人狼物語 三日月国


7 【R18】鈴蘭の村:外伝6〜カフェリコリス〜【RP半再演ペア】

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視点:


孤児 セレンが参加しました。

【人】 孤児 セレン



[ 理解し、諦めるまでに、それほど時間は要さなかった ]


 
(62) 2019/04/08(Mon) 2:21:38

【人】 孤児 セレン

 
[ 痩せた手脚。傷だらけの肌。

  栄養が足りないせいで弱々しく、
  働き手としての価値もないはずの子供。

  そんな子供を買う場所など在ろう筈もなく、
  10を過ぎるまでは親元で生きていられた。

  ──実子ではなく、奴隷として ]
 
(67) 2019/04/08(Mon) 3:01:02

【人】 孤児 セレン

 

[ 両親がなぜ自分を売ったのかは理解ができた。

  忌み子だと産んだ時から疎い、蔑み、
  体よく奴隷として扱っていた子ならば、
  二束三文とはいえ金になるならば手放すだろう。

  だから売られる日が来ても心は動かないまま ]
 
(68) 2019/04/08(Mon) 3:02:32

【人】 孤児 セレン

 
[ 手を繋いで夜を泳いだ。

  川で洗うには寒い季節の夜の海。
  繋がれた掌だけが道標で、
  けれどその手は、売るための商品を繋ぐ鎖。

  行き先は、春を鬻ぐ宿でもないらしい。
  孤児を集める教会でもないらしい。

  ならばこの遊泳の先にあるものは何かと、
  稚心に考えていたのをいまでも夜は思い出す ]
 
(69) 2019/04/08(Mon) 3:04:37

【人】 孤児 セレン

 

[ 売られた村はこのご時世に何故か豊かで
  お腹いっぱいに食べるものがあって
  教育も受けさせられ、身体の傷は癒やされて。

  何より隠し続けていた双眸を晒しても、
  汚物を見るような視線を感じることはなく。

  安息の地だと思った訳でもないが、
  少なくとも毎夜に漂う死の気配からは遠ざかった。
  
  生きていられる……生きることを許された。

  拙かった言葉も滑らかに喋れるようになり、
  何に使うかは未だ分からないものの、
  これから先に必要なものだからと教育も施され ]
 
(70) 2019/04/08(Mon) 3:32:56

【人】 孤児 セレン

 

[ 死にたくはなかった。
  飢えたくも、居場所を失いたくもない。
 
  この時勢に特色もない村が豊かな理由も、
  そんな村に自分の他にも幾人もの孤児がいて、
  一定周期ごとに消える不穏さにも目を逸らして。

  必要な知識を必死に学ぶ。
  何もかもを吸収するようにして、憶えた。

  この安寧が、せめてもう少し続くように願いながら ]
  
(71) 2019/04/08(Mon) 3:35:13

【人】 孤児 セレン



 [ 己の番だと知らされたのは、成人を迎えた夜だった ]**
 
 
(72) 2019/04/08(Mon) 3:36:47
生贄 セレンは、メモを貼った。
(a10) 2019/04/08(Mon) 3:51:25

【人】 生贄 セレン

 
[ 静謐とした夜の空気。

  朧とした光源が雲間の月だと知るには、
  異色の双眸は郊外に続く道しか見ず、
  フードから零れた銀だけがその光を映していた。

  その丁寧に梳られたプラチナブロンドからは
  上質な甘い花の香が仄かに漂っている。
  結ばれた唇にも花の彩が引かれて艶やかに、
  熱心に磨かれた肌もまた、滑らかな白磁のようで]
 
(132) 2019/04/08(Mon) 20:40:02

【人】 生贄 セレン


   …………。


[ ───まるで ]
 
(133) 2019/04/08(Mon) 20:40:41

【人】 生贄 セレン


   …………。

[ これでは、生贄だと過るのを飲み込んで ]

 
(134) 2019/04/08(Mon) 20:41:26

【人】 生贄 セレン

 
[ 子供を各地から安く買い叩き、
  成人までは傷一つなく育て、化け物に捧げる。 

  世界に満ちた悪意を煮詰めて凝縮し、
  それを甘く誤魔化した安寧の地は蠱毒に他はなく、
  そこにしか居場所がない子供は選ばれ、
  こうして捧げ物として運ばれていくだけの話だ。

  それを真に理解したのは昨夜の話で、
  孤児に逃げ場などなく、唐突に未来は閉ざされ、
  こうして大人に囲まれ郊外の道を行く。 ]
 
(135) 2019/04/08(Mon) 20:42:47

【人】 生贄 セレン


[ 何が待ち受けているのかを知らされてはいない。
  けれど間違いなく、
  己の意志は関係なく物事は流れていくのだろう。

  着飾られた衣装は殆どが上質な絹物で、
  身じろぎするたびさらさらと衣擦れが響くけれど、
  それすら身動きを封じる悪意の鎖のようで ]
  
(136) 2019/04/08(Mon) 20:43:51

【人】 生贄 セレン

 
[ やがて、森林を切り裂く道。
  ひっそりと建つ古城は目を瞠る大きさで、
  その門を潜らされればぽつんとひとりきり。

  背後で閉じる門の音に、真に退路を断たれた。
  前へ進むしか道はなく震える足で扉の前へと赴くと ]
 
 
  …………。


[ 扉を叩く勇気などなく、
  辛うじて扉に掌をぺたりと触れさせて。

  俯いた頬を濡らす雫を一つ零し、白く煙る息を吐く。
  死ぬ為に、奪われる為に、未来を無くす為に。 ]
 
(138) 2019/04/08(Mon) 20:53:25

【人】 生贄 セレン


  あ、の……


[ 辛うじて絞り出した声は、ほんのりと濡れていた ]**
(140) 2019/04/08(Mon) 20:54:35

【人】 生贄 セレン

 
[ 薔薇の香気に誘われて、>>170
  俯く顔を上げたのは僥倖だっただろうか。

  ひくりと震える喉に呼気を詰まらせ、
  玉響に響く声音の、夜そのものを見上げた。>>171

  頬を撫でる風は慰撫するようには出来てはいない。
  ただ一筋、涙で濡らした頬は強張るままに、
  夜気を纏うお伽噺の化け物を灰と蒼の双眸が映す。

  村人は、生贄に多くを語らなかった。
  ただ帰る場所などなく、それを主として仕え、
  服従の意を伝えろとそれだけを言い聞かされている ]
 
(202) 2019/04/08(Mon) 22:41:06

【人】 生贄 セレン

 
  ……セレン


[ だから、問いに応じる言葉はたった一つだけ。>>172
  己がもつ唯一たるもので、
  それしか持つことを許されなかった大切なもの。

  名に意味があるのかないのか、
  どうしてこの名をつけられたのかは知らずとも、
  灰と蒼の双眸に化け物を映してふるりと震えて。

  それでも従順な子供は絹の外套へ白い指を掛け、
  ふわりと月光を束ねるプラチナブロンドを晒しながら ]
 
(203) 2019/04/08(Mon) 22:43:43

【人】 生贄 セレン

 
   あなたの、もの です。


[ 恐ろしいのだろう、きっと。
  乾いた心で村人に生贄となる未来を告げられ、
  抗うこともできずにここに居るだけのただの人間は、
  人間であることを捨てものだと言い切った。
 
