人狼物語 三日月国


82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】

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少年は再び与えられた痛みに、劈くような悲鳴をあげる。
意識を失うこともできず、頭は朦朧とし 視界は霞んで赤色しか写さない。

暗殺のためにナイフを振るった右腕も失い、肩につながる骨すらなくして、
少年は元々抱えていた望みも捨てたかのようにただ
「死にたい」
と思った。

自分に価値なんてない。だから、早く 早く楽にしてほしい。

嗚咽だけが、響く。

最後のペダルが踏まれたならば、踏む勇気があったならば。
パン、パン! と甲高い破裂音が鳴り響くことだろう。
それはチープなクラッカーだった。祝祭の始まりのような音が鳴り響くと、両側から従業員が進み出る。

「命の価値は……200万ドル!
 これこそがみなさまが此度の演目に投票し積み上げた金額になります。法外とお思いでしょうか、いいえみなさまの愛あればこそ!
 良かったわね、ナフ。彼らはみな貴方のファンなの。戻ってくるのを待っていたのよ。
 おめでとう、貴方の価値は200万ドル。貴方は皆に選ばれたのよ……」

賓客に、少年に。それぞれにポジティブな言葉を投げかける。
客席の中には貴方を見てうっとりと頰を染める貴婦人があれば、熱烈な愛の言葉を叫びかける紳士もあった。
貴方は求められているのだ。貴方が求められているのだ。
貴方に払われた価値は200万ドル。貴方の大切なものを守るのに、不足することはないだろう。
貴方自身は守れないけれど。

「"前座"はこれまで。いよいよナフには極上の踊りを踊っていただきましょう。
 その為にも、彼が寵愛に満たされるさまを、ご覧くださいな」

血に塗れた台は斜めに傾けられ、体のよく見えやすいように。今度はうつ伏せに転がされ、顔は客席の方に向いた。
ペダルは運ばれていき、両腕の器具は取り外される。すぐさま傷口は清潔な布に包まれ、みるみる赤く染まった。
きつく肩口は縛り付けられて、パフォーマンス以上の出血がないように施される。当然だ。殺す意味などない。
かれの命には価値があり、値打ちがつけられ、金を生むのだ。
必要なだけの輸血も施され、命を失わず、気を失わないようにしっかりとケアがされていく。
ならば、なぜまだ、見世物台の上に?

「刮目ください、彼の美しい顔を、身体を。彼に称賛を。
 これよりみなさまに、『エンジェル』の誕生をお見せいたします」

ナフが戻ってきたら抱きしめてやろうと思った。

そして沢山沢山褒めて褒めて褒めて褒めて、わらう。

(金持ちの道楽というのは、
 極まれば、正に狂気的だな)

 200万ドル。
 ただ日常を生きるだけでは、手に入るどころか、
 目に入れることすら叶わない”非日常”の証。

 それが、
 こんな簡単に、一人の少年に注がれている。
 たった一人の少年の、弄ばれ尽くされた人生。そのカタストロフィに金額を付け、価値を積み立てる。

          怒り、 不快、  絶望

 湧き上がる
歓喜、狂喜、悦喜
───

 陶酔や恍惚の様相をみせる客たちを見るたびに、倒錯した明るい感情が湧き上がる。血の池が満ちて、ギラギラと悪趣味な照明を反射する舞台。それに相応しい感情で自分の内が満たされている。

他者の精神を掌握して弄ぶのが愉しくてしょうがない。

執念深い男だと、何度も言っていた。あとは、2人。

皆の身を、心から案じている。その先に喜びを見出してしまうだけ。

共犯者の一人が何処かで何かえらい事になっている気がしてきた…

滅茶苦茶愉快なものが見れた気がして地上を見れるカメラ探せないかなと思った。

また地上が愉快になった気配を感じ取った。

お手上げです(昨日ぶり二度目)。

(3)1d10

折角だから自分が立ち去った後の瓶10本の録画みようと思った。

「ふーん見られたくないようなのが……」と言う顔をした。

ビデオを見るのは今日は許しておいてやった。

優しいね。

仕方ないのでラサルハグと遊ぶことにしました。

ラサルハグとあやとりで遊ぼうとしている。

さり気なく地上と墓下で意思疎通が図られたのを感じた。テレパシー?

