94 【身内】青き果実の毒房【R18G】
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なおひーがつめたぁい……
「んん、いや……その前も、ヤった。結果出た後が二回目
」
もにょ、と答える。自分から言い出した事だぞ。
他人の回数なんて数えようとは思わないけれども、もしかしたら少ない方だ。たぶん。カガミンむずかしいことわかんない。
「暴力ってさぁ、痛いじゃん。オレ、痛いのも我慢するのも好きじゃないんだよね。
気持ちイイとかワルイとかそういうのも、よくわかんなくなるからイヤ。
……ぐちゃぐちゃになって、自分がなんだかわかんなくなるの。怖くなぁい?」
たぶんへーき、とへらりと笑う。
原型を留めぬ程ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた杏仁豆腐も、口の中に入れてしまえば貴方の食べたものと何も変わらない。
迷彩
その熱の苦しさは理解しているつもりだ。
だからこそ大切な弟分を、拒めない。放ってはおけない。
「、ひっ」
体勢が変えられ、耳を、本来受け入れる場所ではないそこを弄ばれれば小さく声が漏れて、慌てて唇を噤む。
「────怒らない。
それ、苦しい……よな、早く楽になりたいよな………。」
貴方の頬へ手を伸ばし、
ゆるりと撫ぜれば、許す、と囁いて
水音を立てる自らの窪みへ指を挿れる。動かす。
増やして、広げて、WいいところWを探るように。
あいつはもっと、こう、
痛みへ対する防衛本能か、
快楽の貪り方を覚えた身体が疼いたのか───
それとも貴方の熱に、当てられたのか。
暫くはそうして、水音だけが廊下に響いた。
次第に瞳が緩み、甘い吐息が漏れ始めれば指を引き抜く。
誘うように、貴方へ熱のこもった視線を向けた。
現場からは以上ですのつもりが思ったより続いていました。
この後食堂に行って、一緒に飲み物を飲みながらお話していたわよ。リョウちゃんが普川の分のコーヒーを淹れたけど、フィルタはお湯を素通しするだけになっていました。つまりそういうことです(カップに直接全てのコーヒー粉が入れられたコーヒーが爆誕した)
。リョウちゃんはココア。
段々コーヒーの味に疑問を持っていって、最終的に粉でむせる普川の姿がそこにあった。それ以外は終始穏やか和やかな平和風景でしたのわよ。
闇谷
頬に手を伸ばされれば、甘えるように涙を擦り付ける。
同じ孔を共に弄り、水音と荒い吐息だけを鼓膜に入れた。
指を引き抜く感覚に気付き、上体を起こす。
自分と同じ、熱を孕む視線を覗き込む。
自分がそうさせた。させてしまった。知っているくせに!
「……はぁ、」
ズボンと下着を中途半端に下ろし、とっくに勃ち上がっていた性器を露にする。
先日遊び道具にしていた避妊具のことなど、すっかり忘れていた。
濡れそぼった孔に先端を当てがう。
衝動を必死に堪え、震える唇で言葉を作る。
「────、ごめん」
言うが早いか、一気に最奥を穿った。
オレにはもっとあったかくしてなおひ〜
「そっかぁ。皆同じくらいなんだねぇ」
安心しているがこうしている間にも回数増やしてるよ皆。ぜったいそう。
「痛いの、好きな人なんていないよぉ。ふみちゃんはいるって言ってたけどさぁ。
……えぇ?嫌がるのにも需要あるの?ヘンなヒト多いなぁ」
カメラが回っているのを覚えているのか忘れているのか、堂々のディス。
「うんうん、嫌だよねぇ。なおひーがいっぱい早口で喋っちゃうぐらい嫌だよねぇ。
……やっぱり怖くなるよね?よかったぁ。オレ、『普通』だ」