  死にたくはない。
  捨てられたくもない。
  もう飢えるのも裏切られるのも嫌で、
  生贄としての未来しかないのならば、いっそ。

  踏み出す姿にすら動けぬままだった仕草は、
  漸く焦点を合わせて、古城の主を見つめる。

  映すでなく、見て、夜空の断片に瞬いた。
  血の彩りを宿した瞳を持つ、美しい化け物を。
  牙を覗かせる微笑みを描く、恐ろしい男を ]
 
(204) 2019/04/08(Mon) 22:49:04

【人】 生贄 セレン

 
[ 玲瓏たる声音で告げた名を棚引くように、
  男の前で頭を垂れる──には、
  紅い眼光に許されざる意を汲んで視線は逸らさずに。

  震える指先でフードだけではなく外套を脱ぎ、
  すらりと靭やかな身体を晒してみせる。

  生贄にされるためだけに整えられた肢体は、
  お嬢さんと呼ばれるには程遠く、
  主の勘違いを言葉ではなく視界で紐解くようにして ]
 
(205) 2019/04/08(Mon) 22:54:58

【人】 生贄 セレン


 
   なんでもします、から……


[ どうか、見捨てないでとまでは綴れずに ]* 
 
(206) 2019/04/08(Mon) 22:56:10
生贄 セレンは、メモを貼った。
(a22) 2019/04/08(Mon) 22:57:29

【人】 生贄 セレン

 
   ……っ


[ 褒める言葉を掛けられた記憶は過去になく、>>214
  暫く思考を揺らがせその意味を知る鈍さはあれど。
 
  頬に熱を集らせて、双眸を震わせた。
  漣はすでに引いたが恐怖は未だ纏わり付いて、
  そこに映る男を恐ろしいと思っているのに。
 
  花の蜜を練り込んだ紅を引いた唇は、
  舐めれば甘く、月光を映して光る生贄化粧。
  挙動全てに誘惑を感じる男に目許も染めて、
  唇が言葉を綴るよりも早く、傅く仕草で従順を示す ]
 
(228) 2019/04/09(Tue) 0:04:59

【人】 生贄 セレン

  
   ぅ、……裏切るのは、
   ぼくが、嫌……なんです。


[ 人の感覚を古城の主も抱くとは考えてはいない。
  ただ、裏切られ続けた過去を振り返り、
  疵を刻まれたからこそ滲む言葉を素直に告げて。

  そっと息を吐き、惑う視線を再び主へ向けた。
  忌まれた瞳を射抜く紅に自ら絡め取られて、
  その顎から逃れる気など欠片もないと示すように]
 
(229) 2019/04/09(Tue) 0:08:39

【人】 生贄 セレン

 
[ 頬へ伸びる指にも抗わず、
  涙の筋を撫でる指先に温かな体温を返して。

  染まった頬をなんと思うのだろうか。
  主の指は夜のせいか種のせいか冷たくて、
  瞬きを数度――それから、唇をまた震わせ紡ぐ ]
 
(231) 2019/04/09(Tue) 0:20:57

【人】 生贄 セレン

 
   望むことを


[ 今までもそうして生きて来た。
  産まれることすら望まれないままの己を自覚して、
  その穴を埋めるように自らを殺して生きてきた。

  重石に縛られゆく感覚は、故に、ない。
  そんなものはもとより諦めが蝕み麻痺して、
  当然のように受け容れる子供は今もまた。

  蕩ける微笑に蠱惑されるでなく、
  ただ、満ちていく悲哀に瞳を曇らせて ]
 
(232) 2019/04/09(Tue) 0:21:30

【人】 生贄 セレン

 
[ 貴人を悦ばす知識は、詰め込まれていた。

  古城の主のために――
  生贄が気に入られればそれだけ村の滅びが遠ざかる、
  たったそれだけの理由で、子供には相応しくない知識を。
  
  だからこそ、差し出された指へ生贄らしく。
  その指先を迎えた唇は柔らかな感触で、
  そっと触れるだけに到らず舌を覗かせちらりと舐めて ]

 
(235) 2019/04/09(Tue) 0:35:34

【人】 生贄 セレン


   ……何処までも、望むままに


[ 望みは、ただ、捨てられないでいることだけだった ]**
 
(236) 2019/04/09(Tue) 0:37:12
生贄 セレンは、メモを貼った。
(a28) 2019/04/09(Tue) 0:45:00

【人】 生贄 セレン

 
[ 手袋越しの体温は心地良く、>>244
  喉を震わせ弾む息を細く吐きだした。

  問い掛けに巡る思考は痺れたようで鈍く、
  心悸は浅く早く、ちりりと焦がれる痛みがあった。
  眩む視界は夜の輪郭を曖昧にして、
  どうしてか頬に集った熱も引きそうにもない。

  響く声音も蕩けるようなのは何故か、>>243
  それを僅かたりとも考える余裕すらなかった。

  ―――けれど、それでも。 ]
 
(283) 2019/04/09(Tue) 15:18:16

【人】 生贄 セレン

 
   ……たとえ困らなくても、
   それが……ぼくが、貴方にあげられるものだから。


[ 耽溺に堕ちる淵で溢した言葉に意志を籠め、 
  きゅっと両手を握って頑なに踏み止まりながら。

  己の価値という難しい思考までは至らず、
  ただそれだけを主張し、訴える。

  けして裏切らない、純粋なまでに嘘もない。
  大人に纏わされた虚飾も剥いで示したように、
  己の所有者への隷従を――─囀る響きは真摯に。 ]
 
(284) 2019/04/09(Tue) 15:21:09

【人】 生贄 セレン

 
[ 名を呼ばれ、瞳が揺らぐ。>>245
  指の道標に誘われ見上げる姿勢のまま、
  甘く香る唇を微かに開いて、はい、と素直に返して。
  
  紡がれた言葉を理解しようと、
  紅の瞳の中で退屈の意味を探ろうと瞬きを数度。

  古城の主の興味がどこにあるのか、
  たとえそれを知ることができたとて満たせるのか。

  ―――満たさなければ、どうなるのか。 ]


   ……ぁ、


[ 視界が翳る。
  喉に詰まった言葉は空気となって零れ出て、
  瞠る双眸は、ただ、美しい夜に浮かぶ月を見て]
 
(285) 2019/04/09(Tue) 15:49:34

【人】 生贄 セレン


  ぼく、自身……


[ 溢した言葉は吐息交じりに、
  熱い音を響かせ、緩やかに繰り返す。
 
  自分自身──それを望まれている。
  けれどそんなものを知るようならば、
  己はここに居ずにとうに親元で死んでいただろう。

  己に出来る事と言えば、
  食べられる野草の見分け方とか貴人には無縁の知識と
  村で詰め込まれた夜伽の術しか持ってはいない]
 
(286) 2019/04/09(Tue) 16:13:55

【人】 生贄 セレン

 
[ けして裏切らない、
  どんなときも、嘘を吐かない。

  その主張を通すことも自己だとは、
  未だ、認識できる域にないくらいには殺し慣れていた。 ]
 
(287) 2019/04/09(Tue) 16:15:24

【人】 生贄 セレン


  ……はい


[ 夜気に侵され震える身体を忘れる程に。
  けれど、傍目には震えていたらしく、
  誘う声音に背を伸ばして慌ててその背を追いかけた。

  外套を再び羽織るだけはして城の中へ、
  長身の主とは逆に小柄の己は小走りとなって、
  見たこともない城の荘厳さに息を飲むより先に。

  追いついた主の一歩後ろで、片手をそっと握った。
  子供が逃げ出すのを防ぐ鎖として大人に繋がれるもの。

  ―――というだけではなく、
  置き去りの不安を解消するための無意識の仕草で、
  瞼を閉じて考え込んだ主を見上げ、それから ]
 
