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【人】 分校教諭 添木 卓郎──回想・廃校舎備品庫── [ 灰褐色の謎めいた空間に送られ、早24時間。 右も左も非現実的なそこに、 居るはずのない懐かしい人物が立っていた。 >>2:102>>2:103 ] 『─── 添木先生!!!』 [ 涙で顔を歪ませる彼女に、4年前の自分ならば はははっと軽快に笑って 冗談の一つも言ったかも知れない。 (6) 2021/02/08(Mon) 7:45:24 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ しかし、この4年で色々な事が変わってしまった。 込み上げる喜びと同時に沸き起こる後悔が 胸中を駆け巡り、 気付けば彼女に頭を垂れるような姿勢に なっていただろうか。] …悪かった。 あの時、俺はお前らを置いて逃げてしまった。 [ そう言って、4年前の"事件"を思い出す──] (7) 2021/02/08(Mon) 7:46:02 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──回想・4年前── [ 俺の引率した林間学校で 1人の生徒が失踪した。>>2:43>>2:44 普段素行の悪い彼女のことだから 宿舎を抜け出してろくでもない奴とつるんで るんだろう。そんな噂が実しやかに囁かれていた。 果たして、捜索の結果その通りだった。 ──同時、世間を騒がせていた宗教団体があり。 彼らは山奥で集団生活をしながら"修行"をしていた 雛市はろくでもない奴とつるんでいる内に 宗教に引っかかり、入信していたそうだ。 彼らが"修行"を行う拠点が林間学校の行先の 近場だった事を知り、またとないチャンスだと 脱出を測ったらしい。 ] (8) 2021/02/08(Mon) 7:46:28 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ しかし、何故雛市は学校を抜け出せた? と人々は疑問を持つ。 そして、「林間学校の宿舎内部で手引きをした 人間がいるのでは」という憶測が広がり、 俺がその協力者ではと疑われたのだった。] (9) 2021/02/08(Mon) 7:47:02 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──『事件当日、雛市が最後に発見されたのって 宿舎近くのバーらしいよ。』 ──『そういや添木、「俺は林間学校行ったら こっそり酒開けるの楽しみにしてるぜー」 とかなんとか言ってなかったっけ? ──『うわ、やっぱりあいつが グルだったんじゃね?』 ──『てかさ、前からあいつらよく廊下で 楽しそうに話してたけど。 ……もしかしてデキてたんじゃねーの!?』 ──『うわー。ありそー!』 ──『きゃははっ!』 ──『ホント引くわー。』 (10) 2021/02/08(Mon) 7:47:54 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 当然、俺はバーなどには行っていない。 しかし、阿呆のような話だが、 「添木と雛市は実はデキていた」という噂は 生徒の間で信じられてしまった。 他にも何も証拠はなかった。しかし。 俺は監督不行き届き兼生徒との不適切な交友という 事由で葵学園の職を解かれた。] (11) 2021/02/08(Mon) 7:49:44 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 一応、証明する事自体はできた。 俺が雛市とデキてるはずがないという事実を。 しかしそれを口に出すことができるだろうか? ──学園を去るその日まで、 ずっと声を上げて俺の無実を主張してくれた 女子生徒がいた。 彼女にだけは分かっただろう。俺の無実を。 何故なら、俺は── 夕凪の事が、好きだったから。] (12) 2021/02/08(Mon) 7:50:54 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──時は戻り、2日目備品庫── [ ずっと慕ってくれた彼女。 無実を主張し続けてくれた彼女。 結局…俺はなにもしてやれなかった。 垂れた頭を上げることができない。 …しかし。目の前の彼女は零れた涙をとうに拭き きっと顔を上げている。>>2:103 俺も顔を上げねば…と思いながら、 思うようにいかなかった。] (13) 2021/02/08(Mon) 7:51:10 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 彼女は自分の身に起こった事を話してくれた。 こちらも気付いた事を話し、情報共有。 『また、後でな』 そう切り出したのは俺の方だったか。 すぐ離れてしまったのは、自分の中に幾ばくかの 後ろめたさがあったせいだろうか。 図書室に戻るという夕凪。>>2:130 彼女が去れば、1人になった備品庫で再び マットに寝そべり、しばらく過去の事や 現状の事を取り留めもなくぐるぐと 考えただろうか。]