へらりと笑って大きな口でどろぐちゃな杏仁豆腐をきちんと食べた。ごちそうさまでした。
迷彩
自分達が今何処に居て、何をしているのかなんて
最早考えられない程に思考は蕩けていた。
「ぁ、────ッ!」
はく、はく、と口を開閉する。
勢いよく挿入された性器が、やけに熱い気がする。
薄い壁がないせいだと知るのは、きっと互いの熱が燃え尽きてからだ。
内側から揺さぶって、焼き割かれてしまいそうな感覚。
何度受けても慣れようが無い。
「ッ、……んぅ、………!」
がぶ、
漏れる自分の嬌声が、吐息が鼓膜をくすぐって、かっと赤面する。
反射的に己の手の甲に歯を立て、声をくぐもらせれば
内心でほっと胸を撫で下ろした。
誰にも見つからないように、
このまま誰も通り掛からないように。
紫の瞳は貴方を通して、貴方以外に意識を向けている。
鞄の中のレンズが、まるで二人を煽るかのようにちかりと光った。
| ここ最近、用意してもらってばかりだ。 だからたまには自分でも準備しようと思って、部屋を出た。
彼はいつも美味しいお菓子を手に戻ってくる。外れだった事なんて一度もない。 自分は果たして彼のように二人とも気にいるような菓子を見繕うことができるだろうか、なんて甘いふわふわとした計画を立てながら歩く。
なんてことない、ここに来て、闇谷と同室になってから幾度となく行ってきた楽しい時間の一つだ。自分にとってはすっかり日常として組み込まれている。
今現在自分が過ごしている日常は、いとも容易く崩れ去るような脆いものへと変わっているというのに。 (13) 2021/09/23(Thu) 2:57:38 |
| かん、と革靴の音が一つ。
「……?」
すっかり見慣れた景色となった廊下。それなのに、どこか違和感を抱いてしまうのは何故だろう? 靴音が引っ込んだ空間に耳を傾ける。
誰かの声。 それにしては、まるで内緒話をするかのように声を潜めているような気がするが……。
先ほどよりは落ち着いた足取りで声のする方へ。 声を潜めたくなるような話をするのであれば、こんな廊下なんて開けた場所で行うべきではない。そう言ってやろうなんて思いながら曲がり角を曲がって──
──重なり合う影が、二つ。
「……っ」
小豆色の瞳がかすかに揺れながら、その姿を見てしまった。
「迷彩…………と、暁……」 (14) 2021/09/23(Thu) 2:59:14 |
| >>15 普川 「……ッ!」 声を上げることはなかった。だが、唐突に背中にかかる重みに少年は激しく体を跳ねさせる。 首を少しだけ回し──それでも声と話し方で誰かは瞬時に分かっているのだが──やってきた相手を確認すると、「ふ、かわ……せんぱい?」とかすれた声をどうにか紡いだ。 貴方が背中にくっつくような真似をするとは思っておらず、普段あまり動かない表情筋はこれでもかとよく動き心底驚いた様子を浮かべていた。 「……いえ、あの。俺の用事は後回しでもいいんです。 それよりも普川先輩、あの、聞きたいことが……」 しなだれかかる貴方に肩を置いて申し訳なさそうに体勢を変える。 向き直ってから、ずいと顔を近づけた。 「…………先輩。あの──」 ▽ (16) 2021/09/23(Thu) 4:12:19 |
| >>15 普川 「他人の性交渉現場見た時ってどうしたらいいですか?」 本人は至って真面目である。 本人はそれはもう本当にすっごくしっかりばっちりとんでもなく真面目なのである。 (17) 2021/09/23(Thu) 4:12:46 |