(288) 2019/04/09(Tue) 16:24:41

【人】 生贄 セレン


   あの……、あなたの名を、どうか……


[ これまで幾人もの子供が城に送られたと聞いている。
  その行方が不穏にも隠されているのも知っていた。

  生贄として捧げられるのだから主人として扱え、と。
  村ではそう言い聞かされているからこそ、
  幾人もを迎えた男にとって普遍では退屈だろうと察して。

  躊躇いの尾を踏みながら、彼の名を乞い願う ]**
 
(289) 2019/04/09(Tue) 16:33:03

【人】 生贄 セレン


[ ふわふわと浮かぶ心地は口付けの余韻か、
  夜魔の誘惑に惑わされたのかを知る余地もなく。

  繋いだ掌は手袋越しでも人の形をしている。
  そこに自ら繋がれた無意識は不思議そうに、
  問い掛けの意味を理解せず、首を傾げて返せば。>>364

  告げられた名の意味することは知識になく、
  ただ、教えてくれた事実だけを掴み、
  爪先まで満ちていた緊張をそっと紐解くと]
 
(374) 2019/04/09(Tue) 23:18:17

【人】 生贄 セレン


   ニクス、さま……


[ 囁きに近い微かな響きで繰り返し、
  夜の断片に導かれ揺られながら頬を緩めて。>>366

  吸血鬼でも主人でもなくただ名を呼ぶ子供は、
  ほんの僅かでも笑顔を滲ませ、言葉を継いだ。 ]
 
(375) 2019/04/09(Tue) 23:18:43

【人】 生贄 セレン

 
   なにも……何も、しません。
   ただ、ぼくが……。
   あなたをなまえで呼びたかったんです。
  

[ 夜を映す瞳を仄かに燈らせるのは、
  綴る意志の欠片でもあり、感情でもあり。

  怖い、死にたくない――
  なによりも、もう捨てられたくない。


  恐怖は未だ虫喰いのように巣食い、
  その怖れがすぐに剥がれることは今はなくとも。 ]
 
(377) 2019/04/09(Tue) 23:23:35

【人】 生贄 セレン

 
[ 撫でられた箇所が熱を帯びたかのように熱い。

  頬も、顎も、背も、腰も、まるで別物のように、
  ただ熱を放って、制御できずにもどかしい中で。

  伝えた意志は通じただろうか。
  彼の名を呼びたかった、たったそれだけの、
  けれど初めて抱いた、自らの意志を。

  揺れる揺り籠は既に止まって、>>366
  双眸を僅かに寂寥へ揺らしながらその手を引く。

  主が、踏み出しかけていた方向へ。
  落ち着いた色彩の階段の上に、
  おそらく目指す場所があるのだろうと察して ]
 
(381) 2019/04/09(Tue) 23:38:39

【人】 生贄 セレン

 
[ 階段を登る――音もたてずに、その先へ。
  案内される身であるから半歩後ろにはいるものの、
  古城の吸血鬼に連れられる子供にしては鈍さもなく。

  魅了の余韻は確かにあった。
  舌は今頃痺れて舌足らずに陥って、
  背も腰も熱を帯びたまま、
  頬の熱は引かず白い肌を染めている。 

  さりとて、それに酔う様子はなく。
  前の子供の部屋へと導かれて扉を開かれれば、
  その広さに息を飲むくらいには自己を保てている。

  そもそも個室などという発想はなく、
  広いベッドに、衣装入れ、鏡、等々――
  高級品が並ぶことにも己に結び付く現実感がない。 ]
 
(388) 2019/04/09(Tue) 23:45:52

【人】 生贄 セレン

 
   ……あ、の……
  

[ 故に、困ったように立ち尽くして。
  背を押されれば部屋に入りはするものの、
  外套を抱くようにして、視線をニクスへ向けた。 ]
 
(395) 2019/04/09(Tue) 23:48:09

【人】 生贄 セレン

 
[ 城内の空気もまた夜の気配に包まれて、
  柔い足音を響かせ、階段を上る最中に降る声に。

  暫し思考を巡らせて瞬きを返した。
  そういえばこんな大きな城でありながら、
  城の主に傅く従者の姿が見つからない。

  隠れている理由などないだろう。
  それに、彼の言葉こそ己にとっては真実で、
  これから自分が呼ぶ名はもう彼の名前だけ───

  そう、理解して。
  命令だという意識はなく、
  自然な仕草で白銀の髪を揺らし頷きながら]
 
(406) 2019/04/10(Wed) 0:55:34

【人】 生贄 セレン

  
   ……ひとりじゃないと、わかるので。


[ 繋がれている間は捨てられない。>>402
  たったそれだけの理由にしては頬を桜に染めたまま、
  柔らかな力に添うように指先を震わせながら。

  部屋の中を見渡し、溜息を吐いた。>>403
  内装の趣味は兎も角として明らかに身に余る部屋は、
  言いようのない不安を呼び、視線を彷徨わせる]
 
(411) 2019/04/10(Wed) 0:58:20

【人】 生贄 セレン

 
   ドレス……


[ 前に居た子供、に胸が痛むかといえば否だ。
  他人を気遣えるほどには落ち着くはずもない現状で、
  繋いだ手だけが居場所を知らせるようで未だ不安の内。

  振り返る仕草を察して彷徨う視線は彼の紅眼へ。
  するりと抜ける指を無意識に掴んで、
  その柔らかな囁きに、やや俯きながら首を振る。

  ここに居て欲しいと、縋るように横へ]
 
(412) 2019/04/10(Wed) 0:59:23

【人】 生贄 セレン

 
[ ――故に、手は繋いだまま。

  自ら手離すなど過りもせず、
  寧ろ、その掌に惹かれるように、
  歴然とした身分差の距離を僅かに縮めて。

  クロゼットの中に並ぶドレスを眺めた。
  いかに小柄とはいえ男の身では、
  目に余るというかなんというか無理が過ぎる。

  心の天秤を傾けた先に在るのは小さな希望。
  生きること以外に生まれたそれを、
  言葉にするには僅かに躊躇いはあったけれど ]
 
(417) 2019/04/10(Wed) 1:21:47

【人】 生贄 セレン

 
   どれも女物なので、その……
   できれば、上着だけでも貸していただけたら。


[ この城に名を呼ぶような存在が、
  彼の他には居ないと告げられたばかりなら。

  残されたドレスでは小さく、
  他に着るものは村で装飾されたシルクの夜着だけ。
  生贄としての衣装がお気に召さないのは既知で、
  なら、他に選ぶものがあるとするならそれしかない。

  未だ手は離さずに。
  肩に羽織っただけの外套をするりと落とし、
  透けた絹地を晒して寒さに身を震わせる。

  嘗ての虐待の傷は癒え、
  村で振りかけられた花の香水だけが香る、
  大人になりきれずにいる無垢さを示すように ]
 
(418) 2019/04/10(Wed) 1:22:49

【人】 生贄 セレン

 
   香が移らないように、
   湯殿で流した方がいいのなら……
   そう…、しま……す……

 
[ 甘い香は微かであれ、薔薇と混じれば毒のようで。
  唇から溢れた呼気に中てられ、>>404
  足した囁きは魅了の楔に囚われ蕩けて拙く。

  差し出された上着を抱く仕草はきっと甘えるように。
  けれどそれ以上は痺れる様子もなく、
  瞬く瞳は自ら主の双眼から逃れず手も繋ぐまま ]
   
