜けばいくらか柚樹の体の力が抜けたように思えた。
受け入れる準備は心の方もできてそうだとはわかりながら、濡れた秘所に唇を寄せると驚いたような声が響いて。]
……っふ……、柚樹、声……、
[聞きたいけどね、一応、外なのでと窘めるように言うと、溢れた液が内腿を伝う肌を舐め上げる。
ぬるつく秘所を指で割り開くと、尖らせた舌先を開いた裂け目にねじ込んだ。]
ん……、いっぱい濡れててかわいいよ。
[“のむとかしないでいい“に対しての返事としては適切とはいえるかあやしい。
好きでやってるから気にしないでいい、とは、意図的不理解なところはあるかもしれないが。
それでも唇を寄せた先の反応からは嫌という風な様子は受け取らなかったから、押し込んだ舌で濡れた粘膜をぐる、と弧を描くように舐って吸い上げる。
甘く漏れる声に焦れたような気配を感じれば指を深くまで挿し入れて、中に吸い込まれるよう沈むのを間近で眺めると、出し挿れする動きと吸い付いてくる肉の感触に、既に固さは取り戻してはいた下肢がずくりと一層熱くなるのを感じた。]
……柚樹、もう、
[挿れていい?とは聞かなかったのは、おそらく肯定が返ってくるとは想定した上で。
挿れて欲しくなったら言って、とは少し意地悪かなと思って言わなかった。
立ち上がると臀部に手をかけて、薄い肉を割ると反り返った切っ先を濡れそぼった入口に押し当てる。]
……挿れるよ。
[ぐ、と先端の太いところまで押し込むと、ひとつ息を吐いて。
肉を割り開いた手指に力を込めると、熱杭を打ち込むように深くまで突き上げた。
浴室でする時のような反響とは違うものの、ぬるついた中を擦り上げる粘質の音に続いて濡れた肌のぶつかる音が、開けた静寂の空間に響くのがやけに不釣り合いに感じる。
妙に興奮するような感覚はあっても、羞恥が既にどこかにいっている辺り、理性は大分遠くへ行ってしまっているらしかった。]
ん……、っ……、ぁ……、
[中の熱で眩みそうになりながら息を詰めると、衝動に任せて律動を開始しそうになるのをなけなしの理性で堪えて。
液の付着していた右手の指を舌で拭ってから、柚樹の顔の方へと回すと下唇に指先をかけて軽く開かせる。]
……声、出そうになったら噛んでいいから。
[はたして歯を食いしばるのとどちらが声を殺せるかまではあまり考えておらず、舌に指腹を押し当てると、前傾して背中に唇を落とした。
先端が行き止まったままの奥をぐりぐりと捏ねるように腰を揺らせば、熱い吐息が漏れてくる口を薄く開いて肌に舌を這わせて。
腰を掴んでいた左手の方も下腹から胸元にかけて回して抱き抱えると、浅くまで引いた腰を再び深くまで突き上げた。]*
あとは、俺が引っ張りだす。
待ってるっていったなら…あまり待たせるわけにもいかないしな。
[そういう意味での待ってる。ではないかもしれない。
ただ消えるではなくそこにいるならば望みがあるならば望むのが自分だ。別れがあるかもしれない。なんて思ってもそうやって愛してきたのだ。それを愚痴ることで、教えてもらったことで、思い返した今では何もしないほうがありえなかった。]
…信じていいよな。
[自分を信頼して飛行機にのっていたミツキへと自分からも信じるからこそ託すようにミツキへと頼みごとをした*]
[歩くのを半ば放棄する甘えを無理やり押し付け、乗っかり運ばせた寝床では、距離置かれる前に首へ腕を回し]
こっちも、なあ。
[同時に唇をぐいと重ね、飯やら酒やらの味混ざる口内を弄るように舌を絡める。じゅ、と水音を立てて柔く熱い粘膜を押し当てると、ぬるい息を肌に掠めながら生気をとろりと奪っていく。
腕を緩めて口を離せば小さく笑い、重力に従って垂れる艶ある緑髪を指で掬った。口元に寄せて髪の感触を唇で確かるように遊ばせながら]
くふ、……
美味い、もーちょい、
[酔いの機嫌のままにおかわりをねだって、そのまま寝台に引き込んだ。腹を満たしてからは煙をたっぷり吸い込んだ体に鼻を押し付け、くさいとくつくつ笑って戯れて、それでも離さずに深い夜を過ごすのだ]*
[どうやら私は、プールや海に行ったら騎士の護衛よろしく武藤に保護される運命にあるらしい。
護衛されているのは、か弱い兎とか羊とかじゃなく猛獣なんだけどな?などと思ってしまう私は、武藤に言わせるときっと自覚が足りないのだろう。でも、なあ。
もちろん、武藤と一緒ではないところ、部の合宿とかでなければ海やプールに行くつもりはないし、ましてや、混浴のお風呂に入る理由なんて、一つもないし。
そのあたりの心配は無用だとは思うけれど。
いつか行こうね、武藤。
ああ、混浴じゃなく、海とかプールに。
長いこと海に行っていないから、海が良いな。]
[うん、割と思っていた。
"お湯に入ってたら見えてない"って。
あと、お湯に入っているうちは、"入浴しています"という大義名分っぽいのがあったけれど、そこからわざわざ出るということは、性行為をしますと宣言するようなもので、どうしたって気恥ずかしくはなってしまう。
まして、ここは屋外で、そよぐ柔らかな風が全身を擽るような場所なのだし。]
……ぅ"…………、うん、まあ。
["好きだよね"と確認するように言われてしまい、戸惑いながら小さく頷く。
確かに言ったよ。後ろからするの、好き。ベッドの上でも、それ以外でも。
他の誰にも屈服なんてしたくないけれど、その……動物どころか、"武藤だけの雌"になったみたいな感じがして、それに、ぞくぞくするほどの興奮を覚えてしまう。
この先の生涯、武藤以外の誰とも身体を重ねるつもりもないけれど、こんなことを許すのは、本当の本当に武藤だけだよ。]
…………っ、…………ん……、
["いっぱい濡れてて"と"かわいい"の繋がりが全く解らなくて 、そんなこと言われてもと思いながら、崩れそうに揺れる膝を、そうはならないように必死に耐える。
武藤の眼前、自分でもどんな風なのか見たこともない性器を晒すのは羞恥の極みで、なのに、貫かれるのとは違う快楽があるのも否定できなくて。
もっとしてと言わんばかりに、入口が誘うようにはくはくと開閉している自覚はあれど、全くもって、自らそうしているわけじゃない。
とろりと太腿を伝いかける体液の感覚にぞくりと身を震わせた直後、武藤の舌がそれを舐め取るのも解ってしまって、いたたまれなさに小さく首を振った。
身体を繋げることに慣れたように、いつかこの行為も、自ら足を開いて「いっぱいして?」なんて言うようになったりするんだろうか。
とてもそうは、思えないな。]
……ぁ、むと……っ、……も、
[欲しい。貫いて欲しい。
舌じゃなくてもっと固くて、熱いもので、奥まで。
乞おうとする直前、武藤の側が動いてくれていた。]
……っふ、ぅ…………っぐ、
[馴染んだ感覚が、容赦なく奥まで突き上げていく。
踵が浮いてつま先立ちのようになり、上体がかくりと下がっていこうとしてしまうのは、逃げようとしているものではなく、むしろ、もっと奥までと乞うような体勢でしかなくて。
武藤の全部が収まったところで動きが止まり、互いに小さく息を吐く。
どくどくと脈打つような感覚は、武藤のものなのか、自分の心音なのか、もうよく解らなくなっていた。]
!?……っぁ、……ぁ、ぅ……、
[え、口が開いてしまったら、むしろ声、出てしまいそうなんだけど!?と、困惑の前に、武藤の指が顎を捉えてしまうと、自分ではもうどうすることもできなくて。]
ふ、ぅ……ッ、…………ぅ、
[好き。奥をかき混ぜられるのも、強く貫かれるのも。
容赦なく、武藤以外の誰も触れたことのない最奥をこじ開けるようにされて、ごりごりとかき混ぜられれば、視界に水の膜がかかり始めた。]
[きもち、いい、と訴えるように、歯に当たる武藤の指を柔く噛みながら吐息を零す。]
んぅ……、ぃ……い……ッ、
[ぞく、と、寒気に似た快感が背筋を駆け上っていくのと同時、隧道がずくりと熱を持って動き始めるのを感じていた。
武藤はどうやら、自分早くに達してしまうことを気にしている──平均的長さがどのくらいのものなのか、もちろん私は知る由はない──らしいのだけれど、むしろ、こんな快楽、長く続いてしまう方が地獄な気がするよ?
