203 三月うさぎの不思議なテーブル
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[最後の恋にして、と言われた。
「うん。約束する」
と、即答した。
この恋を失ったら、きっともう恋なんて出来ない。
絶望で塗りつぶされて、どこを探しても白が見つからない、そんな世界、耐えられる気がしない。*]
――アスパラガスの日――
[ゲイザーがあの日早退したのは、元からの家庭の事情というところまでは聞いた。
去り際に店内が少し妙な空気になった理由を真白は知っているようだが、恐らくまだ解決には至っていないのだろう。
というのも、教えてもらったシフトを元に何度か来店しても、ゲイザーの姿は店内になかったから。
ゲイザーを気にしているかのような、少し元気のない様子は気になるし、話して楽になることならいくらでも聞くけれど、真白は解決してから話すつもりだろうか。
自分が出来るのは、真白が話したいと思った時に傍にいることだけだ。]
やあ。空いてる?
[いつもの台詞で店内に入る。
前はこっそり立ち位置を確認していたけれど、もう隠さない。
常連は自分達の関係が変化していることをもう知っているし、新規客がいたら牽制しないといけないので。
自然な動き?
うさぎさんがぴょんと跳ねている幻覚が見えるな?]
[来店したのは少し遅めの時間帯。
一緒に帰りたいと思ったら、前と同じ早目の時間だと食後に席を埋めることになるから。
この店は普段から食事が終わっても急かしたりはしないけれど、彼女の働く店で自分が困った客になるのは避けたい。
その結果、
幸か不幸か三角関係の告白劇は見逃していた。
カウンターには明らかに限度を超えて飲んだと思われる酔客の姿。]
うーん、今から美味しく食べたいから、
今日はテーブルにしとこ!
[勿論、彼が決壊してしまうなら、同業者のよしみで介抱するつもりではある。]
たけのこ!おいしいよね。
てんぷらがいいな。穂先多めで。
あとねー、アスパラを鶏肉で巻いたのが食べたい。
マンゴーはタルトだって?食べないわけがない!
[黒板を見つつ「いつも通り」の声色で意気揚々と注文する。
飲み物はホット烏龍茶にしよう。
ゲイザーがいて、もし今日真白と話をするなら――
遅くなった時に二人共を車で送れるように。*]
| [気づけばキッチンには、カレーペーストの胃袋をくすぐる香り。 雨降って地は固まらなかったみたいなんだけど >>413、ある意味吹っ切れたと言うやつなのかもしれない。 ようやくほっと息をついて、洗い物でもしようか―― >>434] わっ……、 え!? びっくりした…… [あれ!? ねえさっきまでバックヤードにいませんでした!? 貝沢さん置いてきたりしてない? 店長はいるとしたってさあ! こっそり裏から帰った >>420とは知らないから、まず焦ってそっちを見ちゃったよね] (459) 2023/03/08(Wed) 22:21:57 |
| えー……今日はナギさんのスープでラーメンとかだと思ってたのにぃ。
[わかりやすい要求に、つんと唇尖らせてみて。 でも、食べたいと言われるのはやっぱりどこか嬉しい。]
他の食べられなくなっても知らないよ?
[なんて言いながら、きっと作るんだけどさ。] (460) 2023/03/08(Wed) 22:25:26 |
| [会話 >>460が途切れてお互いの仕事に戻るとき。 シャミさんの目を引くすらりと高い後ろ姿に、この間のワンピースを重ねて見る。 ああ、きっと本当に似合うだろうな。 振り向けば、裾がひらめいて。 ブラウスと同じオフホワイトのタイツはどうだろう。 クラシカルで、つま先までよくまとまりそうだ。] (469) 2023/03/08(Wed) 22:43:24 |
| [……本人は言われたいと言ってたけど、よくよく考えたらボクよりずっと大人のシャミさんに『かわいい』って言葉は失礼じゃないか、ってあの後考えたりもした。 でも、やっぱりボクは、『かわいい』って言いそうな気がした。
見た目の問題だけじゃなくってさ。 例えばあんな風にトマト煮をねだられて、かわいくないなんて、嘘じゃんね。 うんうん。ひとり勝手に納得して、頷いて。 ボクからはさっきのバックヤードのいー匂いを賄いにねだらせてもらお、と心に決める。] (470) 2023/03/08(Wed) 22:43:35 |
| 栗花落さんが当事者になったときも、ボクは空気になるからね。 [ >>467これは紳士協定だ。 互いに気配を消すことを約束し、ブロッコリーのトマト煮は鶏なしの方で承る。 大丈夫、テイストはかぶりすぎずにお出しできるはず。 ケイちゃんがボクに合わせて、トマトじゃないの出してくれたからね! ] (471) 2023/03/08(Wed) 22:48:25 |