| >>18 普川 「悪いご冗談を。そういったことはよくないです普川先輩」 真面目堅物人間はそう答えた後、唇をきゅっと結んで首を横に振った。NOだそうです。 「……キスと性交渉は違うでしょう。それに、相手は……その、俺の知人友人ですし……見て見ぬふりをしていいものかどうか……。 ……あの、毛布とか水とか用意したり「立ち入り禁止」の看板立てた方がいいのではと考えているのですが、どうですか?」 もしかして:AVスタッフか何か (20) 2021/09/23(Thu) 5:32:12 |
「んー……?」
インスタント、ドリップするだけのやつ、豆を挽くとこからするやつ。それらを飲み比べて、普川は首を斜めに傾けた。
「美味しいんだろうけど、なんかちがう・・・・・・・・・・・」
普川がこれまでに水筒に入れてきたコーヒーはずっと、インスタントコーヒーだった。知識としては、豆から淹れる方が普通は美味しいはずなのだが。
「…元々別に、好きくはなかったしなぁ………慣れかぁ…………」
一応、その日は豆を挽いたコーヒーを冷やし、翌日水筒に入れていた。飲んでやっぱり、インスタントが好きなんだなと再認識した。
闇谷
奥に辿り着く。気持ちいい。
腰を引く。気持ちいい。
また奥を目掛けて、打ち付ける。気持ちいい。
「は、……ァ、ふ、」
身体ごと壁に押し付けるように、何度も穿つ。
律動の度に涙が溢れ、貴方の腹を汚す。
これまでに教わったことなど、少しも頭になかった。
けれど、腹側の一点に触れれば締め付けが返ってくる。
只それだけの理由で、そこを目掛けて何度も突き上げた。
「……っ!ごめ、んッ、もう、」
駄目だとわかっているのに、我慢が効かない。
貴方の背中に手を回し、きつく抱き寄せる。胸元に額を擦り付け、きつく目を瞑る。
吐精の気配が、背後まで近付いている。
意識の外で鳴った靴音など、気付きもしなかった。
| >>22 普川 「……っ」 はく、と唇が戦慄く。 どこかで線引きをしていた。ここを超えたら恥ずかしいものだと。ここを超えるまでは子供でも出来る戯れだと。 「……二人だけでするはずの秘め事。 ……………………言われてみれば、そう、ですね。 俺は……肌を重ねることを特別視していた。 先輩の言う通り、口づけの時点で当事者の間だけで秘めるべき触れ合いなのは確かなのに」 セックスが大人だけに許された特別な行為だと、どうして思い込んでいたのだろう。 現に自分は、自分の想い人は、少年たちは、こうして容易く一線を超えてしまっているのに。 いつの間にかからからになった口の中でなんとか舌を動かして、「教えていただきありがとうございます」と小さく紡ぐ。藤色の髪が、言葉に合わせてぱさりと前に倒れて揺れた。 (23) 2021/09/23(Thu) 13:09:06 |
| 貴戸 高志は、朝倉の姿を見つけると声は出さなかったけど体が強張った。ぎくり。 (a15) 2021/09/23(Thu) 13:32:14 |
迷彩
浅く息を吐く。
忙しなく上下を突き上げられる感覚にくらくらする。
「っ、ぅあ、あ、あぁッ!?」
ごりごりと容赦なく弱点を責められれば
浅ましく快楽を貪る声が抑えきれずに廊下に響く。
「あッ、ぅ、んんん、っ」
互いの結合部から溢れる水音ばかりが耳に入ってきて
足音ひとつに気付くこともない。
手の甲を更に強く噛み締めて、口内に鉄錆の味が広がり一層眉間を寄せた。
後孔が貴方をぎゅうぎゅう締め上げる。吐精を促すように。
抱き寄せられれば、それを受け入れるように貴方の頭部へ腕を回し、抱きしめる。
