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【人】 ダアト[濃く深い緑を 切り分けるようにして 綺麗に均された一本道がある。 その道を辿っていった先には 小さな工房があった。] …ん? ああ、フクロウ便かな? [コツコツと硬く響く音に 作業机から顔を上げ、工具を置く。 肩を軽く回しながら窓に近づき 外からの視線を遮ってくれる 薄いカーテンを開けば、やはり梟が居た。] (1) 2021/10/23(Sat) 22:28:24 |
【人】 ダアト[少し機嫌が悪そうなのは また反応が遅れたせいだろうか? 集中力があるといえば聞こえは良いが 夢中になると 周りの音も聞こえなくなるし 腹も減らなくなる。 人間らしさが抜け落ちてしまうらしい。] ありがとう [そういって封書を受け取ると 即座に羽ばたき、夜空へと消えていった。 この勤勉さは 主に似ていると思いながら再び窓を閉じ カーテンを引いてから、封緘を解く。] (2) 2021/10/23(Sat) 22:31:02 |
【人】 ダアト[馴染みの医師からの連絡。 事故で体の一部を失ったご老人のために 装具を作って欲しいという、いつもの依頼だ。] 明後日か…、ふむ、 では、この子を急ぎで仕上げないとな [どんなに立て込んでいようと 決して断らないことを 解っているから あの梟は返信を待つことがない。] (3) 2021/10/23(Sat) 22:32:27 |
【人】 ダアト[立ち上がったついでに 籠からひとつ林檎を手に取り、 きゅっと袖で拭うだけで 歯を立てた。 食事と呼ぶにはあまりにお粗末だが とにかく時間が惜しい。 己の分身のような 子どものような 此奴らを 神が作り給うた本来のものと 遜色がないように、 何処までも近づけていく。 芯を無造作にシンクに放り、 手と顔を洗うと 再びその作業に没入していった。]* (4) 2021/10/23(Sat) 22:34:43 |
【人】 ダアト[人間らしいとは到底 言い難い生活を送っている自分だが、 眠気だけは別だ。 カクン…!と来たら、一目散。 何はなくとも、ベッドへ向かう。 冴えない頭 切れた集中力で 良いものが作れる訳がない。 投げ出さない粘り強さだけでなく 潔さも必要。 そうして、 潜り込んだ羽毛の合間で 珍しく夢を見た。] (10) 2021/10/24(Sun) 18:29:17 |
【人】 ダアト[人熱れに揉まれて、見上げる青い空。 今にも翔け出さんと 息巻く飛竜たちが横一線に並ぶ。 そこに響き渡る音。 スタートの合図となる 勇ましいファンファーレが鳴る筈なのに どうしてだか物悲しげで、 …? 今とは異なる 視界の低い自分が首を傾げる。] (11) 2021/10/24(Sun) 18:30:32 |
【人】 ダアト[散らかっているというのは謙遜ではなく、 壁や棚には試作品の 脚、手、指、眼などが雑然と置かれていた。 装具の工房だと知らぬ人なら そのリアルさに おそらく、ギョッとするだろう。] (16) 2021/10/24(Sun) 18:41:39 |
【人】 ダアト[多くを語るより 見ていただいた方がより伝わるから その時間を作るように、] お茶をお淹れしますね? [部屋の隅にある小さなキッチンへ向かおうとする。 すぐに話を始めたいようなら このルーティンに拘るつもりはないけれど、 断られなければ、 ハーブティを淹れたマグカップが ほどなく手渡されるだろう。 長旅でお疲れだったり 緊張している依頼者さんに ほっ…としていただきたくて ”リラックスできるものを”と希望だけ伝えて 適当にブレンドしてもらったものを 馬鹿の一つ覚えのように、いつもお出ししている。] (17) 2021/10/24(Sun) 18:44:49 |
【人】 ダアト[対面に腰掛けた後は、] 装具士の、ダアト=エフライムと申します。 よろしくお願いします。 [それだけを告げ、 あとは、相手を柔らかく見つめながら 耳を澄ませて、言葉を待った。]* (18) 2021/10/24(Sun) 18:47:25 |
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