情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
【見】 元魔王 ジャヤート―― 過去と願いと ―― [―――…遠い昔。 一つの星が生まれ、燃え尽きるより遥か以前のこと。 混沌揺蕩う世界に、一柱の神が現れた。 原初の一なる神、そして世界そのものである創世の神は 天と地を分け、太陽と大地、水と風、 彼らに仕える小さき神々を生み出し そうして原初の人の子たちと、数多の生き物を生み出した。 それは創世の神の下、眩い光の中生み出された者たち。 それらが生みだされ、やってきた最初の夜。 創世神と太陽とが急速に入り、彼らに付き従うように 生まれてきた人の子たちが眠りについたその瞬間。 私と我が眷属たる魔物たちは、あの世界に生を受けた。 光と対になる存在、人の子の影として。] (@6) 2023/03/26(Sun) 10:57:28 |
【見】 元魔王 ジャヤート[創世神は数多の命の中でも、 小さく弱い人の子たちを殊の外深く愛していた。 否、厳密には人の子が生み出す『物語』を 創世神は深く愛していたのだろう。 悩み、愛し、傷つき、怒り、憎しみ、喜び。 人の子が生きて感じるそれらの全てを創世神は愛していた。 愛しい子の嘆きも苦しみも、創世神や神々にとっては 極上の香辛料であり娯楽であり、糧に違いなかった。 そして、人の子の影であった私は 人の子が増え、豊かな文化を形成し在り方が進歩するごとに 『魔王』として、その形を大きく変えていった。 生きることに絶望し、破滅を願うものにとっての終末装置。 人間たちが打破すべき障害そのもの。 人の子の人生を廻し『物語』を生み出すための舞台装置。 それが『魔王』と呼ばれる者の存在意義。 『人類を滅ぼす悪』と神々に定義された私たちは、 正しくは『人類が立ち向かい滅ぼすための悪』そのもの。 そしてそのために、私たちは数万年、 人の子の歴史と共に転生を繰り返し、 人の子に寄り添う機構として人の子と戦い続けてきた。 世界の変革を望む一人の少女が勇者となり、 世界の機構である『魔王』を斃す際、『魔王』と 私の自我を切り離すまでは] (@7) 2023/03/26(Sun) 10:57:49 |
【見】 元魔王 ジャヤート[それを恨む心はない。 今まで私が成してきたことに悔いもない。 …散っていった幼い勇者たちを 憐れむ心がないと言えばうそになるが。 私は、生まれ落ちたそのときから 在るべき姿で成すべきことを成してきた。 あの世界の人の子たちが私に負の感情を抱くのは ほぼ本能に近いものであり、 私もまた、それを糧として力を高め傷を癒す。 彼らに愛されることは決してなくとも。 あの世界のどの神々よりも深く、 彼らの生に寄り添う存在であったことを 私は、誇りに思っている。] (@8) 2023/03/26(Sun) 10:58:12 |
【見】 元魔王 ジャヤート[――…今の私の自由は、 誰かに与えられたものであるかもしれない。 優しさに生かされている、その温かさを有難くも思います。 それでも、私に自由を与えることが 誰かの物語の理由であってほしくはないとも、 思ってしまうのです。 人の子の『物語』は、人の子の意志で紡がれてほしいと思うから。 …願わくば、幸せを掴んでほしいと思うのです。 苦しくても悲しくても、それでも。 立ち上がって、前を向いてほしいと私は願うのです。 勇気をもって顔を上げた人の子に幸せを掴ませるために、 私は、『魔王』という舞台装置は倒されるのですから。 もはや『魔王』ではない私がこのようなことを願うのは きっと、我儘というものなのでしょうけれど。]* (@9) 2023/03/26(Sun) 10:58:57 |
【見】 元魔王 ジャヤート―― 続くお茶会の幕間に ―― [続くお茶会のその合間に、私は女王陛下の許へと赴く。 警戒はされたかもしれないが、女王に忠実な兵士たちは 彼女の命に従ったままだったろう] 女王陛下。 此度は素晴らしいお茶会にお招き頂き、 ありがとうございました。 [最初に謁見した時と同じ、 右手を胸元に添えた慇懃な礼をしてみせてから] 私は、此方で失礼いたします。 此方の世界では、本当に善い経験をさせていただきました。 [元居た世界では、 人の子と優しい言葉を交わすなどということ自体 有り得なかったことだ。 敵意も殺意も、凡そあらゆる負の感情と無縁に 穏やかに共存することができたことにあらためて感謝する。] (@39) 2023/03/29(Wed) 5:44:00 |
【見】 元魔王 ジャヤート女王陛下。 私は、私として生きることを決めました。 [それは、本当の意味で 『魔王』としての死を迎えるということ。 そして、舞台装置としてではなく、 自ら舞台の上にのぼり、自分の『物語』を紡ぐということ。 自由とは、決して誰かに与えられるものではなく 自らの在り方を自分の意志で選択できるということ。 そして、私が生きたいと願う世界は、 この世界でも、元居た世界でもなく―――…] (@40) 2023/03/29(Wed) 5:44:26 |
【見】 元魔王 ジャヤート[決断の時間を頂いたことに感謝の意を示して] ……さようなら、陛下。 どうか善き治世を。 そして何より貴女自身のこれからの幸福を 心よりお祈り申し上げます。 [嘗ての、とはいえ魔王であった自分が祈るなどと 烏滸がましいかもしれないが。 それでも、心からの願いと共に微笑んで。 彼女の手の甲に軽く口づけてみせる。 一瞬、兵士たちの殺気立つ気配を感じたが それもすぐに失せたことだろう。 ゆらり、と。 蝋燭の火が風に吹かれて消えるように 私の身体は、夢幻のようにその場から消えた。 ―――そうして。 これが、異なる世界からやってきた 『魔王』と呼ばれ生きてきた者の最期でした。]* (@41) 2023/03/29(Wed) 5:46:13 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新