自身の張り詰めたものが互いの腹に挟まれ、ふるりと身を震わせて先走る液を吐き出す。
より一層、貴方を絶頂へと誘うだろう。
体の境界線を溶かしていく感覚。
目尻に雫が降りてきて、視界がぼやりと揺れた。
| >>24 普川 ぽんと乗せられた手を追いかけるように、目が上へと揺れた。 何度もぽふぽふと頭を撫でる仕草と、静かに話す貴方の顔を不思議そうに交互に見つめている。 「……知っているつもりでは、あります。…………自惚れでないのなら。 俺は、例え余計なことだったとしても、俺は…………」 少し間を置いて、言葉を最後まで紡ごうとした時だった。 ──声がする。 耳がそれを拾い上げた瞬間。 言い切るべき事も、貴方の「覗いていいか」の問いも、何もかも投げ出して。 体が、勝手に動き出す。 (25) 2021/09/23(Thu) 14:14:16 |
| >>+30 >>+31 廊下 「っ、暁ッ!?」 先輩と呼び敬う相手との会話さえも投げ出して。 闇谷の声が響けば反射でそちらの方へと体が弾かれるように動いてしまった。 ぱっと藤色が舞う。かつんと靴が焦って一際高く鳴いた。 壁に手をやりながらも、曲がり角から心配の色を滲ませた顔を覗かせて── 「……ッ」 小豆色の瞳は、捉えてしまう。 相手の頭をかき抱きながら、蕩けた顔を見せる想い人の顔を。 潤んで揺れる、紫色を。 (26) 2021/09/23(Thu) 14:15:09 |
闇谷
「────ッ!」
一部だけを切り取れば、甘えるような仕草だ。その実、腹の中に欲を放っていた。
ふう、と貴方の胸に息を吹き込んだ。その吐息はまだ熱い。
「ん、……」
吐精したにも関わらず、自身は未だ硬いままだった。
抜かないと。
そんな意思とは裏腹に、腰が揺れた。奥で吐き出した精を擦り込むように。
するとようやく少し収まった気がして、腰を引き始める。
結合部から水音が響く。引き抜こうとする度に、温かい内壁が敏感な箇所を撫でた。
「……、」
あと少しで抜けてしまう。
そう思うと、どうしても消えない寂しさが背中を押した。
「ごめ、……っ!」
霞む視界の中。
──再び、貴方を貫いた。
自身の快楽だけを追い求める、思い遣りなどほんの少しもない、獣のような交わりは終わらない。
廊下
───名前を呼ばれた気がする。
暖かい、安心する声色だ。
……きど?
淫欲に溺れていた意識に冷や水が浴びせられたかのように目を見開いて、途端にぼやけた世界が、かちりと小豆色に染まった。
「── 待っ、止めて、
リョウ!待ってッ!き、きどっ、
ふ、ぁっ、
見っ………んん、あっ、
」
力の入らない腕でゆるゆると迷彩を押し返そうとするが、体は欲を貪るのに精一杯で、行為を中断させるまでには至らない。
体内の性器が強く脈打って、熱が吐き出される感覚。何だこれ。知らない。熱い。知らない。混乱。色んな思考があぶくのように浮かんではぱちぱち消えていく。
「待て、あっ、止まっ、んぅ、見ッ、……」
嫌がる言葉と共に甘い声が漏れ、意思とは裏腹に肉壁が畝り暴力的な悦楽に身を痙攣させ
ぱた、と白濁を吐き出して、絶頂を迎える。
「はーーっ、は、ぅあ、あっ、あ、んん、ふっうあ、あ……、……っ!……!!
」
息を整えようにも、達して敏感になった場所を殴り付けるように再び揺さぶられれば、それを止める術はない。
ただ声を押し殺して、涙を溢した。
闇谷
揺れる視界の中で拒絶を聞いた。
当たり前だ。
彼には想い人がいるのだから。
自分はそれを知っていて、
応援する気持ちさえあるのに。
どうしてこんな、人の気持ちを踏み躙るようなことをしているのだろう?
