【人】 生贄 セレン[ 静謐とした夜の空気。 朧とした光源が雲間の月だと知るには、 異色の双眸は郊外に続く道しか見ず、 フードから零れた銀だけがその光を映していた。 その丁寧に梳られたプラチナブロンドからは 上質な甘い花の香が仄かに漂っている。 結ばれた唇にも花の彩が引かれて艶やかに、 熱心に磨かれた肌もまた、滑らかな白磁のようで] (132) 2019/04/08(Mon) 20:40:02 |
【人】 生贄 セレン[ 子供を各地から安く買い叩き、 成人までは傷一つなく育て、化け物に捧げる。 世界に満ちた悪意を煮詰めて凝縮し、 それを甘く誤魔化した安寧の地は蠱毒に他はなく、 そこにしか居場所がない子供は選ばれ、 こうして捧げ物として運ばれていくだけの話だ。 それを真に理解したのは昨夜の話で、 孤児に逃げ場などなく、唐突に未来は閉ざされ、 こうして大人に囲まれ郊外の道を行く。 ] (135) 2019/04/08(Mon) 20:42:47 |
【人】 生贄 セレン[ 何が待ち受けているのかを知らされてはいない。 けれど間違いなく、 己の意志は関係なく物事は流れていくのだろう。 着飾られた衣装は殆どが上質な絹物で、 身じろぎするたびさらさらと衣擦れが響くけれど、 それすら身動きを封じる悪意の鎖のようで ] (136) 2019/04/08(Mon) 20:43:51 |
【人】 生贄 セレン[ やがて、森林を切り裂く道。 ひっそりと建つ古城は目を瞠る大きさで、 その門を潜らされればぽつんとひとりきり。 背後で閉じる門の音に、真に退路を断たれた。 前へ進むしか道はなく震える足で扉の前へと赴くと ] …………。 [ 扉を叩く勇気などなく、 辛うじて扉に掌をぺたりと触れさせて。 俯いた頬を濡らす雫を一つ零し、白く煙る息を吐く。 死ぬ為に、奪われる為に、未来を無くす為に。 ] (138) 2019/04/08(Mon) 20:53:25 |
【人】 生贄 セレンあなたの、もの です。 [ 恐ろしいのだろう、きっと。 乾いた心で村人に生贄となる未来を告げられ、 抗うこともできずにここに居るだけのただの人間は、 人間であることを捨てものだと言い切った。 死にたくはない。 捨てられたくもない。 もう飢えるのも裏切られるのも嫌で、 生贄としての未来しかないのならば、いっそ。 踏み出す姿にすら動けぬままだった仕草は、 漸く焦点を合わせて、古城の主を見つめる。 映すでなく、見て、夜空の断片に瞬いた。 血の彩りを宿した瞳を持つ、美しい化け物を。 牙を覗かせる微笑みを描く、恐ろしい男を ] (204) 2019/04/08(Mon) 22:49:04 |
【人】 生贄 セレン[ 玲瓏たる声音で告げた名を棚引くように、 男の前で頭を垂れる──には、 紅い眼光に許されざる意を汲んで視線は逸らさずに。 震える指先でフードだけではなく外套を脱ぎ、 すらりと靭やかな身体を晒してみせる。 生贄にされるためだけに整えられた肢体は、 お嬢さんと呼ばれるには程遠く、 主の勘違いを言葉ではなく視界で紐解くようにして ] (205) 2019/04/08(Mon) 22:54:58 |
生贄 セレンは、メモを貼った。 (a22) 2019/04/08(Mon) 22:57:29 |
【人】 生贄 セレンぅ、……裏切るのは、 ぼくが、嫌……なんです。 [ 人の感覚を古城の主も抱くとは考えてはいない。 ただ、裏切られ続けた過去を振り返り、 疵を刻まれたからこそ滲む言葉を素直に告げて。 そっと息を吐き、惑う視線を再び主へ向けた。 忌まれた瞳を射抜く紅に自ら絡め取られて、 その顎から逃れる気など欠片もないと示すように] (229) 2019/04/09(Tue) 0:08:39 |
【人】 生贄 セレン[ 頬へ伸びる指にも抗わず、 涙の筋を撫でる指先に温かな体温を返して。 染まった頬をなんと思うのだろうか。 主の指は夜のせいか種のせいか冷たくて、 瞬きを数度――それから、唇をまた震わせ紡ぐ ] (231) 2019/04/09(Tue) 0:20:57 |
