32 【身内】降りて流るるにわか雨【R18】
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[繰り返し伝えてくれる想いは
心と脳を
強く震わせてくる。
それだけではなく空気も揺らすから
先程まで口に含まれ
濡れた二つに
ひんやりとした刺激まで加わった。
重みを増したそれが
く、と
達したいと持ち上がるのを
彼の頭に両手を置いて、堪える。]
俺も… すき、だ………、 ヒュー
[詰めた息で返すので精一杯。
我慢強い方だと思うし
欲をコントロールする能力には長けていると
自負しているのだが、
恥ずかしいことに
もう、あまり保ちそうもなかった。]
[既にそんな状態だったのに、
何処の、誰に
仕込まれたのだろう
視覚、聴覚、触覚…と五感にビリビリ響く
雄の快感を知り尽くした舌使いと
厭らしいしゃぶり方に
為す術なく追い上げられて…
]
っ、 ヒュ、ぅ…
‥‥ッ、 もう───イく…っ!!
[咥えながら、好意を囁かれた瞬間
弾けるように
あっけなく達した。
白衣の裾を割り
最低限にずらしたスラックスと下着から覗く
太腿の付け根の筋が強く浮き上がり
突き上げるように
揺れてしまう腰が快感の強さを示す。]
[自制がまるで効かなくて
普段は決して
生で注ぎ込んだりはしない種を
髪をぎゅっと掴んでしまいながら
幾度にも渡って
吐き出してしまっていた。
これまで感じたことのないような
尾を引くような幸福感に
溶かされて、
忘我の極地から戻れたのは
しばらく経ってから。]
っ……、 は、ぁ……
信じられないくらいに、気持ちよかった
[乱してしまった
美しい銀糸を撫で漉きながら
蕩けるような笑みを零した。]
[口の中、彼のカウパーと
俺の唾液が混じって水音が響く。
少し塩っぱいこれが、彼の味。
こんなに溢れさせてくれて、嬉しい。
味と匂いに興奮して
脚の間のものが熱り立ってしまう。
いまそこを触られてもいないのに
どうしてだか、俺まで気持ち良い。]
(ジェレミーの、声……)
[貴方の声と、そこに載せられる想いと。
鼓膜が震わされるたび
愛おしさが泉のように湧く。
もっと、聴かせて。
もっと、気持ち良くなって。
焦燥にも似て求めながら
熱心に舌を動かし、深く咥え込んでいった。]
[載せられた大きな手が
頭を撫でてくれているように感じるのは
自分が動いているからだから
俺の願望込みなのだけれど――、
愛でられているみたいだ。
……すきだ。]
[舌足らずに好意を伝えれば
彼が気持ち良くなれるようにと
締めていた喉奥が突き上げられた。]
────んん゛……ッ
[気道をぐぐっと塞がれた苦しさと
それから粘膜を擦られる善さに
ぶわり、瞳が涙の膜を蓄える。]
[唇で隙間なく竿に吸い付いたまま
ドクリ、ドクリと
喉奥に注がれるザーメンは、熱い。]
……ッ、……ふぅ、……フーッ
[塞がっている口の替わりに鼻で息を継げば
カウパーより濃い彼の匂いが
自分の中に満ちているのを実感する。
ゆっくりと、
何度かに分けて惜しみながら嚥下した。
彼の匂いと味を憶えつつ。]
[この種が男に生まれた自分の中で
実を結ぶことは決してないのだけれど
それでも、体内に取り込んだのだから
明日の俺の体組織の一部にはなる。
自分の肉体が、
俺ではない誰かによって造られる。
これまでにない観点だが、
存外、悪くない心地だ――…。]
……ぷ、はぁ……、……
[竿の根本を軽く手で扱きながら
ちゅぢゅ……っと吸い、搾り取るように
管に残っていた精液を舌の上に移して
それから漸く、唇を離した。
前傾になっていた姿勢を戻しぺたりと座る。
濃いためか、少しかたい。
時間をかけて味蕾の一つ一つで味わえば
コクリ、喉の尖りを上下に揺らした。]
[浮かべるのは恍惚とした表情。
頬をほんのり赤く染めて。
オーガズムまで導くことができた充足感と
欲情による不足感とに
片足ずつ浸かっている。]
…………、ん。……うれしい
[恋人はいまなんと言ったか。
少し遅れて理解すると、
頷き、微笑みをかえした。
先から涎を溢す股間のものを隠すことも忘れて。**]
[コクリ、
身を起こし
表情がよく見えるようになった彼の
喉を鳴らす音で
我に返った。
信じられないことに
足りることを知らぬ厄介な体が
一時的にせよ、今は充足感を覚えている。
想いを寄せる
特別な相手だからなのか、
ヒューがあまりにも巧みだったからか、
おそらく、その両方だとは思うが
感嘆が思わず
口をついて出てしまうほどに
快感の質が別次元だった。]
[少しの間の後
蕾が綻ぶように薄紅色の微笑みが咲く。
髪を漉く手を止めて
見惚れて、気が付いたのは
朝露のような潤みを湛えていること。
(……無理をさせただろうか?)
思い返すに
あまりに善すぎて
気遣う余裕が欠けていた。
苦情ひとつ零さずに
飲み込んでしまったのだとしたら
その従順さは
どこか危うく思えて、気に掛かる。]
[そういえば、と
瞬時に脳裏を駆け巡ったのは
知ったばかりの彼の一面、
慣れと不慣れの
著しいアンバランスさのこと。
(させられてばかりの関係‥?)