きゅう、ぎゅう、と己の意思関係なしに武藤を搾り取ろうとするかのような蠕動が始まって、締め付ける感覚に背を震わせる。
もっと、早く、いっぱい……と、身体の底から浮き上がってくるような、急くような思いが胎内を渦巻きつつあることは、なんだか不思議な気持ちで受け止めていた。
欲しい。
武藤が、欲しい。
武藤の、子が欲しい。
沸き上がった思いの源に気がついて、見開いた目から耐えてた涙がぽろりと落ちた。]
[ そ、か。
私、多分、排卵日……。
現実で似た状況になった数ヶ月前、私は相当に酔ってもいて。
自覚がないまま、避妊具なんて要らない、武藤が欲しい、と迫ってしまったことがある。
あの時は、武藤を相当困らせた記憶ばかりで。
好きな男、強い雄との子を成したいというのは生き物としての当然の摂理かもしれないけれど、そこまで私はケダモノなのかと笑うしかない。]
っら、ぁ……っぱい、……ょ、だい……ッ!
[武藤の指が邪魔をして、言葉もままならないけれど、いっぱい欲しい、いっぱい注いで、と。
この場が夢なのを幸い、互いを隔てる薄膜の不在に満足気に目を細め、自ら腰をゆらめかせてみせた。*]
近くの村は、ここ。
ここから、ずっと北に向かうの。
[カウンターの上のメモパッドを一枚千切って、鉛筆で地名を書きつけた。彼の知る地かどうかはわからないが、少なくとも、知らない言語ではないはずだ。
大事なことは伏せたまま一瞬の希望を選んでしまったことは、きっと罪でしかない。
それは彼を更に絶望に落とすかもしれない、おそらくは間違った選択で。
許されたいとは思わない。許されていいとも思えない。最後の最後まで、正しいことは何ひとつできなかったけれど。
それでも、“そうしたかった”。]**
[周囲を威嚇してまわるのが騎士という例えが正しいかはともかく、割と普段からそんな感じではあるので。
いや、何もないのに威嚇したりしたことはそんなにない……、はずだけど。
市民プールに行ってお互い猛然と泳ぐだけみたいな光景の方が想像には易いものの、ちゃんとデート的な感じで海に行きたいのは確かだ。
山育ちだから海は行くだけでテンションが上がるので。
山は山で好きだけどね。
今のこの場所も周りは山ばかりで居心地が良いし、来られてよかったなと思ってるよ。
そんな居心地の良いところで爽やかな天気の下で爛れた行為に至ろうとするのが居た堪れないのは、わからなくもない。
記憶を失くしていた時間はほんの1日にも満たないはずなのに、長い時間こういうことも出来ていなかった気もするし、二人きりになると触れたくなってしまうのも既によく知ったことだった。]
うん……、オレも好き。
柚樹がオレのものになったみたいで興奮する。
[どんな繋がり方でも好きなのは知っているし、自分自身そうなのだけど。
柚樹を自分の所有物や雌として扱うようなそういう動物的な感覚で求めてしまうことに自己嫌悪があって、ベッドの上であっても後ろから抱くようなことはあまりしようとしなかったのは少し前までの話だ。
オレ以外には許さないのも知っているから嬉しいのもあるし、オレも柚樹以外とするつもりはこの先もない。
お互いに匂いや味が好きだとか興奮するとか、やっぱり動物みたいな気しかしないけれど、腰を突き出されて開いた脚の間に唇を寄せた先、溢れてくる蜜や雌の香りに脳が眩んだ。
意志を持っていそうに開閉する陰唇に吸い寄せられるように舌を差し入れて。
もっと深くへと誘うような内壁の動きに応えるつもりで指を押し込んでも、足りないと訴えて締め付けてくる様子に気づけば此方の雄も再び熱く張り詰めていた。
いっぱいして?とは口で言われずともそう感じていたけれど、なんて。
でも、もっと欲しいものがあるのはとうに伝わってはいたから。]
……っ、は……、柚樹……、
[先端のみを埋めた後に、一息で貫ける程度に綻んだ中は相変わらず締め上げる収縮は繰り返しても、すっかりと自身の形を覚えているように収まりが良く感じる。
口内に指を差し入れた理由は声を殺させるのには適さなかったかもしれないが、口を塞ぐのはさすがに乱暴だと思って。
それに、舌をゆるゆると撫ぜる動きをしてしまうのも愛撫には変わりないから。]
……んっ……、気持ちいい……?
なか、すげ、うごいてて、きもちい……よ、
[指に甘く歯を立てられる固い感触と、零される微かな喘ぎに応えて、深くに押し込んだ切っ先で奥をごつ、と突いては粘質の音を立てて内側を撹拌する。
抜け落ちないように腰を引くのも、体が感覚的に覚えているらしく殆ど無意識に入口付近まで滑らせて、浅くざらついた天井を擦り上げて深くを突き上げた。
次第に抽挿の速度が増せば、中の拍動も早まって精を搾るような動きに変わってくる。]
っ……いい、けど、イきそうになる、から……
[あんまり長くもたなかったらごめん、とそれに不満を溢されたことはないのだけど。
むしろ早くとねだるように蠢く内壁の挙動が常以上に性急に感じられるのは熱に浮かされているせいだろうか。
諸々の周期だとか一般的には引かれそうな部分に記憶の容量を割いているものの、所謂危険な日というものは理解していても、その時になると柚樹が常以上に乱れて求めてくる理由は理解していない。
前にそのタイミングでした時は、何とか理性を保って諌めると避妊も徹底したものの、最終的に意識が飛ぶまで抱き潰せばいいと乱暴な解決策をとったことはある。
でも、あれはひどく酔っていたせいだと思っていたのもあり。
気持ちが昂るほどに、奥まで犯して、精を注いで孕ませてしまいたいという欲求で頭がいっぱいになるのは常のことなのだけれど。
本来なら隔てるものがあるはずの中に、直接熱い胤を撒きたいという慾が殊更に擡げてくるのは本能的なものかもしれない。]
ッ……、ゆず、き……、っ
[舌を撫でていた指を口から引き抜くと、衝動に任せて両手で腰を強く掴んで荒く内壁を擦り下ろした熱杭を勢いよく奥まで打ちつける。
脳が白んで頂きが見えかければ、叩き付けるような腰の律動が速度を増すと奥を幾度も突き上げて。]
っあ……、ッ……、く……、
おく、いっぱいあげる、から……
ぜんぶ、うけとめて……、ッ……
[再び次第に体が前傾するまま、胸を背に重ねると、逃げるはずもないのはわかっているのに、繋ぎ止めるように頸に強く牙を立てた。]*
[────"柚樹がオレのものになったみたいで興奮する" 、とか。
そんなことを思われても、嬉しいと感じるわけがないし、嬉しいと思う日が来るわけないと、武藤と出会う前の私はそう信じて疑っていなかった。
なのに武藤にそう言われ思われるのは、何故だろう、たまらなく嬉しくて。
情事の時でもそうでない時も、乞われたことは極力叶えようとしてしまうのは、私は武藤のものなのだと無意識下思っているからだろうし、武藤に負けず劣らずの独占欲もある。
いつだったか、"あり得ないけれど相手が浮気したらどうする?"という話をしたことがあって。
私は、"浮気相手殺して、武藤も殺して、私も死ぬ"と思った。
武藤は、"無理矢理にでもオレしか見えないようにする"だって。
どちらもまあまあ剣呑なお話だと思うけれど、それを聞いて互いの執着心に引くどころか喜んでしまっているのだから、ある意味お似合いなのだろうな、とは。]
[最初は内臓を無理矢理広げられるような圧迫感だとか、息苦しさだとか。
かき混ぜられる鈍い痛みだとかを感じていたそこも、すっかり武藤の形を覚え、奥を満たされるだけで身体が勝手に更に奥へを受け入れるような蠕動を始めてしまう。
奥を突かれるの、すき。
よく解らないけれど、入口に近いところを擦られたりするのも。]
……んっ…………っぁ、ぁぁッ!
