137 【身内】No one knows【R18】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
[ 冷たい石畳、冷たい石の壁、そして冷たい空気。
日が差し込む窓の様なものはなく、壁な備え付けられたランタンの灯りが薄暗く部屋を照らす。
女が意識を取り戻したのは石の牢獄。
視界にあるのは石以外に鉄製の扉とあとは男だけ。
男は小さないすに座って女を見ていた。]
ようやくお目覚めですか。
[ 相変わらず薄笑みを浮かべたまま。]
[ 女はドレス姿のまま鎖に繋がれている。
まるで叙事詩に出てくる囚われの姫の様でもあるか。]
ジャンヌ・アンペール。
いや、もうただのジャンヌか。
[ 立ち上がり女の元へ近づいていく。]
状況は理解できていますか?
[ 女の顎に指をかけて前を向かせる。
その顔をに眼帯はない。ただ長く白い髪がその目を隠しているだけ。]
……商品としてはまだ使えませんね。
[ ジャンヌ・アンペールの婚約者というのは随分と趣味の悪い好色家のようだった。ゆえに婚前前に手を出されていてもおかしくはないが。
白いドレスの上から男は女の乳房を鷲掴みにする。]
男は、知っていますか?
[ 一部の者は初物を喜ぶが、闇市で仕入れる様な性奴にそんなことを求める者たちなどいない。
必要なのは男を悦ばせるための身体と技だ。]*
[視界に入ったのは大好きな人の微笑む姿で
聴こえたのはその人の声だった。]
……ジュダス様。……
[彼はただのジャンヌと自分を呼ぶ。
もう元の人生を歩むことは出来ないようだ。
反発する気持ちは……、なかった。]
……貴方がそう望むなら、それがいいわ……
[微笑み、受け入れた。
父様母様、御免なさい。
アンペールはここで絶えました。
恐らく墓参りももう出来ないのでしょう。
親不孝者で本当に────御免なさい。
私自身が選んだ道だから、どうか許してね。]
[顎を取られ真っ直ぐに彼と顔が向き合う。
こんな状況にも関わらず胸は高鳴ってしまった。]
……はい。ジュダス様が
不出来な私を立派な……商品、にして下さる……
[状況は理解していると答えた。
中途言い淀んだのは妻のくだりを思い出したから。
私が誰かの妻になっても……、貴方は気にしない。]
[まだ使えない自分だけれど、貴方が変えてくれる。
そこに不安はない。
ただ今ひとつ何をするのか不明であった。
それは行動によって示される。]
あ……っ?
[手のひらに余る大きさの胸が掴まれ
戸惑いと甘さの混じる声が漏れた。
まだ固さの残る乳房は鷲掴みにされてしまうと
痛みもあったけれど、それを超えて、
溶け出してしまいそうな気持ちよさがあった。
手の持ち主が、他ならぬ彼だからだろう。
その下の小さく未熟な薄桃色の尖りも
見えぬところで主張を始めている。]
し、知りません……っ
何も、知らないです……っ
[男は知らないと首を振る頬は赤い。
記憶のない期間も含めて事実だ。
だけど余り説得力を持たせられないかも知れない。
貴方の手が、気持ちいいのだもの。*]
[ 顎にかけいた指が離れ、次の瞬間に男の手は女の喉元を掴んだ。]
受け入れる、と?
[ 男の薄笑みは消えていた。
女を見る視線は探るようでいて、冷たく、昏く。
乳房を掴んでいた手も離れていた。]
随分と聞き分けがいいですね。
[ この先に待ち受けていることがわかっていないのだろうか。]
お前はこれからオークションにかけられ、
人を人とも思わぬ者に買われ、
その先はただの玩具として弄ばれ続ける。
[ それともどんな未来であっても受け入れるというのだろうか。]
[ 男の手がドレスの上から女の股間を乱暴に掴み上げる。]
お前のことなど省みない、
お前が誰なのかも知らない、
ただの変態によってお前のここが壊れるまで。
[ 掴み上げた手に力が籠る。]
いや、ここだけではない。
お前の穴という穴を犯し続ける。
[ 女の、人間としての尊厳だって微塵も省みられることはない。]
わかっているのですか?
[ 男の顔が女の顔に近づき、喉を掴み手にも力が籠った。]*
[顎にあった彼の体温が喉に移る。
彼は何かに憤っているようだった。
彼の中の変化がわからず
オロオロと視線を揺らして。]
きゃ……ッ!
[下から来る痛みに悲鳴を上げた。
これは、ただ痛いだけ。
彼がしてくれるなら何でも
気持ちよくなってしまいそうだけれど
いまはそんな場合ではないと
官能のスイッチがオフに切り替わった。]
(い、痛い……っ) っ、
[下唇を強く噛んで、
恥骨に加えられる痛みに耐える。
目尻に涙が溜まるほどの苦痛だが、
それよりも……、彼のことが気掛かりだった。]
ん、ぐ……っ
[吐息がかかるほど顔が近づく。
笑みの消えた彼の顔。
絞まる喉の苦痛に呻きつつも、
真っ直ぐに見つめ返した。
少しも怖くはない。
少し、哀しくはある。
貴方は、貴方のままで良いのに。]
[喉を掴まれていては話し難く苦しい。
痞えながら言葉を発した。]
わかって、います……
どうすれば殿方が、うれしいかは、
不勉強のため、わからないけれど……
それはちゃんと、わかって、います
[女の一人旅に危険がなかった訳じゃない。
連れ込まれようと自分で自分の身は守れたから
処女の証に触れられたことはなく
彼の掴む場所を用いることは理解しているが
具体的なことだけがわからないまま。]
お話をしたこともない
顔や裸だけを見た人に買われて
その先どうなるかわからないことも
理解しています……
[見せてくれたばかりだから知っている。
後のことも彼が教えてくれた。
その上で女は受け入れると言っていた。]
でも、それで、良いんです
貴方が望むなら、それが良い
そうしたい
[いま聞かされた内容を加味しても
意思は変わらなかった。
知らぬ男に尊厳も何もかも踏み躙られようと
彼の大事な商品としての役割を受け入れる。]
[売ることが彼の望みなら
大人しく躾けられる方が都合が良い筈だ。
なのにどうして、そんな顔をするんだろう。]
ジュダス様がなれと言ったものになりたい
私、貴方のことが何より大切よ
[だから微笑ってと、
十字の印のある頬を包んであげたい。
だけど枷に阻まれて出来ないから、
慈愛の笑みを浮かべるのみ。]
[眼帯がない。
前髪が隠す顔は見られたのだろうか。]
右目の傷ね、治ったわ
まるで人間じゃないみたい……
だけどこれで少しは高値になるかしら
[貴方と私だけの秘密もなくなっちゃった。
それは少し哀しいけれど、嬉しいことなの。
貴方の役に立てる、筈だから。*]
[ 理解し難い。
この女がなぜそこまで言えるのか。
騙されていたことはもう十分に理解できた筈だ。優しくされたのも全て女を嵌めるためだと。]
…………
[ 理解のできぬ女の思考に男は言葉を失くす。
絶望の中にあれば壊すのは簡単だと思っていた。
抵抗するならその心を悉く砕けばいい。
だが、女はそのどれでもない。
自らそれを望むと言う。]
そうですか。
[ 女から手を離した。]
[ 女の治癒能呂は随分な価値となる。
いくら痛めつけようと、いくら傷つけようとも勝手に治るのだからどんな無茶だってできる。]
それなら……試してみましょう。
[ 本当に心からそう思っているのか。
踏み躙られて尚そう思い続けられるのか。]
リガートゥルを呼べ!