| えっ……エッ? [しかしてトマト煮を作る最中、空元気めいた『息子さんを僕にください』が聞こえれば >>452、今度はそこかと視線が向いたし。 『大きな息子さんが』 >>468には、突っ込むのそっち!?と驚いて振り向いた。 何がどうしてこうなっている。 場の空気ってものは事故を起こすなぁ、とつい遠い目をしてしまった*] (473) 2023/03/08(Wed) 22:53:17 |
| [ >>454深酒するお客様、本当は店の責任もあるところ。 ヤケ酒はよくないとか、飲み過ぎとか、言うことは出来るんだけど、正直しんどい気持ちもわかっちゃうから、止めそこねた。 高野さん >>464にご迷惑おかけしてしまうのは申し訳ないが、その申し出に救われた気持ちも、してて。] ……ちょっと寝たら少し楽になるとかだったら、ちょっとくらいはいいんですけど、ね。 [3点セットのお土産がそっと置かれたら >>483、見守りつつ少しでも醒めるようにほんのり空調の温度を下げるくらいしか、ボクにできることはない。] (488) 2023/03/08(Wed) 23:38:47 |
| え、行かないの? いい物件じゃん。大河が行かないならボクが行っちゃうよ? [ >>487知りませんけどと主張する大河に、横入り。 だって大きいキッチン、楽しそうだし。 葉月さんとシェアハウス、楽しそうだし。 ま、大河だから貸したいというのはあるかもしれないけど。 取り乱す後輩に、ついにこにこしちゃう。 かわいい年下が入ってくれてチエはうれしいな*] (498) 2023/03/08(Wed) 23:43:24 |
[ 葉月が速崎を気にしているのは知っていたけれども、
速崎が栗栖に好意を持っているなんて気付かなかった。
けれど貝沢も栗栖が好きで、栗栖も満更ではなさそうで
……その時点で全員幸せのハッピーエンドは存在しない。
顛末として、明らかな深酒も気にかけてはいたけれど
今日ばかりは致し方あるまい、と止めることはなく。
あの日の妙な空気の理由は、
気付いていないならまだ教えてはいなかった。
栗栖の過去を無断で教える羽目になりかねないし
全部が終わった後、話せるところだけ聞いて貰おう、と ]
────あ、神田さん!
いらっしゃいませ、お好きなお席へどうぞ!
[ それはともかく、貴方の幻覚は実際その通り。
白うさぎはこの空気感からの寄る辺を見つけ、
ぱっと笑顔で、ぴょん、と跳ねては彼を迎えた。 ]
[ この店の、お客様と雑談をしても良し──どころか
和気藹々とすることが寧ろ持ち味ということもあって
まあ、変に勘違いをする人も、いないこともない。
故に彼の牽制は実際功を為しているのだが、
そちらは大咲が知る由もなかった。
最近厄介なお客さん減ったなぁ、くらいの気持ちだ。
少し遅い時間帯の来店の理由には察しがついている。
てっぺんまで飲む、と決めるような日なら別でも
夜のご飯を楽しむだけなら時間が余るのは確実で。
気遣いながら通ってくれる彼の優しさが、うれしい。 ]
前みたいにカウンターで事故っちゃったら、
今の葉月さんだと大変ですしね〜?
[ なんて揶揄って、笑い声を一つ。
その頃には店内も幾分か明るさを取り戻していて、
ご機嫌な瑞野というレア中のレアまで見た後となれば
絶対"アレ"じゃん!…と、野次馬しそうになるものの ]
[ いつも通りの声音、普段と変わらない笑顔。
連日の出勤と今日も開催された騒動で疲弊した心に、
恋しい彼の"普段通り"が安心感を与えてくれる。 ]
はーい、承りました!
たけのこの天ぷら、穂先多めと……アスパラの鶏肉巻き。
マンゴータルトはですね、今日、瑞野さんが──
[ 作ったんですよ、と言いかけて、つい。
やっぱり堪えきれない大咲は、瑞野のいる方を見た。
何故か新人を息子にしたらしいご機嫌な瑞野。
私の方が! 先に!
お兄ちゃんみたいに慕ってたんですけど〜〜!?
……とは、言わない。大人なのだ、大咲は。 ]
……なんか瑞野さん、ご機嫌なんですよねー、今日。
デザート以外は、私が作りますね。
今なら手が空いててすぐ取り掛かれますし
ちょっとだけ待っててください。
[ 見詰める大咲の顔は、仕事の為のナチュラルメイク。
あの日教えた「お休みの日はラメを使うのが好き」という
些細な、好きなことのひとつ。
万が一でも料理に入ると困るから、勤務中は使えない。
でも、私服は可愛いを常に気にするようになった。
理由は──言わなくても、分かりますよね?