(421) 2019/04/10(Wed) 1:29:44

【人】 生贄 セレン


[ 聞き分けの良いはずの生贄は、
  繋いだ掌を引き寄せ、その甲へと唇を触れさせた。

  敬愛とするには熱めいて
  親愛とするには戸惑いの滲む
  
  ささやかな接触を手袋越しに ]**
 
(422) 2019/04/10(Wed) 1:34:21

【人】 生贄 セレン

 
[ ふたり。そう、今はふたりきり。
  柔らかな足音すら響く城内にたったふたり、
  だからこそ怖いなんてどんな言葉を綴れば通じるか。

  人がいないから怖いのではなく、
  手を繋いだ主が夜の怪物だから怖いのでもなく。
  その場から放り出されることが怖いだなんて、
  だから手を繋ぐのだなど言葉を織っても伝わるまい。
 
  肩に掛けられた上着の重みに安堵するなど、
  置き去りの生贄に慣れているだろう彼にはきっと ]

   
   綺麗に、してきます。


[ 退屈を癒すだけの玩具だろうか、今は。
  それとも、己は何か興味を引かれたのだろうか。

  薔薇の香りに包まれ上目遣いで見上げるも、
  反応は僅かに瞼が震えるだけで怒る様子はなく。
  寧ろ、空気を揺らして笑う彼に ]
 
(470) 2019/04/10(Wed) 20:23:23

【人】 生贄 セレン

 
   ぼく、は……


[ 何がしたいかと問われて、瞬く双眸の光は淡く。
  頑なに夜だけを映す異色の彩を緩ませれば、
  視界に映る主の蠱惑にこれ以上揺らぐこともなく。

  頬を撫でる仕草に、そっと柔らかな吐息を絡め、
  直に触れてくれればもっとこの冷たさを温められるのに。

  そう考えながら稚く髪を揺らし、緩く頷いて ]
 
(471) 2019/04/10(Wed) 20:27:26

【人】 生贄 セレン


   ニクスさまの役に立ちたい……
   でもぼくに何ができるか、分からなくて。


[ 捨てられたくないから、ではなく、
  羽織らされた上着の重みに引き出された安堵を綴る。
  魅了の余韻であるふわりとした物言いも落ち、
  浮かび上がった言葉をただ素直に、真摯に ]
 
(472) 2019/04/10(Wed) 20:28:29

【人】 生贄 セレン

 
   ぼくの番だと知らされてから、たくさん学びました。
   文字の読み方、書き方、楽器の奏で方、歌い方。
   夜伽も出来るように教わってきたけれど、でも……


[ 吐き出す吐息は細く不安定で、
  撫でられていた頬だけが赤いまま。 

  掌を繋いでいた手指は自然と剥がれて主へと伸びた。
  何処にも縋らず、掴みもせず、ただ胸板に添えるだけで、
  手離されても大丈夫だと自らに言い聞かせるように ]
 
(475) 2019/04/10(Wed) 20:33:39

【人】 生贄 セレン

 
  あなたの退屈を、
  ……空腹を満たすことではなくて退屈を埋めるには。
  何を……出来ることを、してもいい、なら。
 
 
[ もう一つ、村で聞いた生贄の子供の用途があった。
  古城の怪物は人の血を啜って枯らす悪い化け物で、 
  それを恐れ、この豊かな土地には他に村が成り立たない。

  子供を差し出すことで村の豊穣の独占は続く。
  つまりは行き場のない生贄の最後は戻ることではなく、
  この主に食われることなのだろう、きっと。

  なら、この願いもきっと、自己の発露に近いと信じて ]
 
(476) 2019/04/10(Wed) 20:49:53

【人】 生贄 セレン


  湯浴みは、されませんか。
  一緒に……背を、流します……から。

[ 胸に添えただけの掌は知らずに動いて、服を掴んで。
  小さくなった声音で、そっと懇願を囁いた ]*
 
(477) 2019/04/10(Wed) 20:51:35

【人】 生贄 セレン

 
[ 唇の動きを読むかのように視線をそこへ。
  紅眼に囚われ動けない愚かな子供はおらず、
  目許を染めて酔いはすれどその言葉を素直に聞く。

  諭すような口調に罪悪感を育てる意はないのか、
  問い掛けに続く言葉に棘もなくゆるりと首を横へ。
  帰ってきた子供たちからの情報など無きに等しく、
  口減らしに子を売るのが普遍な時世に、
  用済みの行く末がどうなるかは想像に難くない ]
 
(522) 2019/04/10(Wed) 23:17:32

【人】 生贄 セレン


   ごめんなさい。


[ 湯浴みもそのひとつ。
  媚を売るための術として詰め込まれた知識でも、
  慰めや退屈を埋める一石になるのなら――

  冷たい指を温めて少しでも近付ければ、
  今宵の時くらいは彼を満たすことが出来るかも。

  そんな稚い発想は優しい声音に打ち砕かれて、
  ほんのり声を沈ませて、素直に謝りながら ]
 
(523) 2019/04/10(Wed) 23:18:25

【人】 生贄 セレン

 
   教えられたときは、生きる為に。
   今は、ニクスさまの為……です……


[ 捨てられ、裏切られ、挙句に捧げられ、
  要らない子供だと言外に位置付けられた自分へ、
  退屈を癒せば居場所をくれると囁く主に。

  少しでも、僅かだけでも届けば。
  契約の楔が撃ち込まれたことを意識してはおらず、
  ただ、己にも出来ることがあるならばと手を伸ばしただけ。

  未だ、距離感を測りかねて届かない願いだったけれど。
  それでも意志は見せるべく俯きがちの顔を上げて ]
 
(524) 2019/04/10(Wed) 23:21:09

【人】 生贄 セレン

 
   こわいです。
   独りは、もう嫌で……


[ それは、孤独の意味を知る寂寥を滲ませる声音。
  けれど言葉とは裏腹に、灰と蒼の双眸を紅眼に捧ぐ ]
 
(525) 2019/04/10(Wed) 23:31:56

【人】 生贄 セレン

  
   一緒に、居させてください。


[ 生贄として捧げられて、ものだと言い切った影はなく。
  足元の不安定さに怯えて震えはすれど、
  掴んでいた服を自ら離し、一歩後ろへと下がる。。
  
  両手は羽織るに大きい彼の上着へ。
  袖が長くて指先しか出ない大きさに苦心しながら、
  どうにか頭を下げるに邪魔にならないよう抑えて。
  ぺこんと髪を揺らし下げてみたものの案の定、
  借り物の上着は肩から落ちそうにもなっている。

  まるで滑稽な人形劇にしか見えないだろう。
  実際、村出来せられた絹地もすぐに脱ぐと目されて、
  危ういことこの上ないのを必死に留めていた ]
 