[ 鉄の扉その向こうに向けて男が声を上げる。]
[ しばし後、鉄の扉が開いて現れたのは2mを超える大男だった。大男はスキンヘッドに鼻から口にかけては鉄のマスクで口元は見えない。
その顔には大きく斜めに墨が入っており、犯罪者であったことを知らせる。]
この男がお前の相手をする,
[ そう言って男は出ていくでもなく、ただ椅子に腰をかけた。
男の冷たい表情と裏腹に、大男はニタニタと女へと近づいていく。]
リガートゥル。
その女は男を知らないそうですよ。
優しくしてあげなさい。
[ 冷たい声が石の部屋に静かに響いた。]*
[化成へ嫁入りすることを納得していたから
買われた先がどんなに悪趣味であろうと
ヒトであるだけマシに思えた。
人が人にどれだけ残酷になれるか、
実際に見てきたことはない。
世間を知らない女の、浅はかな考えだ。]
はぁ、ぁ……
[手が離されれば
地下室の冷たい空気が沢山入ってきて
身体が冷えていくのを感じる。
そうしている間に、牢の中に人が増えた。
いや、アレは人なのだろうか────?]
[リガートゥルという巨漢は
地響きのような足音と共に目の前に来た。
見上げると首が痛くなるほどの身長差がある。
男を知らない、の紹介に喜んだのか
マスクの向こうに荒い鼻息が聴こえた。
顔の前に、男性器が出される。
女の手首ほどの太さがあり、
何であるか理解するまで三秒要した。]
そ、それが……。っう……んぐっ!!
[洗っていないのかチーズのような酷い悪臭がする。
顰めた顔は男の手に捕まり、無理矢理口を開けさせられる。
接吻の経験もないあわいに凶悪なモノが捩じ込まれた。]
[男の巨大な手は高い位置で纏めた髪を
それぞれ取っ手にでもするように鷲掴んで
自らの方向に強く引き寄せる。
先の丸い部分だけでも
自分の拳くらいあるのではないか。
そんなモノが身動きの取れぬ娘の口腔に納まる。
だがそこで止まらず、グイグイと腰を押し付けられ
肉の棒の先端は口の中を進んでくる。
他人の体温がまだ体内に入ってくるのは
酷く気持ちが悪いことだと知った。
口の中でどんどんと硬さも増している。]
ん、ぐぅ……っんん……っ
[苦しさを声に変換しようにも
出口なくぴったりと男の熱が塞いでいるのが
また気持ちが悪かった。]
[軈て、進みが止まる。
ええもう、それ以上は無理でしょうと。
もう入らない、そう思った先が、……まだあった。
ぐぽぉっ
……と喉奥に
エラの張った先端が入り込み、気道を完全に塞がれた。]
んぶっ…、ぅぐ、…んんっ、んぐぅ……っ
[男はツインテールを容赦なく動かし自らの腰も振る。
喉の窄まった所で亀頭を扱き、喉奥をガツガツと突く。
揺さぶるのに合わせて手枷の先の鎖が音を鳴らす。
ペニスの形がわかるほど頬は膨れ苦しげに目を閉じ
すきな男にはとても聴かれたくない醜い呻きが漏れ続けた。]
[舌を擦る男根が気持ち悪い。
鼻先に当たる茂みが気持ち悪い。
臭い。変な味がする。痛い。苦しい。
────だけど、貴方が望むなら。
これがジュダス様の望みだと思えば。
貴方の役に立てるのなら。
私、これもWうれしいWの。]
「おっと、危ない危ない……」
[マスクの奥からそんな声が聞こえたか。
ずるりと抜け出ていく硬いままのものは
透明な唾液でぐしょぐしょに濡れていた。]
げほっ、けほっ……はぁ、は……っ
[女の方は涙で頬、唾液で口許を濡らしている。
規格外のサイズの抽挿によって口の左端は切れ、
赤い血液が滴り、真白なドレスを汚した。
まるで、破瓜のように。]
[酸欠で頭が呆っとする。
頭からは手を離され、
真白な髪が何本と抜け落ちた。]
あ……。
[気づくと、片脚が高く持ち上げられていた。
白い下着は床に残骸が見えた。
淡い色のあわいは少しも濡れておらず
ぴたりと閉じていたが、
そんなのお構いなしに
巨大な先端が押し当てられ擦り付けられる。
────きもちわるいよ。]
[こんなの身体に入ると思えないけど
入ってしまうんだ。
膜どころか身体ごと裂けてしまいそう。
他の男の人に純潔を捧げるところ、
貴方に見られてしまうんだ。
他でもない貴方に。]
……じゅだす、様……ジュダス様ぁ……
[縋るように名を呼んだ。*]
[ 男は眉ひとつ動かさずにその様子を眺めていた。
女の口内が大男のデカマラで汚されている様子を。
そして、やがて女がその純血を奪われようとするとき。]
待て。
[ 男の名を縋るように口にしたのを聞いて静止の言葉をかけた。]
どうしました?
私の望んだ通りなのでしょう?