【人】 生贄 セレン望むことを [ 今までもそうして生きて来た。 産まれることすら望まれないままの己を自覚して、 その穴を埋めるように自らを殺して生きてきた。 重石に縛られゆく感覚は、故に、ない。 そんなものはもとより諦めが蝕み麻痺して、 当然のように受け容れる子供は今もまた。 蕩ける微笑に蠱惑されるでなく、 ただ、満ちていく悲哀に瞳を曇らせて ] (232) 2019/04/09(Tue) 0:21:30 |
【人】 生贄 セレン[ 貴人を悦ばす知識は、詰め込まれていた。 古城の主のために―― 生贄が気に入られればそれだけ村の滅びが遠ざかる、 たったそれだけの理由で、子供には相応しくない知識を。 だからこそ、差し出された指へ生贄らしく。 その指先を迎えた唇は柔らかな感触で、 そっと触れるだけに到らず舌を覗かせちらりと舐めて ] (235) 2019/04/09(Tue) 0:35:34 |
生贄 セレンは、メモを貼った。 (a28) 2019/04/09(Tue) 0:45:00 |
【人】 生贄 セレン……たとえ困らなくても、 それが……ぼくが、貴方にあげられるものだから。 [ 耽溺に堕ちる淵で溢した言葉に意志を籠め、 きゅっと両手を握って頑なに踏み止まりながら。 己の価値という難しい思考までは至らず、 ただそれだけを主張し、訴える。 けして裏切らない、純粋なまでに嘘もない。 大人に纏わされた虚飾も剥いで示したように、 己の所有者への隷従を――─囀る響きは真摯に。 ] (284) 2019/04/09(Tue) 15:21:09 |
【人】 生贄 セレンぼく、自身…… [ 溢した言葉は吐息交じりに、 熱い音を響かせ、緩やかに繰り返す。 自分自身──それを望まれている。 けれどそんなものを知るようならば、 己はここに居ずにとうに親元で死んでいただろう。 己に出来る事と言えば、 食べられる野草の見分け方とか貴人には無縁の知識と 村で詰め込まれた夜伽の術しか持ってはいない] (286) 2019/04/09(Tue) 16:13:55 |
【人】 生贄 セレン[ けして裏切らない、 どんなときも、嘘を吐かない。 その主張を通すことも自己だとは、 未だ、認識できる域にないくらいには殺し慣れていた。 ] (287) 2019/04/09(Tue) 16:15:24 |
【人】 生贄 セレン……はい [ 夜気に侵され震える身体を忘れる程に。 けれど、傍目には震えていたらしく、 誘う声音に背を伸ばして慌ててその背を追いかけた。 外套を再び羽織るだけはして城の中へ、 長身の主とは逆に小柄の己は小走りとなって、 見たこともない城の荘厳さに息を飲むより先に。 追いついた主の一歩後ろで、片手をそっと握った。 子供が逃げ出すのを防ぐ鎖として大人に繋がれるもの。 ―――というだけではなく、 置き去りの不安を解消するための無意識の仕草で、 瞼を閉じて考え込んだ主を見上げ、それから ] (288) 2019/04/09(Tue) 16:24:41 |
【人】 生贄 セレンあの……、あなたの名を、どうか…… [ これまで幾人もの子供が城に送られたと聞いている。 その行方が不穏にも隠されているのも知っていた。 生贄として捧げられるのだから主人として扱え、と。 村ではそう言い聞かされているからこそ、 幾人もを迎えた男にとって普遍では退屈だろうと察して。 躊躇いの尾を踏みながら、彼の名を乞い願う ]** (289) 2019/04/09(Tue) 16:33:03 |
【人】 生贄 セレンなにも……何も、しません。 ただ、ぼくが……。 あなたをなまえで呼びたかったんです。 [ 夜を映す瞳を仄かに燈らせるのは、 綴る意志の欠片でもあり、感情でもあり。 怖い、死にたくない―― なによりも、もう捨てられたくない。 恐怖は未だ虫喰いのように巣食い、 その怖れがすぐに剥がれることは今はなくとも。 ] (377) 2019/04/09(Tue) 23:23:35 |
【人】 生贄 セレン[ 階段を登る――音もたてずに、その先へ。 案内される身であるから半歩後ろにはいるものの、 古城の吸血鬼に連れられる子供にしては鈍さもなく。 魅了の余韻は確かにあった。 舌は今頃痺れて舌足らずに陥って、 背も腰も熱を帯びたまま、 頬の熱は引かず白い肌を染めている。 さりとて、それに酔う様子はなく。 前の子供の部屋へと導かれて扉を開かれれば、 その広さに息を飲むくらいには自己を保てている。 そもそも個室などという発想はなく、 広いベッドに、衣装入れ、鏡、等々―― 高級品が並ぶことにも己に結び付く現実感がない。 ] (388) 2019/04/09(Tue) 23:45:52 |
