87 【身内】時数えの田舎村【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
あまり手の入っていない、雑木林の中を分け入って少し。
今はもう、誰も参る事の無い、寂れた神社。
昔もお婆ちゃんっ子やお爺ちゃんっ子でもなければ
この場所の存在は殆ど誰も知らなくて。
だからここは、今も昔も二人だけの秘密基地だった。
「みんなは来てくれるかなあ」
月日に埋もれる事も無く、今も形を保ったままの石畳を踏んで
一人ぼっちの王様は、ここじゃなくてもいいやと笑う。
「来ないってことは、
他にもっといい場所があるってことだものね」
「ひとりじめなんてずるいから、それなら探しに行こうかな」
「だってみんなの秘密基地は、一つだけじゃつまらない!」
誰もいない家で一人眠ることになった、そして、再び川辺には訪れなかった。
村で見かけられなくなった。どこに泊まったかも誰もわからない。
あまり手の入っていない、雑木林の中を分け入って少し。
誰も来なくなってしまった、秘密基地。
月日に埋もれる事も無く、今も形を保ったままの石畳を踏んで。
違和感に気づいた、もしかしたら自分だけ。
「―――なれなかった」
聖なる乙女のような君になりきる事が出来なかった。
自分は誰も導くことが出来ない子供のまま。
なりきれなかった自分は何か大切なことを忘れている気がする。
どうしてここにいるんだろう、何を忘れているんだろう。
夕凪がここにいたい理由は――――。
遊びたいか ら ?
『強く思い出さなきゃ。
”この田舎”に縋る以外にすることがあるはずって、伝えるんだ』
「あそびましょう、狼さん。
なんだか向こうに狸さんもいるみたい。
面白いな、ずっといたい気分になってくる」
あなたの言葉を聞きましょう。
あなたの楽しいことをしましょう?
あなたと一緒に過ごしましょう。
それが、夕凪にとって幸せなことになるはずだから。
みんなの秘密基地は、やっぱり賑やかじゃないと寂しいから。
百千鳥
夕凪はいくら探して見つからなかった。
だけどあなたが誰かに声をかけている内にひょっこり顔を出す。
自然の香りを纏わせながら、夕凪は楽しそうに笑いかけただろう。
「モモチくん海に行きたいんだって?
夕凪が運転しようか、昨日ぐっすり寝たから今日は元気なんだ。
やりたいことがあったら、何でも用意してあげる!」
「──ようこそ!」
一人ぼっちの王様は、待ちわびたとばかりに来訪者を出迎えた。
「いいよ、いいよ、一緒にいつまでも遊んでいよう。」
迷夢の中に、甘い肯定を投げ掛けて
「遊び相手だって、遊び場だって、いくらでもあるんだから」
「みんなもきっと、みんなの居るこの村が好きなはず」
どこまでも、幼気な夢を謳う。
「ずうっとここに居たいはず!」
きっと、皆がそうなのだと信じて疑う事も無く。
「だからみんなでずっと、遊んでいよう?」
卯波の撮った写真は、現像もしていないのに、家に散らばっていた。
愛用のデジタルカメラと、『晶』と書かれたインスタントカメラを置いて、何処かへ行ってしまった。
寂れた神社の縁側に座って、
ふらふらと足を揺らしている。
「二番目。おまけ。
ついてくるもの。
枠の外だけの子。
あははァ……何も変わってないんだ」
心からの対抗心を向けて、
心からの嫉妬を向けて、
そうして受け取った感情は、
『あなたも大切だけど、
他にも大切な人がいる』
という残酷な言葉だった。
連れてきてもらった子の肯定が心に染み渡る。
田舎の外に対する想いが消えて、田舎の中の気持ちだけになる。
周りの景色の綺麗さが、ひたすら毒となって、
自分の身体を蝕む──そんな、思いだ。
百千鳥
「いいよー、任せておいて。
歩きでも行けると思うけど、持ち物は車が楽だからさ。
眠くなっちゃった人も運びやすくなるからね。
やりたいこと? 夕凪はスイカ割りもしたいし、泳ぐのもしたいな〜。
あとはー」
あたりを見渡して、頬に指を当てながら子供のように何かを考える。
「みんなを巻き込めたら何でも!」
例えばビーチフラッグ。
例えば本格的砂のお城建築など。
他の貝殻集めや女の子らしい提案は夕凪からは出てこないようだった。
「……カメラ、何処か行っちゃった」
唯一の取り柄であった、
思い出を四角に切り取ることすらできない。
劣等感に押しつぶされそうだ。
「……」
微笑む。
いつか自分がカメラに映るために練習した笑顔は、
自分の心を覆い隠す殻となって顔に張り付く。
それでも、抑えきれない涙を、
指先で拭って──ふと、手を見つめる。
また頭がちくりと痛む。
言いようのない違和感だけが、そこにある。
自分の華奢な指先と、青年らしいしっかりとした指が、交互にチラつくのを見た。
境内からでて、自分の家へとまっすぐ進む。手入れのされてない雑木林を、まっすぐ。
秘密基地は、みんなの国。
一人きりの王様は、ある時不意に、二人の迷い子に呼び掛けた。
「ねえ、みんな!」
「
みんなは誰と遊びたい?