[ 大男はジュダスの言葉通りに身動きせずに待っている。]
[ 男は懐から何かを取り出した。]
貴方はこれから女になるのです。
そして私の商品となるために。
何人もの男が貴方の上を通り過ぎる。
そうして快楽を植え付けられて。
私の数ある商品とひとつとなるのです。
[ 手に玩ぶのは翼に抱かれた青い宝石。]
[ その宝石を見つめている。
女を見ずに、ただその美しい宝石を。]
そうして、
私は貴方のことを忘れるのです。
何もなかった様に。
[ 青の宝石はただ静かに輝きを放っていた。]*
……。
[どうしましたと訊ねる声に
答えられず俯いた。
目を閉じてて欲しいなのか
もう一度私の立場を教えてほしいなのか
自分でもわからなかった。]
[彼が私のこれからについて語る。
それを大人しく聞いた。]
……。
[全て彼に従うつもりの私だけれど
彼の言葉には一つだけ間違いがあった。
生涯何人が自分の上を通り過ぎようとも
この身に快楽を植え付けられたのは
貴方だけということだ。]
……やだ。
[子どものように言って、首を振る。]
……やだ、ぁ……やだやだぁ……っ
[イヤイヤと首を振る。
大粒の涙がぽろぽろとこぼれおちていく。
だってそれ、全然大事な商品じゃない。]
そんなWどうでも良い商品Wじゃ
頑張れないよぉ……っ
[馬鹿みたいに泣きながら彼を見た。
彼は、自分の方なんて見てなかった。
彼の視線の先にあったのは、青い────]
[カッと目を見開いて咆哮する。]
それぇ……っ
私のだぁぁ!!!!
[掴まれていないほうの膝で
リガートゥルの股間を蹴り上げた。
男が呻き距離が開けばもう一度足を蹴り上げ
鎖の先についた鉄球が頭蓋を砕く音を響かせた。*]
[ それが両目の揃った魔女の力なのか。
重い鉄球を物ともせず、それどころか易々と振り上げて部下の頭を砕いた。]
馬鹿が。
油断するからですよ。
[ だが、その動きには多少の驚きはあった。
指を鳴らすまでもなく、その動きにギアスは女の魂に痛みを刻み込む。いかに耐えようとも、呪いによる痛みは逃れようがないのだ。だというのに女はそれを振り切っている。]
……魔女め。
[ 口元の薄笑みが、大きく嗤う。]
[ 男は椅子に座ったまま豹変した女を見た。]
これは私のものです。
契約を守れなかった貴方のものではありません。
[ その表情から笑みが消える。
暗い眼鏡は、男がどのように女を見ているのかを隠してはいるが、その顔は今まで女に見せたことのない冷たいものであることは確かだった。]
私からこれを奪いますか?
ジャンヌ。
それなら、私は貴方を捨てなければなりませんね。
[ それは明確な敵意。
客でも、商品でも、所有物でもなく。
女に向けた男の気配は、敵意だった。]*
[めきゃりと骨の折れる音は
大男の頭の他にも鳴っていた。
蹴り上げた女の細い足首が、あらぬ方向に曲がっている。]
はーあ、人の体って、面倒だわ。
[だが気怠げに言う間にも治っていた。
両の足で冷たい石の床を踏み締めて立つ。
外傷も魂に受ける痛みも
窓の外で小鳥が囀ってるみたいだわ。]
[椅子に座ったままの男を見る。
この男は自分を捨てるというのが
脅しになると思っているのだ。]
ふふ、そんなの効くと思っているの?
[嘲笑する。
……実際ちょっと堪えて頬が引き攣ったけど、
自分はいい子でいたかったんだ。
どうでもいい子になる位なら、悪い子を選ぶわ。]
……奪う? いいえ、返して貰うのよ
それが貴方のものになった時間なんて
一瞬たりともないんだからぁ……っ!
[手枷の嵌まる手を力任せに引けば
鉄の鎖が千切れて女の身体を自由にする。
男を威嚇するように睨みつける。
それは私のだ。]
[────そこに水を差すものがある。]
「きれいな顔が台無しだよ、ジャンヌ。
君の人としての取り柄はそれ位なんだからね」
[二十代半ばほどの身なりの良い金髪の青年が
ジャンヌの傍らに立っていた。
呆気に取られるジャンヌのドレスから
白いハンカチを取り出し涙と唾液と血を拭う。]
「君が働いて買ったのかい。凄いじゃないか。
はぁ……勿論婚約者の僕にくれるんだよね」
[呼吸など必要としないその男は
ハンカチを鼻に当て深く吸い込むと自らの服にしまう。]
[それから、ジュダスの方を向く。]
「どうも、商人の方」
[品良く微笑いかけ挨拶した。*]
[ 脅しと取られたらしい。
実際には行わずに効果を狙うのが脅しであり、実際に行うのは宣言である。などと高説を垂れるつもりは無い。男の言葉が宣言≠ナある以上、どう受け取ろうと知ったことでは無い。]
今まさにこの手にあるというのに。
私のものでは無いと。
世間知らずもそこまで来ると救えませんね。
[ 豹変した女を前に男は変わらない。
薄笑みの消えた冷たい顔のまま、ただただ女の威嚇を受け流していた。]
ほう?
[ 女の雰囲気がまた変わった。
いや,変わったと言うよりも─── ]
何と呼べばいいかな?
魔術師の方。
[ なるほどと得心しながら、男の顔に薄笑みが戻る。]*
「ロジェ・ド・メーストル
好きに呼んでくれ給え
話をしよう。お茶でも飲みながら」
[男は名乗る。
そしてパチンと指をひとつ鳴らした。
床に倒れる大男の姿がなくなり、その代わりに、
ティーテーブル1脚にチェア3脚が現れる。
地下牢の中に異質な空間が出来上がった。]
[チェアに腰を下ろすと声を上げ
マリエルにお茶の支度をするよう命じる。
辺りにいるようなら彼女は指示に従い運んでくる。
上から重ね掛けされようと
一度土地に踏み入れ支配を受けたものが
魔術師の手から完全に逃れることは叶わない。]
「彼女の淹れる紅茶は美味しいんだってね
貴公も試したのかな、ジュダスくん」
[どうぞ席にと勧めるが無理強いはしない。
「私の……」とブツブツ呟く婚約者には自身の隣の席を勧め
悩む様子もありつつ大人しく座るのを見届けた。*]
それで?
メーストルが何か用ですか。
[ 薄笑みを浮かべたままの男は少し呆れたように言葉を口にした。勝手に踏み入って好き勝手を始める魔術師に不快感がないこともなかったが、それよりも何しに来たのか知るべきだった。]
おっと先に言っておきますが、
私の眼も少々特殊でして。
幻惑の類は無駄ですよ。
[ ディスイリュージョン
幻惑の類を無効にする魔眼。生来の視力の低さはこの魔眼の副作用でもある。そのため、ジャンヌの持つその眼に比べれば出来損ないと言えないこともないが。]
[ 男は首を横に振る。]
いいえ、茶を嗜む趣味はないので。
私の分は結構です。
[ 男は茶を辞し、勧められた席に着くこともない。
元より座っていた無機質な椅子に腰を下ろしたまま。]
何か言いたいことがあって出てきたのでしょう?