【人】 生贄 セレン……あ、の…… [ 故に、困ったように立ち尽くして。 背を押されれば部屋に入りはするものの、 外套を抱くようにして、視線をニクスへ向けた。 ] (395) 2019/04/09(Tue) 23:48:09 |
【人】 生贄 セレン[ 城内の空気もまた夜の気配に包まれて、 柔い足音を響かせ、階段を上る最中に降る声に。 暫し思考を巡らせて瞬きを返した。 そういえばこんな大きな城でありながら、 城の主に傅く従者の姿が見つからない。 隠れている理由などないだろう。 それに、彼の言葉こそ己にとっては真実で、 これから自分が呼ぶ名はもう彼の名前だけ─── そう、理解して。 命令だという意識はなく、 自然な仕草で白銀の髪を揺らし頷きながら] (406) 2019/04/10(Wed) 0:55:34 |
【人】 生贄 セレンドレス…… [ 前に居た子供、に胸が痛むかといえば否だ。 他人を気遣えるほどには落ち着くはずもない現状で、 繋いだ手だけが居場所を知らせるようで未だ不安の内。 振り返る仕草を察して彷徨う視線は彼の紅眼へ。 するりと抜ける指を無意識に掴んで、 その柔らかな囁きに、やや俯きながら首を振る。 ここに居て欲しいと、縋るように横へ] (412) 2019/04/10(Wed) 0:59:23 |
【人】 生贄 セレン[ ――故に、手は繋いだまま。 自ら手離すなど過りもせず、 寧ろ、その掌に惹かれるように、 歴然とした身分差の距離を僅かに縮めて。 クロゼットの中に並ぶドレスを眺めた。 いかに小柄とはいえ男の身では、 目に余るというかなんというか無理が過ぎる。 心の天秤を傾けた先に在るのは小さな希望。 生きること以外に生まれたそれを、 言葉にするには僅かに躊躇いはあったけれど ] (417) 2019/04/10(Wed) 1:21:47 |
【人】 生贄 セレンどれも女物なので、その…… できれば、上着だけでも貸していただけたら。 [ この城に名を呼ぶような存在が、 彼の他には居ないと告げられたばかりなら。 残されたドレスでは小さく、 他に着るものは村で装飾されたシルクの夜着だけ。 生贄としての衣装がお気に召さないのは既知で、 なら、他に選ぶものがあるとするならそれしかない。 未だ手は離さずに。 肩に羽織っただけの外套をするりと落とし、 透けた絹地を晒して寒さに身を震わせる。 嘗ての虐待の傷は癒え、 村で振りかけられた花の香水だけが香る、 大人になりきれずにいる無垢さを示すように ] (418) 2019/04/10(Wed) 1:22:49 |
【人】 生贄 セレン[ 聞き分けの良いはずの生贄は、 繋いだ掌を引き寄せ、その甲へと唇を触れさせた。 敬愛とするには熱めいて 親愛とするには戸惑いの滲む ささやかな接触を手袋越しに ]** (422) 2019/04/10(Wed) 1:34:21 |
【人】 生贄 セレン[ ふたり。そう、今はふたりきり。 柔らかな足音すら響く城内にたったふたり、 だからこそ怖いなんてどんな言葉を綴れば通じるか。 人がいないから怖いのではなく、 手を繋いだ主が夜の怪物だから怖いのでもなく。 その場から放り出されることが怖いだなんて、 だから手を繋ぐのだなど言葉を織っても伝わるまい。 肩に掛けられた上着の重みに安堵するなど、 置き去りの生贄に慣れているだろう彼にはきっと ] 綺麗に、してきます。 [ 退屈を癒すだけの玩具だろうか、今は。 それとも、己は何か興味を引かれたのだろうか。 薔薇の香りに包まれ上目遣いで見上げるも、 反応は僅かに瞼が震えるだけで怒る様子はなく。 寧ろ、空気を揺らして笑う彼に ] (470) 2019/04/10(Wed) 20:23:23 |
【人】 生贄 セレンぼく、は…… [ 何がしたいかと問われて、瞬く双眸の光は淡く。 頑なに夜だけを映す異色の彩を緩ませれば、 視界に映る主の蠱惑にこれ以上揺らぐこともなく。 頬を撫でる仕草に、そっと柔らかな吐息を絡め、 直に触れてくれればもっとこの冷たさを温められるのに。 そう考えながら稚く髪を揺らし、緩く頷いて ] (471) 2019/04/10(Wed) 20:27:26 |