["気持ちいい?"の声には、声を殺しながらこくこくと頷いて、けれど、抜けかかったあたりから、ずぷりと貫くように穿たれるのには、耐えきれない嬌声がどうしても漏れてしまう。
木々の葉ずれの音に近く遠く聞こえる鳥の声、温泉が湯船に注がれる静かな水音に混じり、いかにも卑猥な粘るような水音が絶え間なく響くのにも、段々頓着できなくなりつつあった。
思えば、武藤に口を塞がれていてちょうど良かったのかもしれない。
喘ぎ声はともかく、今日の私は何を口走り始めるか、解ったものではなかったから。]
…………ん、ぅ……ッ。
[それでいいよ、とか、大丈夫だよ、とか。
"イきそうになる"と申し訳なさそうな声がする のに、それで全然構わないのに、とばかり、口で言えない分、ねだるように意図的に彼を締め付ける。
抽挿がうねる襞をかき分けるようなものになれば、自分で自分の首を絞めるようなものなのだけど。
かまいやしないとばかり、もっと、と武藤の動きに合わせ、もっと深くにまで受け入れようとするかのように、かくかくと腰を揺らしてしまった。
ここが夢の世界で本当に良かったよ。
このタイミングで現実、旅行に来ていたら、将来のこととか全部放り投げて、私を孕ませろと武藤を恫喝しかねなかったと思う。
日に幾度も行為を重ねるのが不思議ではない私たちだけれど、似たことがあったあの時、私を抱き潰すまで抱くのはさすがに大変だったと思うし。]
ぅ……ぁ、……っと、ら……とらぁ……ッ
[声を殺そうという理性はぎりぎり残ってる。
漸くに舌を犯していた武藤の指が外されて。
強く揺さぶられながら、呼びたくても呼べなかった名を幾度も呼んだ。
イく、イッちゃう、と、譫言まじりの喘ぎを零しながら、頭がまた一段かくりと落ちて、代わり、尻は突き出すように高く掲げたまま。
灼熱が奥を抉る度に、離さないとばかり内壁が絡みつき締め付ける挙動も、強く早くなるばかりの中、視界が真っ白に染まっていく。]
ぁ!……は、ぁん……ッッ!!
[頸に深く刺さる歯と、重なる鼓動と。
身体の奥の奥、どくりと爆ぜるような感覚と共に飛沫が叩きつけられるのを、私は確かに感じていた。]
[ふー、ふう、と獣の呻きに似る吐息は、きっと私だけのものではなくて。
最後の方、ろくに力が入らなくなりつつあった膝が、限界とばかりにかくりと折れたら、武藤の腕に抱き留めて貰えたかな。
でも結局のところは立っていられなくなった私は、凹凸のない艶やかな平石の上、へたりと腰を下ろしたのだった。]
…………む、とー。
[とても気持ち良かったけれど、でもこっちは寂しかった、とばかりに、両腕を広げて見せたら、願いは叶えて貰えるだろうか。*]
[メモに書かれた地名を見る。
その名に覚えはなかったが、知っている言葉なのはわかる。
狼となってから彼が向かった旅先は多岐に渡る。道中や旅先の地図を調べれば手がかりがあるかもしれない。
これまでの生活を切り上げての旅となれば、帰って即日旅立つわけにはいかないだろう。
目的地を具体的に定めるまでの間、あの地での生活を終える準備を同時に進めればいい]
[差し出してくれたメモを受け取った直後、彼女の腕を掴んで引き寄せた。
抱き締めたかったのだ。
ほんの少しの間でも、彼女を腕の中に感じたかった。
再会を望んでくれているとわかるから。
一時の戯れではないと信じられるから。
彼女はこれまで、前向きな希望を口に出さなかった。
その彼女が『一緒に』と言ってくれるのだから、その心のままの望みを叶えようとすることに迷いなどあるはずがなかった]
[人を自分のものにしたいとか、オレも考えたことはなかったよ?
自分を理解して、寄り添ってくれる誰かがいつか現れたら良いとは思っていたけど。
こんなにも強く何かに執着するような心が自分にあるとは思ったこともなかったし。
オレの口にする言葉なんて大抵が思い付きなのだから、聞かないでもいいのにと思うことは多々あっても、叶えてくれようとするのが嬉しいから、なかなか反省する機会もないくらいには、甘やかされてる自覚はある。
もし浮気したら、なんてことはあり得ないとは思いつつ、殺すとか監禁するとか、互いに随分と物騒なことを口にしても、それだけ思ってくれてるんだなと嬉しくなったし、引かれもしないことがありがたかったのだから、微笑ましい話なんじゃないかな。]
っ……、ゆずき、かわい……、
[柚樹の好きなとこは全部覚えてるから、問わなくても中の挙動や溢れてくる液でそれは伝わりはするのだけど、確認してしまうのも癖のようなもので、声を殺して頭を縦に振る様子に薄く笑んで。
耐えきれずに漏れ出した風な嬌声があがれば窘めるように舌を軽く押したけれど、堪えきれないほどの快感を拾っている様子に興奮してしまうところもあって、深くを暴いて揺さぶるような挙動を止める気にはなれずに腰を打ち付けた。
早々に達するのを堪えようとするのは無理そうだというのは、促すように締め付けてくる中と、深くへと誘導して揺らされる腰に昂りが増してしまうと理性の箍は完全にどこかへ行ってしまった気がする。
もし夢の中じゃなかったら、あの時みたいに窘めることはできたか自信はあまりない。
むしろ抱き潰したいと思ってしまうくらいだから、あの時も大変だったという感覚はなくて、直接中へと注ぎたい欲求を堪える方がつらかったくらいで。
意識がなくなったら起こすから、とまではいかなくても。]
……っん……、いっぱい呼んで……、
[幾度も名前が呼ばれるのに内壁を押し上げる質量が増すのを感じながら、胎内を全て満たしてしまいたいと深くまで幾度も突き上げる。
絶頂の兆しを伝える蠕動と、譫言めいて零される声に、限界を訴えて膨らんだ雄芯が大きく脈打って。
イッてと告げる代わり、項垂れて差し出された形になった頸に犬歯を食い込ませた。
最奥で熱が爆ぜる感覚と共、ビクビクと跳ねるように脈動する雄芯から勢いよく吐き出された精を胎内の奥の奥に注いで。
柚樹の全部を貰うから、孕んで、と薄く開いた口から脳直に溢れてしまうくらいには、思考が溶け切っていた。]
っ、ぅ……、やば……、
[さっき一回出したばかりだというのに、多量に吐き出され続ける胤が胎の中を満たしていく感覚に背を震わせる。]
……ふ………、柚樹……、
いっぱいになってるの、わかる……?