」
「アタシ達、きっと二人が連れて来てほしい人を連れて来るよ」
「一番に遊びたい人を呼んで、それからいろんな事をして遊ぼう」
「──いつまでも!」
/*
という事で墓下のお二人に次回襲撃先のアンケートなのじゃ!
とは言っても妾、黙狼どのの襲撃先は本当に自由にしてほしいと思っておるからの
だから絶対に連れて来る事ができるとは言えないのじゃけど、
妾一人で決めてしまうのも勿体無いから是非お聞かせ願いたいのじゃ!
あくまでも参考にしたい程度のものじゃから
ロール的にはこの人が居てくれたら嬉しいな、くらいで
あまり気負わず答えてくれると嬉しいなのじゃ!
いずれはみなを連れて来たいの……のじゃ……のののじゃ…
昨日向かった川辺に夕凪は一人で座っていた。
描き途中だったページに描きたされていくのは皆の姿。
「写真じゃ、ないし」
どこか気に入らなかったのかそのページを破ると一人一人の姿を書き始める。
編笠、青嵐、涼風、髪置……卯波、茜、百千鳥。
「みんな見た目変わったね、またしっかり顔を見たくなっちゃった。正確にかけないと悔しいし、……みんな忙しいかなあ。
ゆっくり羽を伸ばすだけじゃなくて、ずっとここにいればいいのにな」
夏の空に独り言を飛ばして夕凪は、あなた達を探しに行った。
誰かと会いたかった、スイカをくださいなと八百屋のおばさんとお話をして、誰かと会いたかった、スコップやバケツを色んなところから借りて、誰かと会いたかった、少し大きめの車を借りて、忙しないはずなのに疲れを見せずに楽しそうにしていた。
「晶兄、来てたんだ」
見てもないのに、そんなことを言う。
「……デジタルカメラもいいけど。
今はこっちじゃないとダメかな」
首に下げるためのホルダーを外して、
インスタントカメラの方に引っ掛けて、結ぶ。
そうして、思い出により近づいた卯波は。
ほんの僅かに、背と髪が伸びた。
子供が、成長でもするように。
相変わらず中性的な雰囲気はそのままに。
「──ふふ」
頭の痛みが、少しだけ楽になった。
寂れた社に背を向けて、
下草に埋もれかけた階段を下りて行く。
みんなを呼びに行かなければ。
次は誰を迎えに行こう、そう考えて
みんなは誰と遊びたい?そんな問いの答えを思い返す。
編笠。
青嵐。
涼風。
髪置。
鬼走。
その内の一人は、何れ来るだろう。
そんな漠然とした確信があった。
そして、その内の一人は──
| 「ふあ。ねっむ。あっつ」 朝、寝苦しくて目が覚めた。 外では変わらずセミがジワジワと鳴いている。 寝起きてしょぼつく目をこすりながらベッドから降りる。 部屋ではカラカラと扇風機が回っていて申し訳程度の送風が少しばかりの涼をくれる。 ここはこっちに住んでた時の家。 俺の部屋はあの時となんも変わってなくて 傷のついた学習机もサイドフックに引っかかるくたびれたランドセルも、”ずっとあんときのまま。” …………………… なんで。 「………ここ、俺の家、だよな。」 ……。 微かに感じる違和感に首を傾げる。 何かが、おかしい。…気がする。 (22) 2021/08/13(Fri) 3:46:52 |
| 「…まぁいっか。」
考えることをやめ、 大きく伸びをしてバキバキになった背中を伸ばした。
「今日は何すっか。アキラ誘って遊びにいくか、どうすっかな。 まぁ外出りゃ誰かしらに会えるか。」 (23) 2021/08/13(Fri) 3:47:04 |
| 青嵐は、とりあえず駄菓子屋に向かった。アイス食べたい。 (a14) 2021/08/13(Fri) 3:48:05 |
「
本当は、二人がここに居るの、知ってるよね?
」
根拠なんて何処にも無いけれど、やはり確信じみたものがある。
たとえば、夢の中で、無根拠にそうなのだと思うように。
にんまりと笑って、一人呟いた。
「いじわるしないで遊びに来てあげればいいのに。
それとももしかして、恥ずかしがりやなのかなあ?」
「まあ、どっちでもいいか。
そうだなあ、アタシが呼ぶのはあの人にしようかな。
だって誘わないと来てくれなそうだもん」
脳裏に浮かぶのは、いつも寡黙でどこか顰めっ面の大人の人。
それでも優しいあの人は、自分達が待っていると言えば
きっと、この場所にも来てくれるだろう。
涼風 二日目 川
「成長した俺の写真……か。ふふ、期待に応えられるかな。
何か遊びに行くでもなければ暫くは暇だから、大丈夫です」
言葉の一つ一つが、
ちくちくと胸の内を刺していく。
気遣うような笑みに返した、満面の笑みの下はもう既に陰りが満ちていること、何も明かせない自分の内側を偽って接していること。
全部仕方のないことだと、わかってるけど。
約束を、ひとまずは快諾して。
「いつかはもっといい写真を撮れるようになって、みんなが近くにいなくても俺の写真が届くようにします。
例え未来がバラバラだとしても……みんなの人生に関われたら、いいな」
写真を見てもらって褒められるのは嬉しい。
だから、写真を見せることは、楽しい。
今は、それだけしか考えないようにした。
その後に何が起こるか、露ほども知らずに。
青嵐
「……青嵐くん! 駄菓子屋で何のよう?