【人】 生贄 セレンニクスさまの役に立ちたい…… でもぼくに何ができるか、分からなくて。 [ 捨てられたくないから、ではなく、 羽織らされた上着の重みに引き出された安堵を綴る。 魅了の余韻であるふわりとした物言いも落ち、 浮かび上がった言葉をただ素直に、真摯に ] (472) 2019/04/10(Wed) 20:28:29 |
【人】 生贄 セレンぼくの番だと知らされてから、たくさん学びました。 文字の読み方、書き方、楽器の奏で方、歌い方。 夜伽も出来るように教わってきたけれど、でも…… [ 吐き出す吐息は細く不安定で、 撫でられていた頬だけが赤いまま。 掌を繋いでいた手指は自然と剥がれて主へと伸びた。 何処にも縋らず、掴みもせず、ただ胸板に添えるだけで、 手離されても大丈夫だと自らに言い聞かせるように ] (475) 2019/04/10(Wed) 20:33:39 |
【人】 生贄 セレンあなたの退屈を、 ……空腹を満たすことではなくて退屈を埋めるには。 何を……出来ることを、してもいい、なら。 [ もう一つ、村で聞いた生贄の子供の用途があった。 古城の怪物は人の血を啜って枯らす悪い化け物で、 それを恐れ、この豊かな土地には他に村が成り立たない。 子供を差し出すことで村の豊穣の独占は続く。 つまりは行き場のない生贄の最後は戻ることではなく、 この主に食われることなのだろう、きっと。 なら、この願いもきっと、自己の発露に近いと信じて ] (476) 2019/04/10(Wed) 20:49:53 |
【人】 生贄 セレン湯浴みは、されませんか。 一緒に……背を、流します……から。 [ 胸に添えただけの掌は知らずに動いて、服を掴んで。 小さくなった声音で、そっと懇願を囁いた ]* (477) 2019/04/10(Wed) 20:51:35 |
【人】 生贄 セレン[ 唇の動きを読むかのように視線をそこへ。 紅眼に囚われ動けない愚かな子供はおらず、 目許を染めて酔いはすれどその言葉を素直に聞く。 諭すような口調に罪悪感を育てる意はないのか、 問い掛けに続く言葉に棘もなくゆるりと首を横へ。 帰ってきた子供たちからの情報など無きに等しく、 口減らしに子を売るのが普遍な時世に、 用済みの行く末がどうなるかは想像に難くない ] (522) 2019/04/10(Wed) 23:17:32 |
【人】 生贄 セレンごめんなさい。 [ 湯浴みもそのひとつ。 媚を売るための術として詰め込まれた知識でも、 慰めや退屈を埋める一石になるのなら―― 冷たい指を温めて少しでも近付ければ、 今宵の時くらいは彼を満たすことが出来るかも。 そんな稚い発想は優しい声音に打ち砕かれて、 ほんのり声を沈ませて、素直に謝りながら ] (523) 2019/04/10(Wed) 23:18:25 |
【人】 生贄 セレン教えられたときは、生きる為に。 今は、ニクスさまの為……です…… [ 捨てられ、裏切られ、挙句に捧げられ、 要らない子供だと言外に位置付けられた自分へ、 退屈を癒せば居場所をくれると囁く主に。 少しでも、僅かだけでも届けば。 契約の楔が撃ち込まれたことを意識してはおらず、 ただ、己にも出来ることがあるならばと手を伸ばしただけ。 未だ、距離感を測りかねて届かない願いだったけれど。 それでも意志は見せるべく俯きがちの顔を上げて ] (524) 2019/04/10(Wed) 23:21:09 |
【人】 生贄 セレンこわいです。 独りは、もう嫌で…… [ それは、孤独の意味を知る寂寥を滲ませる声音。 けれど言葉とは裏腹に、灰と蒼の双眸を紅眼に捧ぐ ] (525) 2019/04/10(Wed) 23:31:56 |
【人】 生贄 セレン一緒に、居させてください。 [ 生贄として捧げられて、ものだと言い切った影はなく。 足元の不安定さに怯えて震えはすれど、 掴んでいた服を自ら離し、一歩後ろへと下がる。。 両手は羽織るに大きい彼の上着へ。 袖が長くて指先しか出ない大きさに苦心しながら、 どうにか頭を下げるに邪魔にならないよう抑えて。 ぺこんと髪を揺らし下げてみたものの案の定、 借り物の上着は肩から落ちそうにもなっている。 まるで滑稽な人形劇にしか見えないだろう。 実際、村出来せられた絹地もすぐに脱ぐと目されて、 危ういことこの上ないのを必死に留めていた ] (526) 2019/04/10(Wed) 23:35:17 |