[下腹に手を伸ばすと指先でなぞる。
腹の上から中に埋まったものを辿るように指を滑らせると結合部に辿り着く途中、膨れた陰核をぐり、と指先で押して。
膝が崩れそうになるようならばそれを支えて抱き抱える腕に力を込める。
いよいよ立っていられなくなったらしい柚樹の体が崩れるように腕にかかる重みが増すのに合わせて床へとそっと下ろした。
ずる、と抜け落ちた陰茎からぼたりと白が石の上に落ちるのも気に留めずに膝をつけば、目線を合わせて広げられた両腕の間に体を寄せる。]
ん……、
[背中に腕を回すと体を引き寄せて腰に辿らせた手で尻の下から持ち上げるようにすれば、太腿の上に柚樹の脚が乗るようにしながら抱き寄せた。
顔を上げて少し上に来た顔に唇を寄せると、幾度か顎や口端に唇を付けて唇が重ねられるのを待って。
重なった唇を甘く噛んで、熱い吐息を口内に注いだ。
胸を合わせて身を寄せると、腹の間に挟まった冷めやらない熱の先端からどろ、と溢れた残渣を下腹に擦り付ける。]
柚樹……、好きだ。
愛し……、てる、よ。
[口付けの合間、言いつけない言葉に微かに笑んでみせた。
いつでもさらりと言うのは難しくても、言いたいとは思ってるんだよ、オレも。]*
[甘えてくる体重に感じるのは、言葉にするならば愛しさだ。
運ばせる気しかないその様子に、お前なあ。と笑うものの嫌がるそぶりは何一つない。そのまま担いでベッドの方へと運ぶ。
そこに乗せて自分も横になるかと思っていたら離れるのを許されず、もう一つの食事が行われた。]
……酔っとるなぁ。
[小さく笑う。表情、仕草、髪の先への口付けは酔いもあり、少し。ねだられるままもうひとつ、満足するまで飯をやった。食い終わっても上機嫌、くさいのはお互い様だろうに、と笑う。
今日はちょっと理性がない。
別に我慢する理由もない。]
天美、…
[名を呼んで、満腹の狐にもう一つおかわりをくれてやる。
朝まで離れる気がないというならば、それに応えるだけの事。*]
[突然抱き寄せられて、言葉に詰まる。
このまま黙って消えるべきだったはずなのに。ずっとそうするべきだと思っていたし、死ぬのは当然の報いだ、怖くはない。
人のように生きろ、という願いは椿にとっては呪いにも似たものだった。その言葉に縛られて、死ぬことも、生きることもできなくて、ただ蹲っていた。
本当は殺されたかったのだろう。
自分よりも強いものに。
けれども、彼はそうしなかった。
生きていてほしいと言い、そして、殺さなかった。
自分が生きていてもいい、とは、やはり思えない。
はじめから“いらないもの”であった椿には、それはどれだけ時間をかけても、経験を重ねたとしても理解できないことだ。]
(正しいかどうかが道を選ぶ理由になるのか?)
[彼の言葉を思い出す。
正しくても、間違っていても、ただ心のままに。
今の自分は、差し出されたその手を取りたい、と思った。たとえ短い間でも。その先、彼を傷つけることになったとしても。]
[自分はヒトではないと言いながら、ヒトであることに縋り続けていた。ヒトとしての規範でもって、自身を断罪しつづけてきた。その思いを捨てることはきっとできないけれど、それでも、違う道を歩いてみたい。
だから、彼女は狼の声で、囁く。]**
[名を呼んで、呼び返されて。乞うて、噛まれて。
繋がった下肢だけじゃなく、心や、触れた背や鼓動、色々全部が一つになった充足感のなか、武藤を受け止めていた。
食い込む歯の甘い痛みが脈打つ風にずっと続いていたから、"全部を貰うから"、"孕んで"という言葉 は、私の耳ではなく、頭に流れ込んできた言葉だったのかなと思ったほど。いや、それを疑問に思う余裕は無かったな?]
…………ぅ……、い、ぱい……?
……ッうぁ……ッ!?
[溶けたような頭の中は容易には動き出してくれなくて、武藤の言葉を鸚鵡返しして。
いっぱい貰った、でも……とぼんやりゆっくり考えているうちに、足の間の肉芽にいたずらな手が滑っていき、盛大に背を跳ねた。
もう既に頼りなかった膝は、それで完全に役目を放棄してしまい、私はずるずると床に座り込む。]
[だらしなく開いた足の間、白濁が石に丸い染みを広げていくのだけど、それも今はどうでも良くて。
招くまま応えてくれた武藤の腕に収まり、武藤の太腿の上に乗り上げた。
最初の頃は、重いよ?武藤とそう変わらない体格だよ?と躊躇する気持ちばかりだったのだけど、武藤はこう見えて力持ちで、驚くことに私をお姫様抱っこをしたりもする。
いや、私も武藤のこと、お姫様抱っこできると思うけどね?いつでもするけどね?
漸く視線を合わせられたことに安堵して、ふふ、と笑う。
じゃれるように私は武藤の額や目縁に、武藤からは顎や口端に唇が寄せられて、くすくす笑いながら唇を重ね合わせた。
舌を軽く触れあわせたり、唇を唇で挟むように吸い付いたり、そのまま深く吐息を溶かしたり。]
………………、
[柚樹、と 呼びかけられた声に真剣な色を拾って首を傾げれば、"好きだ"、"愛してる"と。]
["好き"を出すことすら難しくて、ぜんぶ、"かわいい"にすり替えて伝えてくる、愛しい人。
"大好き"も"愛してる"も滅多に言えないその理由を私は理解しているし、言って欲しいとねだったこともない。
言葉になんてしてくれなくても、武藤はいつだって、行動で、他の言葉で、私にたくさんの事を伝えてきてくれるもの。
あの美術館での出来事の直後、まだ病院にいて日常に戻れてもいない状況下でプロポーズじみたことを告げられていたことには、後になって気付いて早いよ、と笑ってしまったのだけれど。]
…………ん。大好き。大好き、だよ。
[この姿勢でぎゅう、と抱きつくと、私のささやかな胸が武藤の喉元あたりに押し当てられることになるんだろうか。まあいいや、とぎゅうぎゅうしてしまう。]
とら。愛してる。
[囁くように耳元に告げて、はむりと耳朶を小さく噛んだ。
記憶を失ったままでもいいと一度は思ったけど。やっぱり私は"この武藤"が良いよ。
自らの意思で踏み出し歩み寄って、私に"愛してる"と言ってくれるようになった武藤が。]
[相変わらずぴたりとお互いひっついてはいるのだけれど、下腹に当たる固いものと濡れた感覚があることには気付いていて。
そろりと片手を伸ばし、雄芯をそろりと撫でてみた。
話に聞く"賢者タイム"は、都市伝説だったのかな。それとも武藤が都市伝説級の生き物なのかな。正答を知る機会はそう訪れない気がするけれど。]
────とら。
もっとほしい。
[挿れていい?と尋ねる端から、固さを確かめ育てるように指を動かしてしまっているのだから、私も大概強引だと思うのだけど。
くちゅ、ぐじゅ、と肉茎に絡む残滓が淫靡な音を立てる中、その滑りを借りて手のひらごと擦り付けるようにして。
先端、刺激に応えてこぷりと浮かんだ水滴に満足した私は、指先でそれをすくい取って、武藤の眼前、ぺろりと舐めて見せたのだった。*]
[彼女を抱き寄せてみれば、どうしても浮かぶ思いがある。
単なる食欲とは似ていても違い、
他の人に抱いたのとも似ていても違う、
彼女にだけ抱く思い。
彼女の死を望んでいない。
殺したいとは思わない。
それなのに“食べたい”と感じる。
この思いがなんなのか、彼は未だに掴めてはいない。
けれど突き詰めずにおくことにした。
彼女が特別な存在なのは確かなことだから]
[彼女が囁く声が聴こえる。
“ここにいてほしい”
そう望まれても誰にでも応えられるわけではない。特に、人間相手なら楓の躊躇いも大きいだろう。
けれど彼女に望まれると、楓の心には素直な喜びが宿った。これから進もうとする道を認めてもらえているようで。
彼女の髪へと指を通し、ゆっくり丁寧に撫でていく。受けた言葉への、あるいは彼女への思いを表すように]
[微笑みを浮かべて静かな囁きを返し、彼女に唇を寄せた。
今度は傷つけるためでなく、唇を重ね合わせるために。
こうして穏やかに触れ合ううち、時も流れていくだろうか]**
[柚樹と体を重ねるうちに気づけば持ち上げられるくらいにはなっていたけど、重いと思ったことは特にないよ?
