自分が死に至る可能性を受け入れられていない人を
わざわざ選んで殺す必要はない。清掃員はそう思っている。
きっと大半の人がそうだろうとも。
もちろん何か理由があればそれも致し方ないとは思うけれど。
『ヒメノさん、ですか』
話し合いには参加せず、自分の意見も主張する事なく。
迷いなく投票だけをして行った少女。
清掃員は彼女に"投票しない"事と、それから。
自分に投票するように、という事を予め伝えていた。
『そうですね。
残念ですが、意見もわからないのであれば
そうなっても仕方のないことでしょう。』
でも、この権利は投票とは異なるものだ。
つまりそれを止める理由は何処にも無い。
何より、"選ばれる"事による死は最後の最後まで不確定だ。
であれば選ばれても、死なないよう足掻くだろうとも思っている。
それはある種の信頼として。
『今日選ぶのは、ヒメノさんにしましょうか』