【人】 生贄 セレンあなたを知るためにも。 そばに……いたい、です。 [ 風呂はひとりで済ませるにせよ、。 その後を心配する一言は、どうにも自信なさそうに。 おねだりのように甘くはなく、 懇願のようにただただ必死でもなく。 ぎこちなく表情を崩してみせながらいい添えた ]* (527) 2019/04/10(Wed) 23:44:04 |
【人】 生贄 セレン……はい。 [ すん、と鼻を鳴らし、滲もうとする涙を留めた。 死ぬのも、ひとりも、恐ろしい。 けれど古城の主が怖いとは思えずにいるのを、 内側へと呑み込み、大人しく頷きを返して ] (557) 2019/04/11(Thu) 0:55:08 |
【人】 生贄 セレン[ 今は湯浴みが先だともう一度ぺこりと頭を下げて。 視線から逃れるように部屋の扉を潜り抜けようとし、 ふと、思い至ったように疑問を口にする ] もし、開けたら……? [ 奥の扉を開けば彼を知ることが出来るのか、 或いは、猫のように殺されるのか。 惑いの滲む音を静かに落とし、 好奇心に揺れる瞳を主へ向けて、 子供らしさと相反する感情を色濃くしながら ] (562) 2019/04/11(Thu) 1:28:41 |
【人】 生贄 セレンぼくを食べますか……? それとも、捨てる……? [ 帰ってこない子供の幾人かはそうして死んだのか。 仮に、開けたとして、同じ目にあうのか。 死にたくもないし、ひとりも嫌だ。 するなと言われればしないだろう、でも── ] (563) 2019/04/11(Thu) 1:29:24 |
【人】 生贄 セレン………ぼくは あなたのことを、もっと知りたい。 [ 灰の瞳は陽に弱く、夜を映すに柔らかな光で。 蒼は掠れて夜に染まって、訴えるような雫を湛えて。 自己を見せろと囁く主に、ただまっすぐ訴えた ]** (564) 2019/04/11(Thu) 1:33:05 |
【人】 生贄 セレン……たしかに。 [ 震えは未だ、夜気の朧に触れて身を縛る。 それでも背筋は真っすぐ伸びたまま、 瞳に夜の怪物を映して艷やかな唇を開く。 小柄な身には重い上着だった。 体格の差を身体で感じながら、 煌々とした光だけを双眸に讃えて、 玩弄されればそれまでの人間らしく実直に ] (628) 2019/04/11(Thu) 20:56:46 |
【人】 生贄 セレンたしかに、ぼくの為でもあります。 だってぼくにはそれだけ価値しかなかった、昨日までは。 [ 捨てられ、裏切られ、挙句に捧げられ、 要らない子供だと言外に位置付けられた自分。 そう、人の世界では不要とされて、要らない存在だった。 朽ちていくだけの消耗品ですらなく不用品だった。 そこに足されたのが生贄としての価値で、 主たる怪物が退屈を癒せというのなら、つまりは ] (629) 2019/04/11(Thu) 21:00:44 |
【人】 生贄 セレンだから、あなたが満足してくれないと。 ぼくのたった一つの価値すらなくなってしまう。 あなたの退屈を満たせるなら、 ぼくをここで生かしてくれるのでしょう……? [ 震える声音は相変わらずで、 ともすれば消え失せてしまいそうな様子は未だ。 それでも最初よりは幾分かは芯のある仕草で、 ふ、っと息を吐き出し、ぎこちなく口端を上げる ] (630) 2019/04/11(Thu) 21:02:07 |
【人】 生贄 セレンそれを価値というのかはぼくには分からないけれど。 でもそれだけしか、ぼくにはないから──… [ 鼓動が痛いほどに早く呼気も浅い。 人非ざる男を前に籠もる緊張は隠しようもなく、 それでも、唇は弧を描くままで視線は逸らさずに ] (631) 2019/04/11(Thu) 21:13:36 |
【人】 生贄 セレンニクスさまの為にするべきことをしたい。 あなたに認められなければ、ぼくは、無価値になる。 だからもっと…… あなたのことを知りたい、そういったんです。 [ 生きたくて、裏切られたくない、これはその裏返し。 認められれば生きられる、 裏切る生き物を望むとは思えないから裏切らない。 裏切りだけはされるのが嫌だという思いが強く滲み、 我儘な自己主張となっているのは理解しているけれど ] (632) 2019/04/11(Thu) 21:14:15 |