* (14) 2021/02/08(Mon) 7:52:27 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──回想・廃校舎備品庫── [ 初めてちゃんと言葉に出来た謝罪の言葉を 夕凪は黙って聞いていた。>>33 目の前の顔を直視できず、目を伏せたまま 息を詰めて返答を待つ。 ……告げられたのは、意外な言葉だった。>>33 ] (66) 2021/02/08(Mon) 21:31:19 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎(生徒達が、俺のことを信じていた?) [ 目頭を拭いながらも、 へへへっと殊勝に笑顔を作る彼女。 遠い昔、国語の成績をグッと上げた彼女に 廊下で声を掛けて褒めた時、 こんな笑顔をを浮かべていたっけ。 当時はひたすら赤くなって、 慌てて目を伏せていたばかりだった。] (67) 2021/02/08(Mon) 21:31:46 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ でも今は俺の目を見て 俺の間違いを、正面から正してくれている。] (──成長したんだな。この4年で。) [ 眩しい、と思った。 夕凪だけじゃない、彼女の語り口から あの時の生徒達だってきっと真っ直ぐに 成長したのだろうと、察することができた。] (68) 2021/02/08(Mon) 21:32:24 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ それなのに、自身の口から出たのは 「また、後でな」の言葉。 ──林間学校の最中に雛市の逃走事件があり、 彼らの青春の一幕に傷が付いた、と思った。 自分がその傷をつけた一人なのだとも。 ──だが、奴らはとっくに過去の事を 受け入れて次に進んでいて。 ずっと過去を引きずり、泥沼に嵌っていたのは 俺自身だったのだ。 こんな心の内など彼女に伝えられる訳もなく。 放たれた一言は彼女にどう伝わっただろう? ふと冷静になってそんな事を考え ]*そして激しく後悔するのはこの二日後、 タロット探しのリミットも差し迫った時刻に なってからだった。 (69) 2021/02/08(Mon) 21:33:14 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──図書室へ── 何であの時…俺は…!! [ 時は移り、廃校舎に送られて3日目の夜。 鈍色のまま変わらない天候は時刻を知るには足りず 腕時計を持たない俺は、 周囲の人間の忙しなく動き回っている様子から 間も無くタイムリミットが訪れる事を感じていた。 柚乃のかけ声を背に、砂場を後にし図書室へ。 >>3:176 …時間がない。ない。 タロットを見つけられないとはつまり ここに永遠に閉じ込められるという事。 そんな生きるか死ぬかに近い瀬戸際にいながら、 しかしその傍ら、突き上げるような後悔が 胸中に押し寄せる。 ] (70) 2021/02/08(Mon) 22:08:32 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 息を切らせて走りながら 思い出すのは2日前の夕凪との事。 失意の中にいた自分を掬い上げようと してくれた彼女の言動を、俺は無碍にした。 過去を乗り越えて成長を続ける生徒達と、 過去に囚われた自分の差に打ちひしがれて。>>69] (71) 2021/02/08(Mon) 22:11:54 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ そしてもう一つ、気付いた事がある。 この4年間、夕凪を教えていたあの日々は 無かった事だったのだと自分に思い込ませていたと 何故なら、俺は教師で 彼女は生徒だったから。 彼女の純粋な想いを分かっていて、 それでいて、敢えて何も言わずに立ち去ったのだ。 ──でも、本心は? ──この4年間、ずっと。 会いたかった。 ] (72) 2021/02/08(Mon) 22:14:45 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎(結局俺が逃げてただけじゃねぇか…!) [ ここまま俺だけこの場所に 閉じ込められるならいい。 ただ、彼女が戻ってこれなくなったら? また、もし、俺がタロットを手に 入れられたとして。 「また、後でな」の言葉だけ残して 自分だけのうのうと現実世界に戻る? ダサすぎやしないかそれ。俺は馬鹿なのか。 図書室の本に挟まっていたタロットを取り、 そこから夕凪を探そう。 そう算段し、絶対に間に合う、と自分を鼓舞した] (73) 2021/02/08(Mon) 22:23:36 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ そのまま勢いよく図書室に飛び込み、 そして、目に入ったのは… 夕凪の姿と、『痴人の愛』と、 タロットカード。>>44] せん、せい……? [ 2日前、あんな風に突き放したのに。 彼女は変わらぬ態度でこちらを見ている。] タロット、手に入れられたんだな。 良かった。 [ 自分のタロットがまだ無い事など忘れて、 夕凪だけは助かるのだ…と安堵が広がった。] (74) 2021/02/08(Mon) 22:33:34 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎一緒に、帰ろうか。 [ 夕凪の正面に近づき、彼女が座っているならば 頭の位置をを下げて目線合わせながら そう、声を掛けた。 もしこのタロットを他の人と使う予定ならば その者に譲り、自分は初日見つけたタロットを 探そうと。 そのタロットは今同じ部屋の机の上にあり、>>3 丁度死角の位置にネリーがいるのだが、 そのことはまだ知らず。 きっと探し始めればすぐに机上の本を見つけ、 もう一枚のタロットを手にする事が出来るだろう]* (75) 2021/02/08(Mon) 22:50:18 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 片膝を付き 座る彼女の顔をよく見ようと覗き込んだ。 自然、目と目が見合う形になる。 刻一刻と迫るタロットの期限。 それなのに、 数分前の焦りが何処かへ消え去ったかのように 今はこの場の時が止まっているように感じるのは 何故だろう。] (83) 2021/02/09(Tue) 21:15:22 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎 (85) 2021/02/09(Tue) 21:16:33 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 細く柔らかな指は髪に絡むように動いた後、 そのまま額を、目元を、 伝うように滑る。 彼女の指先は少し冷たかっただろうか。 だが…それに触れられた場所は熱を持ち 自分でも呆れ戸惑うような火照りを残してゆく。 沿わせた指先は頬まで来たところではたと止まり、 そのまま小さな手のひらが、左頬を包んだ。] (86) 2021/02/09(Tue) 21:17:46 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ そして離される、彼女の手。 離されてもなお 触れられていた左頬は、じんと灼けつくように熱い ……4年前に初めて出逢ってから。 廊下で模試の成績を誉めた時も。 俺の無実を訴えて続けてくれた時も。 ずっと、彼女の想いは変わっていなかった。 ならば今度こそ、俺が応える番じゃないか。] (87) 2021/02/09(Tue) 21:18:42 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 自然と湧き出る感情のままにそう答え、 続いて告げられる言葉に 最初から分かっていたさ、と言わんばかりに頷き 微笑む。] (88) 2021/02/09(Tue) 21:22:17 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ そう言って、 丁度腕を上げた夕凪の手を左手で取る。 そして、そのままの体制で 右手で夕凪の肩に触れ、自分の元へ引き寄せた。]* (89) 2021/02/09(Tue) 21:43:53 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ ──そして、刻は来る。 地面が唐突にヴゥンと音を立てた。 2人で握りしめたタロットは 段々と眩い光を放ち始め その光は放射状に広がり 2人の居る空間だけを包み込んだ。 眩むようなまばゆさに目を細めたのち。 最後に、去りゆくこの地を目に焼き付けようと 空間を見渡す。] (90) 2021/02/09(Tue) 21:45:04 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 結局この場所は何だったのだろう。 ──ネリーは。スバルは。 ──過去から来たという柚乃は。 再び気を失う直前、 自分らの居る空間の床が ぼろり、と崩れるのを、見た気がする。 ──まるで、建物の倒壊のような。] (91) 2021/02/09(Tue) 21:48:31 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 疑問は渦巻きつつも、 掴んだ恋人のタロットを手放す事は決してなく。 あと一秒でも、一瞬でもいいから 目の前の大切な人と時を共有していたい。 再び気を失う最後の瞬間まで そう、考えていた。 ]** (92) 2021/02/09(Tue) 21:50:01 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 文字通り、崩れていく世界の その中心で。 溢れんばかりに満たされる心と 比例するかのように湧き上がる、 一つの不安があった。 ──この場から帰れば、此処で起きた事を 全て忘れてしまうのではないか? 俺は全て忘れてしまうのだろうか。 ここで出逢った人も、この場所を探索した事も それによる気付きも、 ……夕凪と再会した記憶も。 ] (93) 2021/02/09(Tue) 22:11:14 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎 (94) 2021/02/09(Tue) 22:12:23 |