柚樹にお姫様抱っこされるような機会はあるんだろうか。
持ち上げてみたいと言うなら構わないけど。
触れた肌の熱さを確かめるように胸元を腹部の辺りに重ね合わせると安堵を覚えて、抱き寄せて脚の上に乗った重みもどこか懐かしく感じた。
少し上から落とされる唇に目を細めて、見上げた先に唇を触れさせると、互いの唇を甘く食んで。
全部あげるから全部貰うなんて衝動的に繋がった余韻が残る中、甘いばかりの雰囲気に若干擽ったい気持ちになる。
愛おしさが込み上げてくるのが抑えきれずに溢した言葉は、熱に浮かされて垂れ流したものとも違って、頬がじわりと熱くなるのを感じた。
行為の最中にいろいろと柚樹には恥ずかしいだろうことを言ってしまう癖、こういった言葉を上手く出せないのは自分でもどうかと思うのだけど。]
うん……、
[大好きと返されるのに照れくさいのと嬉しいので、喉の辺りに押し付けられた胸に、ぐり、と顔を押し付けて擦り寄せる。
聞こえる鼓動の音と確かに感じる柔らかさに心地良さを感じていると、不意に耳に走った甘い痺れと注がれた言葉に、心臓がひとつ大きく跳ねた。
密着した体の間にある屹立がひくりと跳ねてしまったことも、伝わっていることは明白だったけれど。]
っ……、柚樹……、
また、したくなるから……
[“愛してる“も“とら“も嬉しくはあるのだけど、今ばかりは煽ってる?とは聞けないまま、胸元に軽く唇を押し当ててから顔を上げると、下肢へ伸ばされた手に、僅かに肩を跳ねさせる。]
[挿れたいと告げる前に、“挿れていい?“と問うのに頷けば、手の伸ばされた先に視線を落とした。]
……ふ……、っ……、大きくしてくれる……?
[いくらか芯を失いかけていた雄芯が滑る指に合わせて固く張り詰めていくのに、若干の羞恥を覚えれば頬が余計に熱くなる。
充分な硬さを伴えば、跨ぐように促そうと腰に手をかけようとした……、のだけど。]
……ッ………、
[新たに滲んだ液を掬った指先を赤い舌が拭うのが視界に映ると、腰を掴んで固く勃ちあがった屹立の上に引き寄せていた。
濡れた切っ先を白い筋を零す脚の間に押し付けて腰を突き上げれば、柚樹の側からも腰が落とされたろうか。
根元まで突き刺さって肌がぶつかるのと同時、ばちゅ、と重い粘質の音が響いた。
電気が走るような刺激が背を駆け抜けるのに堪えるように背を掻き抱く。]
……あんまりえろいことされると、困る……、
[詰めていた息を吐くと、胸元に顔を押し付けて刺激の余韻が去るのを待って。
止められないかも、と小さく囁いて顔を上げれば視線を合わせて、噛みつくようなキスをした。
そのまま緩く腰を突き上げれば、重い水音が響いて深く埋まった肉茎が脈動する。
荒い息を吐きながら口内を貪ると、腰に手をかけて持ち上げると下へと押し付けるのを幾度か繰り返して。]
は……、っ……、ゆず、き……、
かお、みせて……、
[呼吸が苦しくなると唇を離せば、熱でぼやけた視界の中、瞳を覗き込んで。
腰を押し上げて奥に先端を押し付けると、上に乗せた体を前後にがくがくと揺さぶった。
目を伏せそうになるのを堪えて柚樹の顔を見つめると、手を取って指を絡める。
呼吸が荒いで快感に眉根が寄りそうになる中で、指の根元にある金属の感触に、強く手を握り締めれば、薄く笑みを浮かべた。]*
[苦笑に、冗談めかした笑みに、優しい笑み。
アスルの表情は空のように移り変わっていく。
なぁんだ、そんな顔できるんじゃん、なんてね。
アスルなりに甘やかしていてくれたのかもしれないほんのり甘いお茶で身体を内側から温めて。
頼みがあるという言葉に、一気に飲み干してコップを置いた。
強い光を放つ瞳。勝ち気な笑み。
初めて見るはずなのにアスルだとしっくりくる笑い方。
こちらの心も高揚してくるのが分かる。]
任せておいて!
[期待に応えてみせる、と。
アスルの懐に仕舞われていた大切そうなコインを受け取り、その温度を手のひらに感じながら、ぎゅっと握りしめた。]
良いじゃん。
アスルさんはそうするのが似合う感じするよ。
[こちらも強気な笑みを浮かべて。
それからアスルを応援するように柔らかに目を細めた。]
こっちだって、アスルさんを信じて此処まで来たの。
[彼の瞳をまっすぐ見据え、頷いた。
コインを握った拳を胸の前に上げたなら彼へ差し出そう。
拳同士をぶつけ合い、笑みを交わし合えるだろうか。]
[そんな時間の後。
あっ、と大事なことを思い出したかのような声を上げて。]
とてつもなく重大なことがひとつある。
[じいっとアスルの顔を見つめた。]
その髭! 剃りなさい! ほら今すぐ!
[守り人してるときもそうだったとか、ペルラさんの好みがそっちとかなら何も言わないけどね、と付け加えつつ。
格好から入るのも大事!と手を腰に当てたのだった。**]
[武藤をお姫様抱っこ?