【人】 生贄 セレン29人の全てを知るわけじゃないけれど。 みんな、帰ってこなかったから……。 あなたに仕えた子供の未来は、 もうどこにもないんだって…… 大人たちはぼくに笑って、そういってた。 [ 知らずに緊張の解けた口調となりながら、 29人の帰還すべき子供の行方にも興味はなく、>>614 30人目の子供の行方にだけは興味を惹かれたものの。 じわりと滲む焦燥もまた、興味と混じり絡み合う。 残った1人は彼に気に入られたのか。 それならばなぜこの城にだれもいないのか、 ───開いてはいけない扉の向こう側なのか。 無価値な子供なりに思考を巡らせはしたももの、 言葉にしたものは最も興味を抱くひとつだけ ] (656) 2019/04/11(Thu) 21:44:25 |
【人】 生贄 セレン[ 廊下を進めば独りの空気は冷たく痺れるようで、 古城を歩く不安を和らげてくれる狼に近付きながら。 アッシュグレーの毛並みにそっと触れる。 人ではない体毛の感触が伝われば滲むのは安堵で、 誰も居ない場所での孤独を癒やされ、緩く微笑んで。 階段を降りて暫し、茫と周囲を見渡した。 道標の言葉を直ぐに忘れるほど愚図ではなく、 けれど浴室の右手に向かうでなく足は階段の奥の扉へ。 燭台の光を頼りに歩けば突き当りに扉があった。 窓を見れば薔薇の庭園が目に入り、 重い扉を両手で押し開いて薔薇の茂みへと近寄って。 夜気は身を苛み、痛い程だったけれど、 今はこの一輪を得る欲のまま無防備に摘み取れば。 棘に指が触れたか鈍く走る痛みに無感動に首を傾げ、 紅い血が一筋流れる落ちる前に、その指を舐める ] (684) 2019/04/11(Thu) 22:54:18 |
【人】 生贄 セレン……美味しいのかな [ 血を糧とする夜の怪物のお気に召す血なのだろうか。 無垢であれと村では知識だけしか詰め込まれておらず、 舐める仕草も稚いまま、薔薇をもう一輪摘み、息を吐く。 ───味はしなかった、けれど温かい。 感動も嫌悪もなく鮮血の感想はたったそれだけ。 故に興味も薄く、紅い薔薇の香りに促されて身を翻す。 そうだ、まだ、やることがある。 湯殿で身体を清めて、それから。 主の元へ向かって何かを話そうか、それとも何かをするか、 出来ることと言えば細やかなことでしかないのだけれど ] (685) 2019/04/11(Thu) 22:56:39 |
【人】 生贄 セレン[ 狼は必要以上に近寄らずに視線だけを向けていて、 だからこそ勝手に近づき、また首筋を撫でてから。 伴い向かうのは今度こそ湯殿だった。 ひとりしか住まわない──その時時に子供がいても、 主ひとりきりの城にしては広い場所に双眸を見開いて。 天窓を透して零れ入る、静謐とした夜の光。 その真中で濡れないように上着を脱いで籠に入れ、 身体に巻き付いている絹の布も無造作に剥ぎ取った。 見下ろせば白い肌の靭やかな身体がある。 輿入でもするかのように磨かれた肌は月光に浮かび、 羽織ものがあれば女と見紛うにも理解し苦笑する。 大人の都合で飾られる価値観を、 自ら脱ぎ捨てるには未だ抵抗感はあった。 これだって自分に付随した価値だと思えば尚更に、 けれど、それを主が望まないのならば意味のないことで ] (686) 2019/04/11(Thu) 22:58:10 |
【人】 生贄 セレンおいで [ 狼を手招いて、浴槽に座って湯を流す。 薔薇の1輪だけを浴槽に散らして匂いを馴染ませて、 そこに身を浸せば花の香は薔薇と差し替わるだろう。 後はゆっくり浸かるだけだ。 他人に色付けられた古い価値観を脱ぎ捨て洗い流し、 役に立つと決めた相手のためだけに自らに色彩を足す。 滑るように浴槽に身を沈め、 腕だけを伸ばして狼を撫でる指はゆるりと。 滴る湯水を嫌うならなるべく濡らさないように、 狼の瞳をじっと覗き込み、問いかける ] (687) 2019/04/11(Thu) 23:00:38 |