夕凪が驕ってあげようか」
海に向かう前、村のあちこちを歩き回っていた夕凪は駄菓子屋で見つけた背中に声をかけた。
にこりと、楽しそうに顔を出して冷凍庫を見る。
しかし現れ方は、まるで幽霊のように。
さっきまで姿が見えなかったの突然出てきたかのようだった。
「驕るついでに、訪ねたいこともあるんだけどいいかな」
| >>+9 夕凪 「う、わぁっ!?」 駄菓子屋のクーラーボックスでアイスを吟味していたら突如顔を出した美人に驚いた。 嬉しいハプニングではあるが美人を視界に入れるのには心の準備が必要なのだ。その準備が出来てなかったせいで情けない声をあげてしまった。 「び、びっくりした。夕凪ねーちゃんか。ん、あっちーからアイス食べたくて。いいよ、俺これでもバイトしてるし。なんなら奢るよ。これ男子の見栄な。」 言いながらクーラーボックスを漁って引っ掴んだのはコーラ味のアイス。美味いんだよな〜これ。 夕凪ねーちゃんなにする?好きなの選びな。 「聞きたいこと?俺に?わかる事なら答えるけど。」 美人の頼みなら断れまい。 (29) 2021/08/13(Fri) 5:48:32 |
青嵐
「驚かせちゃった? 今海に行く準備しててね。
村中歩き回ってんの。
青嵐くんバイトしてるんだ、えらいね〜。
夕凪たちは大学生になってからだったよ」
それじゃあお言葉に甘えて。チョコミントを。
昔はイチゴ味があれば飛びつく子供だった夕凪。
チョコミントを好きな夜凪は少し珍しかったのを覚えていてもおかしくはない、たまにゆずってやりながら二人でそれぞれの味を分け合っていた。
きっと今も弟のことを思い出しているのだろう。
「難しいことじゃないよ、
青嵐の、好きなこのタイプを知りたい、なって」
年上のお姉さんから繰り出されるあまりに突拍子も無い質問。
照れた様子も不思議と無く純粋に気になっているように思える。
「〜♪」
都会の一昔前のヒットソングを口遊んで、
インスタントカメラをあちこちに向けている。
川でたくさん遊んだのに、
身体は疲れ知らずで、するする歩ける。
……この辺りこんなナマコ多かったっけ。
「流石にコレ撮っても仕方がないですよねえ」
まだまだ被写体探しは続く。
| >>+10 夕凪 「お、姉ちゃん海いくの?いいな。 あー、まぁ、ちょっと趣味に金かけたくて。 でも俺も卒業ぐらいで今んとこはやめるよ。大学から遠いし。 そんで、聞きたいことって?」 物事を始めるタイミングは人それぞれなのだ。 チョコミントを手に取って、思い出すのは彼女の片割れ。 隣にいない片割れのことは気づいていたけど、 多分散々聞かれてきたんだろうから敢えて聞かずにいた。 一緒に会計済ませてアイスを手渡す。 「 好っっ……!?!!? 」 唐突に繰り出された話題に噴き出しかける。 アイス食べる前で良かった。 いや、これ、え?女子が男子に好きなタイプ聞いてくるって つ、つまり… そ そういうこと!? 期待するぞ!??!男ってバカだから。 「す、好きって、あーえーと。 彼女にしたいとか、そ、そういうこと?」 (39) 2021/08/13(Fri) 16:22:16 |
青嵐
「一緒に行こうよ、いっぱい遊ぼ? 時間が無くても強制連行。
趣味のためにお金稼いでたなんて、結構しっかりしてたんだ」
後ほど車もでるし、徒歩でもいけることを伝えて。
スイカ割りやいろんな事をしようと提案をした。
多分無理にでもつれて行かれる気はするだろう。
やんちゃなまま変わらず大きくなっていたと思っていたのに。
お金も大学のこもしっかり考えている話を聞いて、心の中で子供扱いしていたことを謝罪をした。
それにしても青嵐は可愛いなあ。
ここにきてからみんなが愛おしくなってばかりだ。
「そうだよ、彼女にしたいタイプ。
あんまりこういうのは……・夕凪には聞かせたくないことかな?」
| >>+12 夕凪 「お、いいの?行く行く。また着替え持ってかなきゃな。 え、そうかぁ?別に貯金とかしてるわけじゃねーし、普通じゃねぇ?」 一気に食べると頭キーンなるから気をつけながら食べる。 シャリシャリとした氷の食感と冷たさが心地よい。 スイカ割りもいいな。こないだ切ってくれてたスイカ食べそびれたんだよな〜。 海といえば他にもビーチフラッグにビーチバレーそれと 女性陣の水着 。 持ってきてる人が居るのかは不明だが 男子としては女性陣の水着姿を拝める事を祈るしかない。 「あー、いや、そういうわけじゃ…。 えー……、う〜ん……え、笑顔が可愛い子とか…?」 うわやっべ、 絶妙にガチっぽくてキモいか!? 昨日もそれっぽい話はしたが今日もするとは。 しかも女性相手に。 (47) 2021/08/13(Fri) 19:32:04 |
この窓どうやって使えばいいかわからない ぽんぽこいっとけばいい?