/*
そういえば今のうちに連絡しておきますが、ちょっと仕事が激化してきた為夜殆どレス出来そうにない事をお知らせしておきますわ……多分研修合いの手も一回が限度だと思いますの……ご了承くださいませ……!スロウス、テンガン様ファイトですわよ……よきエッチを……!

まだ、意識を失うことを許されない。
体を動かされるたびに激痛が走る。

視界の霞みと、意識だけは開けてきた。

いっそ殺してくれたなら。

金だけを家族に寄越して、放っておいてくれたなら、良かったのに。

それが叶う場所でないと、気づいているけれど。


「……ぜんざ」

掠れた声が、漏れる。
これ以上のことが、あるのかと。

涙が、溢れる。助けてと、言いたかった。

え、今?という気持ちになった。付き合いますが。

「12段はしごって奴ができねぇからやってくれ」した。

本を見てもいまいちよくわからないので手渡した。

あやとりは赤色と青色があります。

やり方さえわかれば大体の事はできます。

赤色のあやとり紐を受け取った。

12段はしごが事故った

両手が大変な事になった。

「お前何1人で拘束SMプレイしてんの?」と言った。

わからない……になった。助けてほしい

仕方ない、解けなかった

下手な縄で縛るより拘束できるから覚えたら?と思った。

前向きに考慮しておく事にした。

それはそれとして詰んでいる。

舞台裏で誰かが変なことしてるのを感じ取った。

ゲーミング右眼ほど酷くはない。少なくとも、絵面は。

ゲーミング右眼のことは忘れた。

そもそもあやとりなら引きちぎれるんじゃねえか?いいぞ千切っても。

痛い事には痛いし大変なのであんまりしたくはない。

仕方ないので引きちぎる事にした。できなかった

この世の終わりみたいな顔になった。

「お前結構太々しいな」と口に出た。

腹を抱えて笑っている。

お手上げです(数時間ぶり二度目)。

よく分からないが念を送ることにした。よりギチギチになった。

よりおしまいになった。もう助からないぞ。

SMプレイをするか真面目に考えだしている。

今は首輪付きなので余計に絵面がひどい。

ヤバいのは手首に巻き付いてる方なので「折り紙ができたら解いてやろう」した。

もっとゲーミング右眼より酷い絵面になってほしい。

両腕縛り(物理)で折り紙に挑戦する事になった。

幼い弟妹が満足に暮らせていけるように、ナイフ捌きの技術を磨いた右腕を失った。

「猫折って」と自分が出来なかった奴を折り紙1枚差し出して来た。

本は仕方ないのでちゃんと開いてあげてます。

頑張ってみる事にした。できなかった

もうだめかもしれません。

凄い不満そうに見つめている。じーーーーーーー。

喜んだ。
詳細は伺えないがなぜかウキウキだ。

もう一度やってみる事にした。立体的で可動部のある猫ができた

なんとかなりそうだ。

「これ本にある猫と違う!」となったが、動かして遊んでいる。

満足したので鋏で紐を切ろうとしたのに切れない。

俺、さっき渡したのワイヤーか何かだったか?と思った。

もうだめかもしれない。

そこに居られないのが残念だ。

強度を確かめに青糸で12段はしごに再挑戦してできた

首を傾げた。

満足したのでそっと手首拘束になってる上に、はしごと猫を乗せて立ち去った……

んんんんん…………

研修が終わるまでそのままだったらきっと解いてあげただろう。がんばれ。

仕方ないので従業員に切ってもらった。業務を滞らせてはいけない。

諸々の大惨事が起きていることは知らず、ボル(9)1d10を作っていた。

ややお叱りを受けた。

ここまで計画通り。

/*
これはシリアスな本編と全く関係のないどこかの、とってもメタな為そもそも本編とは関係のない時間帯

「仲良いよね墓下君たち!?なにさこのアクションの量!!!」



(仕事がやばくておしまいになっており村に来れそうにないんですけど元気出ましたありがとうございますわの意)

ディーラーの彼女を労った。同じ時間帯で。

仲が良いのだろうか?バーナードと?