【人】 生贄 セレン[ 暖かい湯に浸ること幾分。 その間に流れたもの寂しいピアノは届かずに、 思いを馳せるのもきっと陽と宵闇ほどの差があった。 狼に話しかけるのは過去の疵で、 人ではない獣だからこそ無感動に痛みを綴る。 孤独の毒を。希望の猛毒を。絶望の甘さを。 諦めの囀りが心地よく、そう生きてたことを。 顔立ちだけは悪くなかったせいで、 幾度か生贄に決まる前は襲われることもあった。 花街に売られなかったのは、疎まれた目のおかげだ。 陽に弱くまともに陽射しを見れない灰は、 月に輝くのを見咎められ化け物だとも詰られた ] (702) 2019/04/11(Thu) 23:31:24 |
【人】 生贄 セレン[ 願えば、伝わるのだろうか。 ならば独言のように語り聞かせた疵も、 明け透けに伝わってしまったのだろうか。 狼の瞳を覗き込むも静かで変化はなく、 暫し迷って、部屋に行かせてくださいと囁いた。 足を向けて貰うほどの用事ではない。 寧ろ、側にいたいのは己なのだから行くのが当然だろう ] (707) 2019/04/11(Thu) 23:35:09 |
【人】 生贄 セレン[ 伝えてしまえば行動は早かった。 どうやってこの城を維持しているのか不思議だけれど、 指先まで温まった湯を出て、バスタオルに包まれる。 湯気香る身体は仄かに薔薇の香りが漂って、 それこそ、村で施された生贄化粧よりも甘やかで。 それを意図せず水滴を拭いバスローブに身を包むと、 主の上着をまた羽織り、裸足のまま浴室を後にする。 目指すは厨房、湯を沸かして、紅茶を一客。 道具は奴隷であったころに使い方を憶えているから、 あとは薔薇の花弁を洗って紅茶に浮かべるだけ。 慣れない場所に少しは戸惑ったものの、 黄金の一滴まで理解したそれを両手で抱え、 足は急いで彼の部屋へ── 扉をいきなり開く不躾はせず、 とんとんと叩いて、様子を待った ]* (708) 2019/04/11(Thu) 23:36:48 |
【人】 生贄 セレンぼくの意志じゃなければ、意味がないのでしょう? [ 部屋に来た理由も、温まって欲しい理由も。 冷たい夜の怪物に近付こうとする意思を紅茶に混ぜて、 薔薇の湯船に浸かり香を纏う身体はふらりと距離を取る。 花弁を紅茶に浮かべた理由も意思表示のひとつ。 彼から手を伸ばしても届かない距離で夜を見つめて、 上着を羽織る身体を抱くように己の身を抱きながら ] (752) 2019/04/12(Fri) 4:34:29 |
【人】 生贄 セレン……ニクスさま。 ぼくは生きていたい、死にたくない。 そんなぼくが貴方を殺す方法を知らされて、 どうしたいと思うかを想像、しましたか……? [ 薔薇の香に包まれ夜の上着に包まれ囁き、 薔薇の香茶を夜に差し出し温まって欲しいと願い。 飲めば香気は彼の内へと落ちるのを望む艶やかさを、 微笑というには稚い唇で歪な弧を描く。 不慣れな仕草であることは伝わるだろう。 けれど、その行為に、惑いの曇りは一点もなく ] (753) 2019/04/12(Fri) 4:48:35 |
【人】 生贄 セレン[ 耳に届けた囁きは魅了の楔に囚われた甘さはなく、 無邪気なまでの悪辣さを含んだ、自己の発露。 夜を殺す術の真偽など試す気はなく、 けれど、夜への好奇心を殺すつもりはなかった。 全てに裏切られ、捨てられ、捧げられ、 居場所など、この夜の城以外にどこにもないとしても。 夜を排してひとり生きることなど望んでもいない。 ならば己の価値を彼に認めて貰わねば意味がない。 もし、夜がそれを望んでいたとしても。 彼の為であっても殺しはしない、そして生きてみせる。 ―――夜が、己を望むまで ]** (754) 2019/04/12(Fri) 5:17:42 |
【人】 生贄 セレンただの生贄でも子供でも玩具でもない、 そういうことでしょう……? [ 無関心に近ければ変わり者など装飾を紐付けない。 無意識に零れ出た感想だとしても、 彼の記憶を過ぎ去る数多の子供とは僅かに違う。 そう思ってもらえたなら己にしては上出来の部類だ。 他人の無関心には慣れていた。 他人に突き放されるのも、拒絶されるのも。 それでも、辛うじて生き繋いで、 未来などないと告げられながらここにいる。 そう、後はない。 未来はないからこそ、冷たい夜の怪物へ ] (788) 2019/04/12(Fri) 14:51:06 |