添木 卓郎は、** (a1) 2021/02/09(Tue) 22:13:40 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎 (115) 2021/02/11(Thu) 1:35:46 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ そのまま大人しく腕の中に 収まってくれた…と思いきや、 彼女は自ら、首元に顔をうずめて来る。 首筋のこそばゆさが伝えるのは 小刻みの呼吸。 次第にそれが落ち着いた…と思った刹那 ふいに、彼女の唇が重ねられた。] (116) 2021/02/11(Thu) 1:36:10 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎 [ タロットから放たれた光は眩しさの臨界に達し あとは闇の帳が降りるのみ。 周囲の空間は現実味を伴わず 夢かと錯覚してしまいそうなほどだ。] (117) 2021/02/11(Thu) 1:37:04 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──なんだ。 ちゃんと大人になってたじゃないか。 ──生徒の成長ってのは いつだって早いもんだな。 [ 塞がれた口角は自然と上を向く。 そして、もう一度強く彼女を抱きしめようとした その時── ] (118) 2021/02/11(Thu) 1:37:46 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎──after── [ 掌に乗せた顎がずるり、と滑り 顔面が机に衝突しかけるのを すんでのところで耐える。 どうやら俺は頬杖をついて デスクの上で眠っていたらしかった。 上体を起こし周囲を見渡せば ここは無人の職員室。 しかし、立ち込める埃臭さも鈍色の空も そこには無く。 窓を見やれば、茜色の空に照らされた 波一つない海面が、きらきらと輝いていた。 平和な日常だ。気怠さを感じる程の。] (127) 2021/02/11(Thu) 23:26:09 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ ついさっきまでいた空間は、 夢を見ていた…にしてはあまりに 生々しいモノで──特に最後に夕凪と抱き合った 感触は未だに全身に── 彼女の付けていたルージュが 自分の唇にしっとりと残っているような 錯覚を覚えた。] (128) 2021/02/11(Thu) 23:27:25 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎『……先生が急に居なくなって。 私たちが先生を軽蔑したと、先生がそう 思っていたなら、 今も、そう思っているなら それは違うよ、って、皆伝えたかったの。』 (129) 2021/02/11(Thu) 23:27:57 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ …確かめる術は、ある。 4年前の出来事についての事実確認。 そして、夕凪と記憶を共有しているか否か。 それでこの摩訶不思議な体験の裏付けが出来る。 あの時は自分と夕凪の事に必死だったが 元の世界に戻ってこられた今となると あの場で知り合った者達──ネリーや柚乃、スバル (彼らは全員間違いなく帰還できているだろう) と連絡先を交換しておけば良かったな、と考えた。 そうだったら事が一件落着した今からでも この事象についてある程度の説明を加えられた かも知れない。] (130) 2021/02/11(Thu) 23:28:38 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ しかしまずは…知っている人を訪ねるのが先決だ。 当然、理由は事実確認だけではない。 夕凪に貰った暑中見舞いの葉書。 ここに書かれた住所に行くには、 1日2度出港のフェリーに乗り、各停に揺られ、 そこから飛行機に乗らねばなるまい。 本日は金曜日。 他に何も考えられぬまま 俺は職員室の席を立つ。] (131) 2021/02/11(Thu) 23:30:01 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ 窓越しに遠く、 こじんまりとしたフェリーが船頭を 本島に向けようと動いていた。 日は沈みかけ、上空を包む夕陽の色は 最後の輝きを振り絞らんと言わんばかりに 紅く燃える。 文字通り水を打ったような地平線は少しも 歪むことなく、燃える光を受け止めて煌めいた。 ── 夕凪 の時間帯だ。] (132) 2021/02/11(Thu) 23:30:52 |
【人】 分校教諭 添木 卓郎[ きっと、この赤く燃える色は彼女によく 似合うだろう。 気付けば手中に握り込んでいた恋人のタロットを 一瞥し、今度は今いるこの世界で 彼女ともう一度向き合おうと、 出港する船に向けて歩き出した。]** 〜『もしもの未来』に続く?〜 (133) 2021/02/11(Thu) 23:34:11 |
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