秘密基地にいるともだちと、内緒話をした。
元気がなさそうだからどうしたの、って。
寂しかったのは、夕凪たちだけじゃなかった事を知った。
なんだか、ここのみんながもっともっと好きになった気がする。
頭打ったのかと心配されてしまった。
「……頭を? わかんないや。
痛いところはないから気にしないで」
一瞬、視界が揺らいだような気がした。すぐに戻った。
「無茶はしないでね。
みんな
や夕凪
にとってこの夏が楽しいものにしようね」
夕凪は、この田舎の夏を楽しんでいる。
何もおかしくない、おかしくない、そうだ、なにもおかしいところなんてない。
「傍で撮ってよ、車の準備をしたら呼ぶからね。一緒に行こう?」
みんなもたくさん誘って、と、海で遊ぶ約束をした。
海に行くまでのちょっと、二人だけの時間だった。
青嵐
「笑顔が可愛い子? やっぱり笑っていてほしいものかあ。
そっか、青嵐はそうだったんだ」
一つ、また知りたいことが知れた。
聞こえない声を気にしないようにして。
あの子が知りたがってたんだ。
誰かのために、なんでだっけ。
「でもちゃんと好きな子にはアピールしないと青嵐ほどの格好いい子でも逃げられちゃうからね、気をつけなよ?」
複雑そうな表情をしていたのは答えが不快だったからではない。
文句がない答えで、青嵐らしいと思ってしまったからだ。
なんだか嬉しそうな、それでいて寂しそうなそんな表情を浮かべた後。
コロリと明るい笑顔に戻れば買って貰ったアイスを大事そうに抱える、一歩下がりあなた背を向け振り返った。
「それじゃあ、引き留めてごめんね。また後で!
アイス美味しく食べるからねっ」
海に着いて紙を広げて描くのは宵闇と清和と御山洗の姿。
目の前にいないのに正確にはっきりと描いているのは。
あなた達を夢の中で見たから。きっとそうだ。
「〜♫ やっぱり海はいいな。
ずっとこれなかったから、筆がとても乗る」
鉛筆でとんとんと、紙面たたいて。
あっという間に描けたあなた達を破って、風で飛ばされるのも気にせず適当な場所に置いてけぼりにする。荷物の下に置いたから迷子にはならないと思う。
「―――、宵兄さんはそう、ね、画になるって感じ。
編笠 くんは今度は服のまま飛び込むのはやめておきなよ?」
「そう?
じゃあ今はそんなにテンションがあがってないって意味?
こんなに美人がそばにいるのになー」
わざとらしく笑いながら、サンダルで砂を蹴って。
はねるようにそばに近寄れば、編笠の腕をつかんだ。
「ほら、ナマコでも魚でも、わかめでもつかみにいこう?
陸に見える黒いわかめさんは腰が痛いみたいだから」
「調子、……? そんなことより。
夜凪の穴埋め、できるならやってほしくって。
触ったり捕まえるのも夕凪たちも得意じゃないよ、大丈夫なだけ!」
どことなく挑戦的に、愉快そうに目を細めてその手を引いた。
そうは言いつつ。
実際は押し付けたりもせずに水辺を歩いて見つけたものを掴んでみせて、驚かれたらリリースをしながら手を振ってさようならするだけであった。
「わあ、宵兄さんは相変わらずロマンチック。
夕凪も誰かに呼ばれてきっと来たんだと思ってるよ。
本当? もう聞かせてくれるの!
いつも兄さん人気者だから今しかチャンスはないかも、聞かせてほしいなあ」
御山洗
「ナマコですよー、御山兄さん」
川の時よりも幾分かご機嫌そうな夕凪は、彼らにバイバイと告げながら海の生物たちを逃していく。
「そーですね、ここの海はきれいで本当に楽しいな。
都会の方はは生き物なんて全然いないし、夕凪が描く空も灰色ばかり。
ここは、空も海も青くてみんなの表情がわかりやすくて……ずっとここにいたいなって思うぐらいです」
砂浜を歩いている。首にかけているのはインスタントカメラだ。
涼風
「あ!薫兄!どうしたんですか、
なんか変なとこでも……ああ」
胸元に下げているものへの視線が、
何を疑問に思ったかを教えてくれた。
「これ、晶兄とお揃いのやつで、
田舎の思い出も詰まってるし、折角だから持ってこようと思って。
ああ勿論デジタルカメラの方も、写真も持ってきてるから大丈夫ですよ。こっちは防水じゃないので、波のあるとこには持ってけませんしね」
緩く掲げれば、
『晶』と文字が記されているのが見える。
利便性よりも田舎の思い出が勝っているのは、何か心変わりがあったのか。
| >>+14 夕凪 「正直あんま考えたことないからアレだけど…。 まぁ好きとかじゃなくてもさ、笑ってくれてたらうれしーもんじゃん?」 マジで言えば好きになった子がタイプ。これに尽きる。 もしかしたら全然笑わない子も好きになるかも知れない。 アキラとかずっと友達だけど表情筋死んでるしなぁ…。 まぁアイツはアイツで表情はあるっちゃあるか。 「え、俺格好良い? お、おう……そっか…。サンキュー…? 美人からのアドバイスは身に染みるわ」 くるりと背を向けて歩く彼女に向けて 「またな」と手を振った。 その背をぼんやりと見送ってから自分も海に行く支度の為に一度家に戻ることにした。 「俺って格好良いのか………」 (83) 2021/08/14(Sat) 2:24:18 |
| 家に戻って適当なリュックに着替えを詰める。 暑い日はやっぱ水被んなきゃやってられねーなー スイカ割りはもう始まってるんだろうか。 ビーチバレー用のボールとか持ってたっけな。 誰かが持ってくるか?等と考えながら身支度を整えた所でふと顔をあげる。
「………?」
呼ばれたような気がした。
周囲を見回して、一人であることを確認する。 気のせいかとリュックを背負って家を出ようとして、
「……っ、いて…」
ズキリと、頭が痛んだ。 何かが欠けてる様な、そんな気分。
「…アイス食いすぎた?」
言い知れぬ違和感は首を降って忘れる。 今日を謳歌するために、彼は海へと足を運ぶのだ。 (85) 2021/08/14(Sat) 2:37:54 |
御山洗
「お兄さんは、今どこで暮らしているんでしたっけ?