【人】 生贄 セレンぼくには生きる意味を考える余裕なんて、 いままで許され無かったんです、ニクスさま。 ただ死なないために生きることしか出来なかった。 [ 淡々と事実を並べて、言葉の意味の薄さに苦笑した。 そういった人生だったのを振り返る余裕があるのが、 未来が閉ざされた城の中だというのが妙におかしくて ] (790) 2019/04/12(Fri) 14:53:13 |
【人】 生贄 セレン誰に、赦されたいんですか。 何を、赦されたいんですか。 [ 男にしては高めの声を玲瓏に響かせた。 少女のように身飾られた理由の一つだが、 夜に囁く心地は後がない故の度胸で落ち着いている ] (791) 2019/04/12(Fri) 14:53:56 |
【人】 生贄 セレン……教えてください、もっと、たくさん。 あなたの好きなこと、好きなもの、厭うこと、 今、何を考えているかとか……そういうことも。 [ 狼の気配は安堵を呼ぶものの、 欲しいものはそれではなくそっと溜息を吐きながら。 ああ、世の中はいつだって残酷で、 望むものに手を伸ばそうともこの手は届かない ] (793) 2019/04/12(Fri) 15:11:15 |
【人】 生贄 セレンそれを、あなたは償ったと云える……? [ 嗚呼、でも、本当に逃避なのだとしたら。 死にたくないから生き延びた己との差は何だろう? 終点のない螺旋を下る彼と、 いつでも階段から突き落とされれば死ぬ己と。 ……そう、殺されるのは慣れている。 殺すことも慣れ親しんでいるのだから今更だ。 死にたくないならば己を殺してしまえばいい。 それを彼が望むのなら叶えればいい、その筈なのに。 痛苦は指から広がり全身へ、 ひどく痛む想いに瞼を落として首を横へ振り ] (815) 2019/04/12(Fri) 16:55:19 |
【人】 生贄 セレン………ぼくに、先はないんです。 [ ここが終点。未来の終わり。 進む道は彼の後にしかないと伝えた言葉は、 砂糖細工のようにほろりと崩れて夜気へ融かして] (817) 2019/04/12(Fri) 17:07:44 |
【人】 生贄 セレンあなたの傍にしか居場所がない、から…… [ 手は未だ我儘な子供らしく払われても伸ばしたまま、 稚さとは掛け離れた孤独を知る歪さで、笑ってみせて ] (818) 2019/04/12(Fri) 17:19:03 |
【人】 生贄 セレンどうして貴方がそんなに苦しいのか、 ぼくには……ぜんぜん、分からないから。 その答えは、ニクスさましか出せないんじゃないかな。 [ 諦めが浸潤した囀りは小夜啼鳥のようには響かず、 沈むように落ちる視線と共に差し伸べた腕も落として。 瞼を半ば鎖して細い息を吐く。 夜気が渦巻く城にひとり佇むような錯覚に呑まれ、 察したか近寄ってきた狼の姿に勇気を出し言い添える ] (848) 2019/04/12(Fri) 20:43:41 |
【人】 生贄 セレン……なら、あなたもぼくを捨てる? 捨てられたらぼくはまたひとりぼっちで、 少し待てばきっと次がくる……くるはず、だよ。 [ 生贄の価値すらない。>>831 そう判断された孤児の行く末など知れていた。 村に戻ったとしても居場所など在る筈もなく、 寧ろ、古城の主に粗相でもしたのかと責め立てられて。 怒りの矛先から逃れようと森へ逃げ込んでも、 彷徨う内に飢えるか、迷って獣に食われるかだろう。 彼の手も目も届かない場所で勝手に死ぬ。 たったそれだけで、鬱陶しい子供は処理できる。 手を振り払い、縁も所縁もない子を厭うならば。 願いを叶えないと知り捨てるならば、 そうして突き放してしまうことが最も後腐れがない ] (849) 2019/04/12(Fri) 20:49:07 |
【人】 生贄 セレンみんなぼくを気持ちが悪いって言うんだ。 目も、髪も、普通じゃないから。 人間じゃないみたいだから要らないって。 誰にもまっすぐ見られたことはないよ。 誰にも、こんな風に触れられたこともない。 [ 過去をなぞる言葉は抑揚もなく、 耐え難い何かすら削れて残り滓だけの子供らしく。 村で詰め込まれた知識に引きずられた丁寧な言葉は失せ、 素の、幼い口調で、唇は静謐な笑みを象って ] (855) 2019/04/12(Fri) 21:05:54 |
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