   
(526) 2019/04/10(Wed) 23:35:17

【人】 生贄 セレン


   あなたを知るためにも。
   そばに……いたい、です。


[ 風呂はひとりで済ませるにせよ、。
  その後を心配する一言は、どうにも自信なさそうに。
  
  おねだりのように甘くはなく、
  懇願のようにただただ必死でもなく。
   
  ぎこちなく表情を崩してみせながらいい添えた ]*
 
(527) 2019/04/10(Wed) 23:44:04

【人】 生贄 セレン

 
   …………。
 

[ もしかして。
  そう、本当に、もしかしてだけれど。

  重ねた言葉は露も届かないように、>>551
  彼の言葉には玩弄の意しかないのだとしたら。

  交わすことすら無駄なのかもしれない。
  夜の怪物は怪物で、人間は人間で、
  相容れないのだとしたら、会話は意味のないことで――

  そう、過ってしまったけれど ]
 
(556) 2019/04/11(Thu) 0:54:36

【人】 生贄 セレン


   ……はい。


[ すん、と鼻を鳴らし、滲もうとする涙を留めた。

  死ぬのも、ひとりも、恐ろしい。
  けれど古城の主が怖いとは思えずにいるのを、
  内側へと呑み込み、大人しく頷きを返して ]
 
(557) 2019/04/11(Thu) 0:55:08

【人】 生贄 セレン

 
   洗って綺麗にしてから
   部屋に、行きます……


[ 奥の扉に何があるのだろう。
  子供らしい好奇心は刺激されたものの、
  大人の命令が下れば思考は痺れて動かない。>>555

  こく、と肯く仕草は従順に。
  笑む表情には逆に、悲しく曇った瞳で返し、
  バスローブとタオルを両手で抱くと ]
(558) 2019/04/11(Thu) 0:55:32

【人】 生贄 セレン

 
[ 今は湯浴みが先だともう一度ぺこりと頭を下げて。
  視線から逃れるように部屋の扉を潜り抜けようとし、
  ふと、思い至ったように疑問を口にする ]


   もし、開けたら……?


[ 奥の扉を開けば彼を知ることが出来るのか、
  或いは、猫のように殺されるのか。

  惑いの滲む音を静かに落とし、
  好奇心に揺れる瞳を主へ向けて、
  子供らしさと相反する感情を色濃くしながら ]
 
(562) 2019/04/11(Thu) 1:28:41

【人】 生贄 セレン

 
   ぼくを食べますか……?
   それとも、捨てる……?


[ 帰ってこない子供の幾人かはそうして死んだのか。
  仮に、開けたとして、同じ目にあうのか。

  死にたくもないし、ひとりも嫌だ。
  するなと言われればしないだろう、でも── ]
 
(563) 2019/04/11(Thu) 1:29:24

【人】 生贄 セレン


  ………ぼくは
  あなたのことを、もっと知りたい。


[ 灰の瞳は陽に弱く、夜を映すに柔らかな光で。
  蒼は掠れて夜に染まって、訴えるような雫を湛えて。

  自己を見せろと囁く主に、ただまっすぐ訴えた ]**
 
(564) 2019/04/11(Thu) 1:33:05

【人】 生贄 セレン

 
   ……たしかに。


[ 震えは未だ、夜気の朧に触れて身を縛る。
  それでも背筋は真っすぐ伸びたまま、
  瞳に夜の怪物を映して艷やかな唇を開く。

  小柄な身には重い上着だった。
  体格の差を身体で感じながら、
  煌々とした光だけを双眸に讃えて、
  玩弄されればそれまでの人間らしく実直に ]
 
(628) 2019/04/11(Thu) 20:56:46

【人】 生贄 セレン

 
   たしかに、ぼくの為でもあります。
   だってぼくにはそれだけ価値しかなかった、昨日までは。


[ 捨てられ、裏切られ、挙句に捧げられ、
  要らない子供だと言外に位置付けられた自分。

  そう、人の世界では不要とされて、要らない存在だった。
  朽ちていくだけの消耗品ですらなく不用品だった。

  そこに足されたのが生贄としての価値で、
  主たる怪物が退屈を癒せというのなら、つまりは ]
 
(629) 2019/04/11(Thu) 21:00:44

【人】 生贄 セレン

 
   だから、あなたが満足してくれないと。
   ぼくのたった一つの価値すらなくなってしまう。

   あなたの退屈を満たせるなら、
   ぼくをここで生かしてくれるのでしょう……?


[ 震える声音は相変わらずで、
  ともすれば消え失せてしまいそうな様子は未だ。

  それでも最初よりは幾分かは芯のある仕草で、
  ふ、っと息を吐き出し、ぎこちなく口端を上げる ]
 
(630) 2019/04/11(Thu) 21:02:07

【人】 生贄 セレン


   それを価値というのかはぼくには分からないけれど。
   でもそれだけしか、ぼくにはないから──…


[ 鼓動が痛いほどに早く呼気も浅い。
  人非ざる男を前に籠もる緊張は隠しようもなく、
  それでも、唇は弧を描くままで視線は逸らさずに ]
 
(631) 2019/04/11(Thu) 21:13:36

【人】 生贄 セレン


  ニクスさまの為にするべきことをしたい。
  あなたに認められなければ、ぼくは、無価値になる。

  だからもっと……
  あなたのことを知りたい、そういったんです。


[ 生きたくて、裏切られたくない、これはその裏返し。
  認められれば生きられる、
  裏切る生き物を望むとは思えないから裏切らない。

  裏切りだけはされるのが嫌だという思いが強く滲み、
  我儘な自己主張となっているのは理解しているけれど ]
 
 
(632) 2019/04/11(Thu) 21:14:15

【人】 生贄 セレン

 
[ 笑っているのだろうか。
  自分では分からない不出来な表情を、
  背けず古城の主へ向けてふわりと髪を揺らし、
  綴られる言葉にかえして仕草でも頷いて。>>611

  笑っている彼を。>>612
  背筋が凍るように美しい男の笑いを。

  その美麗さを視界に入れるたび、
  眩む感情に沈もうとするのを唇を噛み締め耐えながら、
  靡く感情を無意識に制御して瞬きを返す ]
 
(633) 2019/04/11(Thu) 21:16:57

【人】 生贄 セレン

 
   血……


[ 無垢な子供を好むとは村で聞いていた。
  その番が来たと告げられた夜こそ怖ろしさに震えたが、
  諦めで麻痺してしまえば今は動揺にも至らない。

  幾人もの子供が捧げられる理由は朧に理解し、>>613
  ならば己には血袋の価値もあるのだと歪に笑う。
  何もなかった自身へ足される価値がどれほどの物か、
  きっと、目の前の主にはわかるまい。

  そこに足される知識もまた、>>614
  弱みを知らせる理由を測りかねはしたものの、
  夜を侵す害を知り、己の価値として ]
 
(642) 2019/04/11(Thu) 21:28:05

【人】 生贄 セレン

 
   29人の全てを知るわけじゃないけれど。
   みんな、帰ってこなかったから……。

   あなたに仕えた子供の未来は、
   もうどこにもないんだって……
   大人たちはぼくに笑って、そういってた。


[ 知らずに緊張の解けた口調となりながら、
  29人の帰還すべき子供の行方にも興味はなく、>>614
  30人目の子供の行方にだけは興味を惹かれたものの。
  じわりと滲む焦燥もまた、興味と混じり絡み合う。

  残った1人は彼に気に入られたのか。
  それならばなぜこの城にだれもいないのか、
  ───開いてはいけない扉の向こう側なのか。

  無価値な子供なりに思考を巡らせはしたももの、
  言葉にしたものは最も興味を抱くひとつだけ ]
 
(656) 2019/04/11(Thu) 21:44:25

【人】 生贄 セレン

 
   陽も、銀も、流水も、白樺の杭も。
   ぼくに教えて……どう、したいんですか?