持ち上げてみたいというよりは、持ち上げられるのは確定だしな?……なんて。
超かわいい格好をしている時に武藤をひょいと抱え上げたらけっこう愉快な絵面だよね?なんて。
そんな愉快を披露する必要……というかシチュエーションがいつどこで訪れるものなのかは皆目見当がつかないけれど。
ふわふわとそんな事を考えてしまうくらいには、私はすごく御機嫌で。
口付けたり囁いたりする合間、甘噛みするみたいなのも混ぜ込むあたり、満腹している肉食獣のじゃれあいに近いものだったかもしれない。]
…………うん。
したくさせてる。
["また、したくなる"の声 には、しれしれとそう答え。
それはもう、今は正しく意識的に煽ってるよと目を細めた。
こういう時の"とら"呼びの効果も十二分に解った上で甘く囁き、期待通りに下腹に当たるものがひくりと震えるのを望み通りと笑いながら受け止めて。
武藤と思いを通わせたばかりの頃は、好かれているのは理解しつつも、でも私を抱くとかは無理では?と本気の本気で思っていた。
足の間にあるものの有無こそ女性のものではあるけれど、それ以外、筋肉質な手足も細いとはいえない首も、女らしからぬ肩幅も。
贅肉がないのくらいが取り柄で、いや、贅肉がないからこそ触れて楽しい胸だの尻だのでは無いわけで。
武藤が、男も抱ける性癖とかならともかく、そうでなければ無理なのでは?と思っていた。]
[まさか、蓋を開けば、一晩に3度4度は少ないくらい、酷い時には5度6度……いやそれ以上の回数してしまうほどに、互いにやみつきになるとは……、だったわけだけど。
だから、伸ばした手の内側で、武藤が再び元気を取り戻すのには何の疑問も持たなかったし、ひたすら愛おしいと感じていた。
────なんなら、もう一度身体を引いて、武藤のを再びしゃぶりたいなと思ってしまったくらい、だったのだけど。
でも私も、欲しかったので。]
…………ッ!?ぁ……っ!う……、ふ、……ッ。
[ぺろ、と先走りを舐めてしまったのは武藤にとっては相当な爆弾だったようで、性急に抱き寄せられ、貫かれた。
浮いた腰のバランスを取りつつ、重力に引かれるまま、私も繋がりを深くするように身体を落とすと、身体が勝手にのけぞるほどの快感が足先から頭頂へと突き抜けていった。]
ふ……ふふ、ねらい、どおり……っ。
[えろいかなと思ってしたことだし、"止められない"も期待通り。
止めたらむしろ嫌だよと、噛みつくようなキスにはこちらも同じ風にお返しして。
あれほど恥ずかしかった重い水音も、今はもう、全部が快楽に繋がっている風な有様だった。
深くを貫かれると、どうしてものけぞるように背筋が伸びて、顔が上向きがちになってしまうのはどうしようもなくて。
深いキスの合間、息継ぎの時には自然と顎が上がってしまっていた。]
……っん……、……か、ぉ…………?
[唇を外した直後の武藤に乞われ、かお?と鸚鵡返しして。
欲に濡れた、ぎらぎらした武藤の瞳が見えて、そこに映る自分の顔も同じくらいにあさましいことになっていた。
それを嫌だと思うこともなく、奥をこれでもかと抉るように屹立を突き立てられて、快楽に顔をゆがめる。]
ぁっ……もち、いい……きもち、い、よ……とら。
[武藤の右手指が探るように薬指に触れてきたことに気付いて、目を細め、お返しとばかり、武藤の左手を持ち上げる。
一度は消えていた武藤に似合いの金の輪に口付けた後、愛おしげに頬を擦り寄せた。]
私を……っ、
好きになっ、てくれて、ありがと……、……っ。
[揺さぶられ喘ぎながらでは、ちゃんとした声にならなかったかもしれないけれど。
以前は"私を"という言葉が、"私なんかを"になっていた。
私でいいの?私なんかで良いの?とずっと思ってた。。
でももう、思わないよ。
この強引で繊細で優しい雄は、私だけのものなのだから。*]
[とうの昔に、答えは出ていたのだ。
誰に望まれなくてもいい。
せめて自分だけでもいい、
ここにいていいのだと思いたかった。
けれど、一人ではそれすら叶えることができなくて。
誰かにそばにいてもらわなければ
自分の足で立っていることさえできなくて。
たとえ残りわずかな時間であったとしても、
こんな自分に手を差し伸べてくれたひとのために
生きられるだろうか、生きていたい。
他には何も望まない。ただ、それだけを。]
おう…任せた。
[ミツキらしい勝気な笑みを浮かべてコインを受け取るミツキ。
胸の上にコインをもった拳を向けるのに対して、自分もまた拳を作り、そっと拳同士をぶつけ合い、これ以上の言葉は不要と通じ合うように笑みを交し合た。
―――のだが一つばかし通じ合っていないところがあったようだ。
重要なこと?と首を傾げ]
お、ぉお。
[ミツキに初めて気圧されたように困ったように眉を寄せる。]
独り暮らしも旅中も気にするようなことはなかったからなぁ。
[ペルラが特にとやかくはいわなかったが、すっきりしてるときのほうが嬉しそうにしていた気はする。
儀式が行われるのが今日かどうかはわからないが、用意をしようと、無精ひげを綺麗に反ったり]
そういえば、ミツキがたまにもってた長方形のやつって、なんなんだ?
[小屋ですっきりとさせて合格点をもらえば、改めて待つ間にスマホについて聞いてみたりとしながら夜が訪れるのをまった]
いくぞ、ミツキ。
[刻が満ちる。外を闇が覆い、空にのぼる三日月の月光が湖を照らす時間帯。
必要な荷物を持ったならば、ミツキをつれてもう一度飛行機へと乗った。]
いつもこの辺でペルラは儀式をやっていたからな。
[どこまで可能性があるかはわからないがやることは全てやっておきたい。
飛行機を動かして水面を滑るように湖の中央部へと向かった*]
[触れた手も、頬も、唇も、
受けた傷すらもが熱を帯びた。
何度もくちづけを求めて、かえして、
抱き合ううちに、あたたかな夜を迎える。
夜明けとともに夢は終わり、
新しい朝の始まりを迎える。
たとえその先に何もなかったとしても、
今この時のぬくもりはきっと、消えることはない。]**
[裸で抱き合って唇を食んだりとするのは、満腹している肉食獣のじゃれ合いに近いものだったにしても、肌を重ねて睦言を囁き合ううち、まだ足りないという思いが擡げていたのも確かだった。
一度の行為で連続して片手で足りない回数を求めてしまうのはあまり一般的ではないのかもしれない。
実際のところ、柚樹とした後に賢者タイムになったこともなければ、体力がもたなかったということもない。
お互いに初めてで他を知らない以上、それが当たり前のように思ってしまっているし、この先もその認識が改まる機会はなさそうではある。]
……ばか、
[“したくてさせてる“とか。
柚樹が煽ってきたせいで理性がどっかにいって止められなくなるようなことも一度や二度ではない。
知らないからなと言おうと、それを望んでいると言われてしまったら抑止力になるものなど何もなくて。
事あるごとに“私なんか“と卑屈な反応をされることに当初はやきもきしていたのだけど。
今はそんな様子も感じられないことが嬉しいのも確かで。
柚樹を抱きたいと伝えたのはあの美術館から現実に戻ってきてすぐのことだ。
その時は病室だったことや状況的にも最後まではしなかったものの、ただ抱き合っていくらか触れただけなのにオレの身体が反応することは示したというよりは伝わってしまったのだけど。]
[今は随分オレの扱いに慣れた……というか、わかりやすく反応してしまう此方に問題がある気はしつつも、求められることは嬉しいし興奮もする、ので。
それでも多少は理性的にとか、優しく抱きたいとも思ってはいるのだけど。
手のひらの中で熱が育てられるの間もなんとか堪えていたものが、追い討ちをかけられては最後の糸が切れてしまうのもいつものことだった。