これほどまでの技巧は
一朝一夕で
身に付くようなものではない、と思う。
過去の遍歴や
噂になっている他の恋人たちとのことを
詮索するようなつもりは無いが……
不条理なことを
要求されたりはしていないのか
心配になって
恋人の姿を視線でなぞる。]
[まだ足りない、欲しいと
言ってくれているような証に気付いて
]
────…!
[息を飲んだ。]
[
(もしかして、
今ので感じてくれたのか‥?!)
じんわりと
嬉しさが込み上げてくる。
その反面、
奉仕する側でなら
誰とでも気持ちよくなれる可能性も
わずかに過った。
器を補修するために必要で
体が順応することも
あり得るのかもしれないが。]
[いずれにせよ、自分は
多数の中のひとり…という立ち位置に
甘んじるつもりはない。
ヒューがまだ知らないというのなら
俺の手で教えて
特別な存在だと刻み込もう。
その為には────…、]
場所を変えても構わないかな?
もっと、ちゃんと愛させて欲しい。
[そう言うと、台から降りて
白衣から袖を抜く。
それを肩から羽織らせて
壊れものを扱うように
そっと優しく横抱きにした。]
[向かうのは隣室にある
仮眠用のベッドだ。
短時間の睡眠でも足りるよう
割と質の良いものを入れているのだが、
こんな風に役立つことがあるとは
思わなかった。
独りで使うために手に入れたセミダブルなので
十分な広さとは言い難いが
先程までの検査台よりは余裕がある。
その上に大切な恋人を
静かに横たえると
体重を掛けないよう気をつけながら
自分も乗り上げて
請う。]
服を脱ぐのを手伝ってくれないか?
その方が、もっと触れ合える。
[殊更、甘い声音で。]*
[彼の人の死後からこの身体は
栄養を蓄える必要がないとでも判断したのか
肉が落ち、毛には艶がない。
色だけは見事なままの髪を通る
指の感触は、
心地良くて擽ったくもあった。
愛でられているみたいだ。
こんな風にされるのは初めてではないが
こんな風に嬉しいのは、きっと。]
[その指が止まったのに気付いて
彼の瞳を見上げれば、
気遣わしげな眼差しが己に向けられていた。
どうしてそんな顔をするのだろう。]
(俺、なにか失敗した……?)
[上手く出来なかった?
でも、彼は確かに「気持ちよかった」と。
ならばそれ以外に何があるのだろう。]
[彼の視線が落ちていき
何かに気付いた様子を見せる。
それでやっと、自身の状態を認識した。]
……あ、……。
[恥ずかしげに両手で隠せば、
線の細い身体は縮こまって頼りなさを増す。
興奮した姿を見ることには慣れていても
逆側はあまりないことだ。]
[彼の言葉を聴き
先程あんなに愛して貰ったばかりで
まだあの上があるのかと驚き、
パチパチと瞬きをする。]
……うん。ジェレミーが望んでくれるなら
[場所を変えるってどこへ?
この台の上でも、出来ないことはないだろう。
これ迄もそういった使われ方をしてきたことは
想像するのには容易くて、胸が痛い。
]
っ、
[自分の身体はあっさりと抱え上げられた。
同じ男として、情けない。
……けれど、彼が大切そうに扱ってくれるから
自分自身がまるで高価な宝石細工のように
価値のあるものになった錯覚を起こす。
俺の居場所ではない気がするのに、
それは心地良くもあって。]
[運ばれたのは隣の部屋だった。
彼の私物であろう、ベッドがある。
研究の合間に仮眠をとったり
泊まることのある大学職員にとって
珍しいものじゃない。
自分は机かソファで寝てしまうが。
その上に優しく下ろされて、
肩に掛けられていた白衣がシーツのように拡がった。
上からも下からも、ジェレミーの匂いがする。]
[嗅上皮と鼓膜が同時に甘く犯されて
頭の芯から呆っとしてくる。
肌と肌で触れ合ったら、
一体どうなってしまうのだろう。]
……うん。……
[上を脱がすのは下に比べて不慣れで
元々の不器用さも相俟れば
野暮ったい手つきで黒ベストの釦を外していった。]
[服を一枚ずつ剥いではベッドの脇へ置く。
脱がし切れば、均整の取れた肉体が現れた。
まるで彫刻のように美しい。
――だからこそ、アシンメトリな黒眼帯は
存在感を一層強くしている。
それ一枚だけ彼の身体に残して。]
[彼と、肌と肌で触れたい。
触れ合って、抱き締め合って、
キスがしたいと思う。
こんな欲求、初めてだ。
貴方はどれだけ沢山の初めてをくれるの。]
はぁ
…………、き、 て……
[知らずに息が上がる。
抱き締めてもキスをしても甘えるみたいだ。
可愛く強請れない俺は、
両手を伸ばし、言葉少なに抱き寄せた。**]
ありがとう、助かるよ
[彼の手を借りながら
自分でも脱ぎ落としていく。
先程までとは打って変わった
辿々しい指先を
目元を撓めて見つめながら。]
[ヒューは不思議だ。
秀でるところが
突出しすぎているせいもあるだろうが
凸凹していて
どこか歪な感じがする。
────そこが酷く
愛おしい
。
均してしまいたい訳ではないけれど
その窪みを
自分が埋めたいという
気持ちにさせられていた。]
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