[ 湯浴みに誘う間違いを犯した子供への忠告か、
  或いは、何かの示唆なのか。
 
  頭の中で開かずの扉の鍵の位置を刻み、>>612
  近づく狼に視線を移してそっと毛皮をなでながら。>>615

  言葉が通じるのならば小さく側においで、と囁いた。
  並べば伝わる体温に安堵して表情を緩めながら、
  問いを投げたにも関わらず柔らかく笑う雰囲気だけ残して。

  狼と連れ立ち、部屋を出て行った ]*
 
(657) 2019/04/11(Thu) 21:46:21

【人】 生贄 セレン

 
[ 廊下を進めば独りの空気は冷たく痺れるようで、
  古城を歩く不安を和らげてくれる狼に近付きながら。

  アッシュグレーの毛並みにそっと触れる。
  人ではない体毛の感触が伝われば滲むのは安堵で、
  誰も居ない場所での孤独を癒やされ、緩く微笑んで。

  階段を降りて暫し、茫と周囲を見渡した。
  道標の言葉を直ぐに忘れるほど愚図ではなく、
  けれど浴室の右手に向かうでなく足は階段の奥の扉へ。

  燭台の光を頼りに歩けば突き当りに扉があった。
  窓を見れば薔薇の庭園が目に入り、
  重い扉を両手で押し開いて薔薇の茂みへと近寄って。

  夜気は身を苛み、痛い程だったけれど、
  今はこの一輪を得る欲のまま無防備に摘み取れば。

  棘に指が触れたか鈍く走る痛みに無感動に首を傾げ、
  紅い血が一筋流れる落ちる前に、その指を舐める ]
 
(684) 2019/04/11(Thu) 22:54:18

【人】 生贄 セレン

 
   ……美味しいのかな


[ 血を糧とする夜の怪物のお気に召す血なのだろうか。
  無垢であれと村では知識だけしか詰め込まれておらず、
  舐める仕草も稚いまま、薔薇をもう一輪摘み、息を吐く。

  ───味はしなかった、けれど温かい。

  感動も嫌悪もなく鮮血の感想はたったそれだけ。
  故に興味も薄く、紅い薔薇の香りに促されて身を翻す。

  そうだ、まだ、やることがある。

  湯殿で身体を清めて、それから。
  主の元へ向かって何かを話そうか、それとも何かをするか、
  出来ることと言えば細やかなことでしかないのだけれど ]
 
(685) 2019/04/11(Thu) 22:56:39

【人】 生贄 セレン

 
[ 狼は必要以上に近寄らずに視線だけを向けていて、
  だからこそ勝手に近づき、また首筋を撫でてから。

  伴い向かうのは今度こそ湯殿だった。
  ひとりしか住まわない──その時時に子供がいても、
  主ひとりきりの城にしては広い場所に双眸を見開いて。

  天窓を透して零れ入る、静謐とした夜の光。
  その真中で濡れないように上着を脱いで籠に入れ、
  身体に巻き付いている絹の布も無造作に剥ぎ取った。

  見下ろせば白い肌の靭やかな身体がある。
  輿入でもするかのように磨かれた肌は月光に浮かび、
  羽織ものがあれば女と見紛うにも理解し苦笑する。

  大人の都合で飾られる価値観を、
  自ら脱ぎ捨てるには未だ抵抗感はあった。
  これだって自分に付随した価値だと思えば尚更に、
  けれど、それを主が望まないのならば意味のないことで ]
 
(686) 2019/04/11(Thu) 22:58:10

【人】 生贄 セレン

 
   おいで


[ 狼を手招いて、浴槽に座って湯を流す。
  薔薇の1輪だけを浴槽に散らして匂いを馴染ませて、
  そこに身を浸せば花の香は薔薇と差し替わるだろう。

  後はゆっくり浸かるだけだ。
  他人に色付けられた古い価値観を脱ぎ捨て洗い流し、
  役に立つと決めた相手のためだけに自らに色彩を足す。

  滑るように浴槽に身を沈め、
  腕だけを伸ばして狼を撫でる指はゆるりと。

  滴る湯水を嫌うならなるべく濡らさないように、
  狼の瞳をじっと覗き込み、問いかける ]
 
(687) 2019/04/11(Thu) 23:00:38

【人】 生贄 セレン

 
   ……ねぇ


[ 暖かな湯に包まれて、夢見心地に ]
 
(692) 2019/04/11(Thu) 23:01:09

【人】 生贄 セレン

 
   あの ひと が……
   殺したとしてもぼくはどうでもいいのにね


[ 行方不明の子供たちの末路に興味はなく、>>676
  主のその手で殺めていたとしてもきっと何も感じない。
  そして、彼の言葉を信用するかといえば、
  意図はともかく信じない理由が己にはなかった。

  だからあの時は不思議そうにはしたものの頷いて、>>677
  必ず、とだけ言い残し部屋を去ったのだから ]
 
(693) 2019/04/11(Thu) 23:02:45

【人】 生贄 セレン

 
[ 暖かい湯に浸ること幾分。
  その間に流れたもの寂しいピアノは届かずに、
  思いを馳せるのもきっと陽と宵闇ほどの差があった。

  狼に話しかけるのは過去の疵で、
  人ではない獣だからこそ無感動に痛みを綴る。
  孤独の毒を。希望の猛毒を。絶望の甘さを。
  諦めの囀りが心地よく、そう生きてたことを。

  顔立ちだけは悪くなかったせいで、
  幾度か生贄に決まる前は襲われることもあった。
  花街に売られなかったのは、疎まれた目のおかげだ。
  陽に弱くまともに陽射しを見れない灰は、
  月に輝くのを見咎められ化け物だとも詰られた ]
 
(702) 2019/04/11(Thu) 23:31:24

【人】 生贄 セレン

 
   化け物って人間に殺されるんだ。
   ……少なくとも、ぼくはそうだった。

   母さんも、父さんも、村のひともみんな。


[ 狭い世界で育った己には、
  彼の意図するべき内心はいまだ探れない。>>615
  考えはすれどまるで殺すのは容易だとしか解釈できず、
  その意であるならば、叶える気がさらさらない。

  だから結論は幾度考えても同じこと。
  溜息を吐き出し、ふと、主の言葉を思い出す。>>615 ]
 
(704) 2019/04/11(Thu) 23:32:16

【人】 生贄 セレン

 

  ” 彼に願えばすぐ向かおう。 ”

 
(705) 2019/04/11(Thu) 23:32:36

【人】 生贄 セレン

 
[ 願えば、伝わるのだろうか。
  ならば独言のように語り聞かせた疵も、
  明け透けに伝わってしまったのだろうか。
  
  狼の瞳を覗き込むも静かで変化はなく、
  暫し迷って、部屋に行かせてくださいと囁いた。

  足を向けて貰うほどの用事ではない。
  寧ろ、側にいたいのは己なのだから行くのが当然だろう ]
 
(707) 2019/04/11(Thu) 23:35:09

【人】 生贄 セレン

 
[ 伝えてしまえば行動は早かった。
  どうやってこの城を維持しているのか不思議だけれど、
  指先まで温まった湯を出て、バスタオルに包まれる。

  湯気香る身体は仄かに薔薇の香りが漂って、
  それこそ、村で施された生贄化粧よりも甘やかで。
  それを意図せず水滴を拭いバスローブに身を包むと、
  主の上着をまた羽織り、裸足のまま浴室を後にする。