[ ブツブツと何事かを呟く女には一瞥もくれない。
意志を持たない人形に用はないのだ。]*
[ジャンヌは青い宝石が気になって仕方がないが
魔術師の言葉に渋々従うしかなかった。
彼女の知る世で最も恐ろしい男が目の前に二人もいて
それぞれの出方が読めないものだから。
だがいつでも宝石を狙っていた。
持つ男に隙がないのを理解しているからこそ
飛び出したい本能を抑え漁夫の利も狙わねばならない。
そうやって鉄球二つを引き摺ってきた娘の隣で
魔術師は人の良さそうな顔で笑っている。]
「アポ無しで失礼したね。
へえ、貴公も面白い眼をお持ちなのだね」
[領地を踏むことが術の発動条件であり
話をしにきたので個別にかける気もなかったが
興味深そうに色の濃い眼鏡の奥を見つめた。]
「それに僕を知っているなんて凄いじゃないか」
[こんな大陸の反対側に住む人間にまで
自分の使う術の種類が知られているのは
魔術師にとって恥ずべきことだ。
悟らせないからこそ何百年と実際の土地を用いた
陣取りゲームで遊び続けていられるのだから。
だが商人の情報収集能力の高さを素直に賞賛した。
幻惑を打ち消す瞳といい、良い素材だ。]
「だそうだ、マリエル。
お茶は二人分で頼むよ」
[こんなに美味しいのに勿体ないね。
そう言って一人だけ紅茶を優雅に味わう。
コットンが余計な渋みを吸着しまろやかにしてくれる。
この淹れ方が最高なんだよと
階上に戻っていくマリエルに声を掛けた。]
「そうだね、言いたい事は幾つかある」
[カップをソーサーの上に置いた。]
「先ずは貴公に感謝を。
調査のために使いを送ってくれたろう。
それで彼女の居場所が掴めた。
お陰で時間が短縮できたよ、感謝している」
[一度支配した者の目と耳は自由に借りられる。
同時に数千人並行処理をすることもあるが
街を飛び出した娘の行方は離れれば離れるほど
掴むのが困難だった、それに関する礼を述べた。
女の寿命は短いからという理由であるが。]
「それから契約書の内容。
あれには見つけても価値をつけないまま、
或いは報告をしないまま期限を迎える、など
貴公が自動的に勝利を得る手が幾つか使えたが
貴公はそれをしなかった。
ゲーム性を楽しむ心が垣間見えた気がするね。
あれはよかった、なかなか見ものだったよ」
[本題にはまだ入らず。
手を軽く叩いて賞賛した。*]
[ 実に魔術師らしい物の捉え方だった。
だが、その勘違いを正してやる理由はない。]
なるほど。
大した魔術師ですね。
[ 如何に魔術的なラインが繋がっていたとしても、その支配を及ぼすには並大抵の力では足りない。故に、古代魔術はギアスという方法を使った。術師の力を常に使わずとも縛り付ける方法を。それが例の契約書だ。
魔術が万能であるならこの世を支配しているのは剣ではなく魔術なのだ。
故に、この魔術師の限界も見える。]
それで?
[ 長い前口上に興味はない。]
[ 男は魔術師を見る。
おそらく幻惑の類、打ち消そうと思えばいつでもできる。
そうでないというなら、この場で殺してしまえばいい。
そして男は女を見ない。
興味を失ったかのように、まるでここに居ることすら忘れたように。
そこ視線も、薄笑みも魔術師に向けられている。
この場、この対話は男と魔術師だけのものだった。]*
[ありがとう、と軽く流し、
うん、と頷き魔術師は続ける。
契約の内容は互いに肝心なところが
守られていないと指摘する。]
「一個質問したかったんだよね。
、、、、、、、、、、、、、
見つかってるものを見つけるって
一体どうやるの? ってね。
契約の不履行はそちらもだよ」
[そもそも片側が確実に負けることのない誓約では。
制約内容も制約の存在も聞かされておらぬ契約では。
そんなもの効果もたかが知れていると続ける。
事実、その言葉を聞いた娘は魂を縛る鎖が
解けるまでいかずとも拘束が弱まるのを感じた。
人の心を惑わす術を使うのが魔術師なのだ。]
[魔術師の姿自体は幻惑の類ではない。
魂に魔力と怨嗟が絡み付き
可視できるまでに折り重なる集合体。
消滅させることは可能だろう。
ただ魂はここにひとつだけではない。]
[男同士のやり取りの間に女は、
自分への意識がないことに気が付いた。
そっと裸足のまま光源を遮らないよう移動する。
ジュダスに近づいたと思ったとき
手枷からぶら下がる鎖が
何かにぶつかりカチャリと音を立てた。]
……!
[地を蹴って青い宝石に手を伸ばしながら飛び込んだ。*]
とまれ
[ それは古代魔術に使われていた失われた言葉≠セった。
男の言葉と同時に女の体には百の手がその体を戒め、同時にその魂を痛みが襲う。]
私を相手に問答などと。
魔術師どのは戯れがお好きらしい。
[ 言葉遊びなど契約書には意味がない。
意味があるのは事実だけ。そしてその契約書に誓いを立てたというだけ。]
商人というのはですね。
舞台に立つときは勝ちを確かなものにしているものですよ。
貴方のゲームとは違う。
[ そもそも対等な契約である必要もない。]
[ 男は椅子から立ち上がるが、その視線は相変わらず魔術師に向けられている。]
勘は大事にしなさい。
私に隙はない、そう思っていたのでしょう?
ジャンヌ。
[ 顔は女に向いていない。
だが、女には確かに男に見られている気配が感じられるはずだ。]
さて、ご理解いただけましたか魔術師どの。
[ 男の目は光を感じることはない。
その代わりに、魔術の力が男に別の視覚を与えているのだ。]
さて、商談といきましょう。
私の要求は、
私のものから手を引いてください。
というものです。
[ やや芝居がかった緩やかな動きで部屋の中を歩く。
ブーツの踵が石の床を踏みつけて、その音が石の壁で反響する。]
そこの女は私のものです。
手を引きなさい。
[ 女にかけられたギアスは聖王国の大神官でも解くことができないほどの強力な呪い。契約者の両方の合意なく解かれることはない。]
……そうだ。
その女が私のものであるなら、
その女のものも私のものと言えますね。
[ 今気付いたかの様に男は言葉を続ける。]
アンペールの領地を返して≠「ただきましょうか。
[ 薄笑みが深くなる。三日月が大きく嗤う、]
……冗談ですよ。
[ そうして男は再び椅子へと戻り腰を下ろした。]*
きゃ、あぁああ
……っ!!!!
