[ しかし彼はそれを全て理解した上で、何の不満もなく受け止めるような、そんな人間だった。 ]
「 僕は、研究をしているきみが好きだから 」
「 僕が灯守りとして役目を終えたら、ふたりで暮らそう 」
[ 私の仕事はそのまま、彼も灯守りとしての道を行く。
務めを終えるまでは離れたところで頑張りながら、務めを終えたら、余生をふたりでゆっくりと過ごす。
それまで、結婚もしない。
それが私と彼で決めたこと。
それから私は自分の興味を突き詰めていたし、彼は立派な灯守りとしての地位を築いていった。
私は領域に暮らす訳ではなかったから、普段は離れ離れであったけれど、それも苦ではなかった。
……少し寂しいと思うことはあったけれど、私は研究が楽しかったし、彼が素晴らしい灯守りとして務めを果たしていると思えば、嫌ではなかった。本当に。
休みが合えば、私は彼の領域を訪ねて一緒に食事をし、ふたりで過ごしていたし、
ふたりで処暑域の海に行って、橙色の夕景を眺めて砂浜を歩いたりした。 ]