/*

「そこに挟まれたナフのアクションの気持ち考えたことあるかな!?ラサルハグ!バーナード!そこに正座!!!反省して!!!」


(PCはこうだけどPLは楽しかったのでいいと思いますわ。反省はしなくていいと思いますわ。アクション芸大好きですの)

大人しく正座した。反省はしているのかよくわからない。

ゴトン! と台が傾いた。背中がよく見えるようにだ。下側には細い桶が置かれ血を受け止めている。
まず、体をしっかりと固定した。なめしたベルトは肌触りがよい。何の慰みにもなりはしないが。
やはり仮面を付けた従業員が傍に立ち、幾重にも生命維持の為の装置や器具を取り付ける。
無理矢理に消費分を補う輸血に加えて、透明な薬が硬膜へと追加された。

「気絶されてしまっては見ごたえがないというもの。
 副船長に投与したのと同じ薬を入れております、中身はご承知おきでしょう。
 やはり人間を昇華させるのであれば、天にのぼるような気持ちでなくては……」

わっと笑い声が上がった。ジョークのつもりなのだろうか、この場ではきっとそうなのだ。
少年にとっては見えない背後で、何かが行われている。本人以外には、ようく見える。

よく手入れのされた刃物がスッと背中に入った。鋭すぎてすぐには痛みを感じないかも知れない。
背中の肉を観音開きにするように、体から離れすぎないように中央から離されていく。
信じられないほど手際よく薄い肉が退かされて、その下から骨が見えた。
肉と骨の境に、ヘラのような器具が入り込む。

ベキッ、とアーチを描く鎖骨の裏側から固いものの折れる音がした。
肩甲骨が剥がれ、背中に突き立つようにしているのだ。
広い骨が菱形筋からサクサクと料理でもしているかのように剥がされて、鎖骨から離れた。
からっぽになってしまった背中はまたパタ、パタと縫い合わされていく。
手術と言うには手荒で、そして暴力と言うにはやけに繊細だ。
異質だ。生命の維持のためではないのだから、当然といえばそうなのだろうか?
未だ露出したままの細い背中に。従業員は、今度は工具を手にした。


流石に。信じられないものを見る目で、“天使”が造られていく見た。

嘗て共犯者だった"暴食"の言葉は真実だったのだと理解した。

まず取り出された骨に取り付けられたのは蝶番だった。
ドアーのように骨が動くところを、従業員は客席に見せた。
それから、蝶番の一片はかすかに肉の隙間から見える鎖骨に打ち付けられた。
文字通り骨身に響くような衝撃がガツン、ガツンと少年の体を踊らせる。
ふらふらと、血と肉のこびりついた肩甲骨は外部に露出したまま、少年の体に戻された。

それから先は、こんな場でなければ職人芸と言って良いような様子だった。
肩甲骨に指を広げるような形のワイヤーが打ち付けられ――勿論体につながったまま――、
そこに人工皮膚が張り巡らされた。他者のものではないから、不適合の兆候もない。
無残な剥製のように広げられた骨組みは、銀で塗装されてきらきらと照明を反射した。
いずれはそこに羽が縫い付けられていくのだろうか。けれど今は、はだかの翼のまま。

ステージの上からフックが下がり、少年の皮膚に縫い付けられていく。
サスペンション、というパフォーマンスを知っているだろうか?
直に皮膚にいくつものかぎ針を取り付けて、人間の体を浮き上がらせるものだ。
的確な場所に、十本以上ものフックが薄皮を通過していく。
人間の皮膚というのは存外に丈夫なものだ。重心を分散すれば、こうした芸当もできる。
偏らず皮膚を破ることもなくしっかりとフックは体重を支え、ゆっくりと少年の体を客席に見せた。

まるで磔にされているか、そうでなければ、天から降りてきた神の使いのようだ。
痛みがない、なんてことはないし、血は細く流れ続けているのだけれど。
オーケストラはいよいよクライマックスというように、激しい演奏にホールを揺らす。
夥しいほどの出血と血の匂いに満たされた空間は、今まででいちばんの拍手に満たされる。
まさしくそれは――

「さあ、紳士淑女の皆様、今宵こちらにいらしたあなた方はとても運がいい!
 これこそ一番人気の演目――『エンジェル』でございます!
 愛し愛されし我らの踊り子に、あなた方の愛を――!」