[その前に感じたものは勘違いだったと。
再認識させられるが如く
彼の声に身体が硬直し痛みに悲鳴を上げた。
彼に、近づくことも出来なかった。]
……!
[心を読まれている?
見られていない筈なのに威圧感があり
背筋を汗が伝った。
自分は、逃げられないのだろうか。]
[石のように硬直したままその後を見守った。
女の所有権を再三主張されれば魔術師は
「婚約辞退は受け入れてないから僕のなんだけど……」
と余り納得していなかったが
実力差は十分に理解したらしい。]
「……返して欲しければ取りに来ると良い」
[そう苦い顔で捨て台詞を残し
現れた時と同じように突然に姿を消した。
この場に現れたのは魂の一部。
本体の多くは領地にあるのだろう。]
[あの恐ろしい化生が囮にもならなかった。
その事実に冷や汗が流れる。
制止の効果は解けただろうか。
何れにせよ椅子にかける男から目が離せず。]
……。
[ブローチを奪うなど無理だ。
奪おうとすれば捨てられる。
大人しくしていても忘れられる。
望みのない現実に打ち拉がれた。*]
[ 漸く一息ついたのは魔術師の気配が消え、暫くしてからだった。
男にしては珍しく体を緩める。]
……ふぅ……
[ 五分以上に渡り合えたのは僥倖。
こちらがあれを上回ったのではない、それは単に性質の違いというだけ。
強いて言うのなら、あれほどの魔術師を相手にハッタリを仕掛けるだけのこの男の胆力が相手に勝ったということだろう。]
戦っても負けませんがね。
[ 少なくとも相手の領地でなければ。
だが、そうであったとしても大損害はまぬがない。
それは商人にとっては負けに等しい。]
よかったですね。
ギアスが効いてくれて。
[ 男は漸く女へ偽りの視線を向けた。
男の操る鋼糸は特殊な製法を用いて作られていて、その鋭さは鉄の鎧すら切り刻み、細くそして光を通す性質が糸を見えにくくしている。]
あと一歩踏み込んでいたら、
今ごろ貴方はバラバラの肉の塊でしたよ。
[ 男は魔術を操ることはできない。
だが、財を投じて手に入れた無数の魔術道具とノウハウ、そして男自身の研鑽によってここまで力をつけた。]
それとも?
バラバラになっても治るんですかね?
試してみましょうか?
[ 女の治癒は不死の域まで到達しているのか。
頭を落としても?心の臓を切り刻んでも?水に沈めたり氷漬けにしても生きていられるのだろうか。]
私を、……裏切りましたね?
[ 静かな声と共に、男の顔から薄笑みが消えた。]*
[自分は何を裏切ったのだろう。
こんなに怖くて堪らないのに
彼への想いは砕けるどころか増している。
心は裏切っていない。
宝石を取ろうとしたこと?
自分は、それを得たいだけでなく
彼の見つめる先が自分でなくてそれだったことに
全身の血が湧くくらい妬ましかった。
私は忘れられるのに手のひらに大切そうに乗る宝石に。
それだっていつまで彼の手元にあるかわからないものだが]
…………ごめん、なさい……っ
[もう、宝石を取る気はないし取れる気もしない。
そしてもう、手遅れなのだろうけれど、謝罪した。
他にどうしたら良いかわからなかった。]
[何もできない私は馬鹿の一つ覚えみたいに
ぽろぽろと泣くしかない。]
貴方の気が済むなら、
好きなだけ、お試し下さい……
[自分の限界は、知らない。
両目が揃っている限り、どんな怪我も治せる気はする。
ただこの二つともなくしたら、私は……。*]
[ わからない。
なぜこの女はそこまで言えるのか。
騙されていたと気付いている、嵌められたのだと理解している。
優しさも、助力も偽りと知ってなぜ。]
………!
[ ─── それは一瞬だった。]
[ 男の一息でそれは女の四肢を斬り裂く。
細く鋭く硬い鋼の糸が女の肉に食い込み、皮膚と肉と血管とを裂いて、骨を断ち切り、4つの手足を同時に分断した。]
さあ、繋げて見せなさい。
[ 冷淡な声。
椅子に腰掛けて、偽りの視線も本当の視線も女に注いで。]
元に戻るまで見ていてあげますよ。
[ 両の二の腕、両の太腿を切断された女。
治療どころか止血もしないまま、男は女を見つめている。
薄笑みを浮かべながら。]*
[自分を襲うものは、何も、見えなかった。
重力に従って落下して、
ぼとぼと、ぼとり、
地に着いた。
テディベアのように石の床に座り
鋭利過ぎる糸による傷の痛みは
短くなった手足を認めた瞬間に襲ってきた。]
[イタイ。手が。脚が。
イタイ。胸が。頭が。]
あっ……アッ、あっ、 ア゛ッ!!!!
[パニックを起こした全身が
ビクンビクンと異様に痙攣し
傷口からは夥しい量の血が噴出する。
全身が燃えるように熱くその熱いものが
外に流れ出ていくのが嫌でもわかってしまった。]
ハッ、ハァッ、おぅ、ぇぇ……ッ
[身体の色々な機能に不具合が起きたように
女の小さな口は吐瀉をした。
先日の昼間から何も食べておらず
吐いたのが胃液のみなのは幸いなことなのだろうか。
太腿の切断と共に短くなったドレスの裾。
下着を履いていない股を温かいものが濡らした。
それは漏らした小水であったが、
熱い身体からするととても冷たく感じられた。]
[そんな状態でも、一人の声は確かに届いた。
冷淡な声色でも構わない。
私が従いたい人の声なんだ。
涙だかなんだかわからないもので
濡れそぼった顔で返事をする。]
わッ、 わかり、ましッ はぁッ、は……!