夜凪は大学を卒業してから、家を出るか悩んでいるところで」
自分で言った言葉に違和感を感じて首を傾げました。
不思議と家を出ていこうとする理由が明るい気持ちだと思えなかったから。
だけどなぜ実家から離れようとするのか思い出せなくなってしまっていて、その違和感にも気づくことができませんでした。
「……ここで暮らせたら本当に自由、なのかな?」
同じように集落に視線を向けた、美しい山はだに陽が照らされて村の色彩を引き立たせてくれる。
樫の香りと潮風とが混ざってそんな景色が陽炎のように揺らいで見えた。
宵闇
「…あ……・」
一本一本の糸から走った音が海の香りを夏を導いて奏でられていく。
不思議と涙がこぼれ落ちそうになって思わず拍手を遅らせてしまいました。
「ありがとう、ございます。
素敵な曲でした、宵お兄さんのような……なんていえばいいのでしょうか。
綺麗で、少し寂しくて、切ないのに、また聞きたいと思えるような曲でした。
優しい歌だったわ……?」
小さな声が紡がれて、暫くの間言葉を発せずにいたが、やっと思い出したように笑みを浮かべる。
「―――いい歌だった、お兄さん。
中毒性があるっていうのかな、どんな風に曲を作っているんだろう。
やっぱり誰かを思い浮かべたり、何かを考えているんですよね?」
墓下に見えてるらしい事を今知った。
恥ずかしいのでぽこぽこしときます。
涼風
昨日は確かにデジタルカメラを提げていた。
晶兄が持ってきたのをみて、
やっと自分が持ってきたのを思い出したくらいだ。
覚えてもいないのにどうやって持ってこれたのかは定かではないが、今は関係の無い話だ。
「……そうだね、こっちは補正とか気の利いたものついてないし。ブレるのは味といえばいいんですけどね。
でも小さい頃から使ってるから勝手は分かってるし、それでも、」
それでも。心に変化があったのには間違いなく、
「今日はこれがいいの」
前後の文脈をすっ飛ばして、
そう言って笑みを浮かべる。
恋するような、悪戯でもするような、
もしくはちょっとした獰猛さが滲み出すような。
少なくとも、作り物ではない表情だった。
「ごめんね、何のことかわかんないでしょ。
でも、薫兄を失望させるようなのは撮らないって約束しますよ!これだけが、唯一の取り得ですから」
編笠
「あははっ、変な声。
驚かせてごめん、だけど面白くって。
……そろそろ人も集まってきたし他の遊びでも――」
海の生き物たちはすぐに解放してあげて楽しんでいたが、
一度離れる前に気になったことを一つだけ聞いておいた。
「なんだかそれを聞いてると、
夜凪がすきなのか夕凪が好きなのかわからないね?」
| 「おっ、皆やってんな〜。 スイカ割りは…まだっぽいか?」 海へとやってきて辺りを見回す。 見知った顔がはしゃいでるのを確認してから 自分は熱された白い砂を踏みし…めずに防波堤へと向かう。 「 」 海で遊んでる友人たちに、砂浜で見守る兄貴分達に、 村の皆に聞こえるように高らかに宣言して助走を付ける。 防波堤の端っこで足を踏み切れば ふわりと身体が浮いた。 一瞬の浮遊感の後、そのまま重力に従って落ちた身体は 大きく水飛沫が舞い、防波堤を濡らす。 そんなに高くはないので海面に叩きつけられても痛くはないのだが 昔はこの高さでも酷く怖がったものだ。 「あっははは!超きもちー!」 水面から顔を出してザブザブと泳いで砂浜へと戻る。 全身びしょ濡れだが心置きなく遊ぶために着替えを用意したからいいのだ。 (87) 2021/08/14(Sat) 3:18:18 |
「水着に着替えないの!?」
拝啓、十年前の俺。
十年後も振り回されております。
「相変わらず無茶しますね、瞬兄は。
一番昔から変わってないんじゃないんですか」
背中を追う、という点でいえば、
一番追いつきようがなかったのが彼だ。
向こう見ずでどこまでも走って、どこまでも男らしく格好良くって、もしかしたら自分の対極にいるんじゃないかとすらも思ったことがある。
彼を四角形に収める為に、カメラ扱いの腕を必至こいてあげたのは良い思い出だ。
「早く着替えてくださいね、風邪ひきますよ」
自分も飛び込んでみたら驚かれるかな、
なんて、子供っぽいことも考えてみる。
編笠
「浮かない顔じゃないですか、晶兄」
その姿を見つければ、サンダルを鳴らして歩み寄る。
首には晶という文字の目立つそれが提げられていた。
「今更時間の変化に気づいちゃったりしてます?