  目指すは厨房、湯を沸かして、紅茶を一客。
  道具は奴隷であったころに使い方を憶えているから、
  あとは薔薇の花弁を洗って紅茶に浮かべるだけ。

  慣れない場所に少しは戸惑ったものの、
  黄金の一滴まで理解したそれを両手で抱え、
  足は急いで彼の部屋へ──

  扉をいきなり開く不躾はせず、
  とんとんと叩いて、様子を待った ]*
 
(708) 2019/04/11(Thu) 23:36:48

【人】 生贄 セレン

 
[ 獣は距離を縮めてくれて、>>709
  側に寄り添う姿に知らずと雰囲気を和らげる。
 
  他人が己に触れた記憶の中で、
  心地よさを感じるものなど今までは何ひとつなく。
  近付かれる気配はただ己を侵す怖いものだったのに。

  獣の体温は側にいるだけで暖かく孤独を癒やし、
  恐怖に満ちていた緊張を自然に解してくれていた。

  蜜を塗られた唇に触れた冷たい熱の記憶もまた、
  鎖された未来へ繋ぐ糸のように、安堵を呼んでいる ]
 
(748) 2019/04/12(Fri) 4:14:42

【人】 生贄 セレン

 
   ありがとう、君は暖かいね。


[ 狼に寄り添う意図がなくともやわりと告げて、
  遠吠えを響かせる傍ら、暖かな紅茶を急ぎ運べば。>>709

  扉の向こう側からの声音にそっと息を吐く。>>713

  大人の前では籠もる力を抜くのに深呼吸を数度。
  そうして紅茶を零さないよう扉を開き、顔を覗かせて ]
 
(749) 2019/04/12(Fri) 4:16:35

【人】 生贄 セレン

 
   ぼくは、自分勝手なので……
   貴方に紅茶を淹れたくて来たんです。


[ 失礼しますと控えめに口にして、
  部屋に入ることには遠慮はなく狼を伴い主の前へ。

  掲げた紅茶は誰の為のものかなど知らせるように。

  熱めに淹れて、夜気で冷めて適正温度となったそれを、
  未だ机の前にいるのなら、その机の上に置いてから。

  返した言葉は彼の言葉の焼き直し。>>611
  仄かに香る薔薇だけが特徴の紅茶には、
  風呂で温まったからこそ浮かんだ願いを籠めている ]
 
(750) 2019/04/12(Fri) 4:20:11

【人】 生贄 セレン

   
   沐浴ができなくても、
   温かいものに触れればあなたも温まるなら。
   
   それに………

[ 頬に触れた彼が囁いた言葉を憶えている。>>434
  他人の体温が温かいと感じるのなら、
  僅かな間だけでも───そんな意図を綴ってから ]
 
(751) 2019/04/12(Fri) 4:23:33

【人】 生贄 セレン


   ぼくの意志じゃなければ、意味がないのでしょう?


[ 部屋に来た理由も、温まって欲しい理由も。
  冷たい夜の怪物に近付こうとする意思を紅茶に混ぜて、
  薔薇の湯船に浸かり香を纏う身体はふらりと距離を取る。

  花弁を紅茶に浮かべた理由も意思表示のひとつ。
  
  彼から手を伸ばしても届かない距離で夜を見つめて、
  上着を羽織る身体を抱くように己の身を抱きながら ]
 
(752) 2019/04/12(Fri) 4:34:29

【人】 生贄 セレン


  ……ニクスさま。
  ぼくは生きていたい、死にたくない。

  そんなぼくが貴方を殺す方法を知らされて、
  どうしたいと思うかを想像、しましたか……?
 
[ 薔薇の香に包まれ夜の上着に包まれ囁き、
  薔薇の香茶を夜に差し出し温まって欲しいと願い。
  飲めば香気は彼の内へと落ちるのを望む艶やかさを、
  微笑というには稚い唇で歪な弧を描く。

  不慣れな仕草であることは伝わるだろう。
  けれど、その行為に、惑いの曇りは一点もなく ]
 
(753) 2019/04/12(Fri) 4:48:35

【人】 生贄 セレン


[ 耳に届けた囁きは魅了の楔に囚われた甘さはなく、
  無邪気なまでの悪辣さを含んだ、自己の発露。

  夜を殺す術の真偽など試す気はなく、
  けれど、夜への好奇心を殺すつもりはなかった。

  全てに裏切られ、捨てられ、捧げられ、
  居場所など、この夜の城以外にどこにもないとしても。

  夜を排してひとり生きることなど望んでもいない。
  ならば己の価値を彼に認めて貰わねば意味がない。

  もし、夜がそれを望んでいたとしても。
  彼の為であっても殺しはしない、そして生きてみせる。
   
  ―――夜が、己を望むまで  ]**
 
(754) 2019/04/12(Fri) 5:17:42

【人】 生贄 セレン

 
   変わっているなら、良かった。


[ 紅茶を受け取る謝辞の響きに頬を緩めて、>>768
  無駄に敏い感覚は言外の存在を嗅ぎ取り瞬いた。

  ふたりきりといった彼の言葉を思い出す。
  この城にふたりきり──ならばその存在は何なのか、
  そこまで悟れる程には未だ彼を知らずに。

  今は変わり者の評価にただふわりと花を咲かせて、
  笑った自覚はないまま、己の言葉にいい添える ]
 
(787) 2019/04/12(Fri) 14:50:26

【人】 生贄 セレン

 
   ただの生贄でも子供でも玩具でもない、
   そういうことでしょう……?


[ 無関心に近ければ変わり者など装飾を紐付けない。
  無意識に零れ出た感想だとしても、
  彼の記憶を過ぎ去る数多の子供とは僅かに違う。
  そう思ってもらえたなら己にしては上出来の部類だ。

  他人の無関心には慣れていた。
  他人に突き放されるのも、拒絶されるのも。
  それでも、辛うじて生き繋いで、
  未来などないと告げられながらここにいる。

  そう、後はない。
  未来はないからこそ、冷たい夜の怪物へ ]
 
(788) 2019/04/12(Fri) 14:51:06

【人】 生贄 セレン

 
   ……なら、なぜ貴方は死なないんですか。

   ぼくに貴方を殺す方法を教えるくらいなら、
   自死を選ぶこともできたはずなのに?


[ 正解に近しかったのだろう返された答えにも、
  語り継がれる人と怪物の違いにも小首を傾げて。>>771

  繋がれていない自由な身体はゆらりと揺れて寝台へ、
  浅く腰掛け見上げながら明確に意識し口端を上げ、 
  投げ出すようにしていた足を揺らしながら言葉を紡ぐ ]
 
(789) 2019/04/12(Fri) 14:51:59

【人】 生贄 セレン

 
   ぼくには生きる意味を考える余裕なんて、
   いままで許され無かったんです、ニクスさま。

   ただ死なないために生きることしか出来なかった。


[ 淡々と事実を並べて、言葉の意味の薄さに苦笑した。
  そういった人生だったのを振り返る余裕があるのが、
  未来が閉ざされた城の中だというのが妙におかしくて ]
   
(790) 2019/04/12(Fri) 14:53:13

【人】 生贄 セレン

 
   誰に、赦されたいんですか。
   何を、赦されたいんですか。


[ 男にしては高めの声を玲瓏に響かせた。
  少女のように身飾られた理由の一つだが、
  夜に囁く心地は後がない故の度胸で落ち着いている ]
 
(791) 2019/04/12(Fri) 14:53:56

【人】 生贄 セレン

   
   ……他人に殺され続け、
   自分を殺すことで生きてきたんです。

   そのぼくに意思がなければ意味がないって……
   つまり、ぼくの意思であなたを殺せと言いたかった?