なんだか嫉妬された気を感じて勝ち誇った顔をした。

ラサルハグは嫌いだがラサルハグで遊ぶのは好きだ。

真面目にあれは悪趣味とかじゃなくて俺とジャンルが違うと思った。

噎せ返るほどの悍しい匂いに、表情は笑っていても、目が震えている。

条理を笑い飛ばすような光景に、正気が削り取られるような感覚を覚えた。

「は、はは」と嗤いを溢す。まだ狂気へ、堕ちきれていない。



天使?これが?
神の国に御坐す使い、それが、こんな、
命を冒涜し、“神聖さ”など笑い飛ばし、引き裂いて踏みにじっても足りないような───

理解を拒む。脳が、本能が直視することを拒む。
だが目を離せない。
賓客らの歓声が、演奏が、頭を掻き乱す。

此れを望み、愛する客は、最早
我々と同じ人間と言ってもいいものだろうか?
狂騒は心を蝕む。焦点は最早定まらない。

────ちっぽけな正気を守るために、目を瞑った。

侵されるような倫理道徳を持ち合わせていない。初めから。

ただ仕事の事を考えている。

「っ、……ふ…」

脂汗が滲む。
未だかつて、入院すらしたことのない少年は どの器具が何の役目を担っているのかも分からない。
ただ、されるがままに。痛みを堪えていた。

血とは別に、透明な薬が追加されたのをぼんやりと見ていると
背中に何かが刺される感覚と、遅れて。
以前堕とされた時の、玩具による刺激とは比べ物にならないほどの―――
快楽


「あ、ああ―――!?い、っ、が……!」

剥がされる、打ち付けられる。
そのたびに、仮面の下の目が見開かれて、歯を食いしばる。
口の端からは、唾液がこぼれて 下半身は意思と関係なく硬く勃起して体と台に挟まれながらも 何度も白濁を吐き出しては、また硬くなって少年の体力を奪う。

悲鳴とも喘ぎともつかない声が口から零れていく。


―――ふと、体が持ち上がる。背中の皮膚が引っ張られるような痛みと、全身に響くように広がる快感に、頭にまた思考に靄がかかる。
恍惚とした表情を浮かべた、羽を生やした少年は、血の匂いの中で 地上に立つ従業員達をぼんやりと見下ろしている。

強く双眸を閉じる。目を合わせたら、“連れて行かれる”。そう錯覚した。

「明日よりナフには"従業員"として復帰させていただきます。
 それまでの投資によっては、彼の"翼"の完成は早まることでしょう。
 彼を御使いに昇華するのは誰であるか、早いものがちですよ……」

口笛を吹き手を振り手を打ち鳴らし、ショウのエンディングを歓呼が華々しくかざる。
白い花びらがぱっと舞い散り、辺り一面に散った血ですぐに染まってしまう。
快楽にとろりと溶けた少年の表情を向けられた客は、いっそう興奮した声を挙げるだろう。
貴方は彼らにとってのアイドルとなった。此処で愛され、欲されていくのだ。

「これよりナフは処置にあたります……すぐにでも元気な姿をお見せいたしますよ。
 その時にあなた方の天使がどんな"ぐあい"になっているか。存分にご想像ください。
 ご覧いただき、誠にありがとうございました」

貴方を求め見上げるような喧騒の中で、一時幕は下ろされる。
次の演目に向けて少年の体は降ろされ、台は片付けられて辺りの血もきれいに掃除されることだろう。
苦痛は終わったのだ。そして終わることがない。すぐに、傷口に対して適切な処理が行われる。
正しく、手術や手当がされるのだ、ようやく。貴方は大事な従業員なのだから。

「お疲れ様、ナフ。……今はどんな気持ちかしら、気持ちがよくってなにもわからない?
 これが貴方の甘受すべき幸福であり、今後の人生なのよ。
 貴方に掛けられた命の価値は、きちんと貴方の身元に送金すると約束しましょう。
 なに、ほかの演目に賭けられた金がありますからね。心配しなくたっていいのよ」

貴方の乗せられた担架はステージの控えへと走り、貴方の体を運んでいくだろう。
勿論俯せで。改造された貴方の体は、もう仰向けに眠ることは出来ない。
施術さえ終わったならば、大丈夫。貴方は貴方の好きな者のところへ、会いに行ける。
貴方達は同じ従業員なのだから。何も心配しなくていい。
貴方達は同じ従業員なのだから。何も苦しむことはない。
貴方の命の価値は200万ドル。
売り買いされる命の価値は、帳面に書き込めるほどのものなのだ。

メモを貼った。

/*
オッス! オラ狼!
エピローグを目前にした襲撃について、現状相談事がありますの。
というのもその原因のガンガン一端ではあるのですが、このタイミングで墓下に来るとエピローグの語りに困る人、或いは今の流れに突っ込むと様々な事情により身動きがとれずみんなでエピローグに参加するのが難しくなってしまう……などの人がいらっしゃると思うんですのよね。
今の状態でランダムに襲撃先を選ぶと芳しくないのでは? というのが要点です。
パスするか、それとも快諾してくれそうな方(キエとか)(失礼)にお願いするかにして、
ランダムで行う以外の方法を取れないかと模索しています。
いかがでしょうか?