ノスタルジアに浸るのもいいけど、
折角の海なのに楽しまなくちゃ勿体ないですよ」
追いつけないなら、別のやり方もある。
後ろからではダメで、横にも並べなくて、
じゃあ、あとできることは『真正面からぶつかる』くらいしかないだろう、と、結論付けたから。
| 「…?アイツなんかしけた顔してね?」
砂浜でびしょびしょのTシャツを絞りながら こちらを見てる(様な気がする)親友を気にかける。
「アーキラー!お前も飛び込めよー!!気持ちいぞー!」
親友に向けて大きく手を振る。 晴れやかな笑顔を見せてから、声をかけてくれた後輩に目をやった
「おー、卯波。言ったな? これでもやんちゃ坊主が爽やかイケメンに育ったと好評だぞ。」
ケラケラと笑いながら冗談めかして応える。 濡れた前髪をかきあげて、絞り終わったTシャツをバサバサと扇いだ
「へーきへーき。こんだけ暑けりゃすぐ乾くだろ。ちゃんと着替え持ってきてるし。そうだ、卯波も一緒に飛びこもーぜ。」
来いよ、と一つ下の後輩の手を軽く引く。 行くか行かないかはあなた次第だ。 (96) 2021/08/14(Sat) 3:58:58 |
編笠
ふわりと身体が浮いて、
晶兄に抱きすくめられて、
何かを思う前に、辺り一面が水の中。
「っぷはッ───!しょっぱ!
あっはは、落とされたくないからって、
自分が落ちることないでしょ!ねえー!」
頭を左右に振って、
動物がやるみたく露を払った。
勿論近くにいる相手への迷惑は気にしない!
「あー、たのしい。
服のなかまで全身びしょびしょだあ」
「瞬兄〜〜〜!!!!俺もう一回飛び込む!!!」だ。
| (a44) 2021/08/14(Sat) 4:05:10 |
青嵐
「うん、勿論!
どうせ洗えばいいですしね!」
今度はもう一人の先輩の手を取って、
もう一度防波堤の端へと連れられて行く。
一ノ瀬卯波いっきま〜すだの、
声量の足りない掛け声を発してみたりするだろう。
結局、あの時だって変わらない。昔の自分なら、いいよできないし、とでも断っていただろう。自分が一歩後ろに退いていただけだ。
今日は、その一歩を、十年越しに踏めた。
ノスタルジアも、たまにはいいことをする。
心からの笑みが、
四角形の枠のなかに映し出された。
御山洗
「……夕凪たちは、家族でまだ住んでて。
夜凪は」
近くに住んでいたんだという感想を埋め尽くすほど、余計な思考がめぐる。
不安を励ましてくれているのがわかるのに、言葉に連想でつながってしまった過去の言葉が頭に浮かんで止まらなくなってしまった。
「夜凪が、夕凪から離れたいって」
それを意味するのは自立だったり就職だったり。
だが双子にとっては? 仲違いとも取れるような明確な拒絶に聞こえるのかもしれない。
「どこでもいいのかな。私も、どこでもいられると思っていたの。
でもね、私……今好きだと思える場所が、わからないのよ。
家族も大好きで、もちろん夜凪も大好き。絵を描けるならどこでも良かったのに。
あの子に離れるって言われて、わからなくなったわ。ここで一人で帰らないのも悪くないのかなって思うくらいに」
| >>+27 卯波 「そうそう、細かい事は気にすんな!楽しめ!!」 後輩が飛ぶのを後ろから いいぞ、とか、行け行け、とか、野次を飛ばして見守る。 卯波が海面から上がったのを見てから自分も再び飛び込んだ。 大きな水飛沫がもう一度上がり、先に入水した後輩に降り注ぐ 更にびしょ濡れになった後輩を見てカラカラと笑った。 「あっはは、卯波もびっしょびしょ。 もう服気にせず遊べるな。」 (106) 2021/08/14(Sat) 8:40:46 |
青嵐
「いやいや、流石に水着に着替えますよ。
でもこーいう何にも気にしないで遊ぶの、すっごい楽しいね。今までも、もっとやればよかったかもです!」
髪を結び直し、上着を絞って、
笑いを零しながら振り向いて言う。
「晶兄も誘わないとね。
ちょっとつまらなさそうな顔してたから、
目いっぱい遊んで忘れさせてあげないといけません」
| >>+30 卯波 「え、お前水着持ってんの?用意いいな。 あはは、今からでも色々できるだろ。 出来なかったぶん取り戻そうぜー。」 貴方の笑顔に釣られて笑って、 どうせまた濡れると思うから意味は無い気がしたけど Tシャツを脱いで雑巾絞り。びちゃびちゃと海水が砂に吸収されていく。 「あー、アキラ?誘わなかったから拗ねてんのか? なんかしけた面してんなーとは思ったけど。 ちょっかいかけにいくか〜」 (111) 2021/08/14(Sat) 13:00:53 |
青嵐
「だって川も海もあるんだよ〜?