[自分から流れ出た血液と小水の海の中
溺れるように短い手足で這った。]
[元に戻るまで見ていてくれる。
それってすごくうれしいことだ。
飛びそうな意識を繋ぎ止めようと、
口と共に小さな体を動かした。]
わっ、 私…… 貴方の声が、すき……
優しいときも……意地悪なときも……
身体の、真ん中にひびくみたいで……
すごく、かっこいいの……
[離れていた右足が皮一枚で繋がる。
繊維と繊維を繋ぎ合わせながら、次へ這う。]
[頭が痛い。息が苦しい。]
あ、貴方の……っ
私のより、大きな手が、すき……
頼もしくて……だけどすこし、冷たくて……
あたためてあげたくなるの……
[右腕と、左腕が繋がる。
ぎこちなく手が開閉するのを確かめて
僅かに安堵の息を漏らす。
もう貴方に触れる機会はないかも知れない。
だけど万が一。そんな幸運を手にできたなら、
いま伝えたことを逃さずに叶えたいの。]
[血の海を泳ぐ。
頭痛が激しさを増して前が良く見えない。]
私……、私…………
目を見せてくれた、貴方がすき……
こんな私の我儘をきいてくれた、貴方が
こんな私に我儘を抱かせてくれた、貴方が……
わた、し……
[左脚を繋ぎながら、ぐらりと頭が揺れる。
だめだ。抗えず床に横たわった。
もっともっと、頑張っている所、見て欲しいのに。
誰かに買われてもこんな風に頑張ってるって
偶にでも思い出してくれたらうれしいのに。]
はぁ、はあ……
御免、なさい
……
[これほど多く深い傷ははじめてだった。
不出来な人形は謝罪し意識を手放す。
眠りが疲労を回復し分断された四肢の修復を助ける。
少し経てば手足は元通りとなる。*]
[ 気を失ってなお繋ぎ合わせられる四肢。
その白い肌、接合部は皮膚が薄く赤味が強いが、それもいずれ白く戻るのだろう。]
悍ましい力ですね。
人と言えるのか疑問が残りそうです。
[ 立ち上がり女の元へ進む。
見下ろした先、血と涙と体液や小水や色んなものが混ぜ合わされた中に女は横たわる。]
呪われた血。
その業というものか。
[ 何処へ行こうともこの娘に幸福などありはしない。
少なくとも万人にとっての幸福はない。]
[ 手足が繋がれば女はの手は再び鎖によって壁に繋がれた。
ただし、足に鉄球は付けられてはいないが。
切り裂かれたドレスはそのままだが、身体はマリエルによって綺麗に拭かれていた。
髪も梳かされてやはり綺麗に整えられていた。
部屋は、壁も床も綺麗に洗い流された。
それでも血の匂いは消えない。]
[ 女が目を覚ますころ、石の部屋にいるのは男だけだった。
男はやはり薄笑みを浮かべたまま、女を見ていた。]
ひとつだけ望みを言いなさい。
ひとつだけです。
よく考えて口にしなさい。
[ 切り裂かれた代償でも、不公平な契約の代償でもない。
それは、言わばただの気まぐれだった。]*
[意識を失うまで、約束通り、
彼のたくさんの目は
自分を見ていてくれた。
もしかしたら、意識を失った後も。
自分の視界が暗くなっても、
見てくれているってわかったの。
それはとても……、うれしいことだった。]
……。……ジュダス、様……
[手が繋がれた状態で目を覚ます。
拭ってもらえたのか、
肌がさっぱりしている。
真っ先に視界に入ったのは彼。
目が覚めて最初に見るのが
好きなひとの顔だなんて
こんな幸福なことってあるのかしら。]
[ひとつだけ。
望みを言うようにと。]
……。
[彼の意図はわからない。
自分のような浅はかな人間にわかるわけない。
孤高で孤独ではないかと思うから、
わかるようになりたいと思わなくはないけれど。
少なくともいまはわからない。
だからそこは考慮の外に出し自分の望みを真剣に考えた。]
[売られる定めだとか、
世間の常識だとかも度外視した。
私。私の望み。
誰の指示も受けずに私自身が抱く望み。
女の意思が喜ばれない環境に育って
導き出すのは苦労する気もしたけれど
私はしあわせを知ってしまった。
それがずっと続くと良いと愚かにも願う。
これがこの先ずっと一番の私の望み。]
わ、私……貴方の。
ジュダス様の、奥さんに、なりたいわ……。*
[ ──── 男は嗤った。
女のその望みを聞いて嗤ったのだ。]
……馬鹿な娘だ、本当に……
[ 望みを聞き返したりはしない。
男は『ひとつだけ口にしなさい』と言い、女はそれを口にした。
運命の歯車は、歪にも軋み上げながら噛み合い回り始めた。]
[ 女を戒める鋼鉄の手枷が断ち切られる。
男は女に近づくと、その頬に手を添えて引き寄せた。]
誓いなさい。
この先何があろうと私の妻でいると。
決して裏切ることなく。
[ それで男は全てを受け容れる。
呪わしい命運も、この先進むべき道も全て。]
[ 男の冷たい唇が女の唇に重なる。
それは御伽噺に出てくるようなキスではなくて、すぐに男の舌が女の唇を割って咥内へと入り込む。
一方的なキスは抵抗も呼吸も許さない。
豊かな胸を最早ドレスとも言えない布の上から強く揉みしだきながら、唇を吸い粘膜を舐り、そんな蹂躙するような口づけ。
唇が離れるときには、女の唇を濡らすどちらのものともつかない唾液を舐めとった。]*
[照れながら口にした願い。
嗤われようと、馬鹿な娘と言われようと、
その声に聞き惚れ、その顔に見惚れた。
貴方はいつでも美しく格好いいのだわ……。]
[手枷が砕かれ、きょとんとした間抜け顔のまま
引き寄せられ長い髪が揺れ距離が縮まる。
四肢が裂かれたとき以上に
心臓がいかれそうに高鳴った。
近い、近いわ────。
しかも彼は驚くことを口にする。
私、それを名乗っていいの?]