白うさぎはオーダーを受け、おしぼりと温かい烏龍茶を
まずは手早く机へお出しして。
厨房の方に戻っていく。 ]
[ それにしても、春だなぁと思わんばかりの食材たちだ。
たけのこの天ぷら。アスパラを鶏肉で巻いたもの。
となれば前者はあっさりめで、後者には味を足そうか。
まずはたけのこを手に取り、水洗いを終えれば
穂先が多めになるよう食べやすい形へ切っていく。
穂先は柔らかい分、薄く切ってしまうと噛み応えがないから
厚めに切ることを意識して。
鍋へ水と切り終えたたけのこ、店の特製めんつゆを入れ
中火で煮汁が殆どなくなるまでいったん放置。
……という工程を一から踏むと時間が掛かってしまうので。
和食を望まれた時に対応できるよう、
ある程度は仕込んでおいた。穂先や根元は好みがあるから
指定があれば選べるよう、きちんと考えて仕込んでいる。
いや本当、その日の食材に合わせて注文を予想して
予め仕込んでおいたものが使われると、安心します、ね ]
[ 仕込んでおいた水煮のたけのこを取り出し、
器へ移して、残ってある煮汁に浸しながら広げて冷ます。
待つ間に今度はアスパラ、皮を取り除いた鶏の胸肉。
後はゴボウ、人参、干ししいたけを用意して
胸肉に包丁で切り目を入れ、開く。
塩と料理酒を全体へ振りかけて通るように軽く揉み込み、
アスパラのかまを取り
皮を剥いた(削いだともいう)ゴボウと人参を
ある程度の太さの棒状へ切れば、しっかりと茹でる。
干ししいたけは水で戻してしっかり水気を切った後、
半分にカットして。
開いた鶏肉の上へ茹で冷ましたゴボウ、アスパラ、人参の
彩り三兄弟を乗せ、タコ糸で巻いて縛った。 ]
[ フライパンへごま油を引き、
みりん、醤油、砂糖、料理酒を混ぜたものを用意して。
天ぷらと一緒に食べても引き立つように、
気持ち、味を濃く作ろうと、量を調整しつつ。
先に巻き終えた鶏肉を並べ、転がすように全体へ火を通し
一度余分な脂をキッチンペーパーで拭き取れば
混ぜ終えた調味料と一緒に再度フライパンへ移し
もう一度、今度はシイタケも加えて加熱する。
粗熱を取る間に、ボウルへ天ぷら粉と水を混ぜ
たけのこの汁気を軽くペーパーへ吸わせたら
天ぷら粉へくぐらせ、油でじゅう、と揚げていこう。
大葉も合わせるかと思い立ち、追加でそれも。
完成した大葉とたけのこの天ぷらを見栄え良く並べ。
粗熱も取れた鶏肉を一口サイズに切っていけば、
中はちゃんと綺麗な市松模様になっていた。 ]
[ 後は一緒に加熱したシイタケを見栄え良く乗せて、
いわゆる"八幡巻き"の完成だ。
……あ。いえ別に、あの、名前が同じだからとか
そんな他意は。いや。その。
無いとは、言わない。
マンゴータルトは食後だろう、と二皿を手に
神田の元へ笑顔と一緒に帰っていこう。 ]
神田さん! お待たせしました!
ご注文の、たけのこの天ぷらと……その、
……鶏肉のアスパラ巻きです!
タルト、食後にお持ちします ……ご、ごゆっくり!