担架へ横たえられた少年は、意識がもうあるのかないのかわからないような状態だ。

ただ、送金するという言葉を聞いて。ほんの少しだけ、口元に笑みを浮かべた。
本当に、意味が分かっていたのか定かではないけれど。

哀れな少年は、愛される天使となって この船で生きていくことになる。
少年の願いは、もう叶わない。

"従業員"になった。

意識が落ちるまでの間に、色んな人のことを考えた。

頑張ったから、褒めてくれるだろうか。

話をして、また特製パイをたべられるだろうか。

踊りを────踊りを?また、見てもらえるだろうか。

また、励ましてもらえるだろうか。

それから、色々な事を考えながら。意識は闇の中に沈んでいった。

/*
まずはお疲れ様でしたグラトニー、ナフ!濃厚な時間でしたわね……本当にお疲れ様!

そして襲撃に関する件ですが、一番手っ取り早くて安牌なのは「パス」ですわね……
おそらく生きているであろう猟兵にズドンしてもらう為には噛んでもらわなければならない=誰かを襲撃しなければならない となりますから、誰も襲撃死しない形にする……となると多分……それくらいかしら……

 
────さあ、こちらも幕を上げよう。

踊り子の少年の華々しい舞台が幕を引き、
観客は興奮冷めやらぬ様子で口々に鮮烈なショウを讃え
そして、目当てのものを観終わった者から捌けて行く。
それから、次なるお目当てを求めて、観客が減る事など無い。
それらの様子と、今一時の休息の後。

そして再び幕は上がる。
脚付きの台に乗せられた、成人一人よりやや背丈の高い箱
それを運ぶ従業員達を付き従えて、
"怠惰"に身を滅ぼした者が今一度舞台へと上がる。
その装いは一転して"裏切者"であった時と同じ、
白を基調とした上等なスーツに目元だけを覆う簡素な仮面。
けれど誰の趣向か、依然としてその首元には
何かに、或いは何もかもへ隷属を示す首輪が存在を主張している。

「皆様、大変お待たせ致しました
これより演目は従業員テンガンの研修へと移り……
進行は不肖この『ラサルハグ』が務めさせて頂きます」

恭しく一礼をして、箱の傍の従業員へと合図を送る。

「特別協賛者のジェラルド様に、どうか盛大な拍手を。」

そして、破裂するような拍手、腹の底に響くような喝采と共に
パンドラの箱は開かれ、概観悍ましくも蠢く肉塊のような
粘液滴る触手の塊で形作られた生物が姿を顕にした。

「そして──テンガン。あなたがこの舞台の主演です
『彼』と共に、どうかこの演目を大いに盛り上げるように」

自らが手引きした男を呼び招き、
潔癖な白い手袋に覆われた指先がその背をなぞり上げる。
語りは台本を読むように明晰で、滔々と流れ──

「彼はジェラルド様にご提供頂いた"開発品"…
どうぞ傷を付ける事の無きようお願い致します
…ああ、怯える必要はありません。彼に獲物を害する意図は無い
ただ、そう、『食事』を求めているだけなのです……」

無機質な仮面、その奥の無感情な虹彩はそのままに

「──では、いってらっしゃい」

うっそりと囁いて、
その背を押した。


その力はそれなりに強く、そして唐突だった。
恐らくは、
殆ど四つん這いになる形で
この悍ましい生物に
あなたはその身を預ける事になるだろう。

筆舌に尽くしがたい“天使”の誕生を目の当たりした心の瑕に、漸く平静が齎されてきた中、主役は舞台の中心へと導かれる。

「……」

客層が変わり、歪んだ歓喜に満ちていた異色の双眸が、かつての落ち着きを一応は取り戻している。
怠惰を表す彼を見ても、御目当ての演目に沸き立つ客を見ても、無感情にそこに立って。下手な抵抗や動揺は、無闇に観客らを喜ばせるだけと知っているから。

不意に背中を押されると、僅かに眼を見開いて。何かを思う前に──待ちわびた獲物を、夥しい数の触手が我先にと受け止めた。

腕と脹脛に、粘液を纏わせたソレらが何重にも絡みつき、服の隙間を見つけては何の抵抗もなく入り込んでいって。哀れな被食者の肌を伝って淫靡に体液が伝り落ちていく。

それはまるで生物が“御馳走”を前に涎を垂らしているかのようにも、見える。



(触れられた部分から次々と、堪え切れないほどの熱が襲い掛かってくる……ッ、催淫作用、か……!)