……はい。……誓います。
何があろうと貴方の妻です……っ
決して、裏切りません……っ
[これがあれば何だって乗り越えられそう。
瞳が潤む。
人って嬉しい時も泣いたりするのね。]
[一層距離が近づいて、彼の体温を唇に感じた。
すぐに湿った何かが入ってきて生き物のように蠢く。
それらが彼の唇と舌なのだと遅れて気づくと
目も開けたまま硬直した。
自らの舌は奥で縮こまる。
頭の中、沸騰してしまいそうだ。
私、いま、キスをして、
すきなひとの一部が、私の、中に……。]
……っ、……
んぅ、ぅ
……っ
[粘膜を擦られ胸を揉まれて漏れる声と吐息は
唇を吸う彼の中に吹き込んでしまう。
お腹の奥がきゅんきゅんと切ない疼きを覚えて
細める瞳、濡れた銀の睫毛が小さく震えた。]
……っっ、 ……はぁ……
[離れる前、柔らかな唇を舐められ
背筋にゾクゾクとした震えが走った。
呆っと彼を見つめながら酸素を取り込む。
頬も、くちびるも、
化粧をしたわけでもないのに血色良く色づいた。*]
[ 女の片足を高く持ち上げた。
短く裂かれたドレスのスカートから下着もつけていないその部分が露わになる。
濡れていようが、少しも濡れていなくとも構いはしない。
先端を押し当てて、擦り付ける。
これは儀式の様なもの。
先ほどの大男のモノと比べてしまえば随分と可愛らしいとも言えるが、純血の女にとってそれは凶器であることに違いはない。
それが、───ズブリと入り込む。
男の手とは違い、熱く激るそれが女の中を貫き犯していく。]
[ 愛の言葉なんてものはない。
ただ、肉と肉が熱と熱が触れ合い混ざり合う。
抽送は緩やかに。
だが、だんだんと大きく強くなっていく。
血か、それとも蜜か、どちらにせよ濡れ始めた膣内を、優しさなどなくただ蹂躙していく。
打ち込むたびに、石室に肉のぶつかり合う音が響いた。]*
[足が持ち上げられれば倒れぬようしがみ付く。
髪と同じ色の茂みと淡い色の性器が覗く。
彼のも取り出されて近づけられれば
顔が燃え上がるように熱くなった。
それは凶器でもあるが、
きれいで逞しく、愛おしいものだった。]
あ、ぁ……。
[自分から受け入れたいかのように
口を開いたあわいの奥から蜜が溢れて矛先を濡らす。
擦り付けられる動きにぐち、ぐちゅと卑猥な水音が立つ。
自分でも触れたことのないその中が熱く切ない。]
……っ、……っっ
[ズブリと入り込んできた熱いそれは
処女の証を傷つけ、赤い色を纏った。
この膜は女の再生力をもってしても治ることがない。
この痛みと痛みを与えてくれる彼は
とても尊いもののように感じられた。
否、尊いのである。
愛の言葉などなくとも、その心が少しも掴めずとも。]
[女の園は歓喜に血と蜜を溢れさせ
きゅうきゅうと男の矛を締め付ける。
包皮が捲れ初めて外に顔を出した陰核は
打ち付けの強さを増す男の肌の温度で
充血しぷっくりと膨らんだ。
内側を抉られ陰核を恥骨に潰され
揺さぶられる女の漏らす声には甘さが混じっていく。]
あ……っ、あっ、
あっ、ジュダス、さまぁ
……っ
[私の旦那様。
生涯ただひとり慕う者の名を呼ぶ。
呪われた命も行く先を塞ぐ闇も何も知らず。
知らされるときまで愚かな娘の愚かさは続く。]
[処女であった隘路は狭さを増していく。
迎えたいと自ら降りてきた
まだかたくこりこりとした子宮の口が
子種の吐き出し口にキスを贈る。]
ジュダス、さま……っジュダスさまぁ……っ
ジャンヌは、ジャンヌはぁ……っ
貴方を、……あいして、います……っ
[切ない奥に届く抽挿に、悦びに、涙をこぼす。
返事がなくとも、拒まれようとも、
女は女としての歓びを噛み締めた。*]
[ 女が愛を口にするたびに、男の心は冷たくなっていく。
この交わりだけがただ獣の様だと思わせる。
それでも、きつく締めつける女の中だとか、甘く漏れる声だとか。
そういうものが確かに男の雄の部分を刺激する。
女の愚かさを蔑み、それに応えた己れを嘲りながら、男は腰を突き上げる様にして、女の深いところを抉っていく。]
[ やがて、迫り上がる射精感に男は抗わず。]
私の子を産みますか?
ジャンヌ・アンペール……貴方が、私の子を。
[ 高まる悦に合わせて激しく女を責め立てて、快感が頂きに達すると共に女の中へ精を解き放った。]*
[穿つ矛と、自分の身体だけが熱い。
心だって自分ばかり燃え上がらせている。
切なく苦しいが、それでも良いのだ。
貴方が邪魔だと言って捨てるその日まで
いいえ、捨てられたあとも
貴方の妻として在り続け裏切ることはない。
手に入れてすぐ手放す商品のひとつでも
売り払うとき少しだけ惜しくなるような
ほんの少しの愛着でも抱いて貰えたなら。
そんな奇跡を願っている。
この広い大陸。
狙いの品を手に入れていた貴方に
出逢えた奇跡があるのだから。
儚い夢を抱くことは許されても良いんじゃないかなぁ……。]
[貴方が問う。
身体はそれを望んでいる。
心も、概ねそうだ。一点の懸念事項を除いて。
足を持ち上げる手を包むように自らの手を重ねた。]
あ、貴方が……っ 嫌でないなら……っ
私がそうしても、良いのな、らぁ……〜〜っ!!
[いちばん奥に熱い迸りを感じた。
内側が一際強く締め付けて、収縮し、
一滴たりとも逃さぬとばかりに子種汁を搾り取る。
はあはあと上がった息を整えるまで、少しかかりそうだった。*]
[ ありったけの子種を女の中に撒いた。
それこそ子ができるとしてもおかしくない程に。
滾りを引き抜けば精と蜜と血が女の中から漏れ出てきた。
自分のモノも同じもので塗れている。]
綺麗になさい。
[ 声も肌も冷たいまま。
ただ雄だけは混ざり合うものに塗れたまま、その滾りを鎮めてはいない。]
[ 男は思案する。
権利を主張するのは簡単だ。
アンペールの地の返還を求めることも。
だが、本当にそれを手にするのは至極難しい。
ひとりの魔術師を相手にするのは、ひとつの軍隊と戦争するのと同じことなのだから。
だが、男は考える。
借りは返さなければならない≠ニ。
ジャンヌを妻に迎えれば大義名分は立つ。
アンペールの仇でも、領地の奪還でなんでも。
兵を雇い入れ、戦争を仕掛けたところで咎められることはないだろう。]
[ そして、何よりも。]
私のもの手を出したことを、後悔させましょう。
[ 戦争に勝つ鍵はただひとつ。
ジャンヌ・アンペール、女の持つ特異性だ。
魔女としてのその力を活かせるかどうかが、あの魔術師に勝てるかどうかの鍵となる。]
後ろを向きなさい。
[ 掃除が終われば壁を向いて後ろ向きになるよう命じる。
そうしてら尻がこちらを向いたのなら、男のモノは再び女の中へと侵入を果たす。]
たっぷりと可愛がってあげますよ。
[ 売り物にはしない、この女は手元に置く。
ならば、その身を堕としてしまうのが一番だから。
女を犯す男の動きは、強く激しく荒々しいものだった。]*
[息が上がったまま指示を受けた。
少し考えて、彼の足下に屈む。
ドレスの裾を千切って
互いのもので汚れた彼の雄を柔らかく包み
そぉっと拭いた。
口で、などという知識はなく。
こんな布切れで申し訳ないが
ハンカチは盗られてしまっていたから。
後悔させる、と聴こえてビクッとした。
考えの至らぬ娘は、
宝石を手に入れようとした自分のことだと認識した。]
ご、御免なさい……
二度と、裏切りません……
[青褪めた顔で再度誓い。
次の指示に従って立ち上がれば壁に手をつき背を晒した。]
[後ろから彼の熱が入ってくれば
こんな体勢でも行えるのだと知った。
思い込みの激しく敏感な身体を持つ女は
扱いやすいものだろう。]
ジュダス様ぁ……、ジュダス様ぁ……
[股を濡らし滑りやすくし、男を受け入れる。
決して想いの届かぬ男の名を甘えるように呼ぶ。
どんなに行為が激しさを増そうとそれは変わらなかった。]
[糸に繰られ人形は踊る。
領地領民を奪還し自らの価値を失うその日まで
愉快に魅せるのが唯一の役割。*]
[ そうして、男は女を夜が明けるまで抱いた。
途中から石室を出て、自室へ連れて行って、また犯した。
何度も犯し、口も後孔も使った。
女が気を飛ばしたのなら、その度に呼び起こした。]
…………
[ そして今は気怠さに身を委ねている。]
私のことが知りたいと言っていましたね。
[ 男は徐に声を掛けた。
今更、何を言おうというのか、自身の気紛れに少し呆れていた。]
[ 自分の過去を知る者はいない。
調べても、辿り着けないのだ。
生まれ落ちたことが間違いだった。
そうとしか思えない。
だが、そんな運命も自らの力で切り開いた。
その自負はある。
それでも過去は過去だ。
消し去ることも、忘れることもできない。]
知りたいですか?