「……っ、ごめん、ぁ、ごめん、ごめんなさ、」
謝罪を繰り返す間も、責め立てる動きは緩まない。
押し返そうとする腕を掴み、自重で押さえ込む。
どうすれば抵抗する人間を組み敷けるのかは知っていた。かつて、襖の隙間から何度も見たのだから。
「ぅう、ぁ、……ッふ、うぇ……」
顔をぐしゃぐしゃにして、大粒の涙を零して、ひたすらに欲を追い求める。
早く、早く、終わってしまえ。
意図的に抽出を強め、残る熱を焚き付けた。
肉壁が収縮する箇所を、何度だって無遠慮に穿つ。
「…………ッあ!」
全身が大きく脈打った。
自分が再び達したことを、すぐには気付けなかった。
| >>+34 廊下の二人 貪られている少年の叫びも、熱に侵されている少年の懺悔も、どれも等しく踏み超えて。 藤色の軌跡を宙に描きながら、いっそ無粋と言えるほどに堂々とした足取りで少年たちの望まない饗宴に割り込んだ。 「……悪いがそこまでだ。 迷彩、辛いだろうが止めさせてもらう」 これが嬌声だけであったのなら態度も違っていた事だろう。だが貴戸が耳にしたのは泣きながら紡がれる謝罪だった。ただの戯れではないと判断して、少年は馬鹿が付くほどの真面目さを持って声をかける。 相手を抱いている少年が達した頃を見計らい、「すまない」と断りを入れて両脇に腕を滑り込ませて後ろから引き剥がそうと試みる。 それから白を基調とした上着を脱ぎ、迷彩の下半身を隠すようにそっとかけようとする。汚れるといった懸念は初めから頭に無い。微塵も躊躇せず行われる事だろう。 これらは全て、迷彩少年が暴れなければの話だが。 (29) 2021/09/23(Thu) 18:29:12 |
廊下
「ぁ、……」
脇の下に腕を滑り込まされた瞬間、僅かに肩が跳ねる。
しかし背後から引き剥がされれば、素直に身体を委ねた。
ようやく顔を上げる。
最もいてほしくなかった姿が、目の前にある。
「うああぁ……、ぅぐ、えぇ……」
かけられた上着を手繰り寄せた。膝を抱え、白い生地で目元を覆う。
自分が泣く立場でないことくらいは理解できる。
それでも溢れる涙を隠そうと、歯を食いしばった。
廊下
見るな、と言ったのに。
組み敷かれていた腕が解放される。
ほっと安堵しつつ、獣のように熱を燻らせていた弟分は大丈夫だろうかと一瞥。
……嗚呼、泣いて欲しくは無かったのにな。
「…………ごめん、きど、
リョウは……悪くなくて、
俺が良いって、言った……から。」
それだけ告げると上体を起こそうとして、うまく力が入らず諦めた。
下腹部が、内側から白濁が溢れて来て、ずくずくと鈍痛を訴えてくる。
床に散らばる、貴方も見覚えがあるだろうポップコーンを指差して
ぷつん、と意識を落とし、瞳を閉じた。
| >>+35 >>+36 廊下 視線を素早く泳がせ、途切れ途切れの言葉を受け止めて思考を巡らせた。 「ああ。分かってる」 端的に返事をしながらしゅるりと自身のネクタイを解いた。手際良くボタンを二つほど外せば、シャツの間から鮮やかな赤い噛み跡とチョーカーを模した異能抑制装置が覗いた。 物を大切に扱うよう躾けられた貴戸がチョーカーを半ば引きちぎるように外したのは、冷静に見える内側が少なからず乱れている証拠なのかもしれない。 「──暁。頑張ったな」 それだけを呟き、静かに闇谷の唇に自分の唇を重ねた。 貴戸高志の異能内容は"感覚を一つ遮断する"。 普段は抑制装置が働いているが、これを外して条件を満たせば自分以外も対象とすることが出来る。 その条件とは──"相手の唇を奪うこと"。 唇を介して、相手の感覚を弄る。 闇谷から奪うものは痛覚。少なくとも (5)1d6時間の間は物理的な痛みはなくなるだろう。 それでも傷つき叫ぶ心の痛みだけは遮断することが出来ない。 きっと一番痛がっているのは、そこの筈なのに。 ▽ (30) 2021/09/23(Thu) 20:28:45 |