仮面をつけられた男の唇は屈辱により引き結ばれ、身体は悩ましげに揺れ、内側からいくつもの触手が服を押し返す光景は、布の下で行われる“捕食行為”を、事細かに物語る。

その生物の食事のために、徹底的に“雄の快楽”が与えられていることを、その場にいる誰の目にも明らかに映るだろう。

序幕も程々に、かちゃかちゃと音を立てて器用にベルトが外される。程なくして靴とズボンが、屑籠のない場で剥かれた果実の皮のように、無造作に投げ捨てられた。
四つん這いとほぼ変わりない形で拘束された従業員の、布の少ない下着は、どちらのものか分からない体液が淫靡に湿らせていて。

最も敏感な部分と、未だに指すら受け入れたことない後孔にも、絶え間なく弄ばれながら触手の粘液が塗り込まれていくのが、乱暴に引き伸ばされる下着の隙間から露わになる。

「くッ、ん゛、……ッ!
 ───ッ、う、ぁあ゛ッ」

強く歯を食い縛っても、暴力的な快楽に声が噛み殺し切れない。観客たちが沸き立つことに対しても、怒り<歓喜>を感じ取れない。気味の悪いほど、身体の負担を減らすように扱われて、酷く調子が狂う──

随分と気に入られたようですね?


逆光を背負い、冷たく無感動な蛇の目がその哀れな姿を見下して
白手袋の指先が貪られる男の顎を掬い上げる。
そして、その指が真一文字に引き結ばれた唇を割り開き
熱い口内に滑り込み、震える舌を抑える。
その隙間から潜り込もうとする触手もあるだろう。

こうすれば、あなたが歯を立てる事などできないと確信している。
別に歯を立てられたってどうとも思わないのだけど。

「けれど…ええ、快楽に悶え、なお耐え忍ぶ姿も魅力的でしょう
ですが、そればかりではならないのです。」

絡め取られ、咥え込まれる被食者のすぐ傍にあっても
"怠惰"がその毒牙に掛かる事は無い。
今となっては如何なる性も宿さないその身体は、
決してそれの"獲物"足り得ないのだろう。

「ああ……これでは彼の表情が窺えませんね
──いいえ、皆様どうかご安心ください。
彼が与えられる快楽に悶え、身を焦がすその様は
舞台後部のモニターにて鮮明にご覧になる事ができます」

また一つ、合図を送る。
それと同時に、舞台奥に設置された大きなモニターに
何処かに仕掛けられたカメラの映像が映し出された。
さあ、そこに映るあなたの姿はどのようなものだろう?

次なる舞台を多くのカメラが取り囲む。
撮影機器は語らない。けれど──その存在そのものが、淫らに踊る主演の姿を渇望する賓客達がいる事を証明していた。

触手に弄ばれる衣擦れの音も。
男の引き結ばれた唇からこぼれ落ちる熱い吐息も。
舞台から生まれ出るものは全て拾い上げられ、貪り尽くされていく。

客人達の仮面越しの眼差し。
カメラの向こう側にある賓客の双眸。

最早彼に逃げ場はない。
頭から足の先に至るまで。
会場の欲望が視線となって降り注ぎ、男を犯し尽くそうとしている。

“真実”、を

全部全部全部全部全部思い出しました。

与えられた役割を果たした。

"演者"の仮面の裏で、彼もまた、


無遠慮な指に不満げに唸り、強く噛むことこそはしないものの、拒絶するように歯を立てて僅かに抵抗の色を見せる。
だが隙間から触手の侵入を許してしまえば、狙い通り、粘液の効果で否応なしに力が削がれていく。