性急に貫いてしまった先、大丈夫?と声をかける余裕もなく、いや、その必要がないのは“ねらいどおり“なのだと笑う顔からもわかってしまえば、体が動いてしまうことも自明の理で。]
っ……、ん……、ゆずき……、
かお、やらし……、かわいい、よ……、ッ……
[快楽に蕩けた顔をもっと見たいと、熱を孕んだ瞳を見つめて身体ごと揺さぶるように突き上げて。
気持ちいいと告げられれば、此処?とか、もっと?と、聞かずともわかっていることを、声が聞きたい、求めてほしいという欲求に駆られるままに言葉がついて出る。]
……っ……ぅ、もっときもちよくなって……、
ゆずきのえろいとこ、ぜんぶみせて、
[絡め取られた左手が持ち上がって、薬指の金色に唇が触れるのに、心臓が高鳴った。
頬を寄せる仕草に小さく笑って、「すきだよ」と呟こうとしたら“好きになってくれてありがとう“と告げられたことに、一瞬眉を下げたけれど。
でも、それがいつか告げられた意味とは違って、その前に“私なんかを“とも隠れていなければ純粋にそのままの意味だとわかったから]
……ん……だいすき、だよ……、誰より……、
ゆずきがオレを、すきになってくれて、よかった……、
[一度は拒もうとした手を取ってくれてよかったと繋いだ手を強く握り締めて、頬に添えられた左手で肌を軽く撫でる。]<del></del>
ぜんぶ、おぼえてる、から……、っ、
[柚樹のことは全部。
言ってくれたこと、してくれたこと。
些細な会話も、向けられた笑顔も。
この半年の間に数えきれないほど体を重ねたけれど、一回一回の行為も全部。
つ、と指を下へと辿らせていけば、そっと結合部に触れると赤く腫れた肉芽を指腹で押した。
此処も最初は刺激が強すぎるのか嫌がってたなって。
腰をずらして固くなった其処に恥骨が当たるようにすれば、陰核を押し潰しながら腰を揺すって。
好きなところを全部確認するように、首筋から胸元に唇を落とす。]
ちゃんと、ここに、いるよ……
ずっと……、いっしょにいる、
[繋いだ両手を引いて前後に揺すっていた腰を浮かせると、引いた腰を上方に貫くように打ち付けて。
跳ね上げた腰が落ちる度に下から突き上げると、迫り上がってくる吐精感に息を詰めた。]
[アスルにスマホのあれこれも教えてあげた。
どうにか充電が残っていたから、雅空の写真も見せたり、湖の写真を撮ってみたり、アスルが良ければ彼の写真も。
まあ世界を越えてもデータが残るかは分からないけれど。
そうして、飛行機で湖の中心部へ向かう。
深い青のワンピースに手の中にコインを握りしめて。
三日月に満天の星が踊るように瞬いている。
自分が現れたのが空中だから、きっと呼ばれるなら空だ。
そんな予感がしてずっと上を見上げていた。]
[時を忘れて彼女と抱き締め合ううちに、理解した。
彼女に抱く“食べたい”の意味を。
この夜感じたぬくもりは、心に深く刻み込まれた]*
[目覚めたのは使い慣れたベッドの中。
腕の中にあったのはカナリアの抱き枕だった]
椿……!
[思わず飛び起き、名を呼んで辺りを見回す。
簡単に目が行き届く自室の中には、当然ながら彼女の姿は無い。
目覚める前とは違い、飢えは感じなかった。
月齢は上弦の次の日ぐらいだろうか。
それだけで簡単に思い浮かぶ。目的を果たして旅から帰った翌日なのだと]
[実に呆気なく日常に戻るものだと思いながら、ベッドを出る。
急いでペンを取り、よく使うメモに書き留め、ボードに貼り付けた。彼女に見せてもらった地名を。
彼女の元へ向かいたい気持ちは少しも薄れていなかった。
共に過ごした数日間を、このまま幻にはしたくなかった。
とはいっても今すぐ出発とはいかないのが現実。
顔を洗って着替えを済ませて、朝食の支度に移った]
[トースターに食パンを放り込んでベーコンと卵を焼き、合間に豆を挽き、卵を裏返し、コーヒーを淹れる。
サニーサイドアップは好物だけれど、食べられるのは休日だけなのだ。トーストに挟んで手早く食べてしまおうと思ったら、ターンオーバーのほうが食べやすいから。
だからこれは“いつも通りの朝食”。
なのに、味気なく感じられて仕方がなかった。
こうしていつも通りの日常に戻ったかのようだったけれど、これはもう“変わらない日々の繰り返し”ではない。この日々を終わらせて、旅に出るのだから]
[この暮らしにしがみつくのをやめる。
そう思って職場に向かってみれば、妙な気楽さがあった。
もう、不安に駆られる必要は無いだろう。自分が重ねてきた罪が暴かれ、仲間や友達に誹られて殺される不安に。
ずっとそれが怖かったのだ。
それなのにこの暮らしに囚われていた。
彼らの記憶の中ではきっと、ずっと人間のままでいられる。そう思えば解放感すらあった。
辞意を伝え、途中になっていた仕事を片づけていく合間、目的地を定めるのに調べ物を繰り返した。全ての仕事を終えて最後の給金を受け取るのと、彼女が近くと言った村を地図上に見つけたのとは同じ頃だった]
[その村へたどり着くまでには、夢から覚めた後それなりの月日が経ってしまったけれど。
果たして彼は彼女の時間に追いついただろうか、
それとも追い越してしまっただろうか]
……?
[誰かに呼ばれた気がして。
確認するようにアスルを振り返り、目を見合わせる。
アスルは何か力を感じていたりするのだろうか。
自分にはまだよく分からない。
ただ、何か空気が変わっている気がする。
思わずキョロキョロと見回そうとしたとき――。]
……!!!
[彼の声が、した。確かに聞こえた。
聞き間違えるはずがなかった。
ずっと待ち望んで、いつも耳にして、応えてきた呼び声。
自分の心臓はとても正直だから、大きく跳ねて、速いリズムを刻んで、涼しい湖の上なのに頬が淡く染まる。]
────ふ、ふふっ
[平常時にはまず言うことのない、"ばか" なんて悪態ですら、なんだかとても愛おしくて。
"知らないからな"も、何度かは言われたことがある。知らないも何も、先の事は覚悟してるというか、武藤が本当の本当に私が嫌がることはしないと信じているから、何をされようと、何を望まれようと、受け入れるつもりでいるし。
煽った通りに、少し乱暴なくらいに深く穿たれ、まるで喉元まで灼熱が貫いてきたような感覚に翻弄されても、それでも私は笑っていた。]
とらも……っ、
ぎらぎら、してる……、ん……えろい……、
[飲み込んでいるのは私の側なのに、でも、武藤を食らっているような気持ちも、どこかあって。
自分が何を口走っているのかもそろそろ定かでないままに、「もっと、奥……っ」とか、「そこ、好き」とか、ぽろぽろと言葉を零し続けてたように思う。]
―――― 雅空 ッ!!
[声がした方へ、手を伸ばした。
瞬間、湖面にぶわりと波紋が広がって飛行機を揺らす。
その回りを星が散るように光が満ちていく。]
……も、ぜん、ぶ…………見せてるっ……のに……?
["ぜんぶみせて"と言われても、もう全部、見せてる。何もかも。
弱いところも、だめなところも。
こんな風なことして、呆れられても仕方がないなと思うようなことも。
それでも武藤は私のことを嫌いにはならないと言い切って、それは私も同じことだから。
十字架とか祭壇とか祝詞とか賛美歌とか?
そんなものは何もないどころか、下肢は見ちゃいられないほどにぐちゃぐちゃで。
なのに、まるで誓いの儀式のように、互いの指輪を確かめては口付けて。]
…………ん……、
[誰より好きだよ、の声に応えようと思ったけど、なんだか、胸がいっぱいになってしまった。]
ッ!?きゃっ……っ、ぁっ!
[声、出さないようにって、言ってたのは、何処の誰だったのかなあ?