[ 咄嗟に料理名に詰まって、結局言えないまま
白うさぎはいつもの癖でぴょんと背中を向け、かけて ]
[ やっぱりくるんと振り返った白うさぎは
「あの」と小声で話し掛ける。
お店の中、今は店員とお客様だと分かっているけれど
……ちょっとだけ。
しんどい気持ちを、約束で、甘やかしてくれませんか。 ]
今日、お家に泊まっても、いいですか
体調が悪いとかじゃないんです、けど
……少しだけ。隣で今日は、休みたいです。
[ そんな雰囲気もきっと、
貴方が牽制したいご新規様の心を折るのだろうな。** ]
| え、全然探してないけど。 シェアハウス楽しそうだけど、ボク荷物多いしね。 キッチンもたぶん、ボクじゃ使いこなせないしなー。 [ >>507物事を素直に受け取る後輩、かわいいね。 というか、まだチエさんのテキトー軽口に慣れてないだけって感じがするけど。] え、ボクが内見行っても大河の条件わかんないもん。 シューズボックスいくつあるかとかしか見てこないよー? [別に、絶対行きなよとも言わないんだけど。 優良物件そうじゃん? 面白そうじゃん? 今日の話題の中では平和なシェアの申し出を、面白おかしくつっついてる*] (512) 2023/03/09(Thu) 0:12:16 |
うーん、葉月さん、何があったんだろ……。
記事の感想言いたかったんだけどな……。
[そわそわとカウンターを見遣る。
高野が送っていくと言っているので、自分の出番はいらないかもしれない。
昔から存在を認知しているとはいえ、自分は彼の家を知らない。
高野が把握しているのは、やはりあの記事がきっかけだろうか。
自分も見に行った公開録音の様子が端的にまとめられている。
「いつもと同じ穏やかな笑み」という表現が特に、記事を読んでいる「現地未参戦」のファンにとってその様子が一瞬で思い浮かべられるだろうから秀逸だ。
その後のインタビュー部分も、高野の「今」の姿を捉えるものに焦点を絞っていて、過去の栄光を強調したり事故のことを蒸し返したりしない、とても誠実な記事だった。]
「人」を見るのが上手いんだよなぁ、やっぱ……。
[ないものねだりだが、自分には彼のように人に寄り添う記事は書けない。
共感力が圧倒的に劣っていると思っている。
彼自身は自分への評価が低いけれど、このこの記事のPV数で少しくらい自信を持ったら良いのにな、と思っている。*]
[注文した品が到着するのを待つ間、ぐるりと店内を観察しては見たものの、「何があったか」には思い至らなかった。
葉月の想いも、ゲイザーの心の向きも。
何せ高野と食事を共にした時、高野は沙弥と「いい感じ」に見えていたくらいのポンコツなもので。
ああでも「ご機嫌」な那岐が誰の方向を見ているかというのは――流石にわかる。
なるほど、話したそうな空気は読めていたということか、と一人納得。
ところで秘めた内心は隠したままなのだろうか。
ちょっとヤキモチ焼いてる彼女も見てみたいのだけれど。
それを見た自分がヤキモチを焼くとはわかっていても。]
わ〜やったー!
思ってたより早く出て来てびっくりだよ。
同じ注文の人が前にいたり?
[注文を予想して仕込みをある程度しておく
というのを聞いたら、「先見の明!」と小さく拍手した。
アク抜きまでならどの味付けでも転用できるが、天ぷらの下味はなかなか他には使いづらいのではないだろうか。]
うん。天ぷら、と。
[にこにこ。
視線は、肉巻きの中のごぼうで止まり、彼女のラメのない目元に止まり。
アスパラしか指定していなかったその「中身」に、ごぼうを入れた時点で「わかっている」と思っている。]
呼んでくれないの?
[料理名なら、その可愛い声で自分の名前を構成する3文字が聞けるかなと思ったが中々難しいか。
白うさぎが背を向けるなら無理強いはしない。]
[――と、彼女が振り返った。
まだ、「白うさぎ」でいる時間に、彼女の方からこうして至近距離に来ることは珍しい。]
うん、おいで。
[先程までにこにこと料理名を言わせようとしていた悪戯っぽい笑顔から一転、穏やかに。
理由は今は聞かない。
彼女が自分だけの「マシロちゃん」になってからだ。]
僕は布団派です。
来客用は浮かれてついこないだ新調しました。
[隣で過ごそう。
約束をして、冷めない内に料理を頂くことにする。**]
| それでもシェアハウスって言ったらさぁ、それぞれのプライベート空間と、共用部で分けるもんなんじゃん? したことないからわかんないけど。 あんまほら、はみ出すのもねぇ? 靴の数がたかが知れてないやつもいるってことさ。 [ >>513そういう、おそらく共用部に置くことになるであろう靴やら傘やら、あとは洗面用品とか。 そういう物が多いので、自分は近しい趣味の人間か、完全に受け入れてくれる相手とじゃないとシェアとかは出来ないと思ってる。 冷静な判断もできてるんですよ。] なんかわかんないけど、広いキッチンはありそうじゃん? 前の人がそんだけ料理好きなんだったら、そこんとこは保証されてそうだけどなー? [どう?と聞いても、家主はすっかり出来上がって返事がなかったかもしれないね。] (517) 2023/03/09(Thu) 0:27:45 |
| シャミさんのそっちの仕事、まだずっと忙しーの? [ >>514最近忙しいからスタッフ募集。 この前それで働き過ぎを怒った身としては、ちょっと分け合える立場を羨ましく思わないでもないけれど、そこに立つのはもっと、それこそ大河みたいに、しっかり料理のできる人がいいんだろう。] (519) 2023/03/09(Thu) 0:39:51 |
| ……いいな。 [本当に無意識に、閉じ込めておくはずだった羨望が、ほろりとこぼれた*] (520) 2023/03/09(Thu) 0:40:01 |
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