知らなければよかった。
そういうものは確かにあるのです。
それが私の過去。
[ 忌まわしい運命。
断ち切ったはずの運命は姿を見せなくなっただけで、常に隣にあったのた。]
知りたいですか?
[ 本当に?と男は更に年を押す。
まるで自分を嘲笑うかのような表情で、男は女に問いかけた。]*
[場所を変え、体位を変え。
数えきれないほど嬌声を上げ
意識を何度も飛ばしたが
擦れた膣も枯れた喉も一時の眠りが癒した。
彼との性交はまるで獅子のそれのようだった。]
……!
[教えてくれた以上のことは
もう聞かせてくれないのだと思っていた。
自分の願いを彼は覚えてくれていたのだ。]
[シーツに包まる身体を寄せる。
知らなければよかったと言うのは
彼がその事実に傷付けられたということ。]
……。
私は聴きたいわ、貴方のこと
でも、苦しい思いはして欲しくない……
聴かせてくれるなら、お願いするけど
……辛くなったら途中で辞めてもいいわ
[その顔が哀しげに見えたから、手を重ねようとする。
彼が自分のことを少しも好きでないのは知っているから
そうされるのが嫌なようならやめておくけれど。
何を聴いても貴方から離れられる気はしないの。*]
私は落とし子です。
[ 父なき子、私生児。
言い方は幾つもあるが、つまりは父が愛人に産ませた子。]
母は愛人では無く、娼婦でしたが。
母は私を産み落とすと、この両目を潰しました。
呪われた目。
力を宿すと知っていたのでしょう。
父はそういう血筋の人間だった。
[ だが、自分の父が何者なのかを知ったのはずっとあとのこと。]
特に珍しいと話ではありません。
父は私の存在も知らないでしょう。
もう、死にましたし。
[ 過去は変えられない。
ただ過ぎ去った時間にある事実でしかない。
そんなものを辛く思うような感性は持ち合わせていない。]
生きることは苦痛でしたよ。
その日、そして次の日を生きられるかわからない毎日。
私はそれを生き延びた。
[ 己れの才覚と、そして運によって生かされた。]
目が見えないのは不便でしたが、
最初からなので不便とも思いませんでした。
何年か前にこれ≠ノ出会いました。
[ 常に付けている黒い眼鏡。
遠視≠フ魔術がかけられていて、効果範囲内なら自由に視界を飛ばすことができる。]
今、私は貴方を上から見下ろしています。
そして今は正面から。
[ 便利でしょう?と男は笑う。]
これによって視覚を得た私は、
本来の力を取り戻しました。
母に潰されたはずの呪われた目を。
[ それは幻惑の類を寄せ付けない邪眼。
その気になれば、幻惑の魔術に囚われないどころか、魔術そのものを打ち破ることもできる。]
似ているでしょう?
貴方の目と。
[ 男はナイフを手に取ると、おもむろに自分の手のひらを切り裂いた。
滴り落ちる血がシーツを赤く染める。]
ほら、わかりますか?
[ 男が一度強く手を握り、そして開いた時、そこにはあるはずの傷がなかった。]
まだわかりませんか?
私の父の家名は……
アンペール
お前は愚かな娘だ。
我が、────
妹
よ。*
[聞かされる過酷な境遇に胸を痛め
突然手をナイフで切った時には小さく悲鳴を上げた。
そうして聞かされた事実。]
…………………………。
[私は暫く、言葉を失って。]
…………御免なさい
[何度目になるかわからない、謝罪をした。]
[生きることは苦痛だったと。
そんな人生を歩まなければならなかった原因は
父の不貞、無責任な行動にある。
そしてアンペールの罪は自らの罪、だから謝罪した。]
御免なさい。
[これは私のこと。]
[許されぬ想いと知っても
私は私を変えられなかった。その謝罪。]
……愛してるわ、兄さん
[そう言って押し倒した。
気怠げだったのに悪いとは思うけど、
幾らか寝て体力のある私には敵わないだろう。]
[シーツを落とし、全裸で跨がる。]
私、貴方との子、産むわ……
[変わらぬ意思を伝えたのだ。*]
[好きになった人が半分血の繋がった兄だったなんて。
兄はどういう気持ちで妹の想いを聞き
どういう気持ちで妹を抱いたのだろう。
私の彼への想いは損なわれるどころか
より強固なものとなった。
存在すると思っていなかった兄。
誰より強くて誰より格好いい兄さん。
私だけの特別なひと。
彼が苦労してる間のうのうと生きてきた私は
私が貰ってきたぶんの愛情を上乗せして
より彼に尽くすと決めた。
アンペールのすべても取り返して捧げると決めた。
貴方が持つべきものだわ。
無能な私と違い、実力と運を掴み生き抜いた兄さん。]
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