一番に敏感なところを探られ触れられ、膝がびくりと激しく揺れた。
直前、別の理由で浮かびかけていた涙もそのままで、涙目で睨めつけてしまうけれど、それは"きもちいい"の裏返しでもあって。]
…………ば、かと、ら……ぁ……っ。
[ほんの少しの意趣返しも含みながら"ばか"と返し、けれど溶けきった胎内はもう限界もすぐそこに迫っていた。]
あ……っ、ぃ、く……っちゃ、う……ッ。
[もっとしたいのに。もっと繋がってたいのに。
でも、膝とかあそことか、もう色々と、限界で。]
[視界も脳裏も光に包まれるような絶頂は、今度は、今日の青空みたいな色をしていた。
昼日中の鮮やかな陽の光が目の裏にきらきらと輝いて、ああ、武藤の色だ────って、思ったよ。*]
……ま、また私消えるの!?
[気付いたら手足の先が透けてきている。
向こうの世界から引きずり込まれたときのように唐突でないだけマシなのかもしれないが、慌ててしまうものだ。
アスルから見たら見覚えがあるのかもしれない。
湖の中にいた巫女は、光が散るように消えていったのだ。]
ああ、もう、こういうのって慌ただしいんだからっ
[くるりとアスルを振り返る。
彼はどんな表情をしていただろうか。]
じゃあね、アスルさん!
いっぱいありがとう!
ええっと、前髪はもう少し短い方が、その綺麗な瞳がよく見えて良いと思うよ! 眼鏡よりマシだけどね!
[この人にはお幸せに、なんて言葉わざわざいらないか。
アスルは、アスルが愛する人とともに、何があろうと幸せを掴み取ろうとするだろうから。
来たときと同じくらい騒々しく、唐突に。
コインを握った手をグーのまま振って。
別世界からの旅人は、煌めきとともに消えていった。*]
また此処で会えたわね、ミツキ。
[一面青の世界。
現れた自分とよく似た少女の手を両手で握りしめた。]
あなたをずーっと待ってる人が居るわ。
彼が呼んでる……ミツキになら声が消えるでしょう?
きっと、道しるべも見えるはず。
[ミツキから片手を離すと、背に当てて。
この世界に長居してはダメよと導いていく。]
[森の深くに、放棄され忘れられた小屋がある。
誰のものかもわからない、地元の人間すら滅多に近づかないその小屋で、一人の女がひっそりと人目を避けて生きていた。もう長いこと悪夢に浸されたまま部屋の隅で壁に凭れ身じろぎもしなかった女は、僅かな希望に辛うじて命を繋がれた。
女の瞼が微かに震えたその時、どこかで彼女を呼ぶ声がした。返事をしようにも、声の出し方が思い出せない。彼女は鉛のように重い身体を引き摺って、戸口へと這っていく。
白いマントを泥と埃に塗れさせながら、開け放たれたままの扉を掴んで、ようやく身体を起こし、外へと踏み出した。辺りは一面に草むしていて、彼女の姿は容易には見つかるまい。]
[彼女はようやく“声”を絞り出し、掠れた声で叫び続ける。この世でたった一人、共に在りたいと願う彼に再び出会えるその瞬間まで。]**
あ、……ペルラ、さん。
[自分はもうお姉さんの名前を知っている。
アスルとの関係も知っていた。
握られた手が温かい。やっぱり彼女は、生きている。]
ありがとう……!
私をこんなに帰そうとしてくれて。
[あなたは元の世界から消えてしまったのに、と。
声に出さずとも切なさが自分の瞳に滲んだのを彼女は読み取ったのかもしれない。
何も言わずに微笑まれ、背に温かな手を当てられて。]
ペルラさんも! 元の世界に帰るんでしょう?
[振り返って必死で問いかける。]
……。
…………ええ、そう願って良いと、思えたから。
[柔らかい笑み。
でも瞳には強い光が灯っていた。]
[湖の中央についてしばらくして、明らかにミツキの反応が変わった。視線が合った時無言でうなずいてみせる。
自分もまた馴れ親しんだような感覚を覚えていたからだ。]
……ペルラ……
[ずっと傍にいた恋人の名前を小さく強く呟き、懐から取り出した真珠の耳飾りをぐっと握りしめた]
どうやら…そのようだな。
[消えていく姿はペルラが消えたときを彷彿とさせて、でも今回は違う。
あるべき場所に戻っていくだけだ]
ありがとうはこっちこそだがな。…じゃあなミツキ。
前髪は参考にしとくさ。
ミツキは、ちょっとは素直になれよ!
[しんみりした別れはいらない。少しぐらい減らず口を叩くほうが自分たちには似合いだろう。
降りてきたときとは逆に、登っていくようにしていくミツキへと。任せたぞ。と先程突き合わせた拳を突き上げてみせて、別世界からの旅人は、煌めきとともに消えていった。]
[そして自分は願う。
あの時のように、時計塔の鐘の音を紛らわさぬように、自分のところに迷わずに風で導くように]
…ペルラ、来い。俺の…俺の腕の中に…!
[手の中にあった大事なもの。柔らかい光を纏った真珠の耳飾りがふわりと浮かび上がる。願いの導の先はここだと報せるように*]
ふふ、それが聞けて良かった!
[先に聞くなんてズルかったかな。
でもやっぱり、本人の意志って大事だものね、と。
アスルの瞳と彼女の瞳の光を重ねて。
握られている手。
離す前に、自らの手の中にあったそれを残していった。]
ペルラさんを待ってる人から頼まれたの!
渡したからね、ちゃんと返してあげてね。
……またね!
[ペルラをぎゅっと抱きしめ、いつかの再会を願った。
そうして、もう振り返らない。]
[自分を呼ぶ声が聞こえるから。
耳元があたたかい。共鳴するように震えている。
道しるべの光は青色に銀が瞬いて、自分のピアスのようで、
――大好きな、雅空の色をしていた。]
ん……、おぼえとく……、
[殆ど反射的に溢しているような、もっと奥だとかどこが好きだとかに答えるように告げて、好きだと言われた場所を擦り上げて深くを突き上げる。
覚えとくと口にしながら思ったのは、この不思議な場所での数日間のこと、オレの気温がなかった時のことも含めて、全部。
そのうち目が覚めて此処から帰った後も忘れないと思う。いや、絶対に忘れない。]
これからのこともぜんぶ……、みせて……、
[“もう見せてるのに?“ってことはわかってる。
この先もずっと全部見せて欲しい、それも覚えておくから。
下肢の方は忙しないし、響いてる音や光景は穏やかとは言えなくても、胸の中は愛おしさでいっぱいで、触れた唇の温度や絡めた指の温もりは眩むような快感の中で鮮明に伝わってくる。]
っ……ふ、かわいい、
[敏感な場所を押し潰して擦ると大きく上がった嬌声に、小さく笑ってしまったけど、睨んでくる潤んだ瞳に、ごめんて、と微笑むと眦に唇を落とした。]
っ……、それも、あおってる……から……
[“ばか“も“とら“も興奮するからって前にも言った、とは、多分わかってて言ってるんだと思うけど。]
ん……、っ、イッてい、よ……
オレ、もイく、から……っ、一緒に、イって……、
[まだこうしていたいと思っていたのはお互い様だったけど、中の挙動が搾るように蠕動を始めなくても限界は近かったから。]
[掠れた声で囁いた言葉に返ってきた声が耳に響くと同時、強く手を握りしめると、最奥に突き上げた先、どくりと劣情混じりの熱が弾ける。
全身が心臓になったみたいにどくどくと鼓動とも下肢の脈動ともつかない音が頭に響く中で、潤んだ瞳に映った色に数瞬見惚れて、頬を伝う涙に唇を寄せた。
柚樹は見せられたものじゃないと思ってるかもしれないけど、泣いてる顔も、綺麗だしかわいいなって、いつも思ってるよ。]*
椿……!?
[彼女の声は掠れていた。
必死に絞り出した叫びのように思えた。
その声を聞き取った瞬間、楓は駆けた。声のした方角へ。
何があったのかまでわからずとも、猶予が無いことだけは理解できたから]**
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