[ 側にいたいと訴えた子供に狼を与え、>>773
  自分を知れと囁く夜の冷たさに今更指の痛みを知って。
  舐めて血は止まったけれど傷はそのまま。
  
  じわじわと広がる痛みの理由が分からなかった。
  視線は指先に落ちて白い肌に穿たれた痕跡を見るも、
  棘に毒でもあるまいし苦痛には慣れて居るはずなのに ]
 
(792) 2019/04/12(Fri) 15:07:58

【人】 生贄 セレン

 
   ……教えてください、もっと、たくさん。

   あなたの好きなこと、好きなもの、厭うこと、
   今、何を考えているかとか……そういうことも。


[ 狼の気配は安堵を呼ぶものの、
  欲しいものはそれではなくそっと溜息を吐きながら。

  ああ、世の中はいつだって残酷で、
  望むものに手を伸ばそうともこの手は届かない ]
 
(793) 2019/04/12(Fri) 15:11:15

【人】 生贄 セレン


   違うでしょう。


[ 冷えた言葉を、息吐くように囁いた。
  螺旋階段のように捻れて続く矛盾に気付いてか、>>807
  それに返す音を夜の漣に浮かぶ船のように揺らす。

  馬鹿ではなかったとは褒め言葉なのだろうか。>>806
  或いは安堵なのか曖昧な主に対して、
  それを見詰める双眸は濡れかけているけれど。

  声音は震えることなく静かに、そっと。
  己の意外な頑固さを知りながら柔らかく音を継ぐ ]
 
(813) 2019/04/12(Fri) 16:50:41

【人】 生贄 セレン

 
   罪を償わねば死ねないと信ずるなら、
   ぼくに貴方を殺せる手段を告げたことは──…


[ 彼の苦悩を知らない、知るはずもない。>>807
  故に、子供らしい残酷さで、行き着いた結実を ]
 
(814) 2019/04/12(Fri) 16:52:42

【人】 生贄 セレン


   それを、あなたは償ったと云える……?


[ 嗚呼、でも、本当に逃避なのだとしたら。
  死にたくないから生き延びた己との差は何だろう?

  終点のない螺旋を下る彼と、
  いつでも階段から突き落とされれば死ぬ己と。
  
  ……そう、殺されるのは慣れている。
  殺すことも慣れ親しんでいるのだから今更だ。

  死にたくないならば己を殺してしまえばいい。
  それを彼が望むのなら叶えればいい、その筈なのに。

  痛苦は指から広がり全身へ、
  ひどく痛む想いに瞼を落として首を横へ振り ]
 
(815) 2019/04/12(Fri) 16:55:19

【人】 生贄 セレン

 
   あなたが、ぼくを迎えたから。


[ 問に返す言葉はシンプルだった。>>809

  だってまだ何もしらない。
  手指が冷たく、声は柔らかく響いて、
  薔薇の香気に包まれた、死にたがりの夜の化け物。

  少なくとも己が理解したのは、たったそれだけ。

  過去の楔の存在を察しはしても、>>807
  心を覗くようなことなどできようはずもなく。

  ただ、届かない手を素直に伸ばすだけ ]
 
(816) 2019/04/12(Fri) 16:57:41

【人】 生贄 セレン


   ………ぼくに、先はないんです。


[ ここが終点。未来の終わり。
  進む道は彼の後にしかないと伝えた言葉は、
  砂糖細工のようにほろりと崩れて夜気へ融かして]
 
(817) 2019/04/12(Fri) 17:07:44

【人】 生贄 セレン


   あなたの傍にしか居場所がない、から……
 

[ 手は未だ我儘な子供らしく払われても伸ばしたまま、
  稚さとは掛け離れた孤独を知る歪さで、笑ってみせて ]
 
(818) 2019/04/12(Fri) 17:19:03

【人】 生贄 セレン

 
   そうだね。
   
 
[ 苦悩の理由を知らないからこそ残酷に。>>830
  惨めな置き去りが常だった子供の最後の居場所を、
  否定する言葉が届いても喉を震わせたのは一度きり。>>831

  削れていくのは何だろう。
  否定されて、拒否されて、捨てられて、
  孤独であることには慣れていたはずなのに。

  振り払われた掌の痛みより蝕む何かは、>>832
  灰と蒼の瞳を徐々に曇らせ燈る光を消していく ]
 
(847) 2019/04/12(Fri) 20:41:49

【人】 生贄 セレン

 
   どうして貴方がそんなに苦しいのか、
   ぼくには……ぜんぜん、分からないから。
   
   その答えは、ニクスさましか出せないんじゃないかな。


[ 諦めが浸潤した囀りは小夜啼鳥のようには響かず、
  沈むように落ちる視線と共に差し伸べた腕も落として。

  瞼を半ば鎖して細い息を吐く。
  夜気が渦巻く城にひとり佇むような錯覚に呑まれ、
  察したか近寄ってきた狼の姿に勇気を出し言い添える ]
 
(848) 2019/04/12(Fri) 20:43:41

【人】 生贄 セレン

 
   ……なら、あなたもぼくを捨てる?
   捨てられたらぼくはまたひとりぼっちで、
   少し待てばきっと次がくる……くるはず、だよ。
 

[ 生贄の価値すらない。>>831
  そう判断された孤児の行く末など知れていた。

  村に戻ったとしても居場所など在る筈もなく、
  寧ろ、古城の主に粗相でもしたのかと責め立てられて。

  怒りの矛先から逃れようと森へ逃げ込んでも、
  彷徨う内に飢えるか、迷って獣に食われるかだろう。

  彼の手も目も届かない場所で勝手に死ぬ。
  たったそれだけで、鬱陶しい子供は処理できる。

  手を振り払い、縁も所縁もない子を厭うならば。
  願いを叶えないと知り捨てるならば、
  そうして突き放してしまうことが最も後腐れがない ]
 
(849) 2019/04/12(Fri) 20:49:07

【人】 生贄 セレン

 
[ 落ちた手はもはや上がらない。
  思い込みだと言われて寝台の上に落ち、>>833
  力なく狼を撫でるだけの役割を果たすだけ。

  白金の薄幕は視界を覆い、
  化け物だと怖れられた双眸は誰も映さない。
  優しく払う指先が冷たいことだけが寂しくて、
  けれど、その後に続く言葉が抉るのを ]
 
(850) 2019/04/12(Fri) 21:00:00

【人】 生贄 セレン

 
   みんなぼくを気持ちが悪いって言うんだ。
   目も、髪も、普通じゃないから。
   人間じゃないみたいだから要らないって。
   
   誰にもまっすぐ見られたことはないよ。
   誰にも、こんな風に触れられたこともない。


[ 過去をなぞる言葉は抑揚もなく、
  耐え難い何かすら削れて残り滓だけの子供らしく。

  村で詰め込まれた知識に引きずられた丁寧な言葉は失せ、
  素の、幼い口調で、唇は静謐な笑みを象って ]
 
(855) 2019/04/12(Fri) 21:05:54

【人】 生贄 セレン


   愛って、何……?
 

[ そんなもの、己の人生にはないものだったと言外に ]*
 
(856) 2019/04/12(Fri) 21:08:16
 




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