そりゃ用意してくるに決まってるじゃないですか。
田舎くらいでしか好き勝手出来ないよー。向こうだと気を遣わないとあんまりいい目で見られないし……いつもみんなと暮らせてたらよかったんですがね」
水を含んで重くなり、張り付く服が、
気色悪くも、楽しさの証でもあり。
大人ぶることから羽根を伸ばせるのが、何よりも心地よかった。
「そーですよ、行こ行こ。
晶兄こそちょっと大人になって、一歩引いちゃう感じになったんでしょうかね」
涼風
「───そう、だな。田舎の外にいる間に忘れちゃってたんだけれど。俺は何よりも、自分が撮りたいと思ったものを、最高の角度、時間で切り取って、それをみんなに観てもらうのが好きだから」
散々遊んで、水に艶めく髪を手櫛で纏めながら。
片手間に傍に戻ってきて、話の続きをする。
「昔からずうっと俺は、人の思い出の一部になろうとしてたけど、違った。
俺が、みんなを、どこにでもある綺麗なものを、何度も、何度も何度も思い出にする。写真と変わらない。田舎に帰って、それに気づけたんです」
その背中を押してくれたのは、薫兄も含めた、
田舎の人たちだっていうことが、何より嬉しい。
「みんなを、俺の記憶の、その枠の中に。
昨日は写真がみんなの下へ届いたらいい、って言ったけど、俺は……自分の足で皆を撮りに行きたい。
将来は、そんな仕事を選ぼうかなって思いました」
田舎に永遠に残りたいと思う。それができたら素敵だと思う。
それが叶わないのだとしても。出来ることがある、とも思った。
| >>+31 卯波 「俺全然忘れてたぞ、 まぁ着替えありゃどうとでもなるけど。 え、そうか?俺全然気にしたことねーや 卯波俺より若いのに苦労してんだな… あ、もしかして俺がお気楽過ぎな感じ?」 固く絞ったTシャツをバサバサと扇いで軽く乾かす。 そうしてまだ湿ったシャツを着直した 「んー…、まーなー…。 俺もさぁ、離れたときはすっげー寂しかったけど、 今生の別れでもねぇし?こうしてまた会えたし。 会おうと思えばいつでも会えるって。」 おりゃ、と濡れた後輩を髪をぐしゃぐしゃと撫で付ける 細い毛が指の中で擦れて少し擽ったかった。 「…みーんな、大人になってくんだなぁ…。 卯波の言うとおり、俺が一番変わってねーかも。 …よっし、アキラのとこまで競争だ!行くぞ卯波!」 (112) 2021/08/14(Sat) 15:03:28 |
御山洗
「……私がくっつきすぎるせいで、あの子が鬱陶しがっていたのね。
ちゃんと話したから、当てずっぽうじゃないわ。
もう大人だしそれぞれ自立をしないといけないのは確かじゃないですか。
だからね、仕方ないのよ」
漠然とした不安は田舎の思い出で薄れはするが埋めるものにはならなくて、ただ、今だけは何も怖くないような満たされた気持ちになっている。
また一瞬で、恐ろしいほどに消えてしまう。
思い出さなくてはいけないことが、話さなければいけないことがあるのに。
「弱音を吐いてごめんね。
しんどかったけど、今はなんだか、清々しい。
兄さんのおかげかも?」
まるで別人になったのように、迷子になっていた姉の様子は見えなくなり、凪いだ心にあなたのことばがふり続けた。
「……なかなおり、できるようにする」
言い聞かせるように緩く手のひらを握りしめて海の静かな波を見つめていた。
なんだか、あなたのまえでは偽りの姿を見せてばかりのような気がした。
青嵐
「今更気付いた?瞬兄のそういう、
細かいとこ気にしなかったり、
気楽に構えてるところは美徳だけど、
たま〜に苦言言われてるの、俺は知ってますから」
時任の姉さんがちょっとね〜と、
聞きようによっては思わせぶりなことを言う。
それでも見習うとこは見習うべきではあるが。
「あはは、そうだね。こんなに揃って会えるんだし、
会えないことはない。でもちょっと寂しいけど。
色んなとこ飛び回って、みんなに会いに行くって目標を立てたから本当に『会おうと思って会いに行く』ようにしますよ、俺は!」
無遠慮な手に頭を掻き撫でられ、
あ!折角髪結び直したのに!と文句ひとつ。
それでも心地よさそうに目を細めて。
「え、かけっこってそれは俺に勝ち目ないけど!