「かはッ、ひゅ、〜〜〜ッ!
 ……ッ……ぉ゛ッお゛……!」

口蓋、頬の裏側、舌。思い思いに鋭敏な口内を蹂躙し、粘膜に分泌された液体は徐々に全身を苛み。飲んではいけないと解ってはいるのだけど、突き込まれた数本の触手にしつこく喉奥を叩かれ、ごきゅ、と明確な嚥下の音を鳴らしてしまう。

だらしなく開いた口からは時折、熱を持った吐息と低音域の嬌声が溢れ、身体の屈服が近いことを意思に反して示して。

その精神をも犯し尽くそうと、捕食者は残された衣服さえも次々と奪っていく。

程なくして、撮影機器の前に肉厚な胸板、豊満に揺れる臀部、雄々しい背中や腹筋が、惜しげもなく晒された。女性の持つ柔らかな曲線とは違った、ともすれば彫刻すら連想する程の鍛え抜かれた肉体は、余すところなく触手が絡みつき、形を変え、今や尊厳の欠片も奪われて快感を貪っていた。



それだけには留まらない。まだ肌を覆うものがある。ほんの一瞬の隙を突いて、“触手が仮面を奪う”。身体だけではなく、動揺に揺れる青と白の両眼も、僅かに恍惚に弛んでいた表情の全ても露わになる。

焦燥と、えも言われぬ心細さが胸に走った。
『貸し与えられた従業員の証である仮面を、無意識のうちに身体を覆い隠してくれるものの、最後の砦としていた』
ことを思い知らされ。剰え今の自分はそれすらも無い。丸裸で、産まれたままの姿で、衆目に晒されている。

沸き立つ観客。怒号に、揶揄する声に、淫猥な言葉に──それらが呼び水となり、身を最早物理的に焦がさんと錯覚してしまいそうなほどの羞恥、屈辱と、実に倒錯的な快感が突如身に襲い掛かった。

「ッあ、くっ、嫌、ガッ──!!」

弄ばれるままに身体が強張り、一度目の吐精をする。淫らにコーティングされた触手たちは歓喜して、自身と、獲物の身にそれを塗りたくった。
アイマスクのように、触手が両眼を覆いながら仮面を付け直す。それでもまだ“食事”は終わらない。休むことなく蠢いて、獲物を責め立てている。

いっそ哀れな程に無力な抵抗はもはや甘噛みに過ぎない。
鋭敏に昂りつつある口蓋をやわらかくなぞりながら、
滑らかな手袋に覆われた指がずるりと引き抜かれる。
無意識が唯一のよすがとした仮面を奪われ、素顔を曝され、
そしてみじめに絶頂する男を冷たい瞳が見下ろした。

「──── 一回目。ああ、でも…
彼もお客様も、まだまだ満足されてはいないようです
どうか頑張ってくださいね、テンガン。
それがいつまでになるかは僕にはわかりませんが…」

揺れる瞳も、くぐもった啼き声も、悩ましくも浅ましく揺れる躰も
今この場では決して同情の対象足り得ない。
観客はその姿に熱狂し、更なる辱めを煽り立て、歓喜の声を上げる
そして、"怠惰"はそれに応えるべく、与えられた役を演じるだけ。
縋る事は自由だが、決して誰も助けてなどくれないのだ。

「彼が、そしてお客様が満足するまで……
あなたがどんなに嫌だと叫ぼうと、この演目は続くのです
それに、あなたもまだ足りないでしょう?


絶望は、実に音も無く這い登る。
その生物の纏う粘液は獲物の躰を否応なしに快楽に昂ぶらせ、
そして、その暴力的なまでの快感は
哀れな好餌が"餌"を供する事ができなくなるまで
苛み続けるのだ。

やおらに靴音は鳴り、"怠惰"は嬲られ続ける男の正面を離れる。
そしてその隣へと膝を付き、男の背筋をそうっとなぞり上げた。

降り注がれる賓客達の熱視線が男の痴態に群がっていく。

てらてらと様々な液体に濡れた肢体が快楽から逃れようと乱れる様を。
男としての昂りの果てへ無理矢理追い詰められていく様を。
達しても尚休みなく飢えた生き物にしゃぶられ尽くされていく様を。

カメラの無機質な目が余すことなく映し出しては記憶していった。
賓客達や従業員の上に君臨する王の考えによっては、この映像がばら撒かれたり男の別の研修中に利用されたりするだろう。
きっと男はこの陵辱が終わってもこれから先なお辱められる。その為の道具がここで作られる。他ならない男自身がそれを今生み出した。