| >>+35 >>+36 廊下 ボタンを留め、ネクタイとチョーカーを彼にしては雑な動作でズボンのポケットにしまう。 一度闇谷の頭を撫でてから、今度は藤色の髪は迷彩の方へと流れていった。 「迷彩」 少年の名を呼ぶ声はひどく穏やかだ。 上着で顔を隠した彼の頭を、ぽんと小さく叩く。叩くといっても、あまりにも力が入っていないため撫でると言った方が正しいかもしれない。 「俺は今から暁を部屋まで運ぶ。 そうしたら、今度はお前の番だ。自室でも、戻りにくかったらどこかにでも。送り届けよう。 きっと気にするだろうから、お前は悪くないとは言わない。俺はお前をきちんと叱る。 だから、叱られたくなかったらこの場から離れること。悪いと思ったら、俺に叱られても構わないと思ったら、待っていてくれ。 ……出来るか?」 極めて静かで落ち着いた声が、貴方の頭上に降ってくる。そこに怒りなどは一欠片も混じっていなかった。 (31) 2021/09/23(Thu) 20:29:39 |
廊下
名前を呼ばれ頭に手を置かれれば、びくりと体が震えた。
恐る恐る、赤く腫れた目を見せる。
しかし、視線は合う前に下へ戻ってしまう。
「……」
俯きながら、穏やかな音を耳に入れる。
貴方の言葉は、少年には少し難しかった。
「……うん」
だから、咀嚼したのは最後の一言だけ。
叱られるのは怖いけれど、
このまま許されるのはもっともっと恐ろしい。
少年は膝を抱えたまま、貴方が戻って来るまで待ち続けるだろう。
なおひ〜〜〜〜〜
「え。ふみちゃん痛いの好きなんだ……へぇ……」
知らん言ってるのにするっと信じた。事実無根の風評被害だ。
「だって、ねぇ?皆普通じゃない事を、怖がるんだよ。
『普通』じゃないヒトを遠ざけて隔離して、そうしてようやく安心するの。だからオレ達ここにいるんじゃん。
納得はしてないけれど、オレが『ちょっとだけ』普通じゃないらしいってのはわかってるよぉ。
だから、『普通』ができてると嬉しいの。
『トモダチ』が離れちゃうと、困るからねぇ」
そうしてやはり、いつものようにへらっと笑う。
重ねられる食器を席に着いたまま、ありがとう〜と見送る。
何も言わなければ持ってきてもらった時と同じく、貴方が片付けるのをただ見守るだけだ。
自分の意思で決めたことなど、一体幾つあるというのだろう。
自分はまだ18年しか生きていない。大人からすれば鼻で笑われるような、青くさい少年でしかない。
けれど自分にとってはそれが全てだ。
某日、消灯時間さえも過ぎた頃。
談話室に居座って、端末の明かりだけを頼りにディスプレイの文字を追いかける少年が一人。
風情も何もない白い光に濡れる涼やかな顔は、相も変わらず生真面目さを押し出したかのような仏頂面のままだ。けれどよくよく見ればその眉間には少し皺が刻まれているし、唇は普段よりも固く引き結ばれている。
指先と視線は幾度となく端末の中の文字をなぞり続ける。
その殆どは、"報酬"の欄。
「…………」
おもむろに瞳が緩く細められる。睨むような鋭い眼差しで穴があきそうなほどに端末を注視した。
彼は全てを放り投げてまで隣を選んでくれた。
無実を証明できる機会を、太陽のもとで大手を振って歩く機会を。ありとあらゆる自由の可能性を。
自分は相手に何を返せているだろうか?
自分は相手にどれだけ負担をかけてしまっているだろうか?
尽きない悩みがぽたぽたと心に降り注ぐ。昔は殆ど揺らぐことのなかった水面が波紋を生んではぐらぐらと乱れた。
心情を表すかのように端末を持つ手が小さく震えた。みし、と機器が小さく悲鳴を上げてもお構いなしだ。
「……きっとお前は、気にするなと言ってくれるだろうけれど」
"何処でも、お前が居たら幸せだと思う。 "
鮮やかに甦る声。
声だけじゃない。肌を刺す空気も、その前に口にした甘味の味も、あの時間を形成する何もかもが脳と心に刻まれている。
「…………暁。俺も」
俺も、お前がいてくれたなら、きっと。
「──何処でも、幸せだと思う」
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