行くぞて、も〜〜、待ってってば〜〜〜」
そんなこんなでもう一人の先輩の下へ改めて向かうのだろう。
卯波だけの四角形を作り続ける。一つに固執するあなたには負けない。
受け取ったカメラを一旦手荷物に戻し、
水着へ着替えることに。人も寄ることもないだろうと、
近くの物陰で思い切って衣服に手をかける。
上着をしっかり、細腕で絞り、
肌に纏わりついて離れないシャツを、両手をクロスさせて無理矢理引っぺがした──ところで。
ふと、自分の両胸に手を当てる。
筋肉の僅かな硬さ。なだらかな、
未だ成長を感じさせるような感触。
まだ解消されてない違和感が一つだけある。
何かしっくりこないような。現実味の薄いような。
カメラによって切りとられた顔を、
勇気を出して、なんとか、見つめようとする。
(──ああ)
自分が、今まで自分のことを見つめられなかったから。
『今の自分』の外見を、他人に委ねてしまっているんだ。
少年が、段々と元の形へ戻っていく──。
ゆったりとしたラッシュガードを着た。そしてもう一度「海だ〜〜〜!!!!」
| 青嵐は、編笠にちょっかいをかけにいく。卯波も一緒だ。 (a71) 2021/08/14(Sat) 18:25:04 |
| (a73) 2021/08/14(Sat) 18:26:33 |
反射的に腕をあげると、ナマコをキャ〜〜〜ッチ!!!
| 青嵐は、そのへんで拾ったワカメを片手に逃げる編笠を追いかける。 (a80) 2021/08/14(Sat) 18:32:40 |
「油断も隙もないなあホント!」
ナマコさんが可哀想でしょ!(委員長)
「あ、茜ちゃん」
そして、透けてる様子に気付いたようで、
小走りで荷物を漁り、大き目のタオルを取り出してみせつつ、自分の胸元をとんとんと叩く。
「さっきも水かけまわってたでしょ、
一旦休憩にしようよ。両手のナマコは引き受けるから」
ほんのわずかに頬を染め顔を背けて、
気付いてくれ〜と気遣いをしてみて。
「こ〜らからかうんじゃありません」
だから見ないようにしてたんでしょ〜なんて言う。
ああ、そういう方法もあるんだ、とちょっとだけ感心したりして。
「茜ちゃんは着替えちゃんと……あるよね、茜ちゃんのことだもの。いや、安心した。
十年越しに女らしさを磨いたところを目の当たりにするとは思わなかったよ〜」
| (a83) 2021/08/14(Sat) 19:00:00 |
| (a84) 2021/08/14(Sat) 19:00:31 |
御山洗
「子供、のままの関係だったら?」
どういう意味だろう、と頭で思考を巡らせている間に水が飛びかけられる。
ぱちくりと目を瞬かせて見つめれば、覗くのは無防備な脇腹。いたずら心が芽生えてその腹に手を伸ばした。
「御山兄さん余所見してると危ないよ」
くすぐってみたい衝動が起きてしまったから。
遊んでみたくなったから。
そんな無邪気な理由でいつまでもここに要られたらどれほどいいか。
しばらくしてから皆の輪に戻ろうと声をかけた。
その時一体自分は誰を見ていて。
あなたは誰を見ていたのだろう。
「お兄さんも、溜まったものがあるなら海にでもなんでも吐き出してしまってください。
田舎に忘れ物をするのは、夕凪たちだ絵で十分です。
あと、風邪は引かないように!」
そう、笑って。
一歩海に向かって飛び込む構えを見せた。
卯波
「ああ〜次々女の子らしい単語。
メイク、……そっか、その年ごろくらいになるとするんだね」
何か思うことがあるのかうんうんと頷きながら。
大半は後輩がこんなに大人になって……という感情からくるものなのだろうが。
「俺は写真撮るひとだから、撮られる側の努力とかにも凄い興味があるんだよね。時間があったらちょっとだけでも教えてもらっちゃおうかな……俺がするわけじゃないんだけど」
| 「はは、アキラのやつ、あんな全力で逃げなくてもいいのに 持ってるのただのワカメだぜ?」
笑いながら”親友くん”を追い掛け回して疲れたので砂浜に寝転んだ。 熱された砂の熱が背中から伝わる。 遊んで、笑って。 この数日で会えなかった日々を少しずつ取り戻せてる気がして嬉しかった。 太陽が眩しくて、目を瞑る。
「……はぁ〜〜〜……背中あっち〜〜〜」 (147) 2021/08/14(Sat) 20:56:46 |
宵闇に笑顔を返したとき
思い出したのは
双子でみんなのことを思い出していた数年前。
『お兄ちゃんは忙しいんだから僕たちに構ってばかりいられないさ。
だけどとっても大事にしてくれてる、夕凪もわかっているだろ』
わかっているわ。優しくて真面目な人だもの。
『涼風? 何してんだろうなぁ、まだ僕たちみたいに文章を書いてればいいけど。
それか新しい夢見つけていたりしているかもな』
それもいいと思う、もう何年も経ったんだから。
『編笠元気かなぁ〜、あいつと話すの大好きなんだ、なんか面白い仕事についたりしないかな。みんなが思いつかないような』
どんなことを好きになったのかな、とても気になるね。
『青嵐はさぁ、落ち着きが出たのか気になるよな。夕凪もあの時のこと……え、もういいって?僕が変わりに聞いてやるよ』
何をしているのか、二人で想像して。
会える日を夢見て、一緒に笑った。
『モモチは背ぇ伸びたのかな、まだまだ成長期だろうけど流石に夕凪の服はもう嫌がる歳だろ』
まだまだ可愛いわよきっと。
私の服も入るんじゃないかな。
いつまでもいつまでも夢を見るように話は続いていた。
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