飢えた触手と怠惰なる白蛇に絡まれる男の様子に、観客達は更に期待を膨らませる。
腹を空かせているのは何も異形の怪物だけではない。
男を取り囲むその全てが、男の持ち得る全てを奪い愛でて啜り上げ、骨の髄まで味わおうとしていた。

さあ、次はどのように愉しませてくれるのだろう──。


絶頂の余韻も引かぬ間に、視界を奪われたまま、只管頭が焼き切られるような快楽を注ぎ込まれて、弛緩した肢体は最早されるがままになっている。
快楽から逃れようと腰をどれだけ逸らしても、何処までも手は追ってくるから諦観する。学習性無力感、ともいうべき反応。

四つん這いの体勢を崩し、倒れ込むことだけは、四肢に絡みつき、縛るものが許さない。ぎち、とその状態で縫い付けて。

“観客のお客様”たちに、より楽しんでいただけるよう、獣が犯されているような痴態を固定して差し上げて。そんな高尚なこと、触手が理解しているはずもないのだけど。

「───ッ、ぐ、ぁは゛っ!
 ……くそ、悪趣味も、大概にッ──ぃ!?」

 背中に指が滑り、走る擽ったさすらも、今は甘い痺れと化して腰骨に走って。股間のモノは詳らかに快感から生まれる欲望を拾って、いきり勃つ。



身体を丸めて荒い呼吸を繰り返し、“怠惰”へ、再び何か文句の一つでも吐き出そうとする。だがその前に、後孔を一回り太さを増した、男性器にも近い形のソレで擦りあげられて思わず口を閉ざした。

体力はまだ余っている。だけど抵抗できるほどの気力はもう無い。散々舐り尽くすような愛撫を受けた窄まりは僅かに綻びを見せていて、熱い視線を感じると呼吸でもするような蠕動をみせて。触手を押し当てられると、いやらしく吸い付くように。
だが如何しても経験の浅い穴は、どうにか異物を押し返そうとしていて。

痺れを切らした生物が獲物を腋から抱え無理矢理に立たせると──

「や、めッ……!っお゛……ッ!!」

──その肉の棒の上に、腰を落とさせた。
自らの体重が重しとなって、引き締まった入り口を優しく、無情に抉じ開けていく。直腸にまで粘液が染み出していき、尻の全てが性感帯に作り替えられていく、ような。

ある程度まで挿入を終えられて、満足そうに触手生物は男の膝の下も支える。四つん這いとは違った、痴態を全て暴き出すような体勢。ゆっくりと突き上げられるたびに、気の狂うような快感が背骨を伝って脳天にまで登っていく。

「その悪趣味さえもを喰らおうとしていたあなたは…
ああ、単なる一時の錯覚でしたか?」

悶え苦しみながらも吼え立てる獣を淡々とあしらって、
焦れたようにも性急な触手の動きとその暴虐に晒される男
抗う気力を失った哀れな玩弄物の姿に、
仮面の奥で、無感動な瞳を細めた。

「ねえ、テンガン」

悍ましくも奇怪な生物に背を預ける形となった男に、
"怠惰"はしなだれ掛かるように覆い被さる。
潔癖な白に覆われた指が、精巧な彫像のような腹筋を撫で上げて
それから、汗の伝う顎をなぞり、頬を寄せた。

「今この時だけは、彼や観客に従順で居た方が
あなたにとっても、楽なんですよ


新たな餌食と早とちりをした触手が首筋を這い回る。
強制的に、けれど蟠る一方の熱にぞわりと皮膚が泡立って
ああ、でも、今はただ、この役に殉じなければ。

だから、

白蛇は仮面をずらし、唇を奪い、その呼吸を呑んだ。

息を詰め、逃がす先の無い快楽を叩き付けられ
耐えようのない熱に打ち震える男の快楽にわななく舌を
やや体温の低く、二叉に裂けた舌がなぞり上げる。

人々を神に背くようにと唆す蛇
或いは、遍くを欺く二枚舌«スプリット・タン»。

職務の遂行に必要なあらゆる処置を受けた
優秀な裏切者、『工作員』の証。

『工作員のラサルハグ』は知っている。
壊れない為には、ただ全てを受け入れるしかない
のだと。

いつまでかはわからない、けれどこの船に身を置くのならば
あなたはそれを理解するべきだ